会社を設立して事業を行うためには、社名(商号)が必須です。
会社の顔となり、長く付き合っていくものなので、創業者の想いやコンセプトを反映した、インパクトあるものにしたいですよね。
ただ、商号を付けるにあたってはいくつかルールがあるので、何も調べずに決めるのはリスクが高いです。
そこで今回は、あらかじめ確認しておきたい商号に関するルールや注意すべきポイントなどを解説します。
付け方の例や、実際の企業の例なども紹介するのでぜひ参考にしてください。
目次
会社名・商号・店名・屋号の違い
まず基本的な知識として、違いがわかりにくい言葉の使い分けをはっきりさせておきましょう。
会社名と商号は同じ
会社の商号とは、会社名のことです。
会社法に、「会社は、その名称を商号とする」と規定されています(会社法第6条)。
とはいえ、商号は必ずしも会社にのみに用いるものではありません。商法では、個人事業主を含む「商人」は「商号」を持つことができ、商号の登記ができるとされています(商法第11条)。
ただし、会社の場合は設立の際に商業登記を行う義務があり、登記事項として商号が含まれます。
一方で、個人事業主には登記の義務がありません。自身の権利を守るために商号登記をすることも可能、という違いがあります。
商号と店名は違うことも多い
店名は文字通り、お店の名前です。商号と店名が一致している必要はありません。
例えば、1つの会社が居酒屋やイタリアンといったジャンルの異なる飲食店を複数展開する場合など、商号と店名が異なるケースは数多く存在しています。
ただこの場合、登記されている商号の権利は会社法で保護されますが、店名は保護されません。真似されたり、便乗されたりしないよう、店名は商標登記で保護するなどの対策をしておくのが得策です。
屋号は個人事業主だけが使うもの?
個人事業主が税務署に届け出る「開業届」には「屋号」の記入欄があります。
国税庁の確定申告のページにも「屋号は個人事業者の方が使用する商業上の名のこと」と書かれています(屋号を付けるかどうかは任意)。
しかし、一般には個人事業主に限らず会社名のことを屋号と呼ぶ人も多く、屋号は個人事業主に限って使うもの、という法的な決まりもありません。
個人事業主から法人成りした際の名残なのか、そのあたりは曖昧です。
余談ですが、かつては一般の家にも、名字とは異なる「屋号」を付ける慣習のようなものがありました。
現在も一部地域の一般家庭で屋号が使われています。
ちなみに「商標」とは
商標とは、商品やサービスなどを表現する名称やマークのこと。商売をするにあたって、他者との違いを明らかにするために使います。
同じ、あるいは酷似した商標で権利が侵されることのないよう、特許庁に出願して商標を登録することができます。商標登録をすれば、日本国内でその商標を使う権利が商標法によって保護されます。
新たな商品やサービスを世に出す前には、自身も他社の権利を侵害しないか確認しておきましょう。特許庁の公式サイトで簡単な検索が可能です。
会社名(商号)を付ける際の決まりごと
商号を付ける際には、大きく7つの守るべきルールがあります。
- 商号かつ本店所在地が同じでは登記不可
- 他者との類似名称の禁止
- 公序良俗に反する商号は不可
- 会社形態を含める必要がある
- 異なる会社形態だと誤解される文字の使用禁止
- 業種によって入れるべき文字もある
- 使用できる文字が決まっている
それぞれ詳しく説明します。
商号かつ本店所在地が同じでは登記不可
すでに登記されている商号と同じで、かつ本店営業所の所在地も同じ場合には、その商号での登記ができません(商業登記法第27条)。
読み方が違っても不可です。例えば「株式会社 吉川(よしかわ)」と「株式会社 吉川(きっかわ)」は同じ商号と見なされます。
読み方が同じでも、表記が異なればOKです。「株式会社よしかわ」と「株式会社ヨシカワ」は別と見なされます。
同じ商号でも本店の住所が異なればよく、同じ住所でも違う商号であれば登記が可能です。
商号調査のしかた
実在していなくても、誰かが架空の登記をしていないとも限りません。確認は必ずしておきましょう。法務省公式サイトの「オンライン登記情報検索サービス」で調べることができます。
類似する名称の禁止
すでに存在する他者の商号と同じもしくは似た商号を使うことは、商法と会社法、不正競争防止法によって禁止されています。
各法律による決まりも見ておきましょう。
不正目的による類似商号の禁止
他者と誤認されてしまう可能性のある商号を、不正な目的で付けることは禁止されています(会社法第8条、商法第12条)。
不正な目的とは、例えば有名・大企業などにあやかろうとして、その企業や関連会社だと誤解されるような商号をあえて付けること。
もしくは、その企業を貶める目的で似たような商号を使うようなことが挙げられます。
日本未進出かつ海外で規模を拡大中の有名ブランドと同じ商号を付け、日本進出の際にその使用の権利を主張して金銭を得ようとしたりすることも、不正目的に当たります。
不正競争防止による類似商号の制限
不正競争防止法も同様に、他人の商号や商標など広く知られているものと同じもしくは類似の表示を使って誤解を招くことを「不正競争」と呼び、禁止しています。
逆に、自社がすでに登記した商号と誤認される恐れがある商号を、他の会社に不正目的で付けられてしまうかもしれません。
その場合には、権利侵害をやめさせる、あるいは誤解させない対策を取るよう、相手方に求めることができます(商法第12条の2)。
公序良俗に反する商号は不可
当然ながら、公共の秩序に反したり、社会の道徳に反したりするような商号は付けられません。民法に基づき、その商号は無効となります。
あえて例を挙げるなら、「盗品買い取り株式会社」「株式会社 白人至上主義」のようなものでしょうか。
ただし具体的に何がダメかという基準のようなものはなく、最終的な判断は裁判所によります。
奇をてらった場合にも該当してしまう恐れがあるので、注意が必要です。
会社の種類を含める必要がある
会社は、「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」のいずれか、実際の会社形態を示す文字を商号に入れなくてはなりません(会社法第6条の2)。
条文中に「文言」などでなく「文字」とあるので、表記はひらがなやカタカナではなく、漢字にする必要があります。「Co.,Ltd.」なども不可です。
いわゆる前株か後株か(「○○株式会社」か「株式会社○○」か)の決まりはないので、口にしたときに語呂が良い方を選べばよいでしょう。
後株で同じ名称の会社があるので自社は前株にする、といった付け方も見られます。ただし前項の禁止事項に該当するリスクもあるので、同じ業種では避けることをおすすめします。
異なる会社形態と誤解される文字の使用禁止
上の項に関して、会社形態を入れる際、例えば合同会社なのに株式会社だと誤解されるような文字を使うことは禁止されています。
例えば「カンパニーリミテッド」というのは有限責任を表し、日本では株式会社などの名称に使われます。社員全員が無限責任を負う合名会社に使うのは不適切でしょう。
誤解されるような文字を使った場合にも、100万円以下の過料を科されるおそれがあります。
業種によって入れるべき文字があることも
例えば銀行なら、商号の中に「銀行」の文字を含めなくてはなりません(銀行法第6条)。
保険会社の場合、生命保険会社や損害保険会社、相互会社だとわかる商号にしなければなりません(保険業法第7条)。
信託会社にも、同様の規定があります(信託業法第14条)
銀行の場合、株式会社などの表記と同じく「銀行」という文字を使わねばなりません。「○○ぎんこう」や「○○バンク」といった商号は認められません。
逆に、銀行業を営む企業でない会社が銀行であることを示す文字を使ったり、保険会社でないのに保険会社と誤認されるような文字をつかったり、信託会社でないのに信託会社と思われる文字を使うことも禁止です。
このほかの業種でも、関連法令によって商号についての規定がある可能性があります。業界関連の法律にも、必ず目を通しておきましょう。
もちろん、規定がない場合でも、消費者が誤解して損をする可能性があるような商号は避けるべきです。
使用できる文字や記号が決まっている
商号の登記には、日本語の漢字やひらがな、カタカナのほか、次の文字や記号を使用することができます。これ以外の文字や記号などでは登記ができません。
符号の種類 | 使えるもの |
ローマ字 | アルファベットA~Zの大文字・小文字 |
アラビヤ数字 | 0~9の10種類の数字 |
その他6つの記号 | ・アンパサンド「&」 ・アポストロフィー「 ’ 」 ・コンマ「,」 ・ハイフン「‐」 ・ピリオド「.」 ・中点「・」 |
例えば「株式会社ABCDE」などローマ字のみ、「A&Cグローバル株式会社」など日本語とローマ字の混合、「株式会社333」など数字だけの商号も可能です。
ただし、6つの記号の使用は文字の区切りとして使う場合に限られます。商号の最初や最後に使うことはできません。ピリオドは、省略を表す場合のみ末尾に入れられます。
平成14年に商業登記規則などが改正され、それまで不可だったローマ字での登記ができるようになりました。
とはいえ、登記は不可だったものの定款ではローマ字も可能だったため、それ以前に設立した会社でもローマ字を使っている企業はあります。
商号の付け方で押さえておくべきポイント
上記のルールを守れば、どのような商号を付けるのも自由です。とはいえ、名前は会社にとって重要なもの。事業に影響を及ぼす可能性も高いです。
次のようなポイントを押さえて考えることをおすすめします。
- 事業内容が伝わりやすいか
- 覚えやすいか
- 長すぎないか
- 読みやすい・聞き取りやすいか
- 海外でも通用するか
- ドメインの取得ができるか
それぞれについて説明していきます。
事業内容が伝わりやすいか
設立当初は、まず自社を知ってもらうことを重視し、事業内容が誰から見てもわかりやすい会社名にするとよいでしょう。会社名は、後から変更することも可能です。
会社名だけで事業内容がある程度伝われば、例えば遠くから看板を見たり、電話帳で社名を見ただけの人から問い合わせがあるかもしれません。その事業に力を入れていることも伝わりやすいでしょう。
始めて会う相手に自身が説明する手間も、相手に疑問を抱かせることもありません。
覚えやすいか
すぐに覚えてもらい、取引先候補などとしてすぐ名前を挙げてもらうには、覚えやすさが重要です。覚えやすいということは、忘れられにくいことにもつながります。
覚えやすくするには、次のポイントを踏まえて決めるとよいでしょう。
- 語呂やリズムがいい
- インパクトが強い
- 珍しい
- 長すぎず短すぎない
語呂やリズムの良さは、人に知らず知らず心地よさを与えます。耳に残れば、印象にも残ります。同業他社とは明らかに違う印象的な社名なら強いインパクトが残せます。
前項の説明とは逆に、あえて珍しさを盾に「どんな会社なんだろう」と疑問を持ってもらうのも1つの方法です。
長すぎないか
長すぎる会社名は、インパクトはあるものの覚えてもらいにくいです。
知らないところで「○○ナントカ」「なんとか○○」などと勝手に略して呼ばれてしまうのが目に見えています。
また、一般的に他社の名前を略すことは失礼にあたります。そのため自社への郵便やメールでは長い社名をいちいち記載しなくてはなりません。
申請や届出、アンケートなど社名を手書きする必要がある際に、短くしておけば…と後悔するかもしれません。
読みやすいか・聞き取りやすいか
電話での取引や問い合わせなどが多いなら特に、読みやすさ・聞きやすさも重視すべきポイント。
パッと見で読みやすければ、覚えやすさにもつながります。
読みにくい、聞き取りにくい会社名では、相手に聞き直しの手間をかけさせたり、覚え間違いをされたりする可能性が高くなり、社員もストレスを感じかねません。
紛らわしくないか
他社と似たような社名を付けることは、ルール上でも問題ですが、紛らわしいことは他にもデメリットとなり得ます。
顧客が他社と間違えてしまったり、相手先が発注ミスをしたりする可能性も。
SNSで口コミなどをされる際も、他社と間違えられ、とばっちりなどの被害者となる可能性もあります。
また、日本語には、形が似ている漢字とカタカナが存在しています。「エ(子業の工、エリアのエ)」や「夕(夕食の夕、タイのタ」「二(二重の二、ニスのニ)」などがその例。続けて使うなど、カタカナとの区別がつかない形で使うのは避けたいところです。
個人名でもよくある話ですが、別の読み方がいくつもあったり、一般的な読み方でない漢字だったりすると、読み方を間違えられたり、間違えて覚えられることも。
漢字でなくカタカナにするなど、工夫するとよいでしょう。
海外で使っても問題ないか
海外への進出や海外企業との取引がある場合、あるいは将来的な視野に入れている場合には、海外でその名称を使っても問題ないかも考えて決めてください。
日本語では一般的でも、海外では奇妙な意味となったり、音の響きや他の単語との関係で予想外の印象を持たれたりすることもあります。
例えばヨーロッパでは、末尾が「a」の音で終わる名前は女性っぽいイメージを持たれがちです。英語では「タケ」は「take」、つまり「テイク」と読まれる可能性も高いです。
フランス語でいう語頭の「H」や末尾の子音など、発音されない文字もあり、日本語とは違う読み方になってしまうことも。
取引先相手の使用言語についても調べておくとよいでしょう。
ドメインの取得ができるか
生活にインターネットが欠かせない今、ネットの住所と言われるドメインの取得も重視されています。不正競争防止法では、ドメイン名についても不正な利用を禁止しているほど。
自社オリジナルのドメインを使うことで、サイトの信用度が高まります。
しかしドメインはアルファベット表記となるため、他と重複しないものを新たに付けるのは難しくなっています。商号を考える際、同時に既存ドメインの有無も調べるようにしてください。
商号を決める5つの方法
ルールやポイントを踏まえて、さらにどのように社名を付ければいいのか、具体的な例などを見ていきましょう。
- 名前と事業内容を組み合わせる
- 創業者などの名前やイニシャルを社名にする
- 名前などを外国語っぽく表記する
- 創業場所、創業のきっかけとなった地名を使う
- 経営方針やビジョンを入れる
それぞれ具体的に説明していきます。
名前と事業内容を組み合わせる
名前と事業内容を組み合わせた商号が、最も一般的であり、第三者から見てもわかりやすいと言えるでしょう。
「何をする会社なのか」が一目でわかるのは、事業展開にもプラスに働きます。
例えば「トヨタ自動車株式会社」や、「塩野義製薬株式会社(シオノギ製薬)」。「株式会社竹中工務店」、「カシオ計算機株式会社」などなど。
名字だけ、事業名だけでは同名の会社が存在する可能性も高く、組み合わせることで他社との区別がつきやすくなります。
創業者・代表者個人の名前やイニシャル
最もシンプルなのは、自身(創業者)の名字や名前をそのまま商号に用いることです。日本のみならず、海外でもよく使われています。
例えば「株式会社オークワ」「ヤマハ株式会社」、「株式会社マツモトキヨシグループ」「株式会社ニトリ」など、カタカナ表記にしたものや、「松尾株式会社」「株式会社小林三之助商店」などなど。
「伊藤忠商事」のように、創業者の氏名(伊藤忠商事の初代は伊藤忠兵衛氏)の略称を用いるケースもあります。
自身の名前を冠することで、仕事に対する誇りを示すことができます。自分の会社、という思い入れもストレートに感じられるでしょう。
個人事業主が法人成りしたケースや家族経営の会社、優れた職人技を受け継ぐ事業などでよく使われます。
名前などを外国語、あるいは外国語っぽく表記
日本語の名前をそのままでなく、英語などにして商号になっているのもよく見かけます。
例えば大西さんなら「ビッグウエスト」、小川さんなら「スモールリバー」など。
また、未知数を表す「x」と名前を組み合わせた「ヨネックス」「アラクス」「ハヤックス」、「x」と英語の「オリジナル」と組み合わせた「オリックス」なども多く使われています。
「ブリジストン」が創業者である石橋正二郎氏の名字の文字「stone」と「bridge」を前後逆に組み合わせたものだというのも、よく知られた例でしょう。
創業の地や営業する地域の名を入れる
創業した土地や事業を展開していく地域の名称と事業内容とを商号とするのも、商号の付け方としておすすめの方法です。
地域に根座す事業なら、対外的に自社の地域への愛着、地域に貢献する意識などが伝わります。「この地域のことならお任せを」という心意気もうかがえるでしょう。初心を忘れないという意味でも効果的です。
例えばかつての東京・淀橋区で創業された「ヨドバシカメラ」もその1つです。
創業のきっかけとなった場所、故郷の地名などを入れる
自身が生まれた土地、育った土地、起業する前に修行した思い出のある場所などの名称を商号に入れるのも1つの方法です。
たとえ違う場所で事業を興すにしても、初心を忘れず事業を進めていけるのではないでしょうか。その地域に感謝し、利益を還元して恩返ししたいと考える人も多いでしょう。
今や全国に複数の店舗を構えるパティシエの辻口博啓氏も、自身の原点となったフランスの丘「モンサンクレール」を店名・商号にして「株式会社モンサンクレール」としています。
経営方針や精神、ビジョンを込める
会社の経営方針や創業の精神、会社として描く将来のビジョンなどを商号にする会社も数多く存在します。
例えば文房具や事務用品で知られるコクヨ株式会社は、「黒田表紙店」という名前で始まり、創業の9年後に商標を「国誉」としました。
「国」とは創業者の黒田善太郎氏の故郷、富山を表し、「国誉」は19歳で故郷を出たときに「国の光、誉になる」と誓ったことから名づけられたといいます。その後、表記をカタカナに変え、社名も商標と同じ「コクヨ株式会社」に変更されました。
一見してなぜそのネーミングなのかわからない商号の場合、由来を聞かれることも多いでしょう。それがきっかけで事業や自社への理解を深めてもらえる可能性もあります。
以上は商号の決め方の主な例です。それぞれを組み合わせたパターンや、ちょっとひねったパターンなど、世の中にはさまざまな狙いや由来を持って付けられた商号があふれています。
こんな付け方もある!有名企業の商号の由来
今や誰もが知るような有名企業の社名にも、由来や歴史が存在します。参考までに、いくつかの例を紹介します。商号を考える際のヒントとしてください。
小岩井農牧株式会社(小岩井農場)
小岩井農場は、創始者であるかつての鉄道庁長官・井上勝氏が、それまで全国各地の田畑を線路に変えて国に捧げてきた背景から「荒れ地を開墾して農場を作りたい」と考えたのが始まりと言われています。
一見すると小岩井さんという1人の人が立ち上げたようにも思えますが、この商号には3人の名前が入っています。
創始者の井上氏が、農場の開墾に協力したかつての日本鉄道会社の副社長・小野義眞氏、三菱の社長・岩崎彌之助氏の頭文字を取ってできたのが「小岩井」という名前です。
花王株式会社
日用品や化粧品などで知られる化学メーカーの花王株式会社。「花の王」となんともゴージャスな名前ですが、由来は意外に「顔」とのこと。
創業者の長瀬富郎氏は、品質の良い国産の石けんを作ろうという強い思いから石けんの開発に着手。
顔も洗えるほどの高品質な石けんということで「顔(かお)石けん」という名を付け、漢字はその読み方に当てて「花王」とし、商号となったそうです。
他の漢字をあてていたら、印象はまた大きく異なっていたのではないでしょうか。
株式会社ゼンリン
住宅地図などで有名な株式会社ゼンリンの社名は、 隣国や隣近所の人々と仲良くすることを意味する「善隣」 から。創業者である大迫正冨氏の「平和でなければ地図作りはできない」という思いが込められていると言います。
かつては漢字表記でしたが、他社との合併を機に「ゼンリン」とカタカナ表記に変えられました。
「善隣」だと、やや重厚で時代を感じる印象もあります。合併して新しくなった、という印象を持たせるにも、カタカナにした方がよかったのかもしれません。
カルビー株式会社
スナック菓子メーカーのカルビー株式会社は、創業時には「松尾糧食工業株式会社」という社名で始まりました。
1955年、人の健康に役立つ商品づくりを目指すとして、カルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」を組み合わせた「カルビー」を社名としたそうです。
「カルビー」という外国語の単語のようにも聞こえますが、2つの言葉を組み合わせて作られたものでした。
1955年は、高度経済成長期が始まった頃。栄養的にはまだまだ十分でない時代に、人々に栄養を付けさせたいという思いが伝わる社名です。
アヲハタ株式会社
青い旗のロゴが印象的なジャムの「アヲハタ株式会社」は、もともとは創業者の名を取った「中島商店」から始まりました。その後、「青旗缶詰株式会社」を経て「アヲハタ株式会社」に変更しています。
「アヲハタ」の由来は、アヲハタの創始者でキューピーマヨネーズの創始者でもある中島菫一郎氏がイギリス滞在中によく見に行ったボートレースから。
オックスフォード大学とケンブリッジの校旗がどちらも青(濃淡や色味には違いあり)で、それがとても印象的だったからだといいます。
こうして見てくるとわかるのが、有名企業のほとんどの商号が、創業当時のままではないということ。
重要ですが不変ではない、もしくは、重要なものだからこそ変えていく必要があるのかもしれません。
商号はルールを守り、自社に最適なものを
会社名(商号)は会社にとって重要なもの。決まると、一気に会社設立の現実味が増してくるでしょう。
他社の権利を侵害することなく、ルールを守りつつわかりやすくインパクトのある会社名を考えてみてください。
会社名は後からいつでも変更が可能です。そのため、創業当初は何より事業内容などのわかりやすさで決めることをおすすめします。
規模を拡大するときはこんな名前に…と前もって次の商号を考えておくのも楽しいかもしれません。