新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により私たちの日常生活が一変し、はや1年以上が経過しました。
飲食業などサービス業では特に店舗型のビジネスが力を弱め、業績の落ち込みによる廃業や倒産が増加している状況です。
しかしその一方で、新しい生活様式でのニーズが高まっているデリバリーサービスやオンラインを使ったビジネスなどでは、新規開業や事業参入に成功する人も出てきています。
この記事では、コロナ禍をチャンスと捉え新規開業を成功させるのに必要な、新しいビジネスモデルの組み立て方を解説します。
目次
既存モデルでは通用しない―迫られる新ビジネスモデルへの転向
コロナ禍の影響により、あらゆる業種で既存のビジネスモデルが成り立たなくなり、事業の転換などを迫られる事態が起きています。まずは、飲食・美容・IT・運送の4業界について、コロナ禍でどのような変化が起きているかを見ていきましょう。
飲食業界の市場動向
冒頭でも述べたように、従来の飲食店の店舗型サービスはコロナ禍で大きなダメージを受けています。ビジネスマンはオフィス勤務から在宅勤務となり、客となる人の流出が激減しました。度重なる外出制限や営業自粛、短縮要請といった政府・自治体の働きかけにより、休日の人出が見込めないばかりか、自主的に協力せざるを得ないという苦しい状況に立たされ続けています。
しかしその裏で伸びてきたのが、外出せずとも楽しめるデリバリーやテイクアウトへの需要です。
中でも新規開業が活況なのは、テイクアウトやセントラルキッチンといった業態です。
いずれも店内飲食のスペースを設ける必要がなく、最小限の厨房設備だけで事業を行えるのが特徴です。
そのため、店舗型と比べて家賃や設備などのコストが低く抑えられ、かつニーズが高まっているため、利益を効率よく確保できるのです。
美容業界の市場動向
美容業も飲食業と同様、客に来店してもらわなければ成り立たないビジネスモデルの1つです。特に施術時の店員と客との距離が近く、客が同時に数名並ぶことが多いこと、ある程度の時間も必要なことから、感染防止のために1日に受ける人数を減らすなどの対策を取らざるを得ない状況です。
その中でも影響が比較的少ないのは、出張・訪問型のカットサービスや、エステ、リラクゼーションサービスなどの業態です。
出張・訪問による理美容サービスは、病気や障害など事情があって店舗に行けない人向けに存在するものです。
施設など多くの人が集まる場所では敬遠されても、個人宅でのニーズは増えたというケースが見られます。
エステやリラクゼーションサロンなどは、もともと一度に1名ずつで時間を取っていること、コロナ禍によるストレスでニーズが高まっていることなどが追い風になっていると考えられます。
IT業界の市場動向
IT業界の2019年度の市場規模は約10兆8,190億円となっており、年々拡大を続けています。
「IDC Japan」の市場規模予測では、2019年~2024年は年間平均3.4%の成長率で推移すると予想されています。
(出典: IDC Japan 「国内エンタープライズIT市場クラウド関連 売上額予測、2019年~2024年」)
IT業界へのコロナ禍の影響は、開発対象の変化という形で表れています。
これまでのシステム開発は、例えば銀行や証券会社をクライアントとするB to Bの基幹システムの開発が主流でした。
現在は、ますます需要の高まった通販ビジネス運営のECサイトや、リモートワークが続くことを見据えた在宅業務の効率化に関するシステムなど、いわゆるエンドユーザー向けシステム開発の需要が高まっています。
さらに、日常のコミュニケーションもオンラインで行うことが増えている状況を踏まえ、遠隔でビジネスを進めるためのシステム開発なども増えていくことが予想されます。
運送業界の動向
これまでの運送業は、卸や小売業向けの大型運送が主流でした。
しかしコロナ禍の影響で、飲食業を主としたサービス業の需要低下や輸出入制限に伴う配送量の減少などにより、大型運送は苦戦を強いられています。
一方で、コロナ禍で「おうち時間」の過ごし方に注目が集まる中、通販ビジネスや飲食業におけるデリバリーの需要が急激に高まっていることから、一般消費者向けの小型運送が増えています。
このような状況は今後も続くことが予想され、コロナ禍の影響で打撃を受けている大型運送が主要な運送業者は小型運送に参入するなど、物流・運送業界においてはビジネスモデルの大きな転換点を迎えています。
ビジネスモデルを変えるだけでは成功しない【消費者視点から】
前章では、コロナによる市場の変化について説明しました。主流のビジネスモデルに影が落とされた一方、ニースが高まったサービスへの移行で成功する企業もあります。
しかし、今後の自主的なビジネスの展開を考えるなら、やむを得ず変えるのではなく、ニーズを先取りするなどしてwithコロナ時代に生き残れるビジネスモデルを模索する必要があるでしょう。まず大切なのは、消費者目線でとらえることです。
消費者動向をとらえるための背景
経済産業省によると、コロナ禍の家計消費支出は続落傾向にあり、また家計消費においても、外出・移動の制限の影響で衣服や旅行などの娯楽サービスの売り上げの落ち込みが顕著にみられます。
そのため、サービス業を中心に雇い止めや給料の削減などが行われ、失業や収入の減少に見舞われる人も多数出ています。
消費行動としても買い控えの傾向にあり、ものが売れない時代に突入しています。
また、消費者の意識変化によって売れる商品やサービスにも変化がみられ、業種によっては従来のビジネスモデルが通用しない状況にあります。
こうした状況を踏まえ、withコロナ時代の新しい生活様式における消費者意識や行動の変化をしっかりと分析し、現在の消費者の価値観とニーズにあったビジネスモデルを構築していくことが重要です。
消費行動の傾向
コロナ禍では感染への懸念から非接触あるいは接触機会を減らしたビジネスのニーズが高まっています。
このため、実店舗の売上減少傾向に対して、ECサイトを活用したオンラインショッピングの需要は伸び続けています。小売だけでなく、たとえばオンライン居酒屋、オンライン海外ツアーといったサービスも生まれています。
また、消費行動の変化に伴い、購買プロセスの簡略化も進んでいます。
実店舗での商品に関する情報収集や購買行為などが減り、インターネット上で得られる情報に基づいて商品を購入したりサービスを利用したりする傾向が顕著になっています。
ビジネスモデルの構築は、このような消費者の行動変容も踏まえながら検討を行っていくことが重要です。
ビジネスモデルを変えるだけでは成功しない【事業者視点から】
新たなビジネスモデルを検討する上では、売り方や売るための仕組みといった、売り手側で取り組むべき事業変革も重要です。
この章では、売り手である事業者が取り組むべき事項を踏まえながら、コロナ時代に生き残れるビジネスモデルを考えていきます。
サブスクリプションの導入
消費者に対するこれまでの売り手の姿勢は、消費者からアクションがあったら対応するという受動的なカスタマーサポートが主流でした。
しかしながら、消費者の意識や価値観が多様化した現在では、「消費者の成功体験」すなわち消費者が求めるものを能動的に提供するカスタマーサクセスが重要視されています。
カスタマーサクセスを体現したサービスの代表格が、ここ数年で増加したサブスク(サブスクリプション)です。
サブスクとは、月額・年額で代金を支払うことにより一定の期間で商品やサービスを利用できるサービスです。以前は新聞や雑誌などの年間購読がメインでしたが、今では音楽・動画配信サービスやカーシェアリング、サプリメントの販売など、さまざまな業種で活用されています。
特にコロナ禍の巣ごもり需要の高まりによって、デジタルコンテンツの配信サービスや、自宅で料理をするニーズにフォーカスを当てた食材の宅配サービスなどが大きな伸びを示しています。
サブスク型のサービスは、新たな商品開発を行わなくても直ぐに導入でき参入障壁が低いのがメリットですが、似たようなサービスが乱立するおそれもあり、消費者にとって利便性の高いサービスを提供できるかが成功の鍵となるでしょう。
※カスタマーサクセス(Customer Success)とは、日本語に直訳すると「顧客の成功」。顧客を成功に導くことでLTV(Life Time Value)の最大化を目的とする一連の活動を指します。
DXの導入
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、ITの活用によって、生活やビジネスを革新的でより良いものにしようとすることです。今やあらゆる業種で導入されつつあります。
DXの導入は、商品開発やサービス開発にも大きな影響を与えます。
例えば、衛生用品・ヘルスケアの大手であるユニ・チャーム株式会社では、SNSやネットショッピングなどの投稿データや口コミデータを収集・蓄積して統合するシステムを活用しています。それによって、消費者の考えやニーズをより広く、より深く把握し、さらにスピード感を持って商品開発に生かすという取り組みを進めています(経済産業省・東京証券取引所「DX銘柄2020」)。
「今」の顧客ニーズに合った商品の開発が可能になれば、顧客満足度も確実に上がっていくものと期待できます。DXの活用は開発段階にとどまらないので、使い方によって消費者にとっての新たな価値、CX(カスタマー・エクスペリエンス)を生み出すことができるでしょう。
ただ、DXの活用には導入に1~3年程度、効果が表れるまでに数年かかるのが一般的であり、導入には費用もかかります。コロナ禍だから今すぐ、というのは難しいかもしれませんが、今後を見据えた長期的な視野で、しっかりとした導入計画を立てていくことが必要です。導入には補助金などの利用も検討しましょう。
※DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、2018年12月に経済産業省が発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」では、以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
上手い話に飛びつかず新事業を構想するには
これまで述べてきたように、withコロナ時代においてビジネスを成功させるためには、ニューノーマル(新常態の生活様式)に合わせて変化した消費者や社会のニーズを的確に捉えることが重要です。
しかし、流行りのビジネスモデルであるというだけの理由で新規事業や事業再構築に取り入れるのは危険です。参入したとして、市場がもはやレッドオーシャンとなってしまえば成功の保証はありません。また、構想が長すぎて流行が去ってしまえば、ニーズもなくなってしまうでしょう。
新しいビジネスモデルを構築する際は、なるべく長期的な視野、広い視野で考えることも大切です。例えば SDGs(持続的な開発目標)を意識した社会的な問題解決に取り組む事業を展開するなどすれば、社会に貢献できる会社として企業価値を高めながら他社との差別化を図ることができるでしょう。
開業は専門家に相談!プロジェクトとしてのチーム編成がおすすめ
開業してビジネスを成功させるためには、各分野に精通した専門家の知見を活用することが重要となってきます。
依頼すれば報酬を支払う必要があり出費は増えますが、得られるメリットも大きく、その価値は十分にあるのです。自社だけの力ですべてを解決しようとせず、社外の確かな力をチームとして活用しましょう。
ビジネスのパートナーとして活用したいのは、主に税理士や社労士、行政書士など。それぞれの特徴を説明します。
税理士
税理士は、税金の申告や補助金の申請などをサポートする専門家です。
特に開業して1~3年は、適切な会計がビジネス成功の鍵です。とはいえ、事業を軌道に乗せるまでは必死で、税金や会計のことまで頭が回らない、という人がほとんどではないでしょうか。しかし会計は業績にも直結する重要な経営要素です。
税理士に会計や税務にかかる手間を任せれば、事業や経営に集中できます。適切な節税対策のアドバイスなどもしてくれる、事業経営には欠かせない存在です。
社会保険労務士(社労士)
社会保険労務士は、その名の通り社会保険に関することや、その他労務に関することの専門家です。
人を雇う場合には、雇用保険や社会保険などの手続きが必須です。また、健全な企業には就業規則の整備や従業員の適切な労務管理などが欠かせません。
そういった手続きだけでなく、トラブルの発生を事前に防ぐ職場環境づくりの相談、雇用の際などに使える助成金の申請も、社労士になら安心して任せることができます。
司法書士
司法書士は、法律にもとづき法務局や裁判所などに提出が必要となる書類の作成や、それに関する法律相談などを受ける専門家です。
会社設立の際に必要な登記や各種届出書類の作成を依頼できるほか、開始するビジネスに法律上のリスクや必要条件がないかなどを相談することもできます。ビジネス展開で生じうる問題への予防や対策にも欠かせない存在です。
各種の専門家
上記の専門家のほか、会計士、中小企業診断士などもビジネスにおいて頼れる専門家です。
公認会計士は、決算書が問題なく作成されているかなどの監査を行う専門家です。資本金5億円以上などの大企業には会計監査人による監査を受ける義務がありますが、中小企業では任意となっています。
中小企業診断士とは、中小企業の経営が健全かどうかの診断や課題に対する助言を行う専門家です。経営コンサルタントと言えばイメージしやすいかもしれません。
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まとめ
withコロナ時代に合わせたビジネスモデルが次々と誕生しています。
成功には「ニューノーマル」の視点で消費者や社会のニーズを捉えたビジネスモデルを組み立て、スピード感を持って実行していくことが重要です。それでもスタート時には課題に直面することも多いでしょう。
ビジネスの成功には、各分野で課題解決を得意とする専門家に相談するのがベストな方法です。
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