【座談会】創業支援の現場で感じる起業トレンド

創業支援の現場で感じる起業トレンド
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今回は、最近の新規設立法人について、その傾向などを見ていきます。
当社にいただくお問い合わせにどのような業種・業態の方が多いのか、そしてコロナ禍の前と今との違い、これからの起業の成功のカギなどを読み解いてみました。

飲食店の開業は減少、美容系では業績が伸びているところも

創業支援のお2人は、実感として何か傾向はありますか?

西井
コロナもおそらく終盤戦に入ってきたかと思うんですけど、この数年間の開業者の傾向、どういう意図で開業されるかというのはだいぶ変化したと思います。
古家
私、2019年以前はほとんど飲食店の開業支援ばかり担当してたんですけど、今は飲食店についてのお問い合わせがほんとにガクっと減ったなというのは思いますね。
逆に増えたと思うのが、やっぱりインターネット系「ネットショップ始めたいです」とか、あと貿易関係、日本のものを中国で売りたい、中国からのものを日本で売りたい、とか。
創業支援の現場で感じる起業トレンド
今回は座談会形式で、創業支援の担当2名、事業支援を行っている税務担当1名、計3名でワイワイ話し合いました。

意外ですね。海外関係は減ってないんですか?

古家
自分が海外に行って買い付けるとかではなくて、物だけ輸出入するというスタイルですね。日本に住んでいる中国の方に多いです。日本に住んで、永住権も持っていて、日本の商品がいいから中国で売りたいっていう。
外国の方からはよくお問い合わせはいただいてます。
西井
外国の方だと、中国やインド、ベトナム、フィリピンとかそのあたりの方はよく聞きますね。インドの方だと、知り合いや親戚がカレー屋さんやってて、自分は輸入の会社を立ち上げたい、とか。
古家
韓国の方でK-POPの翻訳をしてるとかありましたよ!
西井
海外の方からの問い合わせが戻ってきた感はありますね。ひと頃はバッタリだったですけど。

そのほか何か傾向は?

西井
デリバリーや配達での開業スタイルはなんか「らしいな」って思います。
山口
デリバリー主体の事業ってことですか?
西井
そうそう、軽貨物運送とかが主体で、その荷物を運ぶ人たちをまとめる、みたいな。
山口
あと美容は伸びてますよね。男性用の美容系。それこそ化粧だとか肌だとか。あと脱毛とかですね。
西井
結婚相談所関係も増えてますよね、マッチングアプリが効果ないってなった方はそっちにいくっていう。遠隔でお見合いしたりもするので、その時の自分の容姿を気にして美容の方向にっていうのもあるかもしれません。歯のホワイトニングとか。あと電車の広告で増毛とか脱毛とかよく見ます。
古家
減った分が増えるくらいで全体の数は変わらない、ってことですかね。
西井
はい。でも、サービス業の方は増えたんです。さっき古家さんが言ったようにネット販売とかそっちの業種が増えたのかなと思います。
古家
人と接触しなくてもできる事業ってことですよね。

飲食業界の今後の展望、店舗を持たずにいかに顧客を獲得するか

飲食業は今後もしばらくは厳しそうですか?

西井
日本政策金融公庫による調査の結果で見ると、2020年7月が最新で直近ではないんですけど、飲食店・宿泊業の開業は1ポイントずつくらい下がってるんですね。2019年は15.6%だったのが2020年は14.3%。
お持ち帰りとか配達飲食サービス業、これは小売業に含まれるんですけど、これも2019年から2020年で12.8%から11.8%と1ポイント下がってます(2020年度新規開業実態調査)。じゃあ2021年は爆増したかっていうとそんなに増えてはいないかなと。

税務担当としてお客さんと接している立場から見てどうですか?

山口
苦しいとは思いますが、「2店舗目を出す」っていうお客さんもいらっしゃいますね。
飲食店をやめてしまった人がいることで、逆に空きテナントができて、そこに滑り込むみたいな感じで。

結構いらっしゃいますよね。「(コロナ禍の今が)チャンスだよ」っていうお客さん。

西井
「バーをやりたい」っていう名古屋の方で、テナントがたまたま空いて、大家さんとも話が進んだからチャンスと思って始める、っていう方もいましたね。
緊急事態宣言中だったので、夜は17時から20時までバーをやるんですけど、日中はワイン講座とかソムリエの教室を開く、っていうスタイルで。
山口
全体で大きく見てしまうと飲食業の業績って下がってる風にも見えるんですけど、店によっては増えてるところもあるんじゃないかと。
事業スタイルによっては時短営業の影響をあまり受けてないお店もありますし。もともとランチ主体のお店であればコロナの影響も比較的少なくて、それプラス協力金があるからキャッシュがすごく余ってる、っていうケースもあります。
古家
大きな居酒屋さんとかがやっぱり一番キツいですよね。
山口
例えば名古屋だと固定費、地代家賃とかがすごいかかって、従業員に関しては雇用調整助成金とかあったとしても家賃で40万円とか平気でするところあるので。そういうお店はキツいかもしれないですね。
西井
繰り返しになりますが、2019年以前の、よく店舗まるごととかの「イタリアンやりたいです」「カフェやりたいです」っていうお問い合わせは減ったように思います。

飲食店として実店舗を出したいというお客さんが減っている状況ということですね。

山口
ただ場所によっては、家賃が安く交渉できますし、コロナも今けっこう収束に向かいつつあるじゃないですか、緊急事態宣言が解除されて。だからチャンスと言えばチャンスですよね、安く店を確保する
もちろん資金があるかどうかの話にもなってきますけど。
コロナ後どれくらい家賃が上がるか、テナントが空いてるか、などそのあたりは賭けになりますね。

飲食に限らずお店自体が閉店している印象があります。
老舗や有名なお店がなくなったり、、、アパレルも落ち込んでますよね。

古家
たぶん、出かけないから服を買わなくなったんじゃないですか?
実店舗は特に厳しいと感じます。
山口
それはありますね。今は店舗を持たなくても、服ってネットで買える時代なので余計にかもしれないです。ネットで買う人が多くなってるかもしれません。
西井
無店舗型、ネットショップで始めるっていう方は多いですね。

でも、、、正直ネットショップで成功するって結構難しいですよね

西井
開業当初に想定していたような売上の見込みが立っていないっていう方は多いですね。
店舗の場合は商圏分析とかしますし、その店舗自体に集客効果がありますけど、ネットにはそれがないですから。リピーターが付くのも難しいてすし、やっぱりネットは市場が広大だと思うので、売上の見込みはかなり薄まるんじゃないかと。
ネットが起爆剤になる、って思って創業計画される方も多いんですけど、けっこう危険です。
古家
ネットに載せたら売れる、と思っている方も多いですもんね。
西井
自宅で開業っていう方も多いので、目に見えて固定費がかさむっていうのが感じにくいので、お金が底をつき始めるのがちょっと時間が経ってからかもしれません。「いかに顧客をつかめるか」というのが課題だと思います。

融資相談に多いのは建設業の独立
取引先を確保済みであることが強み

融資相談の方はどうですか?

西井
融資相談はですね、建設業の方が明らかに増えました。データにも出てるんですけど、これがオリンピックに関係するのかどうかはちょっと…。
オリンピックが終わって、待ってても受注がなくて自分で始めようっていう人もいるでしょうし、元請けさんから独立して自分で施主の方とやり取りしたいっていう人もいますね。
古家
たしかに建設業とか電気工事とかで「法人成りしたい」って方も何件かありましたね。いま個人でやっていて、売上が上がってきたから法人にしようかな、みたいな。
西井
足場とかそういう、外ですよね。内装ではなく。いま足場工事は扱ってないけどこれからやる、新規として運転資金を入れる、とかそういうのが続いてます。

建設業が増えているのは、コロナだからということですか?

古家
あんまり関係ないのかなと感じます。
西井
名古屋は今都市開発が活発ですけど、ただ当社への問い合わせは、そういう仕事を請け負ってるってわけではなくて、創業で言うと10年近く経験のある人が総合工事業で始めるっていうケースもあれば、内装やってた人が資金繰りに苦しくなってコロナ融資で来る、っていうケースだったり。
独立したいっていう方は、自分で仕事が取れるようになったから、という人が多いです。
建設業で創業する方って、だいたいが収益の見込みを持ってくるんです。「ここからの依頼がもうあるから」って。そこがけっこう強いんですよね。
開業当初の悩みは資金繰りで、開業後に悩むことの第一位が顧客確保なんです。だから建設業でもう取引先が決まってるから開業するっていう方はすでに強みを持ってるってことなんです。
「飲食やりたい」っていうより「もう取引先は決まってる」っていう状態の方が開業はしやすいですよね。

不動産業での独立事情
コロナ禍では投資先としての注目も

あとはどんな業界が伸びてますか?希望のある業界とか

山口
不動産関係はけっこう生き生きしてるかもしれないです。
西井
物件を持ってる人ということではなく?
山口
はい、このコロナ禍で「資産」という方向に目が行きがちになっていて、そういったところで不動産に目を付けて探している方が多いです。一軒家とか一棟のアパートを買いたい、みたいな話を聞いたりしますね。
古家
投資したいってこと?
山口
そんな感じですね。

地方の不動産って活性化してないんでしょうか。

西井
そこまで活性化はしてませんね。
山口
不動産の価値はコロナ禍でも動きにくいところだと思うので、変に株とか仮想通貨に投資するくらいであれば、っていう感じだと思います。
老後の問題だったり、自分で自分の身を守るじゃないですけど、そういうことを考える方はけっこう多いと思うんです。あと不労所得を得たいとか。

不動産業での独立開業はどうなんでしょうか?

西井
不動産業界で独立する方って、前々から一定数はいますよね。仲介だと景気に大きな波があるので、仲介で始めるけど、ある程度、1億とかまとまったお金が貯まれば自分で物件を持って、賃貸業で当てたいっていう。

独立を考えるきっかけがあるんでしょうか。

西井
不動産業の方って、業界を経験してから始める人が多いんですけど、いつまで経っても自分の懐は潤わない、ってのがあるみたいです。
ただ、独立したらしたで業界や地域独自のしきたりだったりエリアの限定とかそういうのはあるみたいで、ちゃんと筋を通してやる必要があるとは聞きました。
安定しやすいといえばしやすいでしょうね。
山口
不動産賃貸は、物件にもよるとは思いますけど、持っておいて損はない感じですよね。ただ一軒家は少子高齢化なども関わってきたりするので、これから10年後20年後はどうなるかわからないですけど。

コロナ禍をどう見るべきかが分かれ道
コロナ禍を生き残れる人とは?

withコロナ、アフターコロナで、サービスの形態はどうなりますか?

西井
新しい非接触サービスっていってもまだ追いついてないですからね。
山口
そうですね。ほんとここ数年で急にじゃないですか。だからいろいろと整備だったり、デリバリーで配達員のトラブルがあったりしますけど、そういった問題への対処も全然追いついてない感じです。
これからニーズに合わせてちょっとずつそういった仕組みができあがっていくってところですよね。

まだあまり明るい話はなさそうでしょうか?

西井
前回も触れましたけど、コロナ禍の今が事業をやりやすいとは言えませんが、ただ空いたところがあるといえばあるので、そこを「景気悪い」「ピンチだ」ととらえるか、「チャンスだ」ととらえるか、ですね。
山口
株とかで儲けるときもそうですもんね。こういう不景気で下がっているところを読んで、で上がるところに投資する。たぶんビジネス自体がそういうものですよね。
西井
そうですね。それでいうと、「他の人が儲かってるから」っていってやると大抵外れる、っていう。
山口
タピオカとかそういうパターンですよね。
西井
そうそう、みんながやり出せば市場価値が下がってくるので。

デリバリーも今からだともう遅いというか、数がすごく多いですよね。

西井
飽和状態になればやはり下がってきますよね。

コロナ前に賑わっていたお店には、緊急事態宣言解除後また盛り上がっていると感じるところが多いですよね。
その差はどこにあるんでしょうか。

西井
やっぱり人ですよ、人間性です。そうできてるんです世の中(笑)
古家
最終的にはそこじゃないでしょうかやっぱり。クリーンなところにお金が回るようになってるんだと感じます。いい人が集まるし。

「社会から求められること」も変化
それを把握し、対応することが最重要

西井
あらためて開業の方向性について言うと、当サイト「Tips Note」でも紹介している「※開業アイデアに必要な三要素『できること』『やりたいこと』『求められること』」というポイントで、ちょっと変化があったと思うんです。
(※起業準備5ステップの1stステップとして紹介しています。)

どういうことでしょうか。

西井
「できること」はたとえば飲食店なら「料理ができる」、「やりたいこと」は「自分の店を持つ」、なんですけど、「求められること」が世の中だいぶ変化してるんですよね。
いかに非接触でサービスを提供できるかとか、いわゆるニューノーマルの生活様式に合った店舗かとかっていう形に。
開業を考えた方の中でも、その変化に追いつけないから開業を見送るっていう方、もしくは形を変えてできることとやりたいことに合致する事業で開業にチャレンジする方、この2パターンがあったのかなと。そんな印象ですね。

社会に求められること、いわゆるニーズに応えられる人が開業できた、と。

西井
開業しようとする方って、「できること」と「やりたいこと」についてはみなさん熱いんです。創業融資のご相談の方も会社設立のご相談の方も、ここはすごく情熱をもって話をされます。
古家
わかるわかる。
西井
でも、「求められること」については、すでにありきの見解で来られる方が多いので、そこは軌道修正させていただくことが多いですね。
古家
(自分の事業は)「求められるはずだ!」みたいな感じの方、多いですよね。
西井
そうなんです。
こんな素晴らしい事業を始めるんだからこういう見込みがあるんだ、ってなるんですけど、先ほど話に出た建設業の方みたいに明確な受注が入ってるならいいですよね。でもそうじゃない。
まずは世の中がどういう動きなのかっていうのをちゃんと読み解かなくちゃいけないんですよね。
「いま流行ってる」が「求められてる」と同じだと思ってしまう方も多いんですが、ここはマーケティングとかが重要なんです。
そこは専門家に相談してちゃんとやっていただきたいなと思います。
古家
確かに、そこは主観じゃなかなか読み取れないですもんね。いま、そして今後は何が求められるかを、客観的に見極めることが大切ですよね。

前回の対談でも伺いましたけど、やはり小規模での開業は今後も増えますか?

西井
増えると思います。
大きな動きはこれからだと思うんですけど、やっぱり日本式な働き方ってのがどんどん少なくなってきてますよね、年功序列だったり能力評価する会社が出てきたりとか。そうなると、いかに自分らしく働くかを考える人とか、所得を増やしたいから独立という選択をする人がもっと増えるんじゃないかなと。
ただ簡単なことではないので、入念に準備をしていけるかどうかを見ていかないと、資金がすぐになくなるっていう方が多くなりそうです。
それに、コロナ禍で在宅ワークをすることになって「自分でも、家でもできるんじゃないか」的な体験ができてしまったことも大きいですよね。副業に充てる時間も実質的に増えたので、そうすると独立、規模は小さく自分が生活できる範囲で、自分の得意分野で生きていく、自分で仕事をしていく、っていう方が増えるんじゃないでしょうか。
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