飲食業界で生き残るのは簡単ではありません。競合店がひしめくエリアならなおさら、安い・美味しいというだけで勝ち抜くことは難しくなっています。
新しく飲食店をスタートさせるには、競合店と、常連客の取り合いに勝ち抜かなければなりません。
ただ、生き残るために、何をすればいいか解説します。
目次
2018年飲食店の倒産・休廃業・解散状況
2018年飲食店の倒産・休廃業・解散状況
帝国データバンク2018年の調査(2018年4月~2019年3月)では、飲食店の倒産が657件という結果でした。
この件数は前年度と比較すると6.3%減となっています。休廃業・解散は523件で、前年度と比較すると30.4%増加という状況です。
業態別で見ると、1位は、酒場・ビアホールで214件。倒産は西洋料理店で、101件で、前年度と比較すると29.5%増で3年連続増加という結果です。
次に続くのは喫茶店で73件ですが、19.7%増で2年連続増加しています。
休廃業や解散では、中華、東洋料理店で79件、315.8%増、一般食堂で70件、169.2%増です。
都道府県別では、東京都で192件、大阪府126件、愛知県84件となっています。
東京都と愛知県はそれぞれ増加しており大阪府は減少という結果です。
理由は後継者問題、経営者が高齢になったためという仕方がない理由もあります。
ただ、飲食業界は消費者マインドがストレートに反映される業界なのは確かでしょう。
さまざまな問題を乗り越え、生き残りを考えていかなければなりません。
閉店の主な理由は販売不振
帝国データバンクの2018年調査によると、閉店理由の主な理由は販売不振が8割という大きな割合となっています。では、どうして、販売不振になるのでしょうか?
例えば理由として、人手不足が挙げられます。アルバイトもいない状況だと店主が自らすべてさばかなければなりません。
結果、心身共に厳しくなり、体調を崩して休業という結果が考えられます。
また、高齢化しても店を継ぐ人がいなければ閉店しかありません。
帝国データバンクが2019年4月に調査した「人手不足に対する企業の動向調査」でも、過不足状態に悩む飲食店事業者が多いことは分かっています。
他には、店舗を増やした結果、設備投資のための借金に苦しんでいる業者もいるようです。
小規模の個人飲食店は価格競争に対抗するのは難しい
大手飲食店の強みは資金が潤沢にあることです。そのため、価格競争を積極的に行える体力があります。
小規模の個人飲食店は価格競争により大ダメージを受けて閉店することもあるようです。
大手との価格競争をしても、個人商店は太刀打ちできません。そのため、別の方法で生き残りを考える必要があります。
飲食業界が生き残るために考えたいこと
競争の激しい飲食業界で生き残るには基本のQSCと共に、顧客が求めていることに対し、いつもアンテナを張っていなければなりません。
何度も通いたくなるお店には、他店では得られない、何度も通いたいと思える魅力があるものです。
魅力を生み出すには具体的に何を行えばよいのでしょうか。まずは基本のQSCや、満足度、付加価値を知りましょう。
飲食店を経営するための基本知識QSC
QSCとは、各言葉の頭文字を取った言葉です。
Qはクオリティ、Sはサービス、Cはクレンリネスとなります。
飲食店で生き残るためには、このQSCをしっかり理解しておかないと厳しい戦いになるでしょう。
Qはクオリティ
Qのクオリティは、料理や飲み物に対する品質のことです。
毎日、同じことを繰り返していると、どこかで慣れが生じます。
盛り付けなどの見た目や味付け、量、温度について手を抜けば、顧客を満足させることはできません。
家族、恋人、友達や会社の接待や同僚を連れて来たのはいいものの、自分1人で来たときとクオリティが下がっていれば、顧客は恥をかくことになります。再び来店したいと思わないでしょう。
Sはサービス
サービスとは顧客への接客です。
一般的に、接客レベルがいちじるしく低いお店に顧客は訪れません。
一部、接客レベルが最悪の飲食店は確かにあります。
顧客に対し「冷めるから早く食え」とか「黙って食べろ」という上から目線の名物店主的な存在は例外です。
そのようなお店は、許される理由と歴史があります。気軽に真似をしてはいけません。
スタッフについても、従業員同士が怒鳴り合う声や、お客がいてもおかまいなしに大声で会話をしているお店は好まれないでしょう。
料理の置き方も顧客は細かくチェックしています。
Cはクレンリネス
クレンリネスとは衛生管理のことです。
飲食店は口に入れる食べ物を取り扱っています。
衛生管理が行き届いていないお店は顧客に支持されません、中には衛生管理が行き届いていなくても、お客が入っているお店は確かにあるでしょう。
ただ、お客をお客と思わない名物店主と同じく例外と考えてください。
ゴキブリやハエなどの害虫がいる飲食店などを、あえて好む人はいません。
衛生管理がしっかりとできていない飲食店は、味や接客がどれだけよくても、魅力的な店と思われず離れることになります。
また、インターネット上に掲載されれば大炎上となり閉店に追い込まれる可能性も十分にあるのです。
QSC以外にも意識したいことはある
QSCは飲食店を経営する上で基本中の基本ですが、それ以外にも生き残るために必要な要素があります。
それが、ホスピタリティや付加価値です。
QSCを実践している飲食店は多くあることを忘れてはいけません。
ホスピタリティ
ホスピタリティは、QSCと同等の位置に置かなければならない要素と考えてください。
簡単に言うと、思いやりや、おもてなしのことです。
ホスピタリティは、単純な接客行為だけではなく、目に見えない考え方や価値観なども含まれています。
例えばレストランでは「アレルギーなどはございませんでしょうか?」などと質問されることがあります。
予約をした顧客を迎え入れるため、店頭で出迎えることはホスピタリティです。
このような行為は絶対にしなければならないものでもありません。
ただ、顧客はその行為に、思いやりやおもてなしの精神を感じるのです。
ちょっとした気遣い、顧客に満足してもらうために何をすればいいか考えてください。
通常のサービス以上のこと、つまり、このようなホスピタリティが加わると顧客の満足度を高めることができるのです。
付加価値
付加価値も他店と差別化を図る重要な要素と考えましょう。
飲食店などで必要となる付加価値とは、商品やサービス以外にプラスの要素がある独自性のある価値のことです。
他業種でも、付加価値のある商品が販売されています。
雑誌などでよく見る付録は付加価値です。
飲食業界でも、この付加価値を取り入れて独自性を生み出している店舗がたくさんあります。
メイドカフェ、スポーツカフェ、猫カフェや犬カフェなどが挙げられるでしょう。
装飾やメニューを、学校や、お化け屋敷、学校、レトロというコンセプトを元にしたコンセプト居酒屋やコンセプトレストランも人気ですがこれも付加価値です。
このような飲食店は、登場当初はキワモノ扱いされることもありました。
現在では顧客に支持されて一般的なものとなっています。
普通の居酒屋やレストランに付加価値をプラスして成功した好例と言えるでしょう。
生き残るための対策
飲食業界で生き残るには、上記のQSCや付加価値を意識するのは基本中の基本です。
ただし、それだけではたくさんある繁盛店の中に埋もれてしまいます。
そうならないよう、さまざまな対策を考えなければなりません。
リピーターを意識する
新規客はもちろん大切ですが、生き残るためにはリピーターを増やさなければなりません。顧客に何度も行きたいと思えるお店でなければ、売上は一気に下ることとなるでしょう。
顧客が再び来て欲しいと考えてもらうためには、メニューについても独自性を出さなければなりません。メニューの幅を広くする、あるいは一つのジャンルを極めるという方法もあるでしょう。
ラーメン屋を例にすると、ラーメンだけではなく、定食や、カレー、とんかつなども食べられる定食屋的なお店もあります。
逆に、ラーメンしか出さないという店もあるでしょう。顧客が再び来店するためにはどんなメニューがいいのか、そして、他店にはない、オリジナリティあふれる商品を作り出してください。
立地条件が良いだけでは足りない
立地条件がよいお店は、立地条件が悪いお店より繁盛する可能性は確かにあります。
ただ、それだけでは足りません。
好立地と共にどんな顧客が来店するのかも踏まえて考えなければならないのです。
極端な例として、学生街に求められるのは安価でお腹いっぱいになれるメニューでしょう。
そのため、高級フレンチレストランを出しても厳しい戦いが待っているはずです。
ビジネスマンが多いエリアなら、すぐに注文した料理が出てぱぱっと食べられる、短時間でパパっと食事を済ませられるお店が支持されます。
立地だけで考えるのではなく、提供する料理に需要があるのかも見極めましょう。
顧客のことをまったく考えていない
美味しい料理を作れば、勝手に顧客は集まると考える人もいるかもしれません。
完全な間違いとは言えませんが、戦略的に考えると失敗したときのリスクが高いことは無視できません。
顧客が自分の店に何を求めているのかを考えてください。
例えば、多くの顧客が「雰囲気の良さ」「落ち着ける店」「地元民の憩いの場」に惹かれて来店していたとします。
顧客が何を求めて来店するのか知らず、売上を伸ばそうと団体割引などのサービスをはじめたとしましょう。
来店する顧客は増えるかもしれませんが、昔なじみの常連客は来なくなる可能性があります。
毎日、団体客の予約が取れるとは限りません。結果、常連客も戻らず、閑古鳥という結果も出てくるのです。
スタッフが働きやすい環境か
スタッフがすぐに辞める店舗環境になっていないかチェックしてください。
辞めてもまたすぐに雇用すればいいと考えるとすぐに限界が来ます。
短期間でスタッフの教育をしなければならない状況となるでしょう。
また、スタッフがいない期間が長くなると自分ひとりで顧客をさばかなければなりません。
心身ともに負担がかかり、休業が多くなる可能性もあります。
スタッフがすぐ辞めるなら、サービス残業や、清潔感がなく、危険ではないかチェックしましょう。
作業も非常に困難なら習得できずに辞めることもあります。パワハラなども注意してください。
まとめ
飲食業界はどこの地域でも非常に激しい競争が繰り広げられている業界です。
だからこそ生き残るための戦略を考えなければなりません。
QSCや付加価値を意識することはもちろん、それ以外にも、立地とお店の相性なども含めて考えてください。
そうすることで、生き残れるお店に一歩近づけるのです。