人件費はいくら必要か
飲食業などの一般的な事業では、人件費はどのくらい必要なのでしょうか?
どの業種でも同じですが、保険や福利厚生費など給与以外にも費用が発生します。
給与や賞与の額面だけでなく、会社が負担するさまざまな費用を知っておきましょう。
給与と賞与は人件費の最たるもの
主な人件費として考えられるのが、給与と賞与です。
時間給で雇うケースもありますが、月給の場合は原則出勤日数にかかわらず一律の賃金を毎月支給します。
賞与は必ず支給されるものではありません。会社の売上や従業員の頑張りに応じて与えられるものです。また、一定時間を超えて働く従業員には有給休暇の付与が義務付けられています。
もし従業員が有給消化を申し出た場合は、実際に勤務していない日も給与が発生するため気をつけましょう。
有給休暇を消化するかどうかは従業員と会社の都合によりますが、有給が年10日以上発生する従業員については、年間5日の取得が義務付けられています。
人件費として有給消化分も考えておきましょう。
法定福利費
法定福利費とは、法律で定められた従業員のための福利費用です。
社会保険や労働保険などは、基準を満たせば加入が義務付けられています。
国民保険や年金と異なり、会社で加入する保険は事業者側が一定の割合を負担することと決まっています。
社会保険
社会保険とは、健康保険と厚生年金の総称です。
月額給与が8万8,000円を超える従業員に加入資格があります。
企業の規模によって義務の範囲は異なりますが、個人事業主かつ従業員が5人以下のケースを除き、フルタイム勤務の従業員は社会保険に加入しなければなりません。
社会保険の加入義務がある従業員を雇っている場合、報酬額に基づいた保険料の半分を会社が負担します。
保険料は従業員の給与に応じて変わり、数千〜数万円が会社負担です。
社会保険には介護保険料も含まれます。
労働保険
会社で加入する保険には雇用保険や労災保険があります。
雇用保険は週20時間以下の短時間労働者は加入が義務付けられていませんが、労災保険は原則100%の従業員が対象です。
雇用保険の会社負担は収入に対して1,000分の6となります。
労災保険は従業員の負担はなく、会社側がすべてを支払う仕組みです。
福利厚生費
人件費には、法律で定められている福利費用以外に、会社独自の福利厚生費も含まれます。
主な福利厚生費には、通勤費や社員同士の交流に使われる費用、各種手当などが挙げられます。
通勤費
法律では定められていませんが、社員の通勤費を負担している企業は数多くあります。
会社が負担した通勤費は一定額まで非課税です。
給与としてもらっているものではないため社員側は実感が薄いですが、経営側は通勤費も人件費の一部として考えておきましょう。
健康診断費用
健康診断の費用は、原則会社が負担します。
会社は従業員が健康に働けるよう、定期的な健康診断の実施が義務付けられています。
特殊な検査は社員の自己負担ですが、国で定められた一般的な健康診断はすべて会社負担です。
医療費とは異なり、健康な人が検査をするときは健康保険が使えません。
最低限の検査でもまとまった金額になると理解しておきましょう。
各種手当金
祝金や見舞金、住宅手当、家族手当などは人件費の一部です。
社内規定で定めていなければ不要ですが、福利厚生が手厚い企業には人材が集まります。
規定で祝金や見舞金を設定している場合、人件費が突然増加することもあります。
家族の不幸などはいつ発生するか時期が読めません。
社員同士の交流費
懇親会や歓迎会など、社内で社員同士がコミュニケーションを取るために使う費用は会社負担です。
すべてを負担する必要はありませんが、人件費の一種と考えておきましょう。
社員旅行や社内のサークル活動費なども人件費の一種です。
制服などの貸与物
制服など貸与が必要なものに関しては、一般的に会社が負担します。
規定によっては社員に負担してもらうケースもありますが、働き始めるにあたって初期費用がかかる職場は労働者に敬遠されがちです。
人材を集めることを考えるのであれば、人件費として組み込んでおくとよいでしょう。
退職金の積立金
従業員に退職金を用意する場合は、会社からの積立分が必要です。
もちろん、退職金は会社の義務ではないため、人件費に余裕がなければ設定する必要はありません。
給与のほかに会社から退職金を出す場合は人件費に組み込んでおきましょう。
金額は決まっていませんが、1,000円単位での積立が一般的です。
まとめ
人件費は給与の額面だけとは限りません。
社会保険に加入義務のある従業員でなくても、労災保険や雇用保険を会社が負担します。
1年に1回行われる健康診断の費用や、通勤費なども人件費としてかかります。福利厚生費などを含めると、給与や賞与の倍額かかることもあるため注意が必要です。
特にフルタイム勤務の場合は社会保険の負担で大幅に人件費が増加します。