先進諸外国に比べ、起業する人が少ない日本。国や地方自治体では、起業・創業時に利用できる数々の補助金・助成金制度を設け、起業家を支援しようとしています。
補助金も助成金も、借り入れではないので返済不要なのがありがたいところ。開業資金の調達にはほとんどの人が苦労するもの。利用しない手はありません。
ただし、補助金や助成金には税金が使われているため、利用するにはいくつもの要件があります。
この記事では、記事執筆時点で利用できる補助金・助成金や、継続的・定期的に実施されている補助金・助成金制度を紹介しま
目次
補助金と助成金、その特徴と2つの違い
補助金や助成金は、国や自治体などが設けている企業などへの支援制度です。主に、起業家を増やすことや雇用機会を増やす、つまり失業者を減らすことなどの目的があります。
補助金と助成金に共通する最大の特徴は、給付されるお金であり、返済の必要がないということ。また、実際に要した費用の補助・助成という性質のため、支給はいわゆる後払いとなるものも多いです。
支給額はかかった費用の全額というわけではなく、3分の2や2分の1など、一部を補助・助成する形のものが多いです。支給にもそれぞれ条件があります。
「違いがわからない」という人も多い補助金と助成金の主な特徴を表にして比べてみましょう。
補助金 | 助成金 | |
管轄 | 経済産業省・地方自治体 | 厚生労働省・地方自治体 |
対象内容 | 各制度にあった取り組みの実施 | 雇用や労働環境の改善に関する取り組みの実施 |
特徴 | ・応募して採択されれば支給 ・募集期間が短い ・採択の倍率が高い | ・定められた要件を満たせば支給 ・申請受付期間が長い ・予算都合での打ち切りあり |
いずれも税金を財源とするため、誰にでも簡単に受け取れるものではありません。
給付の額が大きいのは補助金の方ですが、採択されるのが難しいのも補助金です。また、助成金は補助金に比べれば支給しやすい制度ですが、最近は不正な受給が増えたこともあり審査が厳しくなっています。
なお、予算には限りがあるため、毎年見直しが行われます。
年度が変わり打ち切られる制度もある一方で、長期的に実施されている取り組みも多くあります。
ただし、社会情勢などを見て対象者や要件などは変更されます。
【2022年最新】起業・創業時に使える補助金・助成金
補助金は予算が決まっているため、短期間の公募を複数回にわたって行っています。人気の補助金は毎年公募されています。
助成金は、比較的長い期間で申請を受け付けていますが、予算によって早めに打ち切りになることもあります。
ここでは、起業・創業時に使える、あるいは創業半年以降に使える国からの補助金・助成金の主なものを紹介します。
ただし情報は執筆時点のものですので、申請する際は各助成金の管轄省庁などで最新の情報を確認してください。
また、これ以外にも利用できる補助金・助成金制度が用意されている可能性も十分にあり得ます。国あるいは都道府県・市区町村の公式ウェブサイトをまめにチェックすることをおすすめします。
持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)
「持続化補助金」は、経営不振となるリスクの高い小規模事業者に向けて、販路開拓や生産性の向上などの取り組みにかかった費用を補助する制度です。
具体的には、販促用のウェブサイト広告の制作費や、展示会や見本市などへの参加費用などが該当します。採択されるには、商工会議所などによるサポートを受けた上で綿密な計画を立てて実行し、申請書にも具体的な記入をする必要があります。
受付期間は通年ですが、締切日が都度設けられ、その間の申請分が審査・採択されます。
応募申請については、日本商工会議所または事業所のある地域を管轄する商工会議所の公式サイトなどで情報を確認するか、税理士など専門家に相談してください。
名称に「持続化」とありますが、開業届を出していれば起業して間もない人でも申請可能です。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、正確には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称の補助金制度です。
中小企業や小規模事業者が生産性の向上を図るために行う、試作品の開発や生産工程の改善、新サービスの開発などの設備投資費が補助の対象です。補助率は最大2分の1(小規模事業の場合は3分の2)です。
過去に採択された例では、地域の特産フルーツを密閉冷凍できる急速冷凍機を導入し、販路を全国はもちろん海外にも販路拡大した果樹園、クッキー生地でできたコーヒーカップを開発し、機械の導入で生産量を10倍、インスタ映えで全国に販路を広げたカフェなどがあります。
応募・審査期間は通年ですが、他の補助金同様、期間を区切って応募・申請が締め切られます。執筆時点では、令和4年2月16日に10次の公募が開始され、申請開始日は3月15日、申請締め切りは5月11日のそれぞれ17時となっています。
こちらも、開業届を出している事業主であれば創業して間もない場合も対象となります。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
従業員を雇う場合には、厚生労働省による雇用関連の助成金も対象となり得ます。
高齢者や障害者、母子家庭の母親など、一般的に就職が困難とされている人を雇い入れると、特定求職者雇用開発助成金の支給対象となります。もちろん継続して雇用することが条件で、雇用にはハローワークを経由し、雇用保険の被保険者とする必要もあります。
例えば60歳以上65歳未満の人を1週30時間以上の勤務時間で雇い入れた場合、実際に支払った賃金の額を上限として1人につき60万円(30万円×2回)が支給されます。
助成金の申請は半年ごとに行い、その都度支給される流れです。こちらもすぐに受け取ることはできず、事前にハローワークへの届け出や就業規則の整備などを行う必要があります。
創業後に申請できるようになる補助金・助成金
起業・創業して即、というわけにはいきませんが、確定申告を終えるなどすれば事業資金の調達手段として使える補助金・助成金の制度の一部を紹介します。
こちらも実際にお金を受け取る前には長い期間がかかるものが多いため、創業してすぐ準備を始めるとよいでしょう。
IT導入補助金
「IT導入補助金」とは、中小企業や小規模事業者がその名の通りITツールを導入した場合に、最大2分の1(通常枠)の補助を受けられる制度です。2022年も、4月から公募が始まる予定です。
ただしこの補助金の申請には、賃金を引き上げることや、所得税または法人税の納税証明書を提出することが必要です。必要書類を提出できなければ申請はできないので、事実上、起業してすぐの申請はできません。今後の設備投資にかかる資金調達の1つの候補としておきましょう。
補助金の申請には、まずは商工会議所などに相談した上で導入するITツールやIT導入支援者を選び、書類を作成して申請、審査を経て採択された後、ITツールを導入する流れです。
もちろん、ITツールなら何でもよいわけではなく、自社の経営課題を解決するためにITツールを導入した場合に限られます。例えば、経理作業を自動化するツールの導入、スケジュールや文書の管理などを共有できるグループウェアの導入などが該当します。
キャリアアップ助成金
雇用関連で数多くの企業が活用している助成金の1つ「キャリアアップ助成金」の「正社員コース」は、非正規雇用の従業員を正社員に転換した場合などに助成金が支払われます。
例えば有期雇用の従業員を正規雇用とした場合には1人につき57万円が受け取れます。
転換するまでに6カ月以上継続して勤務している必要があったり、助成金申請の6カ月前までに転換制度を就業規則に定める必要があったりするので、実際に申請ができるのは起業後半年以上経った後です。
省エネ補助金
省エネ補助金は、正式には「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」といいます。工場や事業所の設備を省エネ効果の高い設備やシステムに変更した場合などに補助金が支給されます。
ただし新たに事業を始める新築・新設の事業所に導入する場合は対象となりません。
支給には、まず公募期間中に応募して、交付が決定した後に設備の発注・工事を行うという流れを取る必要があります。
令和3年から12年までの10年間の事業として発表されていますが、各年度で制度の内容が変わります。令和4年度についてはまだ詳細の発表がされていません。必ず最新の公式情報を確認してください。
地方自治体などによる独自の補助金・助成金制度もチェック
国だけでなく、各地方自治体や各地にある中小企業の支援機関でも、独自の補助金・助成金制度を設けていたり、国の補助金や助成金制度にプラスして給付を行っていたりします。中小企業の発展はその地域の発展に直結するため、積極的な支援を行っているのです。
該当地域に制度があるかどうかは、各地方自治体に電話をする、公式サイトを見るなどして確認してみてください。広報紙などでも告知されているので、目を通す習慣づけをしておくとよいでしょう。
ここに、全国で実施されている制度のごく一部を紹介します。こちらも執筆時点での情報であり、制度は新年度が始まる4月に発表されることが多いです。申請の際は必ず最新の公式情報を確認してください。
主催 | 制度名 | 概要 |
東京都 | 創業助成事業 | ・申請期間:令和4年4月11日~20日 ・都内で創業予定の個人または創業間もない中小企業者が対象 ・助成率:3分の2以内 |
長野県宮田村 | 創業支援助成金制度 | ・村内で創業予定の人 ・助成率:2分の1以内 |
石川県能美市 | 創業支援事業補助金 | ・新たに事業を開始する人や新たな事業を開始する個人または会社が対象 ・補助率:2分の1以内 |
高知商工会議所 | 高知市空き店舗活用創業支援制度補助金 | ・対象区域内にある空き店舗での出店を行う人 ・支給額:店舗貸借料金の3分の2または2分の1 |
青字の部分をクリック(タップ)するとから公式ページが開きます。
創業者を支援して地域の発展を目指すという目的は同じでも、制度の内容はそれぞれ異なります。例えば商工会議所による補助金が支給されるには、事前に商工会議所で事業計画の作成支援を受け、作成した事業計画書の審査を受ける必要があります。
上で紹介した高知商工会議所の例では、創業に必要な資金の20%を自己資金でまかなえる人、などの条件もあります。
また、開始する事業についてもそれぞれ異なる条件があり、農業などのほか、風営法にかかる事業、夜のみの営業をする店舗などは対象外となっているケースが多いです。
現在は受付が終了していて掲載できないものでも、春からまた新たに実施される可能性があります。ぜひチェックしてみてください。税理士など専門家との付き合いがあれば、情報も入りやすいでしょう。
まとめ
補助金や助成金は国や自治体が行う支援制度であり、返済不要という大きなメリットがあります。
この記事では主に国による補助金・助成金制度を紹介しましたが、起業家を応援する補助金・助成金は各地方自治体でも行っているところは数多くあります。情報は公式ウェブサイトでも公開されていますので、こまめにチェックすることをおすすめします。
ただし、補助金や助成金には数々の要件があり、相当の準備が必要なものも多いもの。採択や審査通過の可能性を上げるには、専門家の手を借りるのが得策です。
補助金については主に税理士、助成金については社会保険労務士が専門家として頼りになります。当サイトを運営するBrilcks&UKではどちらのご相談にも対応できる総合事務所です。ぜひ一度ご相談ください。