会社を経営していると、取引先の倒産という事態も起こり得るでしょう。
売掛金などがある場合には、回収がほぼ不可能になるため、最悪の場合には連鎖倒産ということになりかねません。
たとえ自分の会社の経営がうまく行っていても、取引先の破綻によって一瞬にして経営が苦しくなってしまうのですから、前もって対策を立てておきたいところです。
この記事では、中小企業の経営者の方に検討していただきたい共済制度や福利厚生について説明します。
目次
中小企業経営者におすすめの公共共済と福利厚生
中小企業を経営するに当たって、経済的に余裕のない立ち上げ当初はともかく、将来的には公共的な共済制度の利用を考えるのがおすすめです。
これは経営を安定させるためにも、従業員らの退職金のためにもなります。
また、福利厚生についても単独では難しい面もありますが、外部団体の協力によって行うことも手段のひとつです。
税金対策について考えれば、借り上げ社宅も検討すべき対象です。
経営安定のために利用したい経営セーフティ共済
経営状況の悪化対策として考えられるのが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の利用です。
これは中小企業基盤整備機構(中小機構)が行っている共済のひとつです。
取引先が破綻した場合、売掛金などが回収できていなければ、その分を融資してくれる制度で、最高8,000万円までを無担保・無保証人で借りることができます。
共済に加入するためには、月々5,000~20万円の掛け金を支払う必要があります。
この掛け金は損金として計上できるので、節税にもつながるというメリットもあります。
また、解約した場合には解約手当金が受け取れます。
任意解約の場合、手当金は12~23カ月なら掛け金の80%、24~29カ月なら85%、30~35 カ月なら90%、36~39 カ月なら95%、40 カ月以上なら100%です。
ただし、取引先が夜逃げをした場合には融資を受けられません。
従業員らのために利用したい中小企業退職金共済
勤労者退職金共済機構が行っている共済のひとつで、従業員の退職金制度として掛け金を積み立てていくものです。
共済に加入している場合、基本的に従業員全員が対象となります。
掛け金は従業員1人につき、5,000円~3万円の間で支払います。
こちらも損金として扱えるため、節税につながります。
従業員が5人で掛け金が1万円なら月に5万円、年間に60万円を損金として計上できます。
ただし、中小企業退職金共済の対象は従業員のみで、経営者をはじめとする役員は対象外です。
このため、経営者の退職金代わりに、小規模企業共済に加入することも検討しましょう。
小規模企業共済は中小機構の共済金で、1,000円~7万円の掛け金を支払うことで、退職時に一時金を受け取れるものです。こちらも損金となりますが、20年以内に任意解約すると元本割れすることに注意が必要です。
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福利厚生は外部団体の協力を検討してみよう
一方、従業員のモチベーションを考えるならば、将来的には福利厚生も検討対象でしょう。
会社は従業員がいないと成り立たちません。
従業員に意欲的に業務に取り組んでもらうためにも、福利厚生の充実化は有効な手段です。
企業単独では難しいのであれば、外部団体の協力によって福利厚生を充実させることも考えてみてはどうでしょう。
一例を挙げれば、全国中小企業勤労者福祉サービスセンター(全福センター)を利用することが考えられます。
全福センターは、中小企業の福利厚生の充実が目的の、厚生労働省の所管公益法人です。
年会費は3万~18万円で、金額は任意ではなく従業員数によって変わってきます。
これは福利厚生費の扱いになりますので、損金として処理することも可能です。
宿泊施設やレジャー施設の割引が受けられるほか、生活習慣病予防検診などの助成も受けられます。
会社にとっては事務負担を増やさず福利厚生を充実させられるというメリットもあります。
節税効果もある借り上げ社宅制度
会社と従業員の節税につながる福利厚生としては、借り上げ社宅制度が考えられます。
会社が民間マンションを借り上げて、従業員に安価で又貸しするものです。
会社にとっては、支払った家賃分を損金として計上できるので、節税につながります。
住宅手当の支給と比較して、社会保険料の支払額が増えないというメリットにもつながります。
従業員にとっても、住宅手当と同額の補助があっても住宅手当が課税対象所得に含まれるのに対し、借り上げ社宅ならばそれがない、というメリットがあります。
福利厚生の充実につながるだけでなく、会社と従業員の双方にとって節税効果があるのです。
将来的と言わず、即座に検討してみてもいいかもしれませんね。
まとめ~会社は従業員がいないと成り立たない~
公共の共済制度は、会社の経営安定や従業員の退職金制度のために必須の検討課題です。
いずれにも、従業員のモチベーションアップにつながる可能性などのメリットがあります。
福利厚生についてはなおさらです。
繰り返しになりますが、会社には従業員がいないと成り立たないので、従業員の満足度を高めることも不可欠だということを忘れないようにしましょう。