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「半沢直樹 第三話」の解説・今後の考察※ネタバレ注意
「半沢直樹」第三話の視聴率は23.2%と、第一話、第二話からさらに伸びました。
ちなみに、第一話は22%、第二話は22.1%でした。第四話ではさらに視聴率を伸ばすのでしょうか?
半沢直樹と言えば癖のあるセリフや気合の入った演技が有名ですが、原作者が元銀行出身だけあって、実は原作の内容も作り込まれているのが特徴と言えます。
意外と中身がないなんて意見もありますが、それはドラマの演出上、分かりやすくするために、金融の専門的な説明を省略しているからです。
原作では小説という「文字」を中心としたメディアなので、もっと細かくいろいろと補足説明があるのですが、ドラマではテロップやナレーション、人物のセリフで表現すると、どうしても冗長で説明的になってしまうため、最低限に留めていると思われます。
でもせっかくなので、多少専門的な内容も理解できていた方が、より楽しめるのではないでしょうか。
逆買収ってなに?
どうして株価が急に上下しているの?
銀行が情報を渡したって何のこと?
と思っている方もいるかもしれないので、話の裏側、前提知識について解説します。
半沢を含む登場人物それぞれの狙いを紐解きましょう。
前回分はこちらから
半沢直樹セカンドシーズン第三話のあらすじ
半沢が在籍している東京セントラル証券と、瀬名が社長の東京スパイラルが正式にアドバイザー契約を締結。
そして、セントラルの親会社である東京中央銀行と全面戦争に突入するフェーズに入りました。
前回ラストで半沢はスパイラルの救済策として、逆買収を宣言しました。
その対象は電脳雑技集団ではなく、なんとフォックスです。
傾きかけているフォックスに買収する価値があるのか?と疑問に思う瀬名。
逆買収するようなお金はないと反論しますが、半沢は資金面では勝ち目がない銀行相手には、こちらは「知恵」で勝負すると言います。
剣道になぞらえ、強大な相手も恐れず攻め続ければ、相手は反撃に出ようとし、そこに隙が生じるはず。その隙を見逃さないことだ。と説かれ、瀬名も闘う意欲を取り戻します。
早速、行動に出た半沢。
まず一撃目として、フォックスが投資失敗で巨額の損失を出しているというニュースをリークしました。
これによりフォックスの株価が急速に下落。
続く二撃目としてスパイラルは、フォックスの公開買い付けによる買収を発表します。
そして三撃目、慌てる郷田に半沢と瀬名が対面し、今回の買収における騙し討ちについて謝罪を要求し、郷田は渋々これに従いました。
ただし、電脳に筋を通し、スパイラルの買収には応じないと拒否します。
そんな郷田に半沢は、電脳の傘下に入ればフォックスのカルチャーは徹底的に塗り替えられるはず。
自分の会社を有名無実にされて、それでいいのか?と問いかけます。
そんな折、セントラルに証券取引等監視委員会が立ち入り検査に入ってきました。
半沢は追求をかわすため、急遽、逆買収計画書をクラウド上の隠し部屋に隠します。
証券取引等監査委員会の統括は、みなさんお待ちかねかはわかりませんが、前作でも人気のあった片岡愛之助演じる黒崎です。
オネエ口調、強気で高圧的な態度といったインパクトのあるキャラクターで前作でも話題になりました。
黒崎はどこからか半沢の逆買収計画を聞きつけていて、その計画書を狙って徹底的に検査します。
パソコンの中はもちろん、シュレッダーのゴミまで漁り、それをその場で復元しようとするほどの力の入れようです。
さらに、セントラルに委員会の検査が入ったことが、すぐさまネットニュースで報道され、その影響で、今度はスパイラルの株価が下落し始めました。
なぜか黒崎は隠し部屋の存在を知っており、簡単に突き止めてしまいますが、パスワードが必要なことを知り「こんなの聞いてないわよ」といきり立ちます。
半沢たちも、これを指をくわえて見ているわけではなく、すぐに瀬名を通して凄腕プログラマーの高坂にファイルの削除を依頼します。もともとこの隠し部屋は高坂が構築したものだったためです。
高坂は、外部からクラウドへの侵入を開始。
パスワードまでは掴んでいなかった黒崎は、解析ツールを使用して、パスワードの突破を試みます。
パスワード解析が進む中、高坂のデータ消去と、黒崎がデータにたどり着くのはどっちが先かというデッドヒートの展開になります。
そして、お約束通り間一髪のところで高坂のデータ消去が先でした。
惜しくも計画書を入手し損なった黒崎は、今度は社長室を調べることにします。
金庫には目もくれずシュレッダーされた計画書の破片を発見し、喜々として復元を開始しました。
半沢はスパイラルにいる森山に連絡を取り、郷田から瀬名へ連絡が無いか確認します。
案の定、郷田から不在着信が残されていました。
半沢によれば、恐らく郷田は電脳から見捨てられ進退極っているはず、逆買収計画の全容が露見し、営業停止になる前に、スパイラルとフォックスの契約を成立させるよう森山に託します。「大切なのは感謝と恩返しだ」という言葉と共に。
ついにシュレッダーにかけられた書類が復元され、フォックス買収のための計画が明らかにされます。
黒崎は半沢に、巨額損失の情報を誰から聞いたのか迫り、情報漏えいの罪を問われることに。
万事休すかと思った瞬間、森山が郷田と共にやってきました。
郷田は巨額損失の情報は、自分からスパイラルとセントラルへ伝えたものであり、一連の流れにはなんら違法性はないと断言。
黒崎は悔しさを露わにしつつも、あっさりと引き上げて行きました。
電脳による買い付けが、過半数に迫る48%に到達していた頃、郷田は緊急記者会見を開き、スパイラルによる買収提案に合意したことを発表。
さらにフォックスの子会社である通販サイト「コペルニクス」とスパイラルの世界最強の検索エンジンが手を組めば、Amazonに匹敵する巨大通販サイトが実現できる!と豪語しました。
これが半沢たちの放つ仕上げの四撃目です。
この発表に、賛同者としてIT業界の超大物ジョン・ハワードが登場し、3億ドルの出資を約束したことにより、スパイラルの株価は反転、一気に高騰を始めました。
最終的に、電脳の買い付け価格を5,000円も上回る値でその日の取引が終了。
寸前で買収は阻止されました。
見事な逆転劇にセントラルの面々は沸き立ちますが、半沢には気になることが残されました。
ひとつは、以前にも浮上していた「なせ電脳はセントラルに買収話を持ちかけたのか?」ということ。
もうひとつは「黒崎があまりにあっさり引き上げたのはなぜか?」ということです。
そんな半沢に渡真利から、電脳へ500億の追加融資の噂が出ていると連絡が入りました。中野渡頭取は融資に慎重な姿勢ですが、三笠副頭取は強引に稟議を通すつもりだと。
ここでキーマンになるのが、なんと大和田です。
平の取締役に降格したものの、未だ頭取派の取締役を束ねる大和田の同意を得れば、稟議は通ってしまうことに。
融資に同意して欲しい三笠副頭取は大和田に協力を要請。
見返りに、近く空席になる予定の常務のポストへの推薦を約束します。
実は、大和田を裏切り三笠副頭取に付いたかに思えた伊佐山の動きは、すべてこのための計略だったことが判明しました。
買収が成功すれば、三笠副頭取は大和田に頭が上がらなくなることでしょう。
打開策を求め半沢は、黒崎たちが散らかしていった社内を見まわします。
すると、なぜか電脳に関する資料だけが、きれいにまとめられていました。
黒崎が隠し部屋を探している間も、委員会は電脳の書類ばかりをチェックしている様子でした。
委員会の本当の狙いは、スパイラルではなく電脳だった?という考えが半沢の脳裏をよぎります。
そして、資料の中から見つけたのは「電脳電設」という、元ゼネラル産業の子会社で、次世代スイッチング技術の特許を保有する会社でした。
しかも以前の代表は、電脳で財務担当をしている玉置(今井朋彦)の父親です。
玉置自身も3年前まで常務を務めていたため、子会社から親会社へ出向という不自然な構図になっていました。
さらに電脳は買収に300億を投じており、ゼネラル産業のメインバンクは東京中央銀行とのことでした。
ここから半沢は、電脳が銀行ではなくセントラルをアドバイザーに選んだ理由は、銀行が関わるとなにか都合の悪いことがあったからだろうと確信します。黒崎が調べたかったのもその事だと。
半沢と森山は電脳の玉置を呼び出しますが、そこに現れたのは電脳の社長と副社長夫妻でした。
「玉置を待っても無駄」と告げる副社長。
半沢たちは果たして勝利できるのか?…というところで第三話は終了します。
黒崎の狙いはなんだったのか?
次に第三話の考察に入ります。
まず視聴者の中で謎として残るのは、黒崎の狙いはなんだったのか?ということでしょう。
実際作中でも、半沢は黒崎の狙いについて疑問を持っています
まず、黒崎の立場がよくわからない方もいるかもしれません。
「証券取引等監視委員会事務局証券検査課統括検査官」などという、とんでもなく長い肩書を一気にまくし立てるシーンも今回ありましたが、黒崎は金融庁の官僚です。
前作では銀行の監査などを担当していましたが、今作ではなぜか半沢の出向に合わせて証券会社の監査担当に変わったようです。
なんだかんだ言いながら半沢のことが好きだから、金融庁内で異動を申し出たのか、運命的なめぐりあわせなのかはよくわかりませんが。
そして、黒崎の狙いがなんだったのかについてですが、まずひとつは、フォックスに対する敵対的買収に不正がないかの調査です。
しかし半沢は別の目的があったと推測し、玉置の父親が経営していた「ゼネラル電設(現:電脳電設)」が関係していると確信しました。
これが第四話以降の見どころになりそうです。
逆買収(パックマンディフェンス)の現実の事例
第三話の時点で、物語のキーとなっているのは、逆買収(パックマンディフェンス)です。
逆買収は、敵対的買収を仕掛けてきた相手に対し、逆に買収を仕掛け返す手法のこと。
ゲームでのパックマンは相手が攻めてきたら逆に食べ返し、敵を倒します。
このことから、パックマンディフェンスと名付けられているようです。
アメリカらしいシャレの利いたネーミングですね。
ただ逆買収は難易度は高いとされます。
なぜなら、強引にでも敵対的買収を仕掛けてくるほどの相手なので、株価が高く資金力を持っている可能性が高いからです。
ただし、国によって法律が異なるため敵対的買収にも違いがあり、日本は法律上、敵対的買収が成功し難くなっています。
相手がどれだけこちらの株式を取得していても、相手の株式の1/4を取得すれば議決権はない、ということになっているからです。
これは、もともと日本の文化的に敵対的買収を良しとしておらず、実際の買収行為も、海外法人が仕掛けてくるケースが多かった事が背景にあります。
簡単に買収されてしまうと、日本の国力にも影響する可能性があるため、買収される側に有利な法律にしておいた方が、得策ということでしょう。
そのため日本の法律では、敵対的買収に対する防衛策が有利になっていると考えられます。
日本の敵対的買収の事例
上記の通り、日本の法律は敵対的買収の防衛側が有利な法律になっていて、なおかつ、文化的に敵対的買収を良しとしません。
そのため、日本では敵対的買収の事例が少ないのです。
もっとも有名な事例としては、2005年に起きた、ライブドアによるニッポン放送に対する敵対的買収でしょう。
このときニッポン放送は、逆買収を仕掛けるという噂は出たのですが、結局実施されず、和解という形になります。
ちなみに今、半沢直樹で行われている敵対的買収も、このライブドアとニッポン放送の事例がモデルになっていると言われています。
ただし半沢の場合、和解なんて選択肢は選ばず、逆買収で徹底抗戦するでしょう。
逆買収のメリット
逆買収は、未然に敵対的買収を防止できる、全株式を取得せずに敵対的買収を阻止できる、といったメリットがあります。
逆買収を実行されると、買収する側は結果的に買収できなくなります。
また逆買収されると予想される場合、リスク回避のため、手を引く可能性も高いでしょう。
また先に説明した通り、逆買収は株式の1/4を取得すればOKです。
経営権を取得するためには、過半数や2/3の取得というのが一般的ですが、買収の防止という点では1/4で良いので、逆買収する側に有利な法律です。
逆買収のデメリット
逆買収のデメリットは、まとまった資金が必要、賛同を得られない可能性がある、相手が非上場会社だと逆買収できない、といったことが挙げられます。
逆買収は1/4で良いとはいえ、資金が必要です。
買収を仕掛けてくるくらいの企業なので、株価が高い可能性が高いでしょう。
次に、株主などから賛同が得られない可能性もあります。
逆買収することで敵対的買収を防ぐことはできますが、資金を失うことになり、これは株主にとってデメリットです。
そして、非上場会社が敵対的買収をしてきた場合、逆買収はできません。
上場していないと株を購入できないからです。
証券会社の実態と東京セントラル証券の違い
セントラルに出向した半沢の動きに対して、第一話から第三話までで視聴者から数々の評判がネットに投稿されています。
中でも、銀行員や証券マンからの投稿が目立っていて、半沢のスタンスと実態が乖離しているという声も少なくはありません。
原作者の池井戸潤氏は元銀行出身であり、また銀行に勤めていたのも、1988年~1995年と昔の話です。
経済状況や法令など、当時と大きく様変わりしている最新の証券会社の実態と乖離するのも無理はないでしょう。
また、多くの方が証券マンに対して持っている疑問として、「そんなに投資を進めるならご自身で買われてはいかがですか?」ということです。
証券マンの言っていることが本当なら、営業をやらないでも自分たちで資産運用したらお金持ちになれます。
セールストークでは、私たちサラリーマンは事業者様ほど資産はないので運用しても知れている、といった話をしていますが、運用を繰り返せばそれでも確実に資産家になれるでしょう。
では、なぜ証券マンは自分で資産運用しないのかというと、法律的な問題だけでなく、単純に会社に指示された商品を売っているだけだからです。
商品を売ることが仕事なので、銘柄がどうなるか、長期的な目線はもちろん短期的な目線もないでしょう。
つまり相場に関しては、完全に素人と言っても過言ではないということです。
かつて大手証券会社3社で勤務した経験のある方が、上記のようなことを言っているので、多くの証券マンに当てはまると見て間違いないでしょう。
つまり、スパイラルのようなITベンチャー企業に対して、証券会社が介入して策を提案し、一緒に戦っていくという構図自体が現実離れしているということです。
逆買収自体は現実にあり得ることですが、それを証券会社が提案したり、証券会社が主導して進めていくことは考えにくいです。
証券会社は、顧客の利益とは関係なく商品を売る存在なので、逆買収を提案してまで銀行と戦うようなことは考えにくいでしょう。
これに関しては、単純にフィクションと割り切って楽しんだ方が良いかと思います。
セキュリティ面の描写が雑
第一話でも、機密書類を飲み屋の机の上に出したり、内部事情などを普通に話していて、異常なまでのセキュリティの甘さが指摘されていました。
第三話でも、コンプライアンスのゆるさは健在です。
・開発会社が機密文書の隠し場所にバックドアを作る
・鉄壁のセキュリティなのにパスワードがたった6文字(しかも英数を混ぜないでアルファベット大文字のみ使用)
・回数制限があるのに、パスワード解析ツールの総当たり式で突破しようとする
・リモートでアクセスできるのにそもそもバックドア仕込む必要ない
などなど、冷静に考えるとかなり適当な設定です。
実は、クラウドへ外部からアクセスしてファイルを削除する、という一連のシーンは、原作にはないドラマオリジナルの展開です。
確かに、現実に即して考えるとかなり稚拙ですが、これも意図的にやっている可能性もあります。
あえて突っ込みどころを残すことで、SNSなどで話題になることを狙っているのかもしれません。
実際、最新話の放送ごとにネット上では、ドラマの話題で持ちきりになっている状況です。
第四話以降も現実離れしたセキュリティ感や、とんでもIT描写で話題を作ってくれることが期待されます。
まとめ
第三話では、敵対的買収の話が現実的になるものの、金融庁の黒崎という強敵が現れました。
とはいえ困難を乗り越えたので、敵対的買収は成功すると予想されます。
半沢直樹といえば登場人物の強烈な演技が有名ですが、金融面では実は現実的に作られています。
しかしコンプライアンスやITといった面ではかなりでたらめな設定で、少し調べれば素人でも明らかに違和感を感じるレベルです。
あえて突っ込みどころを残して、SNSなどで話題になることを狙っている可能性もあるでしょう。
第四話以降もいろいろな意味で話題には事欠かないでしょう。