会計処理上、仕訳がわかりにくい項目がいくつかありますが、自動車の燃料費、いわゆるガソリン代もその一つです。
特に、消費税の課税事業者にとって燃料費の扱いは少し厄介で、知らず知らずのうちに余分な税金を納めてしまうケースもあります。
そこで今回は、燃料費を経費処理する際の項目や考え方、注意点について解説します。
目次
燃料費の仕訳項目に決まりはない
燃料費の仕訳項目には一般的に、車両費、旅費交通費、消耗品費、売上原価、など複数の項目が使われています。
勘定科目に関しては原則、細かな規定がありません。ガソリン代にも、どの勘定科目に仕訳しなくてはいけない、という明確な決まりがないのです。
よほどの違和感がない限りは、どの区分で計上しても勘定科目のみで税務署から指摘されるようなことはないでしょう。
とはいえ一応の目安はあり、車の使用法や使用頻度を基準に判断するのが一般的です。どんなときにどの科目で計上するとよいのか、具体的に見ていきましょう。
車両費として計上するのがベストな場合
車両費とは、その名の通り自動車などの車両にかかるお金です。損害保険料や車検費用、修理費用などが該当します。
ガソリン代を車両費として計上するとよいのは、車両費がそこまで高くない、つまり運送や配送など車両をメインに使うような事業ではない場合です。
車両費にガソリン代を含めることで、車に関する費用をまとめて管理できます。これが車両費の高い場合の場合は、逆に管理がしにくくなってしまいます。
旅費交通費として計上するのがベストな場合
旅費交通費とは、業務で移動した際などに必要となる経費のこと。ガソリン代を旅費交通費として計上するのがベストなのは、車での移動を伴う業務が多い、あるいは移動距離が長い場合です。
社員それぞれの移動状況などを見るには、車両費に含めるよりも旅費交通費として仕訳されている方が管理しやすくなります。
ただし、宿泊や公共交通機関での移動を伴う出張も多い会社の場合は、それらとの区別がつきにくくなるので要注意です。
消耗品費として計上するのがベストな場合
消耗品費とは、文房具や切手、レジ袋など消耗する物を購入した際の費用です。ガソリン代を消耗品費として計上することが多いのは、他の項目で計上するほどの額でないような場合です。
車を使うことが少ないなど、ガソリン代があまり高くなく、また消耗品費もあまりかからない会社にはおすすめです。
売上原価に計上するのがベストな場合
燃料費の勘定科目はそこまで気にする必要はないのですが、売上原価にできるかどうかは事業内容と大きく関係します。
売上原価とは売上に直接的に関係する原材料費のことなので、燃料費が売上原価となるのは当然、車両の利用が事業に直接的に必要な場合に限ります。
例えば、運送会社やタクシー会社などが該当します。
これらの企業は、車両費がそのまま売上原価になっているので、売上原価で計上するのがベストでしょう。
勘定科目を途中で変えるのはNG
燃料費の勘定科目を決める上で注意しておくべきことは、勘定科目を途中で変更してはならない、ということです。
勘定科目を変えてしまうと、管理をする上でわかりにくくなり、税務調査などの際にも説明に困るおそれがあります。
勘定科目は、要した費用をなるべくわかりやすくするために区別するものです。そのため、勘定科目を一度決めたら、それで統一しなくてはなりません。
よほどやむを得ない事情がある場合を除き、変更は避けるのが得策です。どの勘定科目にするのが最適か、自社の事業内容や特徴からあらかじめ判断して決めてください。
軽油の場合は引取税を別で計上する必要がある
「ガソリン代」と一口に言っても、使用する車種によってガソリンの場合と軽油の場合がありますよね。税金の面で見ると、それぞれにかかる税金には違いがあります。
【ガソリン】
- 石油税
- ガソリン税
【軽油】
- 石油税
- 軽油引取税
また、この中で軽油引取税だけ「消費税」がかからないという違いもあります。
これには、ガソリン税と石油税は石油の販売業者が支払う税金で、軽油引取税はガソリンスタンドが納める税金だから、という理由があります。
軽油引取税を石油税や元の軽油の費用と一緒に計上すると、本来は消費税がかからない分まで消費税を納めてしまうことになってしまいます。
ガソリン代だけなら特に税金を気にせず一括で課税仕入れとして計上しても良いですが、軽油の場合は消費税の観点から別で計上する必要があるので注意してください。
まとめ
燃料費を計上する際の勘定科目については、絶対の決まりはありません。事業内容や車両の使用状況などによってどの科目にするかを決めましょう。途中で変えるとわかりにくくなるため、最適な区分けをしておくことが大切です。
しかし、ガソリンと軽油で税金の扱いが違うことには注意が必要です。
軽油引取税には消費税がかからないため、一括で処理してしまうと余分な税金を支払うことになるからです。
勘定科目の決め方や税金についてよくわからない、調べて対処するような時間がとれないという場合は、税理士など信頼できる専門家に相談することをおすすめします。