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売掛金管理とはどのような業務?
売掛金管理とは、ごく簡単にいえば企業が販売した商品の代金回収を担当する業務のことをいいます。
すべての企業は売上を上げるために経営努力をしていますが、その努力が最終的に結実する瞬間が「売掛金の回収」です。
逆にいえば、どれだけ売上がたくさん上がっている企業であっても、売掛金の回収によって投下したリソースを現金化できなければ、安定的に経営を継続していくことはできません。
商品代金の回収が実現しない限り、企業はどれだけ売上高を上げていても現金を得ることができませんから、売掛金管理業務は企業の存続にとって非常に重要な役割を担っているといえます。
売掛金の回収は、いわば経営サイクルの「最後の仕上げ」といえますから、その管理を一任される経理担当者は非常に重い責任を負っているといえるでしょう。
売掛金の管理業務を任せることができる経理スタッフの確保が現実的に難しい場合には、経理代行サービスによって外部の専門家に売掛金管理業務を一任することも一つの選択肢となります。
この記事では、売掛金管理業務の内容について解説するとともに、経理代行サービスを活用するメリットやデメリットについても説明します。
営業部門が顧客から発注を受ける
営業部門が顧客から商品やサービスの発注を受け、商品生産や在庫管理の部門に連絡します。
この時点で営業部門担当者と、得意先との間で商品代金や支払期日などの契約条件が取り決めされます。
商品納入後、あらかじめ定められた契約条件に従って請求書を送付する
商品の納入が完了した後、あらかじめ定められた契約条件に従って、経理部門から請求書を送付します。
単発取引の顧客である場合には商品納入完了後すぐに請求書を送ることもありますが、継続的な取引が前提となっている顧客である場合には、一定の締め切り日を設定して取引を行うことも少なくありません。
その場合には締切日までの売掛金を合算して請求書に表示して送付することになります。
売上と売掛金の計上を行う
多くの企業では請求書の作成送付と前後して、会計上、売上高と売掛金を計上します。
請求書の金額と会計ソフト上の売掛金残高に齟齬が無いよう、月次決算などを通じてこまめにチェックする必要があります。
支払期日に入金を確認して売掛金の消込を行う
請求書に表示した売掛金の入金期日までに、得意先から代金の支払いが行われているかどうかを確認します。
入金があった場合には請求書との照合を行った上で、会計上は売掛金残高の消込を行います。
代金の支払いは現預金で行われるのが普通ですが、小切手や手形の発行などによって行われることもありますので注意しておきましょう。
現預金以外の形で代金を回収した場合には、それらの項目を管理している勘定科目に売掛金残高を振替える処理を行います。
入金がない場合は営業部門と連携して売掛金の回収を行う
万が一、請求書に表示した入金期日までに売掛金の支払いが行われなかった場合には、速やかに営業担当者に連絡するとともに、状況に応じて売掛金回収を進めていく必要があります。
万が一、繰り返し請求を行ったのにもかかわらず代金の支払いが行われない場合には、法的な手続きも視野に入れて売掛金回収の事務を進めていく必要があります。
売掛金管理があいまいだとどのような問題が生じるのか
ここまで見てきた通り、売掛金を管理する業務は、企業のビジネスサイクルを適切に回していくための重要な業務といえます。
以下では、この売掛金管理に関するが業務が適切に行われていない場合に、どのような問題が生じてしまうのかについて見ておきましょう。
得意先との関係維持に与える影響
売掛金の管理とは、簡単にいえば「顧客からまだ受け取っていない代金がいくらあるのかを管理する」ということを意味します。
代金の回収漏れなどは自社に損害を与えることになるため避けなくてはなりませんが、万が一にも誤った代金額を得意先に請求してしまうようなことはあってはなりません。
多くの企業では得意先とは継続的な取引関係になっていますから、誤った代金請求が続くようなことがあっては、取引解除などの原因となってしまいます。
売掛金は現場の営業部門の苦労の結晶であることを理解したうえで、慎重に業務を行うようにしましょう。
不良債権となった売掛金回収の難しさ
一方で、得意先が売掛金の支払に期限通りに応じてこない可能性も考えられます。
最悪のケースでは企業倒産などによって法律上の支払い義務を免れてしまうという可能性もありますので、得意先の信用状況は常に現場担当者などから情報を得ておく必要があるでしょう。
(得意先が自己破産などを選択した場合、売掛金の回収は事実上不可能になりますので、そうなる前に可能な限りの措置を講じなくてはなりません)
具体的には、売掛金管理の担当者が、期日までに売掛金の入金が行われているかを厳密に管理しておく他、約束通りの入金がない場合には、速やかに得意先担当者に督促の連絡を行う必要があります。
さらに、長期間にわたって入金がされていない売掛金に関しては、強制的な債権回収の手段を講じることも選択肢に入れなくてはなりません。
強制的な債権回収の方法としては、具体的には以下のようなことがあげられます。
- 法的な手続きを経て行う支払督促
- 支払督促にも応じてこない場合には強制執行の手続き
- 売掛金の売却(債権譲渡)
また、会計上は回収できなくなった売掛金は、貸し倒れ処理によって損失を計上するとともに、売掛金の残高を消し込む必要があります。
回収不能となった売掛金のことを一般に不良債権と呼びますが、不良債権となってしまった売掛金は現金化が極めて難しくなりますから、売掛金を持っている得意先の信用状況については常に情報を集めておく必要があります。
資金繰りに与える影響
企業が売上を計上して売掛金を生み出すまでには、さまざまなコストがかけられています。
商品やサービスの現物を引き渡していることにとどまらず、取引先の担当者との関係構築を行うための費用など、多くの出費が計上されている場合がほとんどです。
売掛金の回収は、こうしたコストを回収し、現金を受け取って営業サイクルをまわしていくために不可欠です。
万が一、売掛金の回収が予定通りに行えない場合には、企業の資金繰りに大きな影響を与えてしまう可能性があります。
売掛金が不良債権化しないように督促や信用状況の調査を行うことが必要であることは前述したとおりですが、もし回収が不可能であることが判明した場合には、資金繰りに与える影響がどの程度なのか、正しく把握することにも注意を向けなくてはなりません。
経理部門の担当者は、もし売掛金の回収が難しくなった場合には、いつのタイミングで自社のキャッシュ残高が苦しくなるのかを把握し、金融機関との折衝など必要な措置をとる必要があります。
企業の売掛金は金融機関もチェックしている
企業が決算書に計上する売掛金は、会社の財務状況を知るうえで非常に重要な判断材料となります。
新規の取引先や、融資を受ける金融機関が企業情報を精査する際には、売掛金がどのぐらい計上されているか、適切に現金化されているのかといった項目をチェックしている可能性が高いです。
金融機関や取引先が自社の財務状況を精査する際には、決算書から読み取れるさまざまな情報(財務指標など)を判断材料とするのが一般的です。
売掛金の残高が影響を与える財務指標としては、以下のようなものがあります。
売上債権回転率
売上債権回転率(回)=売上高÷(売掛金+受取手形)
「売上高÷(売掛金+受取手形)」で計算し、数値が大きければ大きいほど資金の滞留が少なく良い数値といえます。
流動比率
流動比率=流動資産÷流動負債×100
現預金や売掛金、棚卸資産といった「流動資産」を流動負債で割り算して求める数値です。
短期で支払期日が到来する負債を、短期間で現金化できる資産で賄えているかどうかをチェックする指標ですので、100%を切っていると何らかの形で資金繰り改善が必要と判断できます。
売掛金管理に経理代行を活用するメリットとコスト
ここまで、売掛金業務の重要性について解説いたしましたが、こうした業務を適切に処理するためには、経営財務や債権回収に関する実務知識をもったスタッフを社内に確保することが必須となります。
多くの企業では経理財務部門のスタッフがこうした役割を担っていますが、人材の確保や教育研修に多大なコストが生じてしまうことを問題視している経営者の方も少なくないでしょう。
こうした問題を解決するための1つの方法として、税理士事務所が提供する「経理代行サービス」が注目されています。
以下では、売掛金管理業務について、経理代行の利用によって受けられるサービスの内容について解説いたします。
経理代行サービスで提供される売掛金管理業務の内容
経理代行サービスを利用した場合、以下のような売掛金管理に関する業務を、外部の専門家に一任することが可能です。
- 売掛金のある得意先への請求書作成・送付
- 取引先別の売掛金残高管理表の作成
- 売掛金回収のための連絡
- 売掛金の計上や回収に関連する会計処理
従来の記帳代行では売掛金の会計帳簿上の金額合わせしか行ってもらうことができませんでしたが、経理代行サービスでは、請求書の作成送付や代金の回収に関しても代行を依頼することが可能です。
経理代行を利用した場合の料金相場
経理代行を利用した場合の料金は、月額で10万円程度となるのが相場です。
高額に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、経理代行と全く同じ業務を担当してくれる経理スタッフを雇用した場合と比較した場合には、格安のコストで経理業務を処理できるようになるという前提のもとにコストを検討する必要があるでしょう。
経理代行を利用すれば、売掛金管理業務の他にも以下のような業務を一任することが可能です。
- 手形の管理
- 取引ごとの記帳業務
- 買掛金管理
- 給与計算
- 従業員の立替経費精算や照合
- 固定資産管理
- 現預金管理や出納帳の作成
- 金融機関からの借入金の返済計画表作成
多くのケースでは、経理代行サービスを提供している会計事務所(税理士事務所)と顧問契約を結ぶことにより、決算と税務申告まで含めた会計業務すべてをワンストップで外注化することが可能となります。
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まとめ
今回は、売掛金管理業務の具体的な内容について解説いたしました。
企業があげた売上は、売掛金の回収が実現することによってはじめてキャッシュとして還元されます。
売掛金管理業務は企業がビジネスサイクルを安定的に回していくうえで、決定的に重要な役割を担っているといえるでしょう。
売掛金管理に関する人材の確保にお悩みの方は、本文で紹介した経理代行サービスの活用もぜひ検討してみてください。
経理代行サービスを使えば、新たな人材を雇用するのと比較して、圧倒的に安いコストで専門家による売掛金管理業務を導入することが可能となります。