融資を受けたものの事業がうまくいかず、返済が滞ってしまうケースもあるかもしれません。その場合、いったいどうなるのでしょう。
基本的に、日本政策金融公庫は政府系の公的な金融機関であり、無茶な取り立てをすることはありません。
しかし延滞に対しては厳しく対応しており、取り立てもあります。
今回は、日本政策金融公庫で融資を受けた後、返済を滞らせてしまった場合にどうなるかを解説していきます。
目次
返済が滞ることで起きること
仮に延滞してしまっても、業績を伸ばして最終的にすべて支払えば問題ないだろうと思われるかもしれません。
しかし、そこにはやはり大きなデメリットが生じます。
延滞利息が課される
日本政策金融公庫の融資の返済が滞った場合、延滞利息(遅延損害金)が課されます。
延滞利息の金額は、融資を受けた際の契約書に記載されています。ちなみに公庫の公式サイトによると、令和3年4月~令和4年3月の貸付に対する遅延損害金の割合は年8.80%です。
延滞利息は基本的に通常の利息より高く設定されています。ノンバンクほどでないにしても、滞ればその分返すべき金額が大きくなります。
次の融資で不利になる
融資の返済が滞れば、当然ですが貸し付けた日本政策金融公庫からの評価が悪くなります。
延滞の回数が多いほど不利になり、 次に融資を受けようとしても、審査に通らない可能性が高いです。
特に、連絡もなく延滞した上に音信不通となるようなことは不誠実であり、絶対に避けるべきです。どうしても期日までに返済できない場合には事前に連絡し、返済計画の立て直しを検討する必要があります。
その場合にも前述の損害遅延金が発生するので注意が必要です。
電話で支払いの催促をされる
決められたタイミングで入金の確認ができないと、公庫から電話で返済の催促をされます。
電話では、いつまでに支払いができるかも確認されます。
この際に具体的な返済日を指定できないと、さらに信頼を失うことになってしまいます。
入金の予定があるタイミングで期日を指定するとよいでしょう。
これも当たり前のことですが、返済は早いほど利息が少なくて済み、信頼の低下も最低限に抑えられます。
債権回収会社に委託される可能性がある
暴対法が成立して久しい現在、映画やドラマのような暴力的な取り立てはないはずですが、特にノンバンクで借り入れをした場合には、債権回収会社に債権が売却され厳しく取り立てられた、という話を聞いたことがあるかもしれません。
日本政策金融公庫では、債権の売却(譲渡)を行うことは稀なものの、債権回収業者に業務委託をするケースはあります。
最終的には差し押さえや訴訟に発展することも考えられるので、政府による公的機関だから大丈夫だろうと甘く見るのは禁物です。
最終的には法的措置を取られる
取り立てが続いているのに支払いができない、連絡を無視している、といったことがあると、最終的には法的措置を取られます。
資産を取られることはもちろん、実質的に「倒産状態」となり、事業の継続が難しくなるでしょう。
返済できない場合はどうすれば良い?
仮に何らかの事情で返済ができない、となった場合でも、何か打開できる策はあるのでしょうか。
結論としてはなかなか難しいのが現状です。返済できなくなった場合に考えられる選択肢を見ていきましょう。
任意整理
任意整理とは、裁判などによらず融資元と任意に交渉し、返済条件などを変更してもらうことです。
この場合、融資を受けた日本政策金融公庫あるいは委託された債権回収会社と交渉をすることになります。
ただ、日本政策金融公庫はもともと民間金融機関等より好条件で融資を行っているため、譲歩してもらうことは現実的に難しいと言わざるを得ません。
例えば月々の返済額を減らし、完済までの期間を先延ばししてもらえる程度である可能性が高いです。
しかもこのとき減らした返済額の分は先延ばしになるだけであり、それにより遅延損害金がかかります。結果的に返済額は大きくなってしまうと考えられます。
個人再生
個人再生は、裁判所を介して借りた額(元本)を減らしてもらおうとする手続きです。
減額の幅が大きく、融資を受けた側に有利になる可能性が高いことがメリットと言えます。
また、個人再生には「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」の制度があり、住宅ローンを組んでいる人も家を失うことなく借金の減額がしてもらえる可能性があります。
ただし住宅ローンについては減額されないので、そのまま払い続けなくてはなりません。
自己破産
自己破産は、裁判所に申し立てをして、すべての財産を捨てる代わりに債務を免除してもらうという方法です。
ただし過去7年の間にすでに自己破産手続きをしたことがある場合には、自己破産はできません。
自己破産は効力が大きい分、デメリットもあります。
例えば、一定期間はお金の借入ができなくなる、クレジットカードが使えなくなる、自宅や車を持てない可能性がある、官報に掲載され公表される、といったデメリットがあります。
連帯保証人がいる場合には、自己破産すると連帯保証人に返済請求が行くこととなってしまいます。
自己破産をすると会社が倒産することはもちろん、しばらくは融資を受けることもできないので、新しく会社を立ち上げることもまず不可能でしょう。
ちなみに、融資を受けられない期間は一般的に7~10年程度と言われています。
自宅や自家用車が担保になっている場合、担保権により自宅や自家用車が差し押さえられる可能性も高いです。
日本政策金融公庫で返済に滞ると他からの融資は難しい
日本政策金融公庫は、営利を目的としない政府出資による金融機関であり、無担保・無保証人での融資を行うなど、中小規模の事業者でも比較的お金が借りやすいのが特徴です。
そのため、公庫への返済が滞った人が別の金融機関で融資を受けたいと思っても、お金を貸してはもらえない可能性が高いでしょう。黙っていたとしても、借入の履歴は信用情報機関を使って共有されているためわかります。
任意整理や個人再生、自己破産などの履歴も残ります。そのため日本政策金融公庫だけでなく民間からの信用も得られず、融資を受けるのも困難な状況になってしまいます。
まとめ
日本政策金融公庫から融資を受けたものの返済が滞ってしまった場合、遅延損害金が課されて返済額が増えるほか、今後の融資に不利になります。
「自己破産すれば会社は倒産するものの借金はなくなるから、また借金してやり直せばいい」と安易に考えるのは危険です。延滞などの事実は履歴が一定期間残るので、どの金融機関からも融資を受けられない可能性が高いです。
連帯保証人がいる場合には、その人にも多大な迷惑をかけてしまうことになります。
返済が無理そうだと判断した時点で、すぐに日本政策金融公庫あるいは専門家に相談し、対処法を考えましょう。