介護保険事業は近年は高齢者の増加に伴い、市場規模も急激に拡大しているため新規スタートするニーズのある事業となっています。
しかし、介護保険事業というのは非常に多くのサービスがあるため、それぞれどのようなサービスなのか正確に理解する必要があります。
今回は介護保険事業の理解を深め、新規参入するにあたってのポイントを解説するとともに、介護保険事業の中でも開業しやすい「居宅サービス」の「訪問サービス」を例に、実際に開業を行う際の必要資金についても紹介します。
目次
介護保険事業とは?
介護保険事業の新規スタートを行う前に、まず介護保険事業について解説します。
介護保険事業とはその名前の通り、介護保険が適用されたサービスとなっており、要支援・要介護の認定を受けた「65歳以上の高齢者」と「40歳から64歳までの特定疾患の患者」が対象者となっています。
介護保険事業のサービスは収入に応じて1~3割と自己負担額は変動しますが、基本的には1割の自己負担でサービスを受けることができ、残りの9割は介護保険料と国・自治体が負担しています。
介護保険事業の内容は?
介護保険事業のサービス内容は大きく分けて「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類のサービスに分けることができます。
ここでは上記の3つのサービスの中で、新規スタートを比較的行いやすい「居宅サービス」を中心に解説します。
居宅サービスについて
居宅サービスは、要支援・要介護者の居宅でサービスを受けることができるサービスとなっており、さらに「訪問サービス」「通所サービス」「短期入所サービス」に分けることができます。
下記のそれぞれのサービスと、その詳細について解説します。
訪問サービス
居宅で暮らす要支援・要介護者を訪問して、生活支援と呼ばれる買い物・掃除、食事・排泄などの介護、看護師が訪問して健康管理を行ったり、リハビリ・入浴などのサービスを行います。
訪問介護 | 利用者の居宅にて買い物・掃除、食事・排泄の介助などを行う |
訪問入浴介護 | 利用者の居宅にて移動式浴槽を用いて入浴などを行う |
訪問看護 | 医師の指示のもと利用者の居宅にて医療処置・処置などを行う |
訪問リハビリテーション | 医師の指示のもと利用者の居宅にてリハビリを実施する |
通所サービス
居宅で暮らす要支援・要介護者が施設などに通ってもらい、日中を過ごしてもらうサービスです。
サービスは主に、入浴・食事・看護・リハビリなどを行います。
・通所介護 ・通所リハビリテーション | 施設を利用している者に対して、 入浴・食事・リハビリ・レクリエーションなどを行う。 |
短期入所サービス
要支援・要介護者に一定期間の間、施設に入所してもらい、入浴・食事・排泄、健康管理などの看護、リハビリなどを行います。
・短期入所生活介護 ・短期入所療養介護 | 利用者が短期間の間、施設に宿泊してもらい、 その間に入浴・食事・排泄、リハビリ・レクリエーションなどのサービスを行う。 |
介護市場に新規参入するために押さえておくポイント
上記の介護保険事業の中で「居宅サービス」について詳しく解説しました。
介護保険事業の内容を理解しても実際の介護市場を知らなければ、事業を継続することは難しくなります。
ここでは、実際に介護市場に新規参入する際のポイントについて、下記の3つの視点から解説します。
- 介護市場の規模について
- 介護市場は参入しやすいのか?
- 介護市場の将来の見通し
介護市場の規模について
ご存じのように高齢者の割合は年々増加しています。
2000年時点では65歳以上の高齢者の割合は全人口の17.2%でしたが、この割合が2050年には全人口の35%以上になると予測されています。
それに伴い、介護市場も拡大しており2014年には市場規模が年間で約8兆6000億円だったものの、2020年には約15兆円になります。
これだけ急激に介護市場が拡大しているため、サービスの内容や施設数、人手に関しては常に不足している状況と言えます。
介護市場は参入しやすいのか?
上記で解説したように介護市場は急激な拡大がみられているため、新規参入するチャンスは広がっています。
また、介護保険事業の9割は国民健康保険団体連合会からの支払いになるため、貸し倒れなどになる危険性も少なくなっています。
訪問サービスや通所サービスに関しては、サービスの質が高ければ一般的な事業よりも、リピーターとして繰り返し同じサービスを見込みやすくなります。
介護市場の将来の見通し
ここまで解説したように高齢者の増加などにより、しっかりとしたサービスを行っていれば介護市場の見通しは明るいと予測されます。
しかし、介護市場を行っていくうえで注意しなければいけない点もあります。
介護保険事業サービスの報酬は多くが保険から支払われています。
この介護報酬は、3年に1回の頻度で見直しがされており、近年はその見直しが行われる度に報酬額が減少しています。
このことから、今後は介護保険のみに頼るのではなく、保険外のサービスも併用して事業を運営していくことを考えていなければ、長期的に事業を継続していくことが難しくなってしまう可能性があります。
訪問サービスを立ち上げる際の必要資金
介護保険事業は「居宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3種類に大きく分けることができますが、今回は「居宅サービス」の中でも「訪問サービス」について実際に立ち上げる際の必要資金について解説します。
多くのサービスの中でなぜ訪問サービスを選んだというと、介護保険事業はその施設ごとに決められた人員基準があり、それを達していなければ事業を行うことができません。
もちろん訪問サービスも人員基準はありますが、施設サービスや地域密着型サービスよりも基準が低く、居宅サービスの中でも人員基準を行いやすいため、まず介護保険事業の新規スタートを考えた場合は訪問サービスがおすすめになります。
下記に「訪問サービス」に必要な資金について詳しく解説します。
- 人件費
- 家賃や改装費
- 必要な備品
- 車両代、駐車場代
- 雑費、その他
人件費
上記でも解説したように、介護保険事業を行うためにはそれぞれ人員基準が設けられており、訪問サービスにおいても人員基準が設けられています。
人員基準は開業時には必要なため、開業前から確保し、給与が発生します。
また、サービスを開始しても当初は利用者数が少なかったり、介護報酬の大半である保険分の全額が入るのが2か月後となっているため、人件費は余裕をもって用意する必要があります。
家賃や改装費
開業時には人員基準と同じように、国が決めている事業所の間取りや設備基準を満たしているのか審査されます。
そのため、事業所は申請を行う時点で確保しておく必要があります。
一般的には開業の約2か月前に申請を行うため、それまでに事業所を確保しておく必要があります。
必要な備品
訪問サービスを行うにあたって下記の備品が必要となるため、事前に用意します。
- 事務の机、椅子、ロッカーなど
- 携帯電話、パソコンなどの通信機器
- 筆記用具などの事務用品
車両代、駐車場代
「訪問サービス」を行うにあたって車両などの必要性は高くなるため、用意します。
場合によって複数台必要になる場合もあり、それを停めるための駐車場代も必要になります。
雑費、その他
上記の他にも細かい雑費が必要になります。
- 光熱費
- 電話
- インターネットなどの通信費
- カルテなどの費用
- 広告や名刺などの宣伝費
- 従業員や車両などに対しての保険料
訪問サービスは大規模な事務所が必要としないため、家賃などは大きく負担にはなりませんが、それでも実際に開業するにあたっては多額の費用が必要になります。
今回解説した内容を合計すると、地域によってやや差はあるものの800万円~1,000万円程度の資金が開業するためには必要になります。
まとめ
今回は介護保険事業と新規スタートする際のポイントについて解説しました。
介護市場は高齢者の増加とともに拡大しており、新規介入しやすい事業となっています。
多くの介護保険事業の中でも、居宅サービスの訪問サービスが最も新規スタートしやすいサービスとなっているため、介護保険事業への新規スタートを考えている場合はおすすめのサービスと言えます。