【労使トラブルに注意!】
意外とハイリスク!給与計算の落とし穴

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従業員の基本給をさげるときの注意点

企業経営においては、企業の長期的な存続を図るために、「従業員の基本給を下げる」という選択をせざるを得ないケースもあるでしょう。
一方で、従業員の基本給については法律でルールが決まっている部分がありますから、これに反する形で従業員の基本給を下げてしまうと、最悪の場合には労基署による是正勧告や訴訟のリスクを負うことにもなりかねません。
具体的には、従業員の基本給を下げることは「労働条件の不利益変更」に該当しますから、雇用主側からの一方的な意思表示だけでなく、何らかの形で従業員側の同意が必要である点に注意が必要です。

この記事では、従業員の基本給を下げる場合に確認しておくべき法律上のルールについて解説いたしますので、従業員を雇用している経営者の方はぜひ参考にしてみてください。

最低賃金を下回らないように注意

従業員に支払う賃金は、最低賃金法という法律で定められている「最低賃金」よりも安い金額になってはいけません。

もし最低賃金を下回る賃金額で雇用契約を結んでいる場合は、最低賃金と同額の賃金を定めたものとみなされるほか、雇用主に対して罰則が科せられるケースもありますので注意が必要です(罰金はケースに応じて30万円または50万円以下の金額となります)

なお、最低賃金の金額は事業所がある地域によって異なりますので、事業所を置いている都道府県別に最低賃金を下回らないように注意しておく必要があります。

参考までに、平成30年の都道府県別の最低賃金を一覧にすると以下のようになります。

北海道  835円
青森県  762円
岩手県  762円
宮城県  798円
秋田県  762円
山形県  763円
福島県  772円
茨城県  822円
栃木県  826円
群馬県  809円
埼玉県  898円
千葉県  895円
東京都  985円
神奈川県 983円
富山県  821円
石川県  806円
福井県  803円
新潟県  803円
山梨県  810円
長野県  821円
岐阜県  825円
静岡県  858円
愛知県  898円
三重県  846円
滋賀県  839円
京都府  882円
大阪府  936円
兵庫県  871円
奈良県  811円
和歌山県 803円
鳥取県  762円
島根県  764円
岡山県  807円
広島県  844円
山口県  802円
徳島県  766円
香川県  792円
愛媛県  764円
高知県  762円
福岡県  814円
佐賀県  762円
長崎県  762円
熊本県  762円
大分県  762円
宮崎県  762円
鹿児島県 761円
沖縄県  762円

最低賃金を下回る賃金が許容されるケース

雇用主は、従業員に対してさまざまな名目でお金を渡すケースが考えられます。(結婚祝いや賞与、時間外の割増賃金など)
これらは、臨時的な支払いであるため、最低賃金の計算を行う際の賃金の金額には含めない点に注意が必要です。
最低賃金は、あくまでも従業員に渡す毎月の基本的な賃金をもとに計算することに注意しておきましょう。
最低賃金の計算に含めない諸手当としては、次のようなものがあります。

・臨時に支払われる手当(結婚祝いや慶弔手当など)
・賞与
・残業代や休日出勤、深夜割増賃金などの手当(時間外の割増賃金)
・通勤手当や家族手当など

労働条件の不利益変更には手続きが必要

従業員の基本給を引き下げる際には、上で見た最低賃金を下回る金額にならないよう注意するとともに、労働条件変更にともなうさまざまな手続きが必要となることにも注意しておきましょう。
従業員の基本給引き下げは、労働法上「労働条件の不利益条件」に該当しますから、何らかの形で労働者側の同意が必要となるのです。
具体的には、以下の2つの手続きを行う必要があります。

・従業員から合意を得る(1人1人と合意するか、労働組合と合意する)
・合意した内容に合わせて就業規則を変更しておく

労働者1人1人から個別に同意をとるか、労働組合がある場合には労働協約によって基本給の変更を合意することが考えられます。
また、個別に合意をとったとしても、就業規則上を従来の内容のままで放置してしまうと、「就業規則を下回る労働条件を定めた」という扱いになってしまいます。
(この場合、労働契約法第12条によってせっかく合意した賃金額の変更が無効となります)

労働条件の不利益変更を行う際には、従業員から個別的に合意をとる(あるいは労働組合と合意する)とともに、就業規則の内容を変更しておくことを忘れないようにしましょう。

基本給を下げるときに問題となる法律

従業員の基本給をはじめとする賃金の変更については、雇用主にはさまざまなルールを守る義務があります。
具体的には、次のような点で法律で定められたルールに反してしまわないように注意が必要です。

労働基準法第24条による賃金の一部不払い

労働者の賃金は、毎月1回以上の期間を定めて、全額を直接通貨で払わないといけないというルールがあります。(労働基準法第24条)
そのため、雇用主の側から一方的に「今月のお給料はこれだけ」というように基本給の引き下げを行ったような場合には、上のルールによって「給料の一部不払い」とみなされてしまいます。

基本給の引き下げが必要な場合には、上でも見たように労働者側から個別に合意をとる(あるいは、労働組合との合意を行なう)とともに、就業規則の変更を行っておく必要があります。

労働基準法第91条による減給のルール

従業員がなんらかの業務ミスを行ったことに対する「制裁(ペナルティ)」として基本給から減給を行う場合には、労働基準法第91条というルールに従う必要があります。

例えば、欠勤をした日は給料を払わないというルールを設けている事業所は少なくないと思いますが、法律上は次のルールに従わなくてはなりません。

・①1回あたりの減給額は、1日の平均賃金の50%以下でないといけません
・②減給する総額は、月給の10%以下でないといけません

例えば、月給30万円で1日の平均賃金が1万円の人であれば、欠勤1日につき5000円までしか減給を行うことはできません。
また、②のルールがありますので、1か月に何日欠勤したとしても、最低でも27万円(減給は30万円×10%=3万円まで)の月給は保証しないといけないということになります。

また、こうした制裁的な意味のある減給については、あらかじめ就業規則にルールを定めておかないと適用できない点にも注意が必要です。
就業規則にない内容のペナルティを課した場合、その内容が法律に従った金額の範囲内であったとしても、労働基準法第24条による賃金の不払いとみなされる可能性があります。

基本給の下げすぎによるトラブル事例

上で見たような基本給引き下げの手続き(労働者側の同意を得ることと、就業規則の変更を行うことの2つ)を行わなかった場合、従業員との法的なトラブルが発生する可能性があります。

具体的には、従業員による変更措置の無効確認訴訟が提起される可能性が考えられます。
裁判所が「労働条件の変更には合理的な理由がない」と判断した場合には、雇用主は変更前の賃金を支払う義務を課せられてしまいます。

また、賃金の支払いをめぐって従業員とトラブルになったことがあるという事実は、現在働いてもらっている従業員の士気を大幅に下げることにつながるとともに、新たに従業員採用を行う際の障害となりかねません。
雇用主側は、従業員と賃金支払いに関するトラブルが生じることには大きなリスクがあることを認識したうえで、トラブルを未然に防ぐ努力を怠らないことが大切です。

給与計算や労務に関する事務に負担を感じている経営者の方へ

以上、従業員の基本給を下げる際に注意しておくべき法律のルールについて解説いたしました。
従業員のお給料については、法律上非常に強い保護が与えられていますから、経営者の立場としては、人件費に関するコストを下げる努力を怠らないとともに、法律のルールに反しないよう細心の注意が必要です。

一方で、「労務に関する法律なんて勉強したことがないし、忙しくていちいち細かいルールを調べているひまもない…」と感じてしまった経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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まとめ

今回は、従業員の基本給を下げる際に問題となる法律のルールについて解説いたしました。
本文でも見たように、従業員のお給料については労働法上強い保護が与えられていますので、雇用主側の事情だけで基本給の引き下げに踏み切ってしまうことには大きなリスクがともないます。

給与に関する事柄について変更を行う場合は、労働法のルールを正しく理解するとともに、従業員の同意を得るための努力を怠らないことが必要です。