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いま、経理をアウトソーシングする会社が増えている
経理をアウトソーシングする会社が増えている背景には、経理職の採用コストが高くなっていることも理由のひとつに挙げられます。
最近の転職市場では、全般的に事務職の採用が減っているため、経理職も転職市場に人材が多く、楽に採用ができる傾向にあるのではないか、と思っている経営者の方も多いでしょう。
しかし、実際には経理職は人材難で、それが採用コストの高さにつながっているのが現実です。
なぜ経理職が人材難に陥っているのか
経理職が人材難に陥っている理由としては、以下のようなものが考えられます。
これらの理由から人材難ゆえに、採用コストが上昇しているのが実情です。
- 新たな担い手となる若年層が少ない
- 評価されにくいため辞める人が多い
- 実は専門性の高い仕事で育成が大変
各項目について、以下で詳細を見て行きましょう。
理由1 新たな担い手となる若年層が少ない
少子高齢化の影響で、若年層そのものの数が減少しています。
分母が減っているため、相対的に経理職を志望する若年層の数も減少しており、人材難につながっているのです。
これは、日商簿記検定1級の受験者数を見れば分かります。
2010年11月の検定試験の受験者は2万2008人でしたが、2019年6月は8438人と4割程度になっています。
合格者については2010年11月の受験者が2258人だったのに対し、2019年6月は575人と、ほぼ4分の1にまで減少していることが分かります。
このため、転職市場では「日商簿記3級を持っていれば武器になる」とまで言われている始末です。
かつてはお話にならなかった資格でさえ、武器になるぐらいに人材の絶対数が足りないというわけです。
理由2 評価されにくいため辞める人が多い
経理のような間接部門は、営業のように商品を売って直接的に利益を上げるわけではありませんし、開発のように商品を作ってブランドイメージ向上に役立つわけでもありません。
実際には、会社にとってなくてはならない仕事であるにもかかわらず、営業や開発のように数字に表れる実績が見えにくいため、評価されにくいという不満を持つ人が多いのも実情です。
これが悪い形で出てしまったのは、リーマン・ショック前後の不況時です。
リストラの対象が間接部門であることが多かったため、よけいに「評価されにくい」というイメージがついてしまったのです。
こうした不満が積もり積もって、退職という形につながることは珍しくありません。
こうなるとまた新たな人材をイチから育てなければならず、教育コストが発生することでコストが高くつくことにもなります。
理由3 実は専門性の高い仕事で育成が大変
近年、経理や事務の仕事は人工知能(AI)に置き換えられるのではないかと言われていますが、経理に関してはそうとも言い切れない部分があります。
経理業務は実は専門性が極めて高く、人材の育成が大変だからです。
例えば、税制は毎年のように変化しており、税率もそのたびに変更しています。
消費税のように分離課税が導入され、扱う品によって2種類の計算を行わなければならないケースもあります。
同じことが経費の正当性についても言えます。
経費として申請されているものが、税務署を納得させられるだけの正当性を持っているかどうか判断するためには、専門的な知識や経験則が必要です。
こうした高い専門性を発揮できる人材の数が、必ずしも多くないのです。
仮に専門性を備えた人材を雇用するとなると、相応のコストもかかってしまうというわけですね。
企業がアウトソーシングに頼る理由
こうしたコスト面での問題をクリアするため、企業が経理をアウトソーシングするケースが増えているのです。
以下のようなメリットがあることが理由として考えられます。
- 人材育成のコストがかからない
- 担当者の辞職や不正のリスクを考えなくてすむ
人材育成のコストがかからない
アウトソーシング業者は、税制などについて常に最新の知識を持っているため、最初から高い専門性を持った人材に、確実に依頼することができるのです。
コストそのものは、短期的には経理職の社員を雇用するよりは、高くつく可能性もあります。
しかし、経理職としてレベルアップするためには社員の育成が必要ですし、給与はじめ雇用を維持するためのランニングコストもかかります。
結果として、経理職を雇った方が高くつくと判断すれば、長期的に見れば安いコストで専門性を持った個人や組織にアウトソーシングする方がリーズナブルだと判断するケースもあるでしょう。
ただ、自社で人材を育てないわけですから、将来的に経理のノウハウが社内になくなってしまうというデメリットもあります。
コストをとるか、人材育成を取るかは、判断が難しいところです。
担当者の辞職や不正のリスクを考えなくてすむ
上述のように、経理の仕事は評価されにくく、いきなり辞めてしまうケースがあります。
また、専門性が高いことを逆手に取り、不正を行うリスクもゼロではありません。
もちろん、そのような事態は起きてほしくないですし、そのための社員教育も行っているでしょう。
しかし、リスクをゼロにすることはできないのです。
それならば、いっそアウトソーシングしてしまえば、契約が続く限り安定的に経理業務を行ってくれます。
お金を払って契約しているうえに信用問題もあるので、不正のリスクもほぼ解消できます。
まとめ
アウトソーシングには自前の人材が育たないなどのデメリットもありますが、そうした問題は承知のうえで、安価かつ安全なアウトソーシングを選ぶ会社が増えているというわけです。
人手不足に悩む企業が増えている一方で、人材確保には多くのコストがかかりますから、外部のサービスを上手に活用することも一つの選択肢です。
コストの増加をさけつつ、経理業務を効率的に処理していく方法として経理代行サービスを使うこともぜひ検討してみてください。