会社の本店所在地は、定款に必ず記載しなければならない事項であり、本店所在地のない会社は存在しません。
本店所在地とは、会社の本拠地として登記する住所のことです。営業する場所が別の住所だとしても問題はありません。
自宅でもレンタルオフィスでも可能ではありますが、メリット・デメリットを把握して決めることをおすすめします。
今回は、本店所在地についての決まりや注意点について見ていきましょう。
目次
本店所在地はどこでもOK
基本的に、本店所在地はどこでも問題ありません。ただしもちろん、物理的にオフィスとして使用できない場所や事業を行うことを禁じられた場所ではNGですし、郵便物を受け取れない場所もNGです。
それ以外、たとえば自宅で作業しているなら、自宅を本店所在地にしてもかまいません。
また、本店所在地で事業活動をしなくてはならないわけでもありません。
バーチャルオフィスのような住所だけを借りて、それを本店所在地として登録することもできます。
定款への記載方法
定款に本店所在地を記載するときは、必ずしも住所をすべて厳密に記載しなければならないわけではありません。
会社の場所が移動する可能性もありますので、なるべくざっくり書いておけば近場の移動であれば定款を変更せずに済みます。そこで、以下2つの方法が用意されています。
- 独立の最小行政区画まで記載する
- 番地まで記載する
いずれにしても、建物内のどこにあるのかまでは記載しません。
具体的な記載例を挙げると次のようになります。
- 当会社は、本店を東京都新宿区に置く
- 当会社は、本店を東京都新宿区○○町1丁目2番3号に置く
登記申請書への記載方法
登記申請書は定款とは異なり、住所を番地まで記載するルールになっています。
ビル名、部屋番号は記載してもしなくても良いです。
会社の登記簿謄本には、定款ではなく登記申請書に記載した本店所在地が表示されます。
本店所在地の場所によるメリット・デメリット
本店所在地を決めるには、自宅にするか、賃貸オフィスにするか、レンタルオフィスにするか、といった主に3つの選択肢があります。
それぞれのメリット・デメリットを見ておきましょう。
自宅にする場合のメリット・デメリット
本店所在地を自宅にした場合、家賃などの経費が抑えらます。自宅の光熱費、通信費のうち家事按分で一部を経費にできるというメリットがあります。
デメリットは、外部からの信用を得にくい、プライベートな空間を知られてしまう、ということです。
ネットのやり取りだけで完結する業種なら、本店所在地を自宅にしてもそれほど問題はないでしょう。
しかし、オフィスに足を運んでもらう必要のある業種では、本店所在地が自宅だとプライバシーが守れないなどのデメリットがあります。
賃貸オフィスにする場合のメリット・デメリット
小~中規模の会社なら、本店所在地を賃貸オフィスにするのが便利です。お客さんや取引先に足を運んでもらいやすいほか、複数の従業員を雇うこともできます。
個人の住所が知られることもありません。
デメリットは、物件の賃貸借契約にかかる敷金・礼金などの初期費用、家賃や光熱費などの維持費がかかることです。
レンタルオフィスにする場合のメリット・デメリット
レンタルオフィスは賃貸オフィスよりも小規模で、最低限の設備のみが置かれています。賃貸オフィスよりも格安で用意できます。
ただし、自社で専有できるかどうかや、サービス内容、料金などはさまざまです。住所や電話番号だけが使えるバーチャルオフィスもレンタルオフィスの1種です。
コスト削減にはなりますが、注意すべきは運営会社の廃業などで閉鎖されるおそれがあることです。突然サービスが終了してしまうことも。
そうなれば、登記した本店所在地が移動することになり、引っ越しのほか登記変更の手続きなどに手間と費用がかかります。
本店所在地は慎重に決めよう
本店所在地は、法的にどこにすべきか決まりはありません。自宅にした場合、物件取得のためのコストがかからない点や、一部の費用を経費にできる点など、設立当初というタイミングでは大きなメリットがあります。
ただ、自宅の住所を世間にさらすことにもなります。社員やビジネスパートナーがいるなど、少人数で一緒に作業するなら、賃貸のオフィスを利用すべきでしょう。
1人会社などの場合は、レンタルオフィスにするのも1つの方法です。
ただ、本店所在地が営業する場所から遠いなどの場合、地元地域からの支援が受けられないなどの不都合が起きる恐れもあります。
どこでもいいなら、と適当に決めず、自社の業種や状況に合わせて最適な選択肢を選んでください。