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取締役会は株式会社の業務執行決定機関
「取締役会」とは、株式会社において業務執行を決めるための重要な機関です。
会社の方向性は、基本的に取締役会によって決められている、といっても過言ではありません。
起業直後のような規模が小さいときは必要なくても、事業を拡大していく過程で株式会社化すれば、取締役会が必要となるケースもありますので、将来に備えて、知っておいて損はないと言えるでしょう。
取締役会とはどのようなものなのか
取締役は、かつては株式会社においては設置が必須とされていましたが、現在の会社法においては設置は必須ではないので、株式会社でありながら設置していない企業も存在します。
ただし、取締役会の設置が義務付けられているケースもあります。
上場した場合などがそうで、設置義務があるケースについては、会社法327条1項によって定められています。
取締役を設置する場合、取締役は3人以上がいなければならないと、会社法331条5項によって定められています。
招集は取締役が行い、決議は過半数の出席と、過半数の賛成が必要となります。
また、取締役会の設置に当たっては、一部の例外を除いて監査役を置かなければならないことが、会社法327条1項によって定められています。
ちなみに、会社法の規定などによって取締役会を新たに設置する場合には、定款の変更が必要となります。
これは会社法911条3項15号と、915条1項によって定められています。
また、代表取締役は3ヶ月に1回以上の割合で取締役会への報告が必要と、会社法363条2項によって定められています。
つまり、最低でも年に4回は取締役会を開く必要があります。
取締役会では何ができるのか
取締役会には法律で定められている専決事項があり、以下については取締役会でなければ決定することができなくなっています。
- 重要な財産の処分や譲り受け
- 多額の借財
- 支配人など重要な使用人の選任と解任
- 支店など重要な組織の設置、変更、廃止
- 募集社債発行の決定
- 業務の適正を確保するための体制の整備
- 取締役の任務懈怠責任の免除の承認
このうち、多額の借財については、大規模な設備投資に伴うものが考えられます。
重要な組織の設置や廃止は、事業拡大後に開設した支店の統廃合などが想定されています。
これ以外にも株式分割や新株予約権の消却など、連結決算書類の承認、中間配当の決定なども、会社法によって取締役会の決議事項だとされています。
こうしてみると、取締役会の決議事項が予想以上に多いことが分かります。
業務執行を決め、会社の方向性を定めるための業務は、こんなにたくさんあるというわけです。
取締役会を設置するメリットは?
取締役会設置のメリットとして真っ先に挙げられるのが、会社としての意思決定が早くなることです。
株式会社の最高意思決定機関としては株主総会がありますが、問題は開かれる回数です。
株主総会の場合、定期的に開かれるものは年1回。
これに対して、取締役会は年4回以上の開会が義務付けられています。
株主総会のように意思決定の機会が年1回では、お世辞にもスムーズとは言えません。
取締役会のように年4回以上なら、株主総会と比較すれば意思決定がスピーディーに行えるのです。
取締役会の設置によって、対外的な信用度が高まることも、メリットと言っていいでしょう。
金融機関からの融資が受けられやすくなり、事業拡大しやすくなるからです。
一般的な取引においても、対外的な信用度は重要です。
信用度が低いと高額な掛取引は認めてもらえませんが、信用度が高いと可能になるということもあるでしょう。
取締役会を設置するデメリットは?
取締役会設置のデメリットのひとつは、金銭的な負担が増えることです。
取締役会を設置するためには取締役が3人以上必要ですし、一部の例外を除いて監査役を置かなければなりません。
取締役や監査役には、一定の報酬を出す必要があります。
この報酬が、取締役の増加や監査役の任命などによって増える可能性が高いのです。
株主総会の権限が小さくなることも、株主側から見るとデメリットと言えます。
業務執行のための意思決定などは、基本的に取締役会で行われるようになるためです。
取締役会がなければ、出資者である自分たちの権限であったものが、取締役会に委ねられることになるのです。
株主側から見れば、必ずしも喜ばしいものではありません。
株主総会を開く際に、手間が増えるのもデメリットです。
取締役会が設置されていなければ、開会通知は口頭で構いませんが、取締役会が設置されれば書面での通知が必要になるためです。
まとめ~事業拡大を目指すなら取締役設置は必要~
取締役会の設置にはメリットとデメリットの両方があります。
ただ、将来的に事業を拡大していこうと考えるならば、対外的な信用度がアップする取締役会の設置は必要です。
特に、将来的に上場を目指すのであれば、上場する段階で取締役会の設置は義務となります。
将来を見越して、設置を考えておいても損はないでしょう。