
「会社設立(法人化)すると節税できる」という話を聞いたことはありませんか?
確かに、会社設立には様々なメリットがありますが特によく言われるのは節税効果で、その手法は非常に多岐にわたります。
個人事業主の方の中には高額な税金に頭を悩ませていて、法人化による節税に関心がある人も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では会社設立による8つの節税方法について紹介し、合わせて注意すべき会社設立のデメリットについても解説します。
目次
会社設立による8つの節税方法

節税というと税金に関する難しい知識が必要なイメージがありますが、特別な知識がなくても理解できるようわかりやすく解説します。
節税方法.1 役員報酬の計上
法人を設立すると、個人事業主のように稼いだお金がそのまま収入になるのではなく、会社から「役員報酬」という形の報酬を得ます。
このような役員報酬の仕組みによって、「経費の計上」と「給与所得控除」という二つの節税効果が得られるのです。
まず役員報酬は経費として計上することができるので、会社にかかる税負担を減らすことができます。
ただし、経費計上するためには毎月一定額を役員報酬と決めて増額しないこと、また不当に高額の役員報酬を設定しないことなどの条件を守らなければなりません。
もう一つの給与所得控除とは、会社員に対して一定額の経費計上を認めるための制度です。
個人事業主は給与所得控除を受けることはできませんが、法人化して自身が役員報酬を得ることで給与所得控除が受けられるようになります。
このように、法人化によって経費の計上と給与所得控除という2つの節税対策ができるので、役員報酬を上手く使うことで節税対策に活かすことができるのです。
節税方法.2 家族や親族への役員報酬支払い
法人化することで所得を家族や親族への役員報酬として分配することができ、税率面での節税効果が得られます。
所得税には累進課税制度が採用されており、所得が多い人ほど課税される割合も高くなります。
そのため役員報酬を社長一人に対して支払うのではなく、あえて家族や配偶者などの親族にも振り分けることで一人ひとりの報酬額を下げ、税率を減らすことができるのです。
所得税の基本的な考え方として、個人事業主の場合は家族を一体として捉えるため、「家族に給与を支払う」という考え方はしません。
そのため、役員報酬の支払を家族や親族に振り分けて税率を下げることができるのは、法人ならではのメリットです。
ただし個人事業主の場合でも青色申告で「青色事業専従者給与」の制度を使えば、家族への給与を経費として計上することはできます。
家族への給与を青色事業専従者給与として扱うためには、以下のような条件を満たす必要があります。
- 「生計を一にする配偶者、その他の親族」であること
- その年の12月31日時点で「15才以上」の家族であること
- その事業に「年間6ヶ月を超えて」専従していること
役員報酬のように税率を下げる効果があるわけではありませんが、個人事業主でも青色事業専従者給与によって一定程度の節税効果を得ることはできるのです。
節税方法.3 退職金の支払い
自営業者には退職金という概念がありませんが、法人化して自身が社長などの会社役員になれば会社から退職金を受け取ることができます。
この退職金に関しては給与所得と別の計算方法で課税額が決まるため、退職金を活用して節税対策をすることができるのです。
具体的な計算方法としては、まず勤続年数に応じて「退職所得控除額」を計算します。
- 勤続年数20年以下:40万円×勤続年数(最低80万円)
- 勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
そして上記の計算によって算出された退職所得控除額を収入から引き、その金額をさらに1/2にしたの金額のみが「退職所得」として課税の対象となります。
- 退職所得=(収入-退職所得控除額)×1/2
以上のように、退職金の課税対象となる退職所得には大きな控除が適用されるため、退職金にかかる税金は所得税法上かなり優遇された税率となっています。
法人化するにあたり節税対策をきちんとしたいのであれば、退職金制度はしっかり理解して活用できるようにしましょう。
ただし退職金の金額があまりにも過大であるなど、適正金額から外れている場合には経費として認められないこともあります。
そのため退職給与規程・退職金規定等をきちんと定め、支給金額の根拠をあらかじめ明確にしておきましょう。
節税方法.4 生命保険を活用
サラリーマンにも「生命保険料控除」があるため、所得から生命保険料の支払い額を控除して課税所得を減らすという節税対策ができます。
しかし、個人の生命保険料控除では年間12万円までしか控除が適用されないため、節税効果はそこまで高くありません。
対して、法人が生命保険に加入して保険料を支払うと、支払った保険料の一部もしくは全額を経費として計上することができます。
このように、個人と法人どちらも生命保険に加入することで節税効果が得られますが、法人の場合の方が節税効果は大きくなるのです。
節税方法.5 出張手当を経費にする
個人事業主の場合は事業の利益はすべて事業主のものになるため、事業主本人に出張手当を支払うことはできません。
また、事業主の家族に支払ったお金についても原則として必要経費に算入することができませんが、法人化すれば法人と社員は別個の存在になるので、自分または家族従業員に支払う出張手当を経費に算入することが認められています。
ただし出張手当を経費にするためには、出張旅費規程をきちんと作成して「出張」の定義を明確化しなければなりません。
旅費の種類や支給額、適用範囲なども定め、きちんと規定に基づいて支給するようにしましょう。
節税方法.6 役員社宅を活用
居住用に借りている役員の自宅は役員個人で賃貸借契約をするものなので、通常であれば経費として計上することはできません。
しかし、居住用に借りている役員の自宅を会社が賃貸借契約し、「社宅」という扱いにして役員に貸し付けることで経費に計上することができます。
同様に、社長の自宅を社宅化してその家賃を経費とすることも可能です。
ただし、会社が役員に対して無償に近いような金額で社宅を提供しているといった場合、役員社宅として認められないこともあります。
適切な負担額の目安としてはおおよそ50%程度なので、基本的には家賃の50%程度を経費にできると考えてください。
節税方法.7 赤字を9年繰越できる
個人事業主の場合も赤字を繰越して翌年以降に発生する事業所得と相殺することができますが、その繰越期限は翌年以降3年間と決まっています。
一方、法人の場合には、赤字の繰越控除可能期間が9年間までと非常に長い期間認められているのです。
繰越控除可能期間が短いと、大きな赤字が生じた場合に所得と相殺しきれないかもれません。
しかし繰越期間が長ければ数年先の事業所得まで相殺することができるため、所得との相殺がしやすくなります。
法人化により赤字繰越期間が伸びることで、年度による売上の上下が激しい企業ほど高い節税効果が得られるでしょう。
節税方法.8 消費税の免税期間を活用
消費税は1,000万円以上の売り上げがある個人事業主に対して課されますが、法人化することによって2年間の消費税免除期間ができます。
消費税の課税対象となる売上高は2年前が基準となるため、個人事業主が法人化をした年とその翌年は消費税が発生しません。
そのため、法人化によって2年間の消費税免除期間ができるというわけです。
売上高の大きい会社ほど消費税の金額も高くなるので、法人化することで2年間の消費税免除期間ができるメリットは大きいと言えます。
もっとも消費税の免除には資本金が1,000万円未満であるという条件もあるので、この条件を満たすかどうかはあらかじめチェックしてください。
ここに注意!会社設立のデメリット

会社設立による様々な節税効果を説明しましたが、会社設立にはいくつかのデメリットもあります。
節税対策のために会社設立を検討している方は、ここで紹介するデメリットもきちんとおさえておきましょう。
デメリット.1 設立費用が必要
会社設立には定款認証や登記のための費用がかかります。
ここでは株式会社・合同会社におけるそれぞれにかかる費用と、その内訳について説明します。
株式会社 | 合同会社 | |
定款認証手数料 | 50,000 | – |
定款謄本手数料 | 2,000 | – |
印紙代 | 40,000 | 40,000 |
登録免許税 | 150,000 | 60,000 |
まず株式会社の場合、定款認証手数料が公証人手数料令で50,000円と決まっており、公証人保存用の定款には印紙税40,000円が課税されるため40,000円分の収入印紙が必要です。
加えて定款の謄本手数料として2,000円、株式会社設立の登録免許税は資本金2,000万円を超える企業でなければ一律で150,000円であるため、合計で242,000円となります。
これに対し、合同会社の場合は株式会社のように定款認証手数料がかからないため、登録免許税と印紙代だけがかかります。
また設立登記申請にかかる登録免許税の下限が株式会社よりも低い60,000円となっているので、印紙代と登録免許税を合わせて合計100,000円の費用となります。
会社設立のための費用が必要であり、株式会社の場合には特に設立費用だけでも20万円以上かかってしまうため、この点に関しては会社設立におけるデメリットとして無視できないでしょう。
デメリット.2 法人ならではの税金が発生する
法人化することで、個人事業主のときにはかからなかった各種の税金が発生します。
まずは法人税ですが、こちらは事業活動によって生じた所得に対して課される国税のことです。
法人税に関しては、個人事業主の場合の「所得税」と同じようなものと考えて問題ありません。
次に法人事業税ですが、これは国税である法人税と違って事業活動を行う各地方自治体に納付する地方税です。
法人は事業を行う上で各自治体が整備した道路・施設などの公共サービスを利用するため、その維持費として税金を負担しなければなりません。
また法人は事業所のある地方自治体に対し、法人住民税も支払う必要があります。
法人住民税は個人が負担する住民税と同じ目的の税金であり、事業所のある自治体の公共サービスを利用する対価として課税されるものです。
このように法人化することによって支払義務が発生する税金もあるので、このことも考慮して本当に利益が増えるのかどうかを検討してください。
デメリット.3 社会保険料の負担が増大
個人事業の場合、従業員4人以下だと社会保険に加入する必要がありません。
しかし法人の場合、従業員と会社で折半して社会保険料を支払う仕組みになっており、従業員の数にかかわらず社会保険への加入義務があるのです。
会社の社会保険の負担額は給料支給額の約10%~15%程度が目安となるので、従業員の数や給与支給額が増えるほど会社の負担額は大きくなります。
デメリット.4 各種契約料金が高くなる
個人と法人で契約料金が異なるものがいくつかありますが、たとえば銀行口座がそのひとつです。
一般口座とは異なり、法人口座を開設すると月額基本料が発生します。
料金は金融機関によって異なりますが、最近ではネットバンキングでも法人口座を開設できるところもあり、都市銀行などに比べて安い料金で口座開設できる金融機関が増えています。
またプロバイダー契約についてもセキュリティやサポート体制の点で法人契約をすることが多いのですが、これも個人契約の場合と料金設定が異なります。
このように法人化にともなって各種契約料金が変わることもあるので、この点も頭に入れておきましょう。
まとめ

会社設立することで、個人事業主にはできない様々な節税対策が実践できることを解説しました。
こちらで紹介した節税対策の中から自身の状況に応じて効果が高いものを実践していけば、会社の利益も大きく変わってきます。
ただし会社設立にはこちらで紹介したようなデメリットもあるので、得られるメリットとデメリットをよく比較して法人化を検討しましょう。
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