現在、新車販売がコロナ禍の半導体不足や工場・販売店の休業などで落ち込んでいるのとは対称的に、追い風を受けているのが中古車販売です。
2020年6月の新車の登録台数が前年比74.0%だったのに対し、中古車の登録台数は前年比106.1%と増加。年間で見ても、新車が前年比87.7%のところ中古車は前年比99.7%と、ほぼ変わらない水準です。
((一社)日本自動車販売協会連合会による統計データ)
消費者側も、コロナ禍での「密」を避けた移動手段や地方移住先での足として車に注目しており、中古車販売を始めようとする人にとっても風向きは良くなっています。
中古車販売には、広いスペースに展示車を並べて大々的に展開する店もあれば、車数台分のスペースと小さなプレハブの事務所で販売する店もあり、規模はさまざま。副業として中古車販売を始める人もいます。
本記事では、中古車販売を始めるのに必要・あるいは取っておくとよい許可や、会社設立の流れを見ておきましょう。
目次
中古車販売に必要な資格・許可
これから中古車販売をスタートする場合、必ず取得すべき許可があります。
それは古物商(自動車商)の許可です。
まずはこの古物商許可に関して見ていきましょう。
古物商許可とは
古物商許可とは、誰かが使用した中古品(古物)を売買するために必要な許可です。
中古車も、新車として販売され、使用された後に取引されることから古物に該当します。
そのため中古車販売を始めるならまず古物商の許可をとり、古物営業法に則って営業する必要があります。
自動車を扱う場合は、古物商の中でも「自動車商」と呼ばれます。
許可を取得せず営業をしてしまうと、無許可営業のペナルティとして「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。
古物商の申請
古物商許可は、都道府県の公安委員会の管轄ですが、申請の窓口は警察署です。店舗を設けるならその営業所の所在地エリアの警察署に申請します。
店舗がない場合は、事業主の自宅を営業所として住所を管轄する警察署に申請を行います。
営業所には、「管理者」を1人置く必要があります。
管理者といっても特に資格や講習受講などの義務はありません。しかし、中古車販売なら中古車に関する知識や販売など取引の知識は必要です。
警察署から何か聞かれた場合には、管理者として答えられなくてはなりません。
なお許可の申請には、19,000円の手数料がかかります。手数料は不許可となっても返却されません。
申請後、「古物商許可証」が交付されるまでには1〜2カ月程度の期間がかかります。
開業スケジュールに合わせて早めに申請するようにしてください。
ちなみに古物商は、個人で開業するなら個人名義、会社としてなら法人名義で申請する必要があります。
個人で開業し、そのあと法人化した際には、改めて法人で自動車商の許可を得る必要があるのです。
こんな人には古物商許可が下りない
古物商許可の申請自体は誰にでも可能です。
しかし、必ずしも許可が下りるわけではありません。というのも、古物商許可の制度には盗品の流通などの犯罪を防ぐ目的があるからです。
古物営業法では、第4条に古物商許可を受けられない「欠格事由」が11項目設けられています。
一部を紹介します。
- 破産手続きの決定を受け、復権していない人
- 禁固刑または一定の犯罪による罰金刑を受け、執行後5年が経っていない人
- 住居不定の人
- 暴力団対策法により公安委員会から何らの命令や指示を受け、3年を経過していない人
申請時には、これらの「欠格事由」に該当しないことの「誓約書」を書く必要もあります。
自動車は単価が高いことから盗難件数も多く、2020年の自動車盗難件数は認知されているだけで5,210件にのぼり、そのため、自動車商の許可も「衣類」や「書籍」などでの許可より審査が厳しい傾向です。
申請の際にも、盗難車の見分け方を知っているかどうか、これまでに中古車販売に携わった経験があるか、などの質問をされる可能性が高いです。
官公署への許認可業務は原則、行政書士しかできない法定独占業務。
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中古車販売業に役立つ登録・認証・手続き
古物商(自動車商)の許可さえ取れれば、法律上は中古車販売業をスタートできます。
とはいえ、現実的には古物商許可だけで事業を成り立たせるのはむずかしいかもしれません。
ここでは中古車販売業を営むにあたって、持っていると必要な許可や資格を解説します。
該当する事業を無許可で行うと、ペナルティが科されるので要注意です。
廃車を引き取る「自動車引取業登録」
「中古車を買いたい」とやってきたお客さんから、「もう乗らない車を引き取って欲しい(下取り)」と言われることもあるでしょう。
あるいは、廃車になった車を引き取って、使える部品だけを取り出して販売したいケースも考えられます。
こういったケースで必要になるのが「自動車引取業登録」です。
自動車引取業登録の申請先は各都道府県です。
登録申請手数料として4,000円を納付します。自動車引取業登録には5年という有効期限があります。
ちなみに自動車引取業登録を受けた後、自動車の所有者からの引き取り依頼があった場合には、正当な理由がない限り断ることができません(自動車リサイクル法第9条)。
フロンを回収する「フロン類回収業者登録」
車のエアコンには、フロンが含まれていることもあります。
このフロンを回収するには、フロン回収業者として都道府県の許可を受ける必要があります。
自分のところで登録していなければ回収業者に依頼する必要があるので、仕入れコストや整備コストが余分にかかります。
この登録も5年の有効期限があるので、更新のタイミングに気を付けなくてはいけません。
解体や部品取りを行う「自動車分解整備事業」の認証
車を分解して整備を行うには、「自動車分解整備事業」の認証を受けておく必要もあります。
タイヤ交換やオイル交換などでは認証がなくても可能です。
しかしエンジンなど高度な技術が必要な措置を行うには、分解整備事業の認証が不可欠となります。
認証を得るには、作業員の中に国家資格を持った整備士がいること、室内作業場として十分な広さの施設があること、指定の点検・整備用機器を保有していることが必要です。
それぞれに細かな条件があるので確認しておいてください。
自動車分解整備事業の認証は、管轄の地方運輸局に申請書を提出し、運輸局での審査後に決定されます。
認証までの期間は、約30日程度です。
車検切れ・抹消登録済の車で走行する「回送運行許可」
車検が切れた車や抹消登録済の車で公道を走ることは法令違反です。
しかし車の引き取りや店舗間の移動などで、ナンバーがない車を運転せざるを得ない状況になることもあるでしょう。
その際に役立つのが、「回送運行許可」です。
「ディーラーナンバー」とも呼ばれ、赤枠のナンバープレートが発行されます。
これはいわゆる「仮ナンバー(斜線ナンバー)」とは異なり、自動車の製造・販売や分解整備、運送を行う事業者などに限り受けられるものです。
ただし、ディーラーナンバーを受けるには、中古車販売事業者であることのほか、月平均の販売実績が12両以上あることが条件となっています。
事業がある程度の規模に成長してからの取得となるでしょう。
ちなみに、回送運行許可の申請先は管轄の地方運輸局です。
まず「回送運行許可書」を交付してもらい、そのあと「回送運行許可証」と「回送運行許可番号標(ディーラーナンバー)」を申請します。
ディーラーナンバーを受ける際には、自賠責保険に加入済であることが必須です。
信頼度が高まる「中古自動車販売士」資格
(一社)日本中古自動車販売協会連合会(通称「JU」)では、「中古自動車販売士」という資格制度を設けています。
中古車を購入する消費者に安心感を持ってもらうため、販売員として必要な知識や技術を保証する目的としており、知識の証明となるものが欲しい場合は、こういった資格を取るのも1つの方法です。
自動車整備士のような国家資格ではありませんが、わかりやすい名称なので名刺などに記載すれば信頼性のアップにつながるでしょう。
もちろん、販売員としての自身のスキルアップあるいはスキルの確認にも役立ちますし、接客などを学べば集客にも効果が期待できます。
研修の受講と受験に15,000円~25,000円(会員か非会員かで異なる)の費用が必要です。
難易度の高い資格というよりは、中古車販売に携わる者としての基礎的な内容なので、経験不足や知識不足を感じている人向けかもしれません。
自動車公正取引協議会会員店またはJU会員販売店に所属し、1年以上の経験がある人が対象です。
各種オートオークションの入会登録
「オートオークション」とは、文字通り中古車を売り買いする市場です。
中古車の販売業者や買取業者など、「自動車商」でなければ参加できません。
規模の大きなものには「USSオートオークション」などがあり、全国でオークションを開催しています。
中古車を販売するなら、有力な仕入れ先としてオートオークションへの入会もなるべく早めに済ませておきたいところです。
ただし、オークションへの参加には自動車商であるだけでなく「古物商許可の取得から原則1年以上」などオークションごとの参加条件もあります。
条件に合わず登録が難しいなら、オートオークションの代行業者に依頼する方法もあります。
ただしその場合は、代行手数料が仕入れコストに上乗せされることも覚悟しなくてはなりません。
自動車保険の代理店登録
新車・中古車を問わず、自動車を販売する店では損害保険の代理店となっているところも多いです。
代理店手数料として収入源ができるだけでなく、購入と同時に保険の手続きができるのはお客さんにとっても楽でしょう。
しかし、保険の代理店になるには損害保険協会による試験に合格することなどの条件があり、簡単になれるわけではありません。
また、自動車保険に関しては、契約ミスや事故トラブルなどもよくあります。
加入時だけの対応でなく事故時など揉めたときの対応も必要となってくるので、保険の知識は確実に持っておく必要があります。
中古車販売会社を設立するには
個人でスタートし、事業が軌道に乗れば、法人化も視野に入ってくるでしょう。
特に中古車販売は商品単価も大きいため、売上規模が一気に拡大することも珍しくありません。
個人の開業は開業届を出すだけでできますが、法人の立ち上げには会社法に基づく手続きが必要です。
この章では、会社設立のための法的な手続きの流れなどを見ておきましょう。
中古車販売の会社設立に必要な手続き
新たな会社を設立するには、次のような流れで手続きをする必要があります。
STEP.1 会社の基本情報を決める
STEP.2 定款を作成し、公証人の認証を受ける
STEP.3 資本金の払い込みを行う
STEP.4 法務局に提出する登記書類を作成する
STEP.5 登記書類の申請を行い、設立登記を完了する
会社の基本情報を文書化したものが「定款」です。
定款は、たとえ自分1人の会社でも作成しなくてはなりません。この定款を作成し、公証役場で公証人に認証してもらいます。
さらに「登記書類」を作成して、法務局に提出すれば会社設立は完了です。
この流れは株式会社として立ち上げる際のもので、「合同会社」にする場合には定款の認証を省くことができます。
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会社設立直後に行う手続き
登記が済めば、「会社」という公的な存在になります。
ただしそれで手続き関係はすべて終わりではなく、税金や保険などの手続きも必要です。
主に必要となるのは次の3つの手続きです。
- 税金関係の手続き
- 社会保険への加入手続き
- 法人名義の銀行口座の開設
会社として事業を始めたら、税務署に「法人設立届出書」を提出する必要があります。
また、事業を行う地域に法人住民税や法人事業税といった税金を納める義務も発生するため、税務署や役所にも法人設立の届出を出さなくてはいけません。
社会保険とは、健康保険や厚生年金のこと。1人だけの会社でも加入が必要です。
また、従業員を雇う場合には労働保険(雇用保険・労災保険)にも加入させなくてはなりません。
なお、これは義務や強制ではありませんが、会社名義の銀行口座を開設しておくとよいでしょう。
会社を設立すると、会社の名義で口座を開設できるようになります。
個人名義の銀行口座との区別・管理がしやすいほか、社会的な信用度も高まります。
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税金や社会保険に関する手続きは会社の状況(規模など)によっても異なるため、迷ったら専門家に相談することもおすすめです。
まとめ
個人で中古車販売業を開業するのに必要な許認可は古物商許可だけです。
しかし現実的には古物商許可だけで中古車販売店を営業しているところは少なく、「自動車引取業登録」や「フロン類回収業者登録」などの手続きも済ませ、廃車の引き取りや整備などを行っているところがほとんどです。
コロナ禍が中古車販売に味方しているとはいえ、誰でもすぐに儲かる商売というわけではありません。
なるべく多くの関連業務が行えるよう、資格や許認可などを取っておくことをおすすめします。
各種登録や許認可の取得には、それぞれ詳細な要件もあります。
わからない点は運輸局などの管轄機関や専門家に相談してみてください。
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