日本で会社を設立しようと考えているのは、日本人だけとは限りません。
実際、最近では外国籍の方が日本国内で会社を設立するケースも多く見受けられます。
外国人が日本国内で会社設立する際に、必要な書類や手続きなどは基本的に日本人と同じですが、印鑑登録の有無や在留資格の種類などによって異なる部分もあります。
また、会社設立には日本の銀行の口座や特定の在留資格が必須です。
近年は外国人による口座開設後に連絡が取れなくなったり、犯罪に利用されたりといった事例が多く、審査もより厳しくなっているので注意が必要です。
本記事では、外国人が日本で会社を設立する際のポイントや注意点、手続きの流れを解説します。
目次
日本の外国人起業家数が増加中!
日本国内で起業する外国人の数は増加傾向にあります。
実際、事業の経営管理に携わるための在留資格である「経営・管理」の認定証明書が交付された数は、2015年には1,883件であったのに対し、2021年には2,568件にまで増加しています。
さらに、「永住者」や「日本人の配偶者」といった在留資格をもつ外国人が起業するケースもあり、多くの外国人が日本で経営者として活躍していると考えられます。
【参考資料】
※出入国在留管理庁:出入国管理統計統計表データより
外国人が会社設立する際、日本人と異なる点
外国人が日本で会社設立する際の手続きは、日本人と基本的に変わりません。
基礎となる定款を作成し、株式会社であれば交渉人の認証を受け、法務局で会社設立のための商業登記を行います。
しかし、外国人ならではの条件もあるので注意が必要です。
1.法務局への提出書類に日本語訳が必要
商業登記の申請書に、外国語で記載された書類を添えて法務局へ提出する場合は、その書面に日本語訳をつけなければなりません(登記や証明に不要な部分の日本語訳など一部省略可)。
また、日本語に訳した箇所には、翻訳者の氏名・押印・翻訳した旨を記載する必要があります。
2.印鑑証明か、代わりになるサイン証明書が必要
会社設立時には印鑑証明書が必要なため、発起人や取締役は実印を用意し印鑑登録をする必要があります。
しかし、印鑑になじみがなく、印鑑証明をもっていない外国人も少なくありません。
印鑑証明書がない場合は、サインが本人のものであることを証明する「サイン証明書」が必要になります。
3.場合により「経営・管理」ビザの取得が必要
「経営・管理」ビザは、事業の経営や管理に従事する活動が認められた在留資格です。
永住者やその配偶者、日本人の配偶者などの活動制限のない在留資格を持つ外国人は、原則、自由に会社設立することができます。
対して、それらの在留資格を持たない場合、会社設立には「経営・管理」ビザがなければいけません。
また、一部の自治体では外国人の創業促進のためにスタートアップビザ(外国人創業活動促進事業)を認める動きもあります。
4.日本の銀行法に規定する銀行の口座が必要
会社設立には、資本金の振り込みなどに使用する口座の開設も必要です。
口座は日本の銀行法にもとづく銀行のものでなくてはなりませんが、日本の銀行であれば海外支店でも問題ありません。
在留資格(ビザ)の種類に注意
外国人が日本で会社設立する際、在留資格(ビザ)の種類が関係してきます。
次のような人、あるいは在留資格を持つ人はすぐにでも会社設立の手続きが可能です。
【会社設立できる在留資格】日本人の配偶者等、定住者、永住者、永住者の配偶者等、経営・管理
永住者には無期限の在留期間が認められます。
それ以外の在留資格には5年・3年・1年・6月などの在留期間がありますが、基本的には日本での居住が認められ、活動に制限がありません。
「経営・管理」は日本で事業経営・管理活動ができるという資格です。
株式会社の代表取締役や合同会社の代表社員などがこれに該当します。また、上場企業、中堅企業などの場合、代表取締役だけでなく、取締役、監査役、部長、工場長、支店長なども、「経営・管理」ビザが必要とされます。
なお、次のような在留資格の場合は日本での活動に制限があるため、そのままで会社設立をすることはできません。
これらは別途「経営・管理ビザ」への変更の手続きが必要です。
【会社設立できない在留資格】技術・人文知識・国際業務、技能、家族滞在、留学など
機械工学等の技術者や通訳などに発行される「技術・人文知識・国際業務」ビザ、外国料理の調理師や航空機の操縦者に与えられる「技能」ビザなどは、その特定の職業で働くことのみが許される在留資格です。
家族滞在ビザや留学ビザはそもそも就労が認められていないため、日本で働くことができません。
経営・管理ビザを取得するには?
経営・管理ビザを取得するためには、主に次の3つの要件を満たす必要があります。
いずれも、日本で実際に事業を継続するため、つまり適正な目的のための在留かどうかを確認するための要件です。
要件.1 事業所が確保されている
日本国内に、事業用の事務所や店舗を用意する必要があります。
その際、賃貸借契約は使用目的を「事業用」として法人名義で結ばなければならず、住居用とは厳密に区別されている必要があり自宅マンションでの開業やマンスリーマンションなどは認められません(戸建てで事務所と住居のスペースが明確に分かれていれば認められる可能性あり)。
独立した個室を持たないバーチャルオフィスでの開業も認められないので注意が必要です。
会社設立するために「経営・管理」ビザの申請するのに、その要件に「法人名義の事務所」が必要とは矛盾しているように見えますが、この場合、代理人を立てて定款認証手続きを行い、会社設立を進めるのが現実的な流れと言えます。
その際「経営・管理」ビザの申請に関しても独自のノウハウが必要になるので、申請手続きの経験が豊富な行政書士に依頼するのがおすすめです。
また、実際に事業を行うのか、虚偽の申請でないかを厳しく見られます。例えば次のようなことも押さえておきましょう。
- 事業内容に応じた広さであること
- 事業用の独立したスペースが確保されていること
- 営業を開始できる準備(電話やパソコンの設置など)がされていること
一定の場所を確保するほか、一区画を占めていることも必要です。
つまりシェアオフィスやウイークリーマンションのような簡易的な事務所、屋台や自動車などを事務所とすることも要件を満たしていないことになります。
要件.2 資本金や出資総額、常勤職員に条件あり
外国人が日本で起業する場合、次のどちらかの条件を満たす必要があります。
●資本金もしくは出資金総額が500万円以上である
●日本に居住する2名以上の常勤職員を雇用している
会社法には「外国人の発起人が1人で500万円を用意する」との明記はありませんが、実際は会社設立申請をする外国人本人が500万円以上を出資する必要があります。
また「経営・管理」ビザは経営活動を行うための在留資格であるため、原則として経営者自ら、飲食店で調理したり、店舗で接客したりすることは認められません。
業種によっては、500万円以上の出資で要件を満たしても、現場スタッフを雇用する必要があります。
その際は、労働・雇用関連の法令を遵守しているかどうかも見られます。
要件.3 事業の安定性・継続性、経営能力を証明できる
事務所の広さや設備、出資額や雇用の有無などは、事業を継続する気があるかを判断するポイントになっています。
加えて、「事業が安定して、継続できるか」「自分に経営能力があるか」に説得力のある説明をすることが重要です。
その際に必要となる者の1つに「事業計画書」があります。
日本語が堪能な外国人でも、事業計画書を作成するとなると話は別で、根拠にもとづき先を見通した、具体的な計画でなくてはなりません。これは専門家に依頼して、日本語で記述されたものを用意しましょう。
外国人が会社設立する流れ
経営・管理ビザの取得を除けば、外国人が会社設立する流れは日本人と基本的に変わりません。
ここでは基本的な手続きの流れを解説します。
会社の概要を決定
まずは、会社の軸となる次のような内容を決めましょう。
- 商号(社名)
- 事業内容
- 本社所在地
- 発起人氏名
- 取締役
- 取締役会の設置の有無
- 資本金の額
- 事業年度
この内容はこの後に作成する定款の一部ともなります。
会社実印の作成
続いて、会社の実印(代表取締役印・丸印)を作成します。
会社設立後に必要となる銀行印や社印(角印)、ゴム印などもこのタイミングで作成しておくとよいでしょう。
発起人の印鑑証明書の取得
会社設立には、発起人と役員の印鑑証明書も必要です(取締役会を置く場合は発起人の印鑑証明書のみ)。
前述のとおり、印鑑証明書がない場合は、サイン証明書を用意してください。
定款の作成・認証
会社のルールを決め、定款を作成します。
株式会社を設立する場合は、公証人による認証も受けなくてはなりません。認証には手数料がかかります。
資本金の振り込み
定款認証後、日本の銀行法に規定する発起人個人の銀行口座に、資本金を振り込みます。
口座開設が間に合わないなどの場合は、日本在住の協力者などに取締役となってもらい、その人の口座に資本金を振り込み。発起人が「経営・管理」の在留資格を取得した後に取締役を退任してもらう、といった対応が必要です。
登記申請
次の書類をそろえ、法務局に提出します。これは「商業登記」という、会社設立に必要な法的な手続きです。
- 設立登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 定款
- 発起人決定書
- 代表取締役・取締役・監査役の就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 印鑑届書
- 資本金の払込証明書
会社の登記が完了すれば、日本での会社設立が完了したということになります。ただし、他にもまだやるべきことはあります。
各省庁への届出
会社を設立したら、法人税や法人事業税、消費税などの税金を納める義務が発生します。
税務署や都道府県税事務所、市区町村役場などに届け出を出してください。
従業員の雇用・保険加入(従業員を雇用する場合)
必要があれば、従業員を雇います。常に雇用する人が1人でもいる場合は、その人を労働保険や社会保険に加入させる必要もあります。
労働保険(雇用保険と労災保険)は労働局に、社会保険は年金事務所に必要書類を提出し、手続きをしなくてはなりません。
経営管理ビザへの変更申請(必要あれば)
取得済みのビザの種類を確認し、必要に応じて経営・管理ビザへの切り替えを行います。
すでに経営・管理ビザを取得していたり、永住者ビザや配偶者ビザがあったりする場合にはそのままで問題ありません。
外国人が会社設立する際に必要な費用
外国人が日本で会社を設立する場合、500万円以上の資本金必要です。
ただし、常勤職員が2名以上いる場合には、資本金に関する下限条件はありません。
そのほか、設立する会社の形態が「株式会社」である場合には、定款認証の収入印紙代・定款認証のための公証人への手数料・定款の謄本取得費用・登記申請にかかる登録免許税などで、約25万円の費用がかかります。
「合同会社」を設立する場合には定款認証が不要であり、登記のための登録免許税も安く抑えられるため、約10万円での設立が可能です。
外国人が会社設立するときの注意点
最後にまとめとして、改めて外国人が日本で会社設立する際の注意点を4つ挙げ、ポイントを解説します。
注意点.1 在留資格(ビザ)の種類に注意
外国人が日本で会社を設立するためには、在留資格の種類が重要です。
日本人の配偶者等、定住者、永住者、永住者の配偶者等といったビザをもっている場合は特に問題ありませんが、技術・人文知識・国際業務、技能、家族滞在、留学などの場合は、「経営・管理」ビザに切り替えましょう。
「経営・管理」ビザの要件が整わない場合、地域によってはスタートアップビザを取得して準備を進め、「経営・管理」ビザへの切替を目指す方法もあります。
注意点.2 開業に認可が必要な業種か確認
飲食店を経営するには食品衛生法上の飲食店営業許可が必要だったり、旅行業を営むためには旅行業の登録が必要だったりと、業種によっては会社設立申請以外に許認可取得の手続きも必要となります。
また、人材派遣業のように許可を得ることはもちろん、日本における労働法全般の知識が要求されることもあるので、社会保険労務士や行政書士など専門家の力も借りながら準備を進めることをおすすめします。
注意点.3 資本金の払い込み口座の確保
資本金の振り込みには、日本の銀行法に規定されている銀行の口座が必要です。
まだお持ちでない場合は、指定の銀行に口座を開設しましょう。
ただし、マネーロンダリングなどの不正行為防止の観点から、短期滞在の外国人は銀行口座を開設できないといった条件があります。
口座の用意が間に合わない場合は、日本の銀行に口座を持つ人に取締役になってもらい、資本金の振り込みに利用させてもらうなどの協力を要請しましょう。
注意点.4 事業の安定性や継続性の証明に事業計画書が重要
先ほどもお伝えしたとおり、外国人が日本で会社設立する際には、事業計画書で事業の安定性・継続性をアピールする必要があり、認められなければ経営・管理ビザを得ることができません。
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外国人が日本で会社設立する際の手続きの流れや必要書類は、日本人の場合と大きく変わりません。
しかし、「経営・管理」の在留資格が求められるなど、外国人ならではの条件や必要書類があるのも事実です。
状況に応じて第三者へ協力を要請し、スムーズに準備をすすめましょう。
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