数年ほど前から、高利回りの投資方法として「ソーシャルレンディング」が取り上げられることが多くなりました。
ソーシャルレンディングとは、いわば個人投資家と企業側の投資目的マッチングです。
年利回り10%以上の実績をマークしている業者もあり、有望な投資手段として急速に注目が集まりました。
今や「SBIソーシャルレンディング」「クラウドバンク」などの、人気の高いソーシャルレンディング業者が募集する案件の場合、数億円規模の投資上限なら1時間以内に埋まってしまうほどです。
とはいえ、高利回りを実現する仕組みが分かりにくいうえに、「匿名性」「ネット取引」など、につきものの不透明性によって誤解を招くことも多いようです。
プラットフォームこそインターネット上になりますが、企業に出資して利益を得るという仕組みは、株式などの金融市場と変わりはありません。
今回は、最新投資方法のひとつ「ソーシャルレンディング」について解説します。
目次
ソーシャルレンディングとは?
ソーシャルレンディングの仕組み
ソーシャルレンディングとは、個人投資家と企業をインターネットを介してマッチングさせ、投資案件を実現させる金融サービスです。
具体的には、ソーシャルレンディング業者がサイト上に、資金を集めたい企業の事業内容と投資条件(利回りなど)を掲載します。
個人投資家は、掲載条件を検討したうえで資金を提供します(=投資)。
ソーシャルレンディング業者は、ここで集まった資金を企業に貸し出します。
個人投資家は、投資報酬として「元金+利息」を受け取ることができます。
ソーシャルレンディングの意義
ソーシャルレンディングが始まったきっかけは、金融機関からの融資を受けにくいスタートアップ企業や、零細企業の資金調達手段としてのスタートでした。
それがインターネットを介した、利回りの高い告知投資として人気が高まり、現在は金融市場において、大きな存在感を持つまでに急速に成長しています。
レンダーとボロワーとは?
ソーシャルレンディング取引では、投資を行いたい資金を提供する投資家を「レンダー」、資金を提供される側の企業を「ボロワー」と呼んでいます。
シンプルに貸し手をレンダー、借り手をボロワーと理解しておくとわかりやすいでしょう。
ソーシャルレンディング高利回りの理由は?
ソーシャルレンディングの想定利回りが、国債や預貯金とは比較にならない数値をマークしている理由は二つ。
ソーシャルレンディング事業者が、平均5~8%もの年利を実現しているのは「高額な貸出金利設定」「高収益案件限定」によるものです。
原則的に、ソーシャルレンディング事業者が投資対象企業を選定するとき、銀行などの金融機関ほど審査基準は厳しくなく、企業側の返済能力のみを判定します。
つまり、業務内容や資金の使途などについては、柔軟に対応します。
反面、貸し出し金利については、銀行金利よりもかなり高額に設定します。
その利ザヤが、投資家が受け取る高い利回りに反映されるというわけです。
また、高額金利を払ってもなお高い収益が見込める、と判断した企業を厳選してソーシャルレンディング案件を立ち上げています。
企業側にとっては、高額金利というリスクを払っても挑戦したい、事業立ち上げの資金調達手段となっています。
ソーシャルレンディングは融資タイプのクラウドファンディング
ここで気になるのが、ソーシャルレンディングとクラウドファンディングの違いではないでしょうか。
事業そのものをダイレクトに応援するための投資がクラウドファンディングならば、ソーシャルレンディングは、事業を始めるための資金を投資するというものです。
そのため、ソーシャルレンディングの場合は、投資先は企業ではなく案件を募集するソーシャルレンディング業者になります。
ここがソーシャルレンディングが、融資型クラウドファンディングと呼ばれる所以です。
ソーシャルレディング投資はどこに申し込む?
ソーシャルレンディング投資をスタートするには、ソーシャルレンディング案件を募集するソーシャルレンディング業者に、投資を申し込む必要があります。
案件には、大きく分けて「常時募集型」の案件と「臨時募集型」の案件があります。
先にもお伝えしたように、人気業者の有望案件は募集スタートから短時間で即募集停止となる可能性が高く、慎重な投資を心掛けながらも、チャンスは逃さないようにしたいところです。
ソーシャルレンディング案件の種類
ソーシャルレンディング案件には、大きく分けて以下の5つの分類があります。
- 一般企業への事業資金の融資案件
- 再生可能エネルギー事業案件
- 収益不動産事業案件
- 貸金業者向け融資案件
- 海外のマイクロファイナンス案件
おすすめは一分野に投資を一極集中するのではなく、分散投資によってリスクも分散しておくことです。
その場合、複数の分野の案件を扱うソーシャルレンディング業者を利用すると、効率的でしょう。
案件の将来の動向が予測できるまでソーシャルレンディングに慣れてきたら、有望分野の絞り込みも一案です。
ソーシャルレンディング利用時の注意点
ソーシャルレンディング業者の見極めが重要
たとえ、どんなに利回りが高いソーシャルレンディング業者であっても、ホームページの情報などで信用度に疑問を感じたら、投資は見直したほうがよさそうです。
もし業者が経営破綻をした場合、銀行などとは異なり、利用者の保護策は用意されていないからです。
ファンド情報の見極めが重要
2017年、ソーシャルレンディング業者「みんなのクレジット」「maneoマーケット」などの、行政処分が相次いだことは記憶に新しいところです。
以前は、貸金業法に違反する可能性があったため、ソーシャルレンディング取引において、投資家から集めた資金の貸し付け時には原則、貸出先は非公開とされていました。
そのため、それを悪用してグループ会社に還流したり、実際の資金使途とは異なる虚偽の募集で資金集めをする、などの事例が相次ぎました。
こうした事態を受けて、2019年より金融庁は、ソーシャルレンディング業者に、貸付先企業の情報開示を促す方針を打ち出しました。
現在は、ファンドの実際の貸出先となる企業の社名や所在地などを、事前に知ることができます。
利益確定時の税金に注意
ソーシャルレンディングで得た利益は「雑所得」として扱われます。
所得税率は、雑所得や給与所得などと合算して決まります。
課税された結果、税負担が高くなる可能性もありますから、利益確定タイミングは注意が必要です。
ソーシャルレンディングは入念な投資先リサーチが必須
企業側にとっては、既存の金融機関に依存しない新たな資金調達手段として、投資家側には、高い高利回りが期待できる有望な投資方法として、ソーシャルレンディングは金融市場で好意を持って受け入れられており、今後も成長が見込まれています。
ここで、ご紹介してきた内容について、まとめておきます。
- ネットを介した企業と個人投資家のマッチング投資方法
- 企業への高額金利と高収益事業に絞った投資によって高利回りを実現
- 2019年からは透明性を重視した取引となるよう政府が支援予定
まとめ
コロナ渦のなか、収入減に悩むサラリーマン、仕事そのものを失った飲食店などの事業者も少なくありません。
利益を得られる投資先を探す人々と、資金調達先を求める起業家のWIN-WINの関係として発展してほしいソーシャルレンディング。
問題点が改善されてゆけば、有望な投資方法のひとつとしての可能性を秘めています。
今後も状況の変化を注視しながら、知識のアップデートに努めておきましょう。