目次
経営者の健康診断実施義務と従業員の受診義務
皆さんは会社で健康診断を受けていますか?
労働安全衛生法第66条により、経営者は従業員に対して、医師による健康診断を実施しなければいけないことになっています。
そして、従業員側も健康診断を受けなければいけません。
そう、健康診断は経営者にも従業員にも、法律で義務づけられているものなのです。
健康診断の内容
健康診断の内容は、労働安全衛生法に細かく定められていますが、大きく分けると一般健康診断と特殊健康診断の二つに分けられます。
一般健康診断
一般健康診断には次の5種類があります。
- 雇入時健康診断
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
- 給食従業員の検便
特定の業務を行う人以外は、通常、雇入時健康診断と定期健康診断を受けます。
特殊健康診断
特殊健康診断とは、特定の有害な業務に常時従事する従業員に対して、雇入れ時や配置替えの際と、6か月以内ごとに1回行う、特別な健康診断です。
健康診断の対象となる従業員
健康診断の対象となる従業員は、健康診断の種類によって異なります。
正社員だけでなく、条件を満たしたパートやアルバイトも含まれます。
雇入時の健康診断
雇入時の健康診断は、常時使用する従業員を雇い入れる際に、雇い入れる従業員に対して、必ず行わなければいけないものです。
定期健康診断
定期健康診断は、特定業務従事者以外の常時使用する従業員に対して、1年に1回以上必ず行わなくてはいけません。
特殊健康診断
特殊健康診断は、法律で有害業務に常時従事している従業員が、受けなければいけないと定められている健康診断です。
- 屋内作業場などで有機溶剤業務
- 鉛業務
- 四アルキル鉛等業務
- 特定化学物質を製造し、または取り扱う業務(過去に従事したことがある従業員も含む)
- 高圧室内業務または潜水業務
- 放射線業務に常時従事し管理区域に立ち入る
- 除染等の業務
- 石綿の粉じんを発散する場所での業務(過去に従事したことがある従業員も含む)
他にも、特定の業務に従事する従業員のじん肺健診や、歯科医師による健診があります。
健康診断の実施方法
健康診断の実施には3つの方法があります。
定められた検査項目を満たしていれば、いずれの方法でもOKです。
- 医療機関が会社に出向いて集団健診を実施
- 会社が定めた医療機関に従業員が出向いて受診
- 従業員が各自で健康診断を受診し、健康診断結果を会社に提出
一般健康診断における法定検査項目
雇入時健康診断や定期健康診断で、必ず受けなくてはならない検査項目は、以下のとおりです。
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査
- 血圧の測定
- 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
- 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)
- 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール・血清トリグリセライド)
- 血糖検査
- 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
- 心電図検査
健康診断の費用負担
健康診断は、前述のとおり法律で事業主の義務となっていますので、費用は事業主が全額負担しなくてはいけません。
どれくらい費用が掛かるのか気になるところですが、健康診断は保険適用外の自由診療ですので、費用は病院によって異なります。
定期健康診断の相場としては、1人1万円前後と考えておけばよいでしょう。
健康診断はいつ実施すればよいのか?
ところで、健康診断はいつ実施すればよいのでしょう?
雇入時健康診断は、雇い入れる際に行います。
定期健康診断は、1年以内に1回と定められているだけで、実施時期については特に制限はありません。
毎年、だいたい同じ時期に受診できるようにしておくことが望ましいですが、個々に実施時期が違っていてもOKです。
健康診断は労働時間内に行うべき?
健康診断は、経営者としても必ず従業員に受けさせなくてはいけないものの、従業員にとっても受診が義務となっています。
法的には、健康診断の受診を労働時間として扱う必要はないため、経営者には健康診断受診時の賃金支払い義務はありません。
ただ、実際のところは、健康診断も労働時間として扱い、賃金を支払っているところが多いのが現状です。
というのも、業務時間中に受けられないとなると、受診しない人も出てきますよね。
そうすると、健康診断を受けさせるという義務を果たせなくなってしまいます。
健康診断実施後の対応
健康診断を実施したら、やりっぱなしというわけにはいきません。
労働安全衛生法では、健康診断実施後に次のような対応をするよう定めています。
- 健康診断の結果記録:健康診断個人票を作成し、各健康診断で定められた期間保存
- 健康診断結果について医師等から意見聴取:健康診断の項目に異常所見のあった従業員について、医師の意見を聴取
- 健康診断実施後の措置:医師等の意見により必要な場合は作業の転換、労働時間の短縮など、適切な措置を講じること
- 健康診断結果を本人へ通知
- 健康診断結果に基づく保健指導:健康診断の結果、必要な場合は医師や保健師による保健指導を行うよう努めること
- 健康診断結果は所轄労働基準監督署長へ報告
まとめ
ここでは、健康診断の実施義務について解説しました。
健康診断の実施は、法的義務です。
適切に行っていなければ罰則規定もありますし、従業員に対する安全配慮義務違反となりますので、軽く考えていると会社にリスクをもたらします。
ぜひ本記事を参考にしていただき、従業員の健康診断実施にお役立てください。