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短時間労働者の社会保険への加入条件とは?
そもそも短時間労働者とは、パートやアルバイトなど、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されている正社員と比べて短い労働者のことをいいます。
そんな短時間労働者も、社会保険に加入できるようになりました。
ただし、社会保険の加入には条件があります。
社会保険への5つの加入条件
社会保険に加入するためには、次の5つの加入条件をクリアしている必要があります。
どのような条件なのか、一つ一つ見ていきましょう。
1. 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上
まず、就業規則や雇用契約書などに定められた、その人が通常の週に勤務すべき時間が、20時間以上あることが加入条件となっています。
週単位で所定労働時間が定められていない場合は、1か月、1年単位で定められている所定労働時間から、週単位の時間を算出します。
2. 月額賃金が88,000円以上
賃金は、時給や日給、週給であっても月額に換算します。
その中には、賞与や残業手当、通勤手当などは含まれません。
年収でいうと、約106万円以上あると加入条件に当てはまります。
3. 1年以上の継続雇用が見込める
1年以上の継続雇用を見込めるかどうかは、雇用契約の内容によって判断できます。
次のような場合に、1年以上の継続雇用が見込めると考えられます。
- 期間の定めのない雇用である場合
- 雇用期間が1年以上ある場合
- 雇用期間は1年未満でも雇用契約書に更新や更新の可能性を明示している場合
- 雇用期間が1年未満でも同様の雇用契約で1年以上雇用された実績がある場合
4. 学生ではない
学生は対象外とされていますが、次のような学生は加入対象です。
- 卒業前に就職して卒業後も引き続きその事業所に勤務予定の学生(卒業見込証明書必須)
- 休学中の学生・夜間や通信、定時制の学校に通う学生
5. 企業規模要件を満たした会社に勤務
現在のところ、次のいずれかの企業規模要件を満たした会社に勤務していることが加入条件となっています。
- 従業員数501人以上の企業(特定事業所)
- 従業員数500人以下でも社会保険の加入について労使で合意している企業
なお、企業規模要件は、2022年10月より従業員数100人超、2024年10月より従業員数50人超と、徐々に拡大される予定になっています。
社会保険に短時間労働者が加入するメリット&デメリット
短時間労働者が社会保険に加入すると、どのようなメリットがあるのでしょう。また、デメリットはないのでしょうか。
社会保険に加入するメリット
短時間労働者も社会保険に加入することで、次のようなメリットがあります。
- 将来もらえる年金の増加
- 充実した健康保険の給付
- 保険料の半分を会社が負担
将来もらえる年金の増加
厚生年金保険に加入することで、将来もらえる年金の額が増えます。
なぜなら、老齢基礎年金に加えて、勤めている間の給料に基づいた老齢厚生年金を受け取ることができるからです。
また、障害がある状態になった場合などには、障害基礎年金に加えて障害厚生年金が支給されます。
障害厚生年金には月額49,000円の最低保証額が設けられていますし、障害基礎年金が障害等級1級または2級の場合に支給されるのに対し、障害厚生年金は障害等級3級の場合も支給されるなど、手厚い内容になっています。
遺族年金に関しても、遺族基礎年金のほかに遺族厚生年金が支給されます。
遺族基礎年金は18歳未満の子がいない配偶者には支給されませんが、遺族厚生年金は18歳未満の子がいなくても支給されます。
充実した健康保険の給付
企業の健康保険組合では、病気やけが、出産における傷病手当金や出産手当金などが充実している場合が多く、賃金の3分の2程度の給付を受け取ることも可能です。
保険料の半分を会社が負担
なんといっても、社会保険に加入すると保険料の半分を会社が負担してくれますので、これは大きなメリットですよね。
これまで国民保険に加入して保険料を全額自分で負担していたという場合などには、保険料の負担が軽くなります。
社会保険に加入するデメリット
社会保険に加入することでデメリットがあるのは、配偶者の扶養に入っている場合です。配偶者の扶養に入っていると、社会保険料の負担がありません。
しかし、社会保険に加入することで保険料が発生するため、手取り収入が減ってしまいます。
手取り収入が減ってしまう痛手は大きいですよね。
社会保険に加入するとメリットも多いですが、配偶者の扶養の範囲で働いていた人にとっては、手取り収入が減るという大きなデメリットがあります。
メリット&デメリットから考える働き方の選択
社会保険に加入する方がよいのか、配偶者の扶養の範囲で働くために仕事を調整するのが良いのかは、それぞれのライフスタイルによって異なります。
出産手当などのメリットや将来への備えを重視して、手取りが減っても社会保険に加入した方がよいと考える人もいれば、扶養の範囲で収まるように仕事を調整しようとする人もいるでしょう。
また、社会保険に加入するのであれば、もっと働いて収入を増やそうという人もいることが想定されます。
社会保険に加入するメリットとデメリットをライフスタイルに重ね合わせ、最良の働き方を選択することになるでしょう。
短時間労働者の社会保険加入に関する注意点
短時間労働者の社会保険加入に際しては、注意しておきたいこともあります。
配偶者の扶養に入っている場合の注意点
社会保険に加入できる条件の一つである、月額賃金88,000円以上というのは、年収でいうと約106万円以上ということになります。
しかし、社会保険の被扶養者(第3号被保険者)かどうかの判断基準は、従来通り年収130万円以下です。
そのため、社会保険の加入要件は満たしているけれど、年収130万円以下だから扶養のままでよいのではないかと思う人もいるでしょう。
この場合どうなるのかというと、年収130万円未満であっても、社会保険の加入要件に当てはまる場合は、自身で社会保険に加入することになります。
つまり、社会保険の加入要件に当てはまれば、配偶者の被扶養者にはならないので、注意しましょう。
なお、これは社会保険の話なので、配偶者の会社から支給される扶養手当や家族手当の対象になるかどうかについては、また別の話になります。
これについては、配偶者の会社の支給要件を確認してください。
加入手続きに関する注意点
社会保険の加入手続きは、勤め先の会社が行います。
ただし、国民健康保険に加入している人は、自分で国民保険の資格喪失の手続きをしなくてはいけません。
また、配偶者の被扶養者の場合は配偶者の健康保険に入っているはずですので、自分で配偶者の会社に申し出て健康保険の資格喪失手続きをしてもらう必要があります。
まとめ

ここでは、短時間労働者の社会保険加入条件や、社会保険に加入するメリット・デメリットについてご紹介しました。
短時間労働者で国民保険に加入している人は、社会保険に加入することで保険料の負担も減り、受けられるメリットも多くなります。
ただ、配偶者の被扶養者だった場合は、社会保険の加入要件を満たすことで、扶養から外れることになりますので注意が必要です。

