日本政策金融公庫に創業融資を申し込む際、必須の提出書類にひとつが「創業計画書」であり、この出来次第で融資の可否が決まる!といっても過言ではないくらい非常に重要な書類です。
どのような計画書が作成できれば融資が獲得できるのか?成功のポイントはどこなのか?
これを理解しているかどうかで、審査通過の確率は大きく異なります。
今回は、意外と陥りやすい、創業計画書で手を抜きがちな個所と、具体的にどうすればより融資を受けやすい、魅力的な創業計画書になるのかということを解説します。
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そもそもなぜ創業計画書を作るのか
創業計画書とは、これから始める事業やサービスの内容、経営方針、売上の予測などをまとめた資料です。
そのため、創業計画書で失敗しないためには、そもそもなぜ創業計画書を作るのか再認識する必要があります。
知っている人にとっては今さらな話ですが、「融資を受けるため」です。
事業の指針にする、社外の人に見せる可能性がある、といったこともあるかもしれません。
しかし、それはあくまでも副次的な目的と言えるでしょう。
特に、事業の指針にすることを第一に考えると、結果的に創業計画書としての役割を果たさないかもしれません。
ざっくりとした希望的観測などを書いて、自己満足するような事業計画書で、後々後悔することにならないよう十分に注意してください。
手を抜いて失敗する箇所
では創業計画書の失敗理由、言い換えると融資を受けられない原因になる部分はどこでしょうか。
答えとしては、数字が入っていない、もしくは現実的でない数字が書かれている、といったことです。
融資を受ける先としては銀行がもっとも多いかと思いますが、銀行は当然無条件に融資してくれるわけではなく、成功すると思われる企業にしか融資しません。
過去に実績があればそれが融資の根拠になりますが、そうでない場合、創業計画書や本人の話くらいしか根拠になるものがないのです。
口頭だけではどうにもならないので、創業計画書が充実していないと融資を受けられません。
思ったより融資額が少なくて、スタートから躓くようなケースも決して少なくはないので、創業計画書で手を抜くべきではないでしょう。
数値目標は具体的なシミュレーションを元に計算する
たとえば、費用や売上がざっくり書かれていると銀行は融資の判断に迷います。
迷うということは、融資はないということです。
いくら理念や事業プランを熱心に伝えても、当然銀行員はそれを根拠に融資することは難しいのです。
たとえ優良な事業アイデアであったとしても、数字が見えないと銀行員は責任を負えません。
いくら融資したらいつまでにいくらの売上が発生し、お金を回収できるのか、これらを内部に報告する義務があるため、事業プランが良いと思ったから融資を決めました、というわけにはいきません。
事業内容に自信のある人ほど、具体的な数字まで考えない傾向にありますが、必ず客観的に納得感のある数値目標を入れる必要があるということでした。
税理士が付いている場合は、特に事業の見通しの数字の部分いついては相談しておいた方が良いでしょう。
優良な税理士なら経営者が相談する前に融資を受けやすいように提案、もしくは創業計画書を一部代わりに作ってくれるかもしれません。
しかし中にはノータッチの税理士もいるかもしれないので、あらかじめ確認しておいた方が良いです。
別紙資料がない
創業計画書に別紙資料?と思われた方もいるかもしれません。
融資を多く受けたいのであれば、別紙資料は必須と言っても過言ではないでしょう。
融資する銀行員の立場に立って考えればわかることですが、融資するに足る客観的な根拠が少しでも多い方が良いのです。
その方が事業の成功が見えるという理由もありますが、銀行員の立場上の問題もあります。
仮に事業に失敗したとしても、客観的に成功しそうな資料があったかどうかによって銀行員への印象も変わってくるかもしれません。
要するに、あとからなんで資料もないのに融資したのか、と責められる要因を排除したいという心理があるのです。
なので、「これだけ成功する要素があるのだから、安心して融資してください。」と説得しなければなりません。
事業計画書に加えて、融資したくなるような情報を別紙で用意しましょう。
そして別紙に記載する具体的な項目は以下のようなものです。
- 経歴
- 資格
- 創業動機
- ターゲット像や戦略の詳細
- 市場をリサーチした内容等
似たような内容が、創業計画書のフォーマットに含まれているのですが、明らかに情報量が足りていません。
たとえば最初に「創業の動機」の欄がありますが、詰めて書いても150文字程度しかかけないくらいのスペースです。
記入例も100文字ちょっとくらいしか書かれていませんが、明らかに足りていないので、別紙を付けてしっかりアピールすべきです。
実際、創業計画書の紙にも、「ほかに参考となる資料がございましたら、計画書に添えてご提出ください。」と書かれています。
これを利用しない手はありません。
経歴や資格に関しては、もちろん事業と関係のあるもののみでOKです。
情報量を増やせば増やすほど良いというものではなく、あくまでも融資の審査に有利になるもののみを盛り込むべきです。
融資の審査に有利になる情報とは、客観的に見て事業に成功する確率が高いと思わせる情報です。
つまり経歴や資格でアピールすべきポイントは、事業に関連する経験があるということになります。
たとえば、サラリーマン時代に似たような経験がある、一見すると関係なさそうな経験だけれど事業成功の根拠として説明できる、といったものをアピールすると良いです。
創業動機と事業の成功はいまいち関連がなさそうですが、どちらかというと経営者本人の意思として見られるケースが多いようです。
たとえば創業動機が強ければ強いほど、困難にぶつかったときに投げ出してしまうことがない、といった見方です。
実際に事業を始めればほぼ100%想定外の困難にぶつかります。
競合が強い、消費者が思うように獲得できない、といった困難は容易にイメージできますが、自分の心理的な問題の解決が意外と大変だったりします。
単純な話、モチベーションが湧かなくなっている、頑張れば成功するかもしれないけれど頑張るのが難しい、といったことです。
逆に言えば、モチベーションさえ維持できれば何度でもチャレンジし、最終的には成功するでしょう。
しかし人間の精神は、そんなに簡単にコントロールできるものではなく、特に今回のコロナのようなことが起こると、くじけてしまうかもしれません。
特に何もなくても、人間の意志は簡単に変わってしまいます。
融資担当者もこのことはよくわかっているので、数字面での成功確率だけでなく、創業動機等を通して経営者の意思確認をしているのです。
ターゲット像や戦略の明確化も必須です。なんとなく経営を始めていたり、もしくは思い込みだけで具体性に欠けているケースも少なくありません。
実際のところ、なんとなく始めたビジネスが成功する、気負わなかったからこそ成功できた、といったケースも少なくはないです。
しかし、客観的に見ればそれは偶然、たまたま運が良かったと言えます。
ほとんどの場合はうまくいかないので、かなり試行錯誤しながら苦戦するでしょう。
ターゲット像や戦略が明確になっていないと、成功に結びつかない努力をしてしまったり、放棄してしまうケースが多いのです。
事例としては放棄するケースが圧倒的に多いでしょう。
放棄とは事業をやめるという意味ではなく、成功のための努力を放棄するという意味です。
なんとなく事業を存続できれば良いですが、最終的に倒産する可能性が高く、そうなれば銀行は融資したお金を回収できません。
だからこそ、どのようなターゲットを見据えて、どのような戦略で事業を進めるのかを別紙で明確にする必要があります。
まとめ
重要なのは、創業計画書に記載する事業の見通しなどの数字を、明確な根拠付きで記載すること、別紙でアピールすることです。
数字面については、よくわからなければ税理士に相談すると良いでしょう。
別紙の内容は、創業計画書の内容を膨らませるイメージです。
たとえば、創業の同期は創業計画書に概要を書いて、別紙に本文を書くようなイメージを持つとわかりやすいでしょう。