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創業計画書だけでなく別紙資料も作成しよう!
自分で飲食店を開業するとなると、資格や届出、準備すべきことが多く、圧倒されるかもしれません。
なかでも創業融資を受けられるかどうかは、事業の行方を左右するため、ぜひ成功させたいものです。
飲食店を開業する場合、物件取得費用や店舗投資費用が高額になり、自己資金だけでは難しい場合が多いでしょう。
飲食店の創業融資で人気のある銀行といえば、小口融資を主体とした日本政策金融公庫です。
融資先数は88万先、平均融資残高は703万円、全体の8割が無担保融資と、飲食店開業を検討している人にとって心強い存在と言えます。
今回は、創業融資の審査でイメージアップを図るために、飲食店が添付したい別紙資料について解説いたします。
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飲食店向け!融資審査に有利になる資料とは
日本政策金融公庫に提出する創業計画書をみると、とてもシンプルなフォーマットです。
シンプルすぎるため、創業計画書を提出するだけでは、どのような事業なのかアピール力に欠けます。
そこで創業計画書に記載した内容をより具体的にみせる、別紙資料を作成するのがオススメです。
ここでは、どのような別紙資料を用意するとイメージアップにつながるのかご紹介します。
飲食業界での経歴をアピール
創業計画書の「経営者の略歴等」は「勤務先名だけではなく、担当業務や役職、身につけた技能等についても記載してください」とあるものの、スペースが限られています。
そこで詳細な職務経歴書を作成するのがオススメです。
飲食店業界におけるマネジメント、マーケティング、ブランディングなどの観点で、自分の職務経歴を「棚卸し」しましょう。
その上で業界での経験が何年あるのか、どのようなスキルを培ったのか、店長やマネージャーとしての経験などを説明します。
飲食店業務の要となる、従業員の指導・管理、仕入れ業者探しや選定などを担当していた経験は、アピールのチャンスです。
新しいメニューの開発や宣伝を手がけた経験もあれば含めましょう。
融資担当者に今までの経験やスキルを「見える」ようにすることが大切です。
【参考】日本政策金融公庫 国民生活事業 創業計画書(記入例:洋風居酒屋)
飲食業界に関わる保有資格をアピール
審査担当者に、開業準備を計画的に進めていることをアピールするためにも、保有資格について別紙資料を作成しましょう。
例えば「食品衛生責任者」は、飲食店を営業するにあたり必須の資格です。
既に栄養士や調理師の資格を保有している人は、講習会に参加しなくても食品衛生責任者になれます。
ワインソムリエや野菜ソムリエなどの資格も取得していれば、資格取得にいたった動機や理由を添えて、別紙資料に含めましょう。
飲食店経営への熱意や専門知識を持っていることが伝わります。
事業の設計図「コンセプトシート」
飲食店を成功させるためにはコンセプトの設計が不可欠です。
飲食店のコンセプトは、物件を選ぶ立地、外装・内装、メニューや価格の選定に影響します。
自分で育てた有機野菜やオーガニック製品を提供するカフェと、フランスで修行を積んだパティシエが開くカフェの場合を考えてみましょう。
ターゲットとなる顧客や物件を探すエリアが異なるはずです。
そこでコンセプトシート作りにチャレンジしてみましょう。
インターネット上にはさまざまなコンセプトシートが出回っていますので、書きやすいものを選んで作成することが大切です。
コンセプトシートを読めば、日本政策金融公庫の融資担当者は、どのような飲食店を想定しているのかイメージしやすくなります。
コンセプトに沿った立地選定の説明
立地を選定したら、なぜその立地を選んだのか説明することが大切です。
融資担当者に「なぜこの立地なのか?」と思わせることのないように、ターゲットを集客しやすい立地だと納得が得られる資料作りをしましょう。
最寄駅や近隣施設、商圏の人口や居住者の情報も合わせて記載します。
商圏と立地の調査結果をまとめる
飲食店の成功は、立地に左右されるため、通行量など現地調査は重要です。
通行量は平日と休日に分け、さらに時間帯や性・年代別の情報も収集しましょう。
現地に出向いて、物件環境、立地、商圏を調査した結果を別途資料として作成すると、イメージアップにつながります。
ひとり暮らし、あるいはファミリー層が多いのか居住者の生活実態がわかる情報も大切です。
自分の足で調査するのはもちろん、予算があれば第三者に調査を依頼した結果を添付すると客観的事実がよくわかり、さらに印象が良いでしょう。
メニューやキャンペーン案を作成
飲食店向け創業融資の申請では「取扱商品・サービス」で、メニューやセールスポイントを記載します。
ここで魅力的なメニューを言葉だけで伝えるのは、SNSが普及している昨今、インパクトが少ないといえるでしょう。
ぜひビジュアルでアピールする方法も検討してみてください。
- コンセプトシートで提案した内容とマッチするフードを、実際にメニュー表にして提案する
- オープン時にオープンチラシをポスティングすることを想定し、仮のチラシを作成して資料に含める
- 店舗のイメージが伝わるように、参考にしているカフェ、インテリアなどのイメージ画像を準備する
上記の施策を参考に、創業する飲食店のイメージや雰囲気がより伝わるように工夫することが大切です。
オススメは今後展開する予定のキャンペーン案も、新規・リピート・常連別に作成すること。
このようなシミュレーション作業は、具体的に創業後の営業イメージをかためるためにも役立ちます。
損益をシミュレーションした資料を作成
作成したコンセプトシートをもとに、損益シミュレーションを実施します。
開業前に損益シミュレーションを正確にすることは、簡単なことではありません。
しかし損益シミュレーションの精度をあげる努力は、飲食店を成功させるために重要です。
飲食店は売上がいい時と悪い時の差が激しいため、目標・標準・最低売上の3つに分けてシミュレーションします。
最低売上の場合でも、手元の現金が減らないように計画を立てることが大切です。
人件費、家賃、水道光熱費などの固定費は予測しやすいので、金額を計算しましょう。
提供するフードの材料費は原価といい、変動費として計上します。
変動費は売上に対する割合で計算し、コストを予測しましょう。
融資担当者に対して、コンセプトを数字に落とし込んだ損益シミュレーションを提出してください。
経営者は数字と向き合う仕事だ、との覚悟や認識をアピールできます。
開業後は、実際の実績とシミュレーションを比較することで、解決すべき課題解決が発見するツールとして役立てましょう。
創業の動機をさらに伝える
創業計画書の「創業の動機」欄は、小さすぎて融資担当者に動機を伝えきれない可能性があります。
そこでA4用紙1枚程度に「1.動機」「2.ゴール」の2つをまとめて、創業への決意や熱意を伝えましょう。
なぜ創業しようと思ったのか、その動機が明確であれば、難しい状況に陥ってもがんばれる人と判断されるでしょう。
創業して何を目指すのか、創業を通じて何を達成したいのか、創業のゴールについても明記します。
このゴールは審査担当者が共感できるものであることが重要です。
さらに将来の事業展開についてのビジョンも含めるといいでしょう。
実際には、最初から創業の動機を書き上げるのは難しいかもしれません。
コンセプトシートを作成したり、現地で調査したりするうちに、創業の動機がブラッシュアップされます。
創業計画書のストーリーにそった創業の動機を、最後に練り上げるのもひとつの方法です。
日本政策金融公庫に融資を申し込む準備とは
ここでは日本政策金融公庫の創業融資に申し込むために、書類の作成以外に準備しておきたい点について解説します。
日本政策金融公庫は主に小口融資に注力し、専用の手引書を用意するなどして、飲食店開業をサポートしている政府系金融機関です。
創業融資の借り入れに成功したい人は、手引書を一読するようオススメします。
飲食店開業に向けてどのように準備すべきか、くわしい情報を得られるからです。では重要な項目についてみていきましょう。
創業の手引(飲食版)をチェックする
日本政策金融公庫のホームページでは「新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引+(プラス)」を公開しています。
第1章「創業計画策定のポイント」の内容は次のとおりです。
- 創業までのフロー
- コンセプトシートにあたる「販売計画」
- 資金計画
- 売上予測
- 収支計画(月平均)
- 返済計画
第2章では創業計画書の内容を7つのカテゴリーに分け、それぞれのカテゴリー別にチェックリストを用意しているのが特徴です。
どのように創業計画書を練るべきか参考になる視点が含まれているため、ぜひ一読されることをオススメします。
さらに第3章「飲食業の知っておきたい基礎知識」は、さながらミニレクチャーのようです。
日本政策金融公庫総合研究所の調査結果をもとに「原価率・人件費率の目安」まで掲載されています。
政府系金融機関の見解を知るためにも、このような基本情報は知識としておさえておきましょう。
第4章では、融資を受けるための準備についてアドバイスされています。
飲食業界での勤務経験を棚卸しする
飲食店開業に向けて創業融資を思いたったら、自分の飲食業界でのキャリアの棚卸しに取り組みましょう。
飲食業界での勤務経験は、融資担当者が事業の成功を予測するひとつの物差しです。
飲食業界で食材、酒類の仕入れ業者の選定に関わっていたり、高い調理技術を身につけたりしていれば、成功の可能性が高まります。
開発済みの看板メニューの存在や、フードフォトやスイーツフォトの撮影技術を磨いた経験もプラスポイントになると言えるでしょう。
接客経験やお客様の顔と名前を覚える特技があれば、飲食業界では強みになります。
販売促進の企画に関わり実績を残した経験があれば、忘れずにアピールすることです。
書き出した過去の職務経歴や身につけたスキルと、創業動機を読んでみて、つながりを感じられるかどうかも重視されます。
過去の経験が未来につながるストーリーを、審査担当者に提案できているかどうか、自分なりにチェックしましょう。
以上の点をふまえてキャリアの棚卸しをすませたら、職務経歴書を作成して審査担当者に提出できるようにしておきます。
自己資金の準備もアピールポイント
日本政策金融公庫の創業融資では、申込者名義の通帳でコツコツと貯蓄された自己資金を重視します。
つまり審査担当者は申込者の自己資金はどこから来たのか、通帳の履歴から確認を試みるということです。
そのため知人や両親から借りたお金は、基本的に自己資金としてみなされません。
現金を自宅で貯めている場合も、過去に貯蓄してきた履歴を示せないため、自己資金としてみなされないことを知っておきましょう。
一時的にまとまった額の入金があり、それが「見せ金」だとみなされると、融資が遠のくため注意が必要です。
通帳で貯蓄の履歴のわかる自己資金の準備ができていない人は、「創業準備の表れ」が見えないとされ、審査を通過するのが難しくなります。
これは創業に向けて計画的に準備してきたかどうかが、日本政策金融公庫では重視されているからです。
またコツコツ貯蓄してきた姿勢は、重要な資金を管理できる経営者として求められる資質の表れとも考えられています。
自己資金が明らかに少ないのに、高額の融資を申し込むと「借入金額の相場観を知らない」と判断され、不利になる可能性が高いでしょう。
理想通りの店舗を構えるために、無理をしていないか見直すことが大切です。
その場合は事業計画の規模を縮小して、融資金額をおさえるよう見直したほうが懸命な判断と言えます。
審査担当者が、自己資金の調達方法に興味を示すということを認識して、通帳に貯蓄の履歴を残すようにしましょう。
公共料金などの支払い状況を整える
自己資金の調達方法以外にもチェックされるのが、家賃、公共料金、住宅ローン等の支払い状況です。
頻繁に定期的な支払いに遅れが生じていると、お金の管理にルーズだとみなされ、信用力は低下することを覚えておきましょう。
「口座引落とし」を選択するように促す記載があります。
そこで定期的な支払いは口座引落としにして、良い通帳作りに専念することも大切です。
まとめ~創業計画書に資料を加え融資を成功させよう~
日本政策金融公庫の創業計画書は、融資申請の要約的な存在です。
創業計画書だけでは、融資担当者には伝わらないことを知っておきましょう。
つまり創業計画書に記載した内容の根拠を説明するために、別紙資料を作成しておく必要があります。
審査担当者に、創業に対する計画性が甘い、準備が足らないという印象を与えないことが大切です。
当記事で解説した資料を作成すれば、より具体的な創業後の飲食店営業のイメージをみせることができます。
資料作り以外にも、コツコツ貯めた自己資金の調達や、定期的な支払いに遅れずに対応している点をアピールできる通帳作りも大切です。
審査担当者が応援したくなるような、創業融資の申請を目指しましょう。