起業する場合、やはり一番多いのは「経験のある業種で事業を始める」ではないでしょうか。
しかし中には「経験はないけれど、昔からやりたかったことがある」など、未経験の分野での起業に挑戦する人もいます。
多くの起業家が起業のための資金調達として融資を受けますが、金融機関などが融資の可否判断として重視するのが、起業する事業の「実務経験があるかどうか」。
そのため未経験の分野での起業では融資の審査も厳しくなります。
では、業界未経験で創業融資を受けるにはどうすればいいのでしょう。
本記事では未経験業界での起業で創業融資を勝ち取るポイントを紹介していきます。
目次
未経験分野で創業融資を受けるのはやはり難しい
前述のとおり、創業融資ではこれまでの経験が重視されます。
経験のない分野で起業する人より、実務経験のある分野で起業する方が、創業融資を受けられる可能性が高いのが現実です。
その理由は大きく2つあります。
未経験では返済能力の有無が判別しにくい
融資する側にとって重要なのは、その事業主に返済能力があるかどうかです。
日本政策金融公庫など公的機関は、積極的に起業を支援する姿勢を取っていますが、とはいえボランティアではないので、返してもらえる見込みのない人にお金を貸すわけにはいきません。
返済能力の第一の判断材料となるのが、過去の実績です。
しかし創業時には事業経営の実績がないため、将来性の予測だけで返済の見通しを立てなくてはなりません。
そこで、「その事業での実務経験があるかどうか」が順調に利益を上げて返済できるかどうかの重要な判断基準となるのです。
必要なのは「未経験では身につかないこと」
実務経験があるかどうかが重視されるのは、主に次の2つが身についていると考えられるからです。
- 事業に関する知識やノウハウ
- 事業における危機管理能力
現場で実際に働いているからこそ得られる情報や専門知識、ノウハウがあるというのは、どんな仕事でも同じでしょう。
経験年数が長くなるほどそれは蓄積されていくのが普通です。
経験が長くなればそれなりの役職につく人も多く、であれば事業を継続していくのに必要な危機管理能力も養われているだろう、と判断してもらえる可能性が高まります。
いずれも、実務経験のない人に身に付けることは不可能なので、それだけハードルが高くなります。
どのくらいの経験があればいいのか
それでは、どれだけの経験があればいいのでしょう。
経験年数は長いほど有利ですが、最低でも、アルバイトなど非正規でもいいので1年以上の実務経験はほしいところです。
1年未満の短い経験年数では、知識やスキルが十分に備わっているとは見なされません。
今すぐにでも起業をしたいと思う人には厳しい現実ですが、金融機関が融資のOKを出さないとなれば、それはすなわち事業が成功するかどうかが危うい、ということでもあります。
融資のためだけでなく事業運営のためにも、副業やアルバイト、知人の手伝いなど何らかの手段で1年以上の経験を積んでおくことをおすすめします。
業界未経験で創業融資を受けるためのポイント
ここまで未経験の業界で融資を受けられる可能性が低い理由を挙げてきましたが、難しいのは事実であるものの、融資を受けるのはまったく不可能というわけでもありません。
この章では、未経験分野での起業でも創業融資を獲得するために、有利になるポイントを紹介していきます。
事業への熱意に行動が伴っている
起業しようと融資を受けるくらいですから、創業に対する熱意の強さはほとんどの人が持っています。
熱意はもちろん重要なのですが、それだけでは成功しない、というのは融資担当者が一番わかっているかもしれません。
熱意をカタチとして表す、何かしらの行動が必要です。
その具体的なカタチの1つが、実践的な創業計画書を作成することです。
テンプレートを埋めただけの計画書ではなく、リサーチや分析を綿密に行ったうえで実現可能性の高い計画が立てられていることが重要です。
そのほか、実務経験はないけれども資格は取得した、業界に関する本を読んだりセミナーに参加して同業者の話を何度も聞いたりしているなどの行動も、熱意の表れと見なされるでしょう。
預金をコツコツ貯め、なるべく多くの自己資金を用意しておくこともその1つです。
集客やマーケティングに詳しい
業界の経験がなかったとしても、売り方、売れるノウハウを知っているというのは大きな武器となります。
特にその業界が持つ課題をクリアできるような画期的な集客のアイデアがあれば、事業が成功する可能性も高いと見なされるかもしれません。
融資担当者には、そのマーケティングスキルを事業にどう活用するかを具体的にアピールすることが重要です。
まずは創業計画の時点でその知識を活かすことで、集客やマーケティングに詳しいということに説得力を持たせましょう。
マーケティングを十分に行い、説得力のある数字で予測し、効果的な集客方法も用意するなど、能力を実践的に使う必要があります。
判断力や行動力がある
事業を成功させるためには、実務経験だけではなく、経営者としての実行能力もなくてはいけません。
経営には、毎日のように判断や行動を必要とする場面がやってきます。
実務経験はあるけど、これまで指示に従ってしか仕事をしたことがない人より、実務経験はないけど自分で考え主体的・能動的に実践することが身についている人の方が高評価となる可能性もあります。
これまでの経験で、どんなプロジェクトをどのように進めてきたか、どんな課題をどんな方法でクリアしてきたかなどを思い出してみましょう。
事業経営と共通して活かせる部分を強調してアピールすることが効果的です。
業界経験者が経営関係者にいる
自身が未経験者でも、共同経営者や配偶者など経営に関わる人の中に業界経験者がいれば、融資審査でも有利に働く可能性があります。
特に家族に経験者がいれば、事業のさまざまな局面で経験を活かした適切な対応が可能となるでしょう。
自分の代わりに業界事情に精通し経験値があり、危機管理の視点も持っている人がいるとなれば、それもアドバンテージとなり得ます。
ただ、その実務経験者がいわゆる赤の他人である場合にはそのメリットは少なくなります。
その人がいつまでも辞めないという保証はないからです。
審査面談では、実務経験者が辞めてしまったらどうするのか、その対応についても聞かれる可能性があります。
予測されるリスクへの対策もしっかり検討しておきましょう。
M&Aなどを利用し、経験者に実務を任せる
起業を考える人の多くは、自分がプレーヤーとして独立し、経営も実務もこなしていくイメージを持っているのではないでしょうか。
しかし、実際には主にプレーヤーとして動き経営もする人と、オーナーとして人を雇い仕事を任せ、まとめていく人の2パターンがあります。
そこで候補に挙げられるのが、M&Aを利用した起業です。
M&Aは、企業や個人の事業を買収して、その事業の経営者となるものです。TOBのような敵対的買収のイメージが強いかもしれませんが、経営者が高齢となり継承者を探す円満なM&Aも数多くあります。
M&Aなら、その企業でもともと働く人をそのまま雇うこともできます。
実務経験のある従業員に実務を任せることで、経営者が未経験でも事業は継続できるので、融資で自身の実務経験のなさをカバーできる可能性も高まります。
創業融資を勝ち取る創業計画書の書き方
前章でも触れましたが、創業融資を勝ち取るための具体的な行動としては、計画を万全に立てて「創業計画書」という形に落とし込むことが重要です。
創業計画書は融資審査で必ず求められる書類であり、創業者としての熱意や考え方、経営者としての能力などを伝えて融資を受けるのに欠かせません。
とはいえ、計画書の作成は苦手な人も多いものです。
融資を獲得するためにはどのような創業計画書を作成すべきか、ここで押さえておきましょう。
数字を入れて具体性を持たせる
創業計画書には、経験を書く欄や仕入先・販売先などの取引関係を書く欄、必要な資金の額を書く欄や、事業の売り上げ見通しなどを書く欄があります。
それぞれ、なるべく具体的に記載することで実現性の高さが判断しやすくなります。
可能な限り数字を入れて説明してください。
数字を具体的に示すには、記入前の情報収集や調査なども欠かせません。
見通し能力の高さや数値の管理能力なども融資可否の判断基準となります。
事業の運営にどんな設備が必要で、いくらかかるのか、どの業者から仕入れ、その仕入れ単価はどれくらいで、どの程度の量が必要となるのか。
広告宣伝や人件費としてどれくらいの額が必要か。
客単価はいくらで、月何人の集客を見込み、売上はどれくらいになるのか。
予測であっても具体的に考え、想定しておく必要があります。
なおこのようや数値の根拠を説明する資料として「資金繰り表」を作成することもおすすめします。
資金繰り表でお金の流れが明確にわかれば、より説得力のある説明ができます。
根拠を入れて説得力を持たせる
前項の数値の記載に関しても同じことが言えますが、創業計画書に書く内容には根拠も必要です。
可能な限り根拠もわかる書き方にしておきましょう。
具体的な数字が記載されていても、「なぜこの額が必要なんですか」「どうしてこの額の売上が予想できるのですか」と聞かれて答えられなければ意味がありません。
また、その根拠は客観的であることも重要です。
自分がそう思ったから、自分の経験上こうだから、というのではなく、第三者からみても適切だと思えることが重要です。
例えば、創業計画書には「創業の動機」も記入します。
創業の目的やきっかけ、熱意をかけばいいのですが、ここで重要なのが「なぜそれが事業として成り立つと思うのか」という点です。
収益を得るには、提供する商品やサービスを買ってもらわなくてはなりません。
なぜそれを買ってもらえると思うのか、その根拠、第三者が見ても確かに、と思える根拠がなければ、商売として成り立つのかどうかの確証も持てないでしょう。
また、根拠ある説明ができる人なら、計画性や情報収集能力、論理的な思考能力などがある人であるという見方をしてもらえる可能性も高いです。
空欄を少なくして熱意を伝える
創業計画書の記載欄は、少なくとも3分の2程度は埋めることを意識しましょう。
余白が多いと「書くことがない=やる気がない、わからないことがあっても調べる努力をしない、計画性がない」などのマイナスイメージを持たれる恐れがあります。
インターネット上にあるひな形を写しただけのようにも疑われかねません。
もちろん、まったく余白がなくびっしり文字が並んでいる、というのも読みにくさという面でマイナスな印象となるので適度な文字量にしてください。
事業への熱意を持って融資を受けたいと訴えるため、根拠をもたせた説明をすれば、自ずと空白は少なくなるでしょう。
添付資料を用意してわかりやすくする
創業計画書は、いわば自分の事業をプレゼンし、協力を仰ぐためのツールのようなもの。
相手に思いを伝えるには「わかりやすさ」も重要です。
審査担当者も一人の人間なので、想いが伝わり心証が良ければ、何とか融資をしてあげたいという気持ちが働くかもしれません。
前述の通り、未経験で融資を得るには、創業計画書に数字や根拠を入れて具体的に書くことをおすすめしています。
しかし、そうやって創業への熱意を示そうとすると、スペースが足りないかもしれません。
そこで用意しておきたいのが、創業計画書に添付する別の資料です。
計画の内容をよりわかりやすく、根拠を持って具体的に伝えることができる資料を用意しましょう。例えば次のようなものです。
- グラフなどでビジュアル的に見やすい資料
- 職務経歴書
- 資金繰り表
- 会社案内
- (クリエイターの場合)ポートフォリオ
事業内容が説明しにくいようなものであれば、イメージ図や写真、グラフなどビジュアル的にわかりやすい資料を作ると親切です。
職務経歴では、未経験なら特に具体的に事業との共通点や活かせる能力などを伝えたいもの。職務経歴書を別に用意しておくことをおすすめします。
また、前にも触れた「資金繰り表」も経営者の考え方・見方を伝える材料として効果的に使えます。
すでに会社案内パンフレットなどを作ってある場合はその実物、webデザイナーなどクリエイターの場合は作品を集めたポートフォリオなどがあればそれも役立ちます。
創業計画書だけを持っていくより、内容についての資料があった方が「わかってもらいたい」という姿勢が伝わり、心証も良くなることは間違いありません。
まとめ
未経験業界での起業で融資を受けようとすると、高いハードルがあることは事実です。
しかし、未経験だというだけで融資が不可となるとは限りません。
その弱点を補うための対策を取りましょう。
例えばこの記事で紹介したように、熱意や事業の実現性が伝わる創業計画書を作成する、実務経験者が経営に関わることをアピールする、経営能力があることをアピールする、などの行動が融資を勝ち取るためのカギとなります。
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