どこの街にもおいしいパン屋さんがある現在の日本。お米が主食であることに変わりはないものの、食の欧米化、グローバル化からパン食を好む人も増えました。
自分もおいしいパンを焼いて売りたい、パン屋として街の活性化に役立ちたい、と思う人もいるでしょう。そんなとき、気になるのはやはりお金のこと。パン屋の開業には、どれほどの資金が必要なのでしょうか。
この記事では、パン屋の開業資金の目安や資金の調達方法について解説します。
目次
パン屋の開業資金の相場
出店する場所やお店の規模によって変わるものの、パン屋の開業には1000万円~2000万円程度が必要です。
内訳としては、店舗の取得費用や内外装の工事費、厨房などの設備資金、原材料費、人件費、広告宣伝費、運転資金などが挙げられます。
それぞれの資金の大まかな目安は次のとおりです。
費用項目 | 必要資金の大まかな目安 |
---|---|
不動産取得資金 | 400~800万円 |
内外装工事費 | 200~500万円 |
設備資金 | 設備資金 500~600万円 |
原材料費 | 40~60万円(毎月) |
人件費 | 10~20万円(毎月) |
広告宣伝費 | 5~20万円 |
運転資金 | 200~300万円 |
それぞれどういった費用なのかも見ておきましょう。
パン屋の店舗不動産の取得費用
パン屋の開業にかかる費用として大きな割合を占めるのが、パン屋の店舗となる不動産の取得費用です。
自宅と別の場所に店舗を借りて営業するケースや、自宅など所有する物件を店舗として使えるよう増改築するケースがあり、それによっても費用は大きく異なります。
パン屋の店舗物件を借りる場合の費用
賃貸物件を店舗として利用する場合には、物件の取得必要がかかります。
金額は家賃の6~15カ月分程度となるのが一般的です。
パン屋を始めるなら、敷地面積は狭くとも20坪くらいは欲しいところ。例えば20坪の物件で家賃が30万円なら、180~450万円程度の物件取得費用がかかります。
内訳は次のとおり家賃を基準として考えるのが一般的です。家賃を30万円とした場合の金額も併記します。
【例】家賃が30万円の場合
費用項目 | 金額の目安 |
---|---|
敷金・保証金 | 家賃1~8カ月分 (120~240万円) |
家賃保証会社への保証料 | 家賃0.5~1カ月分 (15~30万円) |
前払い家賃 | 家賃1~2カ月分 (30~60万円) |
不動産会社への仲介手数料 | 家賃1カ月分 (30万円) |
もちろん、出店する地域や立地条件、物件の広さ・新しさなどで金額は大きく異なります。
パン屋を手持ちの物件で開業する場合
店舗物件を賃貸する以外に、すでに所有している物件を利用するケースもあるでしょう。
例えば自宅の一部を増改築する、何らかの理由で過去に入手した物件が利用できるといった場合です。
物件を所有しているのであれば、家賃や敷金、保証金といった費用がかからず、開業時にはもちろん、運転費用も低く抑えられます。
ただ、その物件のもともとの使途や保存状況などによっては、店舗用に改装するために高額な費用がかかる可能性も高いです。また、立地が選べないことにもなるため、場所によっては売上につながりにくいおそれもあります。
立地が選べない分、商圏やニーズを見極めること、SNSなどを活用して十分な広告宣伝活動を行う必要性が出てきます。
パン屋の内外装工事費
物件を借りるにしても所有物件を使うにしても、内装工事は必要です。古かったり、前に営業していた別業種の店舗の外装になっていたりする場合には、外装工事も行わなくてはなりません。
物件を借りるにしても所有物件を使うにしても、内装工事は必要です。古かったり、前に営業していた別業種の店舗の外装になっていたりする場合には、外装工事も行わなくてはなりません。
用途が店舗でなかった通常物件の場合
1つめは、以前に店舗として活用されていない通常物件の場合です。
元の建物の雰囲気をどれくらい生かすか、開業する店舗に自身の希望やこだわりをどの程度反映させるのかなどによって工事費用は大きく変わります。
特に内装工事には、壁紙や照明などのビジュアル的な要素だけでなく、厨房設備や什器、電気・ガス・水道などのインフラ工事も含まれるため、デザイン性などを求めると大きなコストになることが予想されます。
通常物件においては、店舗に改装するために物件全体にわたる工事が必要となることから、内外装工事費用としては400~500万円程度は想定しておいたほうがよいでしょう。
以前の店舗の設備機器が残る居抜き物件の場合
内外装の工事費用がもっとも抑えられるのは居抜き物件です。居抜きとは、その物件の前の使用者が設備機器、家具などを残して退去した状態のこと。
残されたものを利用すれば、新たな工事費用の必要がなく、コストの大幅な削減になります。
居抜き物件の場合、200万円~300万円ほどを見ておくとよいでしょう。
ただし、実際に工事なく利用できる状態なのかを確認してから契約することが大切です。また、同じ轍を踏まないためにも、なぜ居抜きとなったのかを不動産業者に聞くなり分析したりする必要があります。
柱や壁、床など構造材だけのスケルトンの場合
ここでいう「スケルトン」とは、原状回復工事済みであり、以前に使われていた厨房機器などの設備や内装、床や天井などがすべて撤去され、建物の構造だけが残る状態をいいます。
店舗をゼロからデザインしたい場合には適した物件と言えます。しかし居抜きのように再利用できる設備などがないため、工事にかかる費用が高くなります。
通常物件ほどではないものの、300~400万円程度の工事費用は見積もっておきましょう。
スケルトンの場合も、居抜き物件と同様に前店舗が閉店した理由などを確認し、パン屋としての立地条件に適している物件であるか調べておくことをおすすめします。
パン製造のための設備資金
パン屋の設備資金には、大きく分けて厨房機器と小道具類、販売用備品類があります。
厨房機器は、オーブンやミキサー、ホイロ(発酵器)、冷蔵庫など。製造規模にもよりますが、400万円~500万円程度は見込んでおきましょう。
小道具類にはパンを作るために必要なパン型、天板、麺棒、スケール、ナイフなどがあります。最低限の道具類を揃えるだけでも、20万円~30万円くらいは必要です。
販売用備品類には、レジスターなどの決済機器のほか、来店客が店内で商品をピックアップするスタイルの場合には、客用のトングやトレーなどが必要となります。かかる費用としては10万円~20万円程度でしょう。
パンの材料費(パンの種類・規模でも異なる)
材料費は、作り手のこだわり、お店のコンセプトによって大きく異なります。一般的に必要なのは小麦粉、バター、砂糖、塩、ドライイーストや酵母類ですが、それぞれ産地や品質によって金額の高低差が大きいからです。
その他、リッチな生地にするための生クリームや牛乳、総菜パンやデニッシュなどにはチーズやハム、野菜やフルーツ、チョコレートやあんこ、クリーム類など、パンのバリエーションを豊かにするほど多種類の材料が必要になります。
費用は、売上の想定と原価率から考えます。パン屋の売上に占める原材料費の割合(原価率)は10~20%程度と言われています。
パンの製造量・製造規模によって変わりますが、1日あたりの売上を10万円に設定した場合には、材料費は1万円~2万円が妥当です。
人件費(スタッフを雇用するかしないか)
自分1人、もしくは夫婦や家族など身内だけでは店舗運営できない場合には、スタッフを雇用する必要があります。
パン屋の人件費は、1カ月あたりの売上に対しおおよそ30%~35%が目安です。例えば、毎月の売上を200万円に設定した場合は、人件費として使えるのが60万円~70万円程度となります。
とはいえ、人件費が多いほど利益率は少なくなるので、開店当初はなるべく雇用は最小限にしておくのが得策です。
雇用するにしても、フルタイムでなく繁忙時間帯だけのパートタイムで募集するなどするとよいでしょう。過剰な人件費を使わず、しかし店舗を回すのに無理のない程度にお願いできる人を確保したいものです。
広告宣伝費
広告宣伝費に多くの費用をかけたくない、と考える人は多いというのが現状です。しかし、飲食店経営で重要なのは、いかに集客と資金繰りをしていくかです。
広告宣伝費はまさに集客のための費用であり、ある程度の費用はかけないと売上につながりません。
例えばオープン前後に配るチラシ、お店のホームページ開設やグルメサイトへの登録、ショップカードやロゴの製作など。業者に頼むには少なくとも5万円~10万円は見積もっておかねばなりません。
無料で情報を発信できるSNSもぜひ利用したいところですが、SNSはこまめな情報発信が集客には不可欠であり、何をどのようにいつ発信するかにもコツがあります。
集客にはお金をかけるか手間をかけるか、どちらかは必須なのです。
当面の運転資金
どんなお店、どんな事業でも、開業後すぐに経営が軌道に乗ることは稀であり、少なくとも数カ月は赤字だったり予想の売上に届かなかったりというのが一般的です。
そのため、当面の運転資金の確保も必須です。
開店時に確保しておきたい運転資金の目安は、3カ月から半年分ほどと言われています。しかし、これはあくまで目安。半年分以上は持っておくとよいでしょう。
というのも、創業時の融資で知られる日本政策金融公庫によれば、黒字になるまでの平均期間は6.3カ月(2021年版「新規開業白書」)。それまでに資金が底をついてしまえば、それ以降に売上が伸びる可能性があっても続けられなくなります。
運転資金は、「売掛金+在庫(棚卸資産)-買掛金」で計算できます。また、例えば税理士など専門家と顧問契約を結ぶなら、顧問料も計算に入れなくてはなりません。
自身と家族の生活費なども忘れずに!
開業資金を考える上で、忘れてしまいがちなのが自身や家族の生活資金です。ありったけのお金をお店につぎ込んでしまい、黒字に転じるまでに生活がままならなくなり廃業を余儀なくされる人も少なくありません。
毎月にかかる住居の家賃や光熱費、食費や保険料など、毎月にかかる費用はもちろんのこと、車検や各種保険の更新、子どもにかかるお金や冠婚葬祭など、不定期や臨時に必要となる費用についても忘れないようにしてください。
開業資金を抑える8つの方法と注意点
パン屋の経営を初期で失敗しないために、開業資金をできるだけ低く抑え、運転資金に回しましょう。事業は小さく始めて徐々に大きくしていくのが成功のコツです。
開業資金を抑えるには、次のようにさまざまな場面での工夫が必要です。
- 物件を居抜きで探す
- 厨房設備や家具を中古品やレンタルで調達する
- パンの種類を絞って材料費を抑える
- 人を雇わず家族に手伝ってもらう
- 壁などの内装工事、家具などをDIYする
- エプロンやカーテンなどを自作する
- ロゴやチラシの制作などにクラウドサービスを使う
- 野菜など可能な材料を自家製にする
ただし、食品の衛生管理や安全性に関する費用、感染症などへの対策はおろそかにしてはいけません。営業許可や融資の可否にも関わりますし、店の信用にも関わります。どこでコスト削減が可能かはしっかり見極めてください。
また、パン屋には不可欠な材料費ですが、昨今は粉や乳製品、卵などあらゆる食品の価格が高騰するなどしています。できれば材料の質を妥協するのではなく、別の部分でコスト削減を図りたいものです。
資金調達には日本政策金融公庫の融資がおすすめ
パン屋の開業に必要な1000万円~2000万円のお金をすべて自分で準備するのは容易ではありません。金融機関からの融資を受けるなどして足りない資金を他から調達するのが一般的です。
資金調達方法にも複数の方法があります。中でも新たに事業を始める・店舗を開く際に活用したいのが、日本政策金融公庫の創業融資です。
日本政策金融公庫は政府100%出資の金融機関であり、個人や中小企業の支援を目的としています。中でも「新創業融資制度」は、無担保・保証人なしで融資が受けられます。
ただ、誰でも簡単に融資が受けられるわけではありません。自己資金として希望融資額の3割程度は求められますし、しっかりとした事業計画書を作成し、実現可能な売上予測を立てるなどする必要があります。公的金融機関とはいえ、返済能力が見えない人には融資できません。
ちなみに当サイトを運営するBricks&UKは、事業計画書の無料添削サービスを行っております。ぜひご活用ください。
パン屋の開業は費用を抑えて手堅くはじめよう
パン屋は人気の業態ですが、店舗物件の取得費用や設備費用など開業費用として1000万円~2000万円がかかるほか、当面の運転資金や生活費も考えておかねばなりません。
自己資金ですべてまかなうのは難しいため、なるべく抑えた費用で見積もったうえで、日本政策金融公庫による融資などを活用してください。
事業経営はスタートが肝心です。失敗しないために小さく始め、徐々に理想のお店を作り上げていきましょう。
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