Office365やAdobe Creative Cloudをはじめとする、サブスクリプションサービスが増え、ユーザーにとっても一般的なサービスとなりつつあります。
サブスクリプションサービスの導入には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
ユーザーと企業の両側から見てみましょう。
目次
ユーザー側のメリット
ユーザー側のメリットとしては以下のようなものが考えられます。
特に初期負担を抑えられるのは、ユーザーにとって導入の敷居を下げることにつながります。
- 初期負担を抑えられる
- 使わなくなったら解約可能
- モノを持たなくて良い
初期負担などを抑えられる
具体的な例として、Adobe CCを挙げてみましょう。
PhotoshopやIllustratorなどを単品で販売していた時代には、購入費用として数万円という初期負担が必要になっていました。
サブスクリプションサービスの導入によって、すべてのアプリケーションを導入しても月々5000円ですむため、初期負担を大幅に抑えられます。
また、アプリに付き物のバージョンアップにも金銭的負担が発生します。
サブスクリプションならば月々の料金を支払っていれば、バージョンアップのための負担が生じません。
使わなくなったら解約可能
アプリを導入しても、事情が変わって使わなくなるケースもありえます。
買い切りの時代は、使わなくなったアプリの料金は戻りませんでしたので、短期間の使用なら「高い買い物」になりました。
サブスクリプションなら、アプリを使わなくなったらでも解約が可能です。
解約すれば、それ以上の料金支払いは必要ではなくなります。
アプリを導入しても、短期間で使わなくなるケースもあるでしょう。
そうした場合、サブスクリプションなら支払いも短期間になり、買い切りと比べて金銭面での負担が抑えられます。
モノを持たなくて良い
レンタルビデオの場合、借りている間は場所を取りますし、返却の手間もかかります。
Amazon Primeなどの動画配信サブスクリプションなら、場所を取りませんし、返却の手間も不要です。
アプリについても同じことがいえます。
パッケージ版の場合はバージョンアップ前のアプリの箱などの処理に困りますが、サブスクリプションならそのようなことはありません。
また、いずれの場合も貸し出しや購入の場合には、店頭に出向く必要がありますが、サブスクリプションの場合は、すべてネットで完結するので手間が省けます。
ユーザー側のデメリット
一方で、ユーザー側にとって以下のようなデメリットもあります。
特に、サブスクリプションは「抱き合わせ」になるケースが多いことが目立ちます。
- 使用しないアプリも含まれている
- 解約するとサービスが利用できなくなる
使用しないアプリも含まれている
Office365の場合、WordやExcel、PowerPointだけでなく、Publisherなど使用者が必ずしも多くないアプリも含まれています。
サブスクリプション料金の中には、こうしたアプリの料金も含まれているわけで、ある意味無駄なお金を支払っていることになってしまいます。
こうした事情を踏まえ、Adobe CCはPhotoshopやPremierなどの単体プランを用意していますが、全部入りプランの4割程度の価格なのでお得感に欠けます。
解約するとサービスが利用できなくなる
パッケージ版のアプリは買い切りなので、一度購入すれば永久に使用できます。
最新版にこだわらなければ、OSが対応していないなどの事情が生じない限り、問題なく使えます。
ところが、サブスクリプションの場合は解約すると、アプリが利用できなくなってしまいます。
また、アプリに付帯するサービスについても、同様のことがいえます。
サブスクリプションに付帯しているクラウドストレージを利用している場合、解約すると使えなくなったり、容量が大幅に低下したりしますので、注意が必要です。
企業側のメリット
サブスクリプションは企業側にとってもさまざまなメリットがあります。
特に、長期的に安定した収益を得られるのは、大きなメリットだといえます。
- 参入障壁を下げられる
- 長期的な安定収入が見込める
- 利用者のデータが活用できる
参入障壁を下げられる
アプリ市場に新規参入した場合、パッケージ版の場合は買い切りということもあり初期負担が高く、参入障壁につながってしまうケースがあります。
サブスクリプションの場合は初期負担が小さいので、新規参入ベンダーの商品であっても、契約に心理的負担が小さくなるというメリットがあります。
このため、パッケージ版よりも顧客の確保がやりやすくなり、参入障壁を下げられるというメリットにつながります。
「一か八か」という要素が排除されるというわけですね。
長期的な安定収入が見込める
パッケージ版の場合、大きな収入が期待できるのはバージョンアップ後の限られた期間です。
それ以外の期間には収益が安定せず、バージョンアップ商法になってしまいかねません。
サブスクリプションの場合には、金額としては大きくなくても、毎月決まった金額が入ってきます。
時期によって収益に大きな差が出にくく、安定して売上が確保できるビジネスモデルになっているのです。
このため、企業にとっては収入の見込みが立てやすくなり、バージョンアップをはじめとする今後の事業計画も立てやすくなるというわけですね。
利用者のデータが活用できる
これはコンテンツ提供型のサブスクリプションに顕著な特徴です。
レンタルビデオ店などで売れ筋を調べるとき、利用者が限られていると「売れ筋」の見極めが難しくなります。
大手のコンテンツ提供型のサブスクリプションは、全世界が市場となっています。
つまり、顧客がどのようなコンテンツを利用したかというデータが、全世界から集まっているのです。
このデータを生かせば、次の売れ筋商品が分かりやすくなり、よりサービスが充実して利用者が増えていくという好循環につながる可能性があるのです。
企業側のデメリット
一方、企業側にもサブスクリプションのデメリットは存在します。
特に、継続的に利用してもらわなければ、大きな利益が見込めない構造になっているのが痛いところです。
- 初期の収益が小さくなる
- 常に新規サービスが必要
初期の収益が小さくなる
パッケージ版アプリは価格が高いため、新商品やバージョンアップ版の発売直後は収益が大きくなります。
これに対して、サブスクリプションはサービス開始直後の収益は小さくなります。
もし同じ人数が購入したと仮定すると、パッケージ版に比べてサブスクリプションは大幅に収益が小さくなってしまうのです。
サブスクリプションで大きな利益を出すためには、パッケージ版のように買ってもらえればOKというのではなく、長期にわたって使い続けてもらわなければならないのです。
常に新規サービスが必要
サブスクリプションで利益を出すためには、長期にわたって使用してもらうことが前提となります。
短期間で解約する人ばかりでは、大きな収益は期待できません。
長期にわたって使い続けるためには、常に新規サービスを提供する必要があります。
コンテンツ系ならば、頻繁に新作が見られるようにしなければなりません。
もし新規サービスの導入を怠れば、利用者が短期間で解約し、大きな収益は期待できません。
利用者は、何もしなくても利用し続けてくれるわけではないのです。
まとめ~ユーザー側も企業側も一長一短~
サブスクリプションはユーザーにとっては初期負担が抑えられ、企業側にとっても安定した収入が期待できるなど、双方にとってメリットのあるシステムです。
一方で、ユーザーは使用しないアプリも入手する必要がある、企業側は常に新サービスを提供する必要があるなどのデメリットがあることも、留意しておきましょう。