小売店や飲食店の経営者なら、日々の売り上げ管理や在庫チェック時などのタイミングで「回転率」を意識していることでしょう。
- 在庫を抱える小売店ならば、商品の販売による商品回転率
- 客の滞在時間数が売上に直結する飲食店ならばテーブルの回転率
それぞれ対象は異なるけれど、回転率が上がらないと利益は伸びないという点では同じです。
では、回転率の実態を調べたいと思ったら、どのように数字を割り出せばよいのでしょうか?
目次
基本的な回転率の計算方法とは?
業種・業態により異なりますが、おおよそ回転率の計算式は次の通りです。
小売り店の回転率の計算方法
在庫や仕入れで売上が全く変わってしまう小売店です。
小売店の場合売り物は商品。抱えている在庫がどれくらいのペースで回っているかを数値化します。
「仕入れた商品の回転率=一定期間においての売上高 ÷ 平均在庫」と計算します。
飲食店の回転率の計算方法
飲食店は効率よく利益を上げるためには、回転率を上げて売上を増やさねばいけません。
ファストフード店や牛丼店、ラーメン店などは特に客単価が低い分、より多くのお客様に利用してもらい商品を注文してもらう必要があります。
飲食店の場合、販売対象は提供するフードやドリンク。
「座席の回転率=1日の来客数÷客席数」と計算します。
回転率は高ければ高いほどいい?
回転率が高いということは、それだけ売り上げが伸びるということなので、高ければ高いほどいいと思いがちです。
しかし実は「回転率が高すぎる=在庫管理に失敗している」とも言えます。
安定経営のためには、適正な回転率を意識することが重要です。
そのため今回は、飲食店と一般小売店の回転率の考え方、回転率を産出する計算方法、回転率についての注意ポイントを中心にお伝えします。
覚えておきたい回転率用語
回転率と一口でいっても、様々な用語があります。
ここでは、よく目にする回転率に関する用語についてまとめました。
小売業界の場合
在庫回転率(商品回転率)
計算式は「在庫回転率=一定期間の売上高÷在庫金額」となります。
例えば1年間の在庫数が100、売上高も100ならば回転率(回転数)は一回です。すなわち回転率が1ならば1年で在庫が入れ替わることを意味しています。
この回転率の数値が高いほど、「よく売れる」すなわち在庫に残らず効率的に売り上げにまわっていることを意味しています。
また、在庫回転率を算出すると同時に、在庫の回転周期を求める「在庫回転日数」も産出しておくとより現状が把握しやすくなります。
「在庫回転日数=日数÷在庫回転率」で計算します。
在庫がゼロとなるまで、何日かかっているかが、回転率をコントールする指標になります。
飲食店の場合
飲食店の回転率の計算は、単純に考えれば「回転率=客数÷座席数」ですが、一般的に飲食店の場合には、小売店よりもさらに多く要素を考慮して回転率を産出する必要があります。
まず「客席回転(稼働)率」を把握する必要があります。
計算式は「実際の客数÷テーブル着席可能人数人数」となります。
たとえば4人掛けのテーブルを、2名客が利用している場合の客席稼働率は50%になります。
テーブルがフル稼働でも客数が少ない場合は、「売上=客数×客単価」の方程式に当てはめると、思ったほど売り上げは伸びません。
さらに仕入れた食材の回転率も考慮する必要があります。
このように飲食店では客の回転率、食材在庫などを含めて店舗全体の回転率を管理する必要があります。
回転率の見方「小売店の場合」
仕入れ次第で売り上げが変わる小売り店の場合、適正な商品回転率はもっとも優先すべき課題です。
不良在庫を防ぎ、また在庫不足を招かないためにも、商品回転率には日ごろから十分注意を払いたいものです。
ここでは、小売店の場合の回転率の注目ポイントや、注意ポイントについて確認しておきましょう。
小売店の回転率はここを見る!
小売店の商品(在庫)回転率の高さで、商品在庫がどの程度のサイクルで売り上げに変わっているかを把握することができます。
アイテム別の商品回転率や、月ごとの在庫回転率など、角度を変えてチェックすることで、仕入れをコントロールする指標としても利用されています。
決算書には、年度ごとに1年間の在庫回転率として「年間売上原価÷年間平均在庫」の数値を示しておきます。
また、在庫管理によく使われる指標に「棚卸し資産(在庫)回転日数」があります。
仕入れた商品在庫を売り切るまでかかる日数を示したもので、「一定期間の日数÷在庫回転率」で算出します。
回転率が上がりすぎた時の注意ポイント
在庫の持ちすぎは「売れない」すなわち不良在庫の増大を意味し、資金繰りや経営状況そのものにとってマイナスです。
商品回転率が高ければ、「仕入から販売までの期間が短い=よく売れている」ということになり、効率的な在庫コントロールが実現していることになります。
しかし「適正在庫数の確保」ができていないと、商品が高く売れる時期に在庫が足りないという事態に発展するかもしれません。
結果として、販売機会を逃してしまう可能性が生じます。
また競合他社に利用客が流れてしまう恐れもあります。
特に現在は新型コロナの影響が大きく、生産そして物流ともに不安定要素があることが否めません。
在庫を抱えず売り切ってしまいたい気持ちはわかりますが、適正な商品数を確保した在庫コントロールは、安定経営のために不可欠と心得ましょう。
回転率の見方「飲食店の場合」
先にご説明した通り、飲食店の店舗全体の回転率は「回転率=客数÷座席数」と「客席稼働率=実際の客数÷テーブル着席可能人数」を合わせて考えます。
また飲食店の売上は「客数×客単価」で割り出されますが、稼働率が低くなると効率が落ちます。
ここでは、飲食店の場合の回転率の注目するべきポイントや、注意点について確認しておきましょう。
飲食店の回転率はここを見る!
まず飲食店の店舗全体の回転率は「回転率=客数÷座席数」で割り出されますが、最初に見ておくべき数値は店内の座席の稼働率です。
4名テーブルに、1人の利用客が分散していては、客席の稼働率が高くても実際の売り上げには反映されません。
想定される顧客層に対応した、座席の配置を心掛けることで改善されることが期待できます。
例えば、ビジネス街のカフェなどで1人客ないしは2人客が多い場合は、カウンター席や2名席を増やします。
逆に、住宅地の洋食店などの場合は、家族客の来店が多くなることが予想されるので、4名席を増やすなどします。
大型店の場合は、宴会などの利用も多くなりますから、大部屋個室やロングテーブルなどを準備する必要があります。
このように稼働率を上げるための工夫で売り上げアップが期待できます。
そして、飲食店の売上は「利用客数×客単価」で算出します。
実際の客数「席数×回転率×稼働率」から、あまり売り上げが伸びないようなら、客単価を延ばすためのメニューの改善や、サービスセットの導入などの工夫が必要です。
またオーダーを受けてから調理、料理の提供スピードを上げ、オペレーションをよりスムーズに行い、提供時間を短縮することで回転率を上げるなども効果的です。
回転率が上がりすぎた時の注意ポイント
飲食店の回転率が上がると、客席がフル活用されている繁盛店の証ともいえます。
しかし売り上げがそれほどでもないのに、回転率の数値だけは非常に高い、という場合には「客席稼働率=実際の客数÷テーブル着席可能人数人数」が低くなって機会損失している可能性が高くなります。
4名掛けのテーブル席に、ひとりで着席している利用客が増えていませんか?
店内レイアウトの見直しや、書き入れ時のランチタイムなどには、相席案内の理解を求めるなど、営業時間帯に合わせた最適な改善策を検討しましょう。
まとめ~回転率の適正管理で安定経営を目指そう~
回転率が低いと売り上げが伸びていないことになりますが、逆に高すぎても在庫不足や座席不足によって利用客の不満を招いてしまいます。
適正な回転率を目指すためには常回転率の現状を把握する必要があります。ご紹介してきた回転率の計算方法についてまとめておきます。
- 小売り店の回転率は「商品(在庫)回転率=一定期間においての売上高 ÷ 平均在庫」
- 飲食店の回転率は「客席回転率=1日の来客数÷客席数」※売上は「利用客数×客単価」
回転率は、売上アップ引いては安定した店舗運営のための、基本的な指数となる重要な目安です。
適正な回転率を意識しながら、安定経営を目指しましょう。