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従業員のメンタルヘルス管理の重要性
今や従業員のメンタルヘルス管理は、企業が取り組むべき重要なミッションです。
なぜなら社会的に見ても、仕事において不安や悩みを抱え、ストレスを感じている人はとても多いからです。
仕事が心の負担となり精神障害を発症したり、最悪のケースでは自殺に至り、労災申請される事案も後を絶ちません。
そのため、厚生労働省からもメンタルヘルス指針が出され、国を挙げて職場でのメンタルヘルス対策を推し進めています。
企業が取り組むべきメンタルヘルス管理の基本
従業員のメンタルヘルス管理は、労働安全衛生法に基づいて企業が行う必要のある重要な問題です。
【労働安全衛生法】第69条 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めなければならない。
なお、メンタルヘルス管理は、中長期的スパンでじっくりと取り組むべきものです。
そのため、企業ではまず、従業員のメンタルヘルス管理に積極的に取り組むことを表明し、衛生委員会などでしっかりと調査し、審議したうえで、「心の健康づくり計画」を策定する必要があります。
「心の健康づくり計画」を策定
従業員のメンタルヘルス管理は、長い目で見て、継続的・計画的に行われなくてはいけません。
それに、従業員の意見を聞きながら実態に合った、現実的な取り組みを行う必要があります。
そこで、企業は次のような事柄が盛り込まれた「心の健康づくり計画」を策定します。
- 企業がメンタルヘルス管理を積極的に推進すると表明
- 職場における心の健康づくりの体制整備
- 職場における問題点の把握やメンタルヘルス管理の実施
- 従業員のメンタルヘルス管理のためのケアに必要な人材の確保、事業場外資源の活用
- 労働者の健康情報の保護
- 心の健康づくり計画の実施状況の評価や計画の見直し
- その他従業員の心の健康づくりに必要な措置
4つのメンタルヘルスケア
企業が取り組む従業員のメンタルヘルス管理においては、次の4つのケアを継続的かつ計画的に行うことが大切です。
1.セルフケア
すべての従業員による
- ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
- ストレスチェックなどによるストレスへの気付き
- ストレスへの対処
2.ラインによるケア
管理監督者による
- 職場環境の把握・改善
- 従業員からの相談・対応
- 職場復帰のためのサポート など
3.事業場内産業保健スタッフ等によるケア
産業医や衛生管理者などによる
- 従業員や管理監督者に対するサポート
- 具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
- 個人の健康情報の取り扱い
- 事業場外資源とのネットワークづくり・パイプ役
- 職場復帰のためのサポート
など
4.事業場外資源によるケア
事業場外の機関・専門家による
- 情報提供やアドバイス、サービスの活用
- ネットワークづくり
- 職場復帰のためのサポート
など
従業員のメンタルヘルス管理の進め方
従業員のメンタルヘルス管理のために、前述の4つのケアを適切に行うためには、積極的に次のような取り組みを進めることが重要です。
その際には、個人情報保護に配慮しつつも、社内の関係者の連携が欠かせません。
メンタルヘルスケアの教育研修・情報提供
ストレスやメンタルヘルスに関する正しい理解が大切なので、企業は管理監督者を含むすべての従業員に対し、セルフケアのための教育研修や情報提供を行うなどのサポートをしてください。
なお、メンタルヘルスについては家族の対応も重要になってきますので、従業員の家族への情報提供もあるといいですね。
また、ストレスチェック制度を導入するなどして、ストレスへの気付きやその対処へとつなげましょう。
職場環境等の把握と改善
従業員のメンタルヘルス不調の原因はさまざまですが、不調を未然に防ぐためには、ストレスチェックを活用し、職場環境はどうか、改善すべき点はないか、部署ごとに正確に把握しておく必要があります。
ストレスチェックの結果は、集団分析することにより、上手に仕事をコントロールできている部署がどこで、適正な仕事量を超えている部署はどこか、適正な労働時間でまわせていない部署はどこかといったことがわかります。
さらに、職場内にハラスメントがないか、人間関係は良好かなど、職場環境を適正に評価して、問題点を洗い出し、改善に向けて早めに動き出してください。
メンタルヘルス不調への気付きと対応
メンタルヘルスの管理のためには、ストレスの要因を取り除いたり、ストレスを軽減するための予防策を講じることが重要です。
また、万が一、メンタルヘルスの不調に陥っている従業員がいる場合には、できる限り早く発見して適切な対応を取る必要があります。
というのも、メンタルヘルスの不調は放置すればするほど深刻化するからです。
早く気付き、専門家につなぐことがとても重要です管理監督者は、従業員のいつもと違う様子に気を配り、労働時間管理や職場環境の整備をしっかりと行いましょう。
必要であればセルフチェックの機会を作り、相談対応をしたり、場合によっては専門家へつなぐなど、適切な対応ができるようにしてください。
職場復帰における支援
メンタルヘルスの不調で休んでいた従業員がスムーズに職場復帰して、仕事を続けられるようにするには、企業側の手厚いサポートが必要です。
衛生委員会などで調査・審議して、職場復帰支援プログラムを策定し、実施するための体制を整備してください。
そして、プログラムを組織的に実施し続けてください。
企業として従業員のメンタルヘルス管理で注意すべきこと
企業として、従業員のメンタルヘルスの管理をすることはとても重要なのですが、注意すべきこともあります。
個人情報保護への配慮
メンタルヘルスの管理をするためには、従業員の健康情報を含む個人情報に触れることになります。
センシティブな情報ですので、個人情報の保護には十分に配慮しなくてはいけません。
従業員の個人情報や、ストレスチェック制度による健康情報を取り扱うにあたっては、個人情報の保護に関する法律及び関連する指針等を遵守し、適切に取り扱いましょう。
不利益取り扱いの禁止
メンタルヘルスの管理により知りえた従業員の心の健康情報は、その人の健康を確保するために利用するための情報です。
そのため、心の健康情報をもとに不利益な取扱いを行うようなことは絶対にしてはいけません。
労働者の心の健康情報を理由に行う、次のような不利益な取り扱いについては、合理的なものとはいえないため禁止されています。
- 解雇する
- 期間の定めのある従業員の契約を更新しない
- 退職勧奨を行う
- 不当だと判断できるような配置転換や降格など役職の変更を命じる
- その他労働契約法等の労働関係法令に違反する措置を講じる
まとめ
従業員のメンタルヘルス管理は、しっかりと実施することで、企業の生産性がぐんと上がるといわれるほどなので、企業にとってはとても重要なミッションです。
そこで、この記事では従業員のメンタルヘルス管理について解説しました。
企業が取り組むべきメンタルヘルス管理の基本的なことから、その進め方、注意すべきことについてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。