飲食店の経営を始める目的はさまざまですが、どの飲食店にも共通する目的といえば「利益をあげること」ですよね。
しかし当然のことながら、事業で利益を得た場合には、その金額に応じた税金も納めなくてはいけません。
利益をより大きくするには、出ていく費用、つまり経費を抑える必要があります。しかし利益が大きくなるほど税金の額も高くなるため、経費をどう使うかが重要な課題となるでしょう。
もちろん、どんな支出でも経費になるわけではなく、飲食店経営に必要な支出であると税務署に認めてもらえるものでなければ経費にはできません。
では、飲食店経営で必要となる経費にはどんなものが当てはまるのでしょうか。この記事で確認しておきましょう。
目次
まずは知っておきたい2つのキーワード
そもそも経費とは
経費とは、事業を行う上で必要な費用のことです。
事業に関係のない個人的な支出は経費として計上できないので、飲食店を経営する上で必要な支出であるかどうかがポイントです。
例えば、飲食店経営者が家族でのプライベートな食事でレストランに行くときに支払ったタクシー代。これを接待交際費などとして経費計上することはできません。しかし、経営する飲食店の食材の仕入れ先を増やすために会食の機会を設けた、という場合には経費として認められます。
もちろん、常識的な金額でなければいけません。
つまり、飲食店経営に関わる支出であり、かつそれが常識的な金額であれば、経費として認められるのです。
減価償却とは
経費を考えるのに欠かせないのが「減価償却」です。年月を経るとともにその価値が下がる資産について、減価償却が適用されます。
事業に必要な建物や設備、機械装置や車、備品などの資産を取得した場合、その費用は全額を一度に経費とするのではなく、資産がつかえる一定の期間(使用可能期間)において分割し、各年で必要経費に計上するものです。
飲食店の「開業」にかかる必要経費とは
はじめて飲食店を経営するには、まず飲食店を開業するところから始まります。開業時に必要経費となる費用にはどんなものがあるか、勘定科目で確認しておきましょう。
繰延資産償却費
事業のために要した費用のうち、それによる効果が1年以上続くものを「繰延資産(くりのべしさん)」と呼びます。飲食店を始めるのにかかった費用「開業費」は、繰延資産として資産計上し、その年に償却する分を「繰延資産償却費」として経費計上できます。
対象となるのは主に次のようなものです。
- 店舗物件の取得費用(貸借契約料など)
- 食器・テーブル・椅子などの備品(10万円未満)
- 保健所の営業許可取得費用
- 各種調査費用
- 調理人トレーニングのために購入した食材、試食に要した費用
- 店舗スタッフのトレーニングに要した人件費
- 店のホームページの制作費
- メニューや店舗の広告宣伝費用
- プレオープンイベントに要した食材費
繰延資産償却費は、原則として60カ月の月割計算です。ただし任意償却といっていつ償却しても問題ないため、当初の開業費の金額のうちその年度までに経費としていない金額を全額償却することも可能です。
減価償却費
10万円以上の内装費や厨房機器、絵画や彫刻などの美術品等は資産計上し、その年度に償却する分を減価償却費として経費計上します。
減価償却の期間については、償却する資産ごとに耐用年数が決められています。
飲食店の「経営」にかかる必要経費とは
開業した後、飲食店を経営していくのに必要な経費には、次のようなものがあります。
仕入れ費用
食材や飲料を仕入れるための費用で、期首在庫棚卸高に仕入金額を加算し、期末在庫棚卸高を引いて売上原価を算出します。
仕入れ費用は、売上に直接関係する費用なので経費ではありませんが、大きな費用のため紹介しています。
租税公課
自己所有の店舗・土地にかかる固定資産税や、飲食店営業に必要な自動車の自動車税など、飲食店経営に関わる税金や、組合費、会費を租税公課といいます。
印鑑証明書や住民票の発行手数料なども含まれます。
水道光熱費
飲食店経営にかかる水道料金、電気代、ガス代などです。
旅費交通費
仕入れや店の用事を済ませるために使用する電車、バス、タクシーの運賃や、自動車による移動に有料道路を使用した時の料金などが該当します。
通信費
店の固定電話や携帯電話の料金、インターネットに関する費用、ダイレクトメールを送る際の切手やハガキ代などが通信費に含まれます。
広告宣伝費
チラシやネット広告など、不特定多数の人に対する宣伝に使われる費用です。
接待交際費
顧客や仕入れ先など飲食店経営に関わる人に対する接待、慰安、贈答のために支出する費用のことです。
損害保険料
店舗や厨房機器、備品にかける火災保険や地震保険、飲食店経営による事故を補償する賠償責任保険、店の自動車にかける自動車保険などの損害保険料です。
修繕費
店舗や厨房機器など、店の資産を維持・修理するために支出する費用です。
消耗品費
取得価格10万円未満で耐用年数1年未満の事務用品や、トイレットペーパーやおしぼりなどの備品、ガソリン代などが消耗品費です。
おしぼりはサービス費、ガソリン代は燃料費や車両費などの勘定科目を作ってもよいでしょう。
減価償却費
店舗や内装費、自動車などの資産の、その年度に償却する分の費用です。
福利厚生費
従業員のために支出する費用のうち、給与やボーナス以外のものをいいます。健康保険や労災保険、雇用保険の事業主負担分といった「法定福利」の費用と、住宅手当や慶弔見舞金、レクリエーション費用など「法定外福利」の費用とがあります。
ただし、福利厚生費として扱うには条件があります。それを満たせば、たとえば従業員の食事である賄いも、福利厚生費に含まれます。
その条件は、従業員が費用の50%以上を負担していること、会社の負担額が1カ月あたり3,500円(税抜)以下であることの両方を満たしていることです。
条件を満たさなければ現物支給として給与扱いとなってしまいます。
給料賃金
従業員に支払う給料、基本給や残業手当などのことです。
利子割引料
飲食店を開業、経営する上で借入をした場合に支払う利息(金利手数料)や、手形を現金に換える際に差し引かれる割引料などです。
地代家賃
土地や建物を借りている場合に支払う地代や家賃のことです。
貸倒金
取引先から回収不能になった売掛金です。
クレジットカード手数料
クレジットカード決済の際の手数料です。
サービス費
有線放送の受信料や、店内装飾のための生花、新聞代や雑誌代など、客へのサービスとして使うものの費用です。
おしぼり代などをサービス費として扱うこともできます。
衛生管理費
害虫駆除に使用する殺虫剤や、ユニフォームのクリーニング代など、衛生上必要と認められる費用です。
雑費
少額かつ他のどの勘定科目にもあてはまらない経費です。
まとめ
飲食店の開業で経費となるものについて紹介しました。
上記の勘定科目に当てはまるもの、かつ事業で必要だと認められたものが経費となります。
しかし実際に経営をしていく中では、どれにも当てはまらない費用が必要になるケースもあるでしょう。経費として扱えるのか、どの勘定科目にすればいいのか悩むかもしれません。
そんなときに役立つのが、経理や税務のプロである税理士などの専門家です。開業に向けた準備で困ることがあれば、ぜひ専門家を頼ってみましょう。