
飲食店スタート時には忘れずに「開業費の経費計上」
これから飲食店を開業しようとしている方々、きちんと把握していますか?開業費用。
店舗や駐車場などの設備費用、試作品用の食材仕入れや備品などの消耗品費、ほか開業にかかる費用は高額かつ多岐にわたります。
「知らない間にお金が消えた」
「購入した内容を把握していない」
などという声も珍しくありません。
開業費をきちんと把握しておくことで、様々なメリットが生まれることをご存知でしょうか。
開業費を把握することは節税につながる
開業費とは、「事業を開始するまでの間に、開業準備のために特別に支出する費用」のことをいいます。
例えば、お店のオープンに際しての広告費などがこれに当たります。
開業費と聞くと、費がつくせいで経費の一種と思われがちですが、じつは開業費は「繰延資産(くりのべしさん)」というものに分類されます。
繰延資産とは、ざっくりいうと「一度に支払った経費のうち、数年間はその効果が続くもの」になり、経理上ではその効果が続く年数に分割して経費化していくものです。
高額で数年間使用できるものである「減価償却資産」と似たような取扱いですね。
開業費の経理管理はどうする?
開業費に該当する項目の経費が発生した場合は、「開業費」として資産項目に計上します。
後で確認しやすい貴重方法は、個別の支出ごとに記録しておくことです。
しかしあまりにも項目が多く、すべてを記録することが難しい場合は、明細書ごとに一括で開業費として記帳してもよいでしょう。
決算時の開業費はどう処理する?
決算時には、繰延資産(開業費)を「繰延資産償却費」として経費化していくことになります。
- 60か月の均等償却
- 任意償却
のいずれかの方法を選択することとなります。
このうち広く利用されているのが「任意償却」です。
任意償却には経費として計上する金額の制限がなく(開業費の金額以内)実際に支出があった年に全額償却してもOK、他の都市に焼却してもOKと解されます。
つまり、売り上げによって調節が可能なので「損益通算」することができます。
【参考:国税庁ホームページ「償却期間経過後における開業費の任意償却」】
覚えておこう!開業費にできない項目
仕入れにかかる費用
試作品以外の食材にかかる費用は、開業費用に含まれません。
店舗で提供する料理の、食材を仕入れるための費用は「販売原価」となります。
店舗の敷金や礼金
敷金や礼金は、残念ながら開業費用には含まれません。それらは「店舗撤退時に返却される」費用だからです。
経費として計上されることはなく(勘定科目としては敷金・保証金(資産)が該当する)したがって開業費に含むことはできません。
小さな出費もしっかりと記録に残そう
このように開業費は任意償却が選べるので、開業時の多額な支出を「損益通算」することが可能です。
どんな小さな出費も、きちんとレシートや領収書を残し、開業費として別途計上し、しっかりと記録を残しておきましょう。
この記事では、飲食店を開業する人のために開業費把握の重要性、そして実際に開業時の経費についてお伝えします。
飲食店開業時の経費「店舗物件取得費」
店舗物件を契約する際の「(開業前に発生した)家賃」「仲介手数料」は開業費として計上できます。
開業費はあくまでも、開業準備のために支出する費用としてみなされるもの。
開業後の家賃や、後で返却されるSHIKIKIN礼金などは対象外となりますから注意しましょう。
飲食店開業時の経費「店舗工事費」
開業費用に計上する費目の中で、おそらく最も大きなウェイトを占めるのが店舗準備のための工事費用その他でしょう。
建物の外観はもちろん、内装費や厨房機器の整備など1,000万円前後かかることもあります。
創業融資なども視野に入れながら、資金準備は余裕をもっておきたいですね。
飲食店開業時の経費「開業前の調査費用」
店舗を出店するにあたっては、立地調査および競合店調査を行うことが普通です。
候補地に出向いたときの交通費や、関係者との打ち合わせにかかった費用については開業費として計上可能です。
飲食店開業時の経費「試作用食材仕入れ費用」
食材・商品の仕入れは通常の仕入れとして計上し、開業費には含まれません。
しかし、オープン前の試作品製作や調理練習のために準備した食材、かかった光熱水費は開業費として計上可能です。
飲食店開業時の経費「諸手続き費用」
飲食店を始めるときには、様々な許認可の取得が必要となります。
まず保健所の営業許可は、どのジャンルの飲食店にも必須です。
お酒のサービスや深夜営業を提供する場合には、管轄の警察署で「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」の届出が必要となってきます。
これらの開業前の許認可相取得手続きにかかる費用は、開業費として計上可能です。
飲食店開業時の経費「人件費」
店舗オープン前には、何かと人手が必要となります。
またスタッフを募集するなら、バイト情報誌などの掲載料がかかります。
さらに採用したスタッフには、配膳や席案内、接客マナーなどのトレーニングが必要です。
これらの人件費関連の費用は開業費用として計上可能です。
飲食店開業時の経費「広告費」
店舗オープンにあたって、何らかの広告宣伝を打つことが普通です。
広告費には、お店の案内看板やメニューなども含まれますし、集客のために必要なホームページ費用なども含まれます。
開店周知に関する広告費用
新規開店する情報を広めるには様々な手段があります。
新聞などに入れる「広告」や路上配布用のチラシ、また地域のフリーペーパーへの広告出稿などの紙媒体が主流でした。
現在は、飲食グルメ情報サイトへの登録料などを、さらに重要なコストとするお店が増えてきました。
これらはすべて開業費として計上可能です。
プレオープンパーティ費用
開店前に近隣のお店や住民の方、取引先などを集めてプレオープンパーティを開催するお店も多いです。
当然、店の広告宣伝活動の一環ですから、開業費用に計上可能です。
メニューやパンフレットの制作費用
新規開店時に準備するメニューやパンフレット、ショップカードなどの費用も意外と大きな出費となります。
こちらも開業費用として計上可能です。
ホームページ制作費用
グルメサイトの情報ページだけ、というお店も少なくありませんが、自店舗ホームページを持っていると、より広告宣伝に効果的です。
自由にカスタマイズできるので、情報発信しやすくお客様との距離が近くなります。
開業にあわせて立ち上げたホームページ製作費用は、開業費として計上可能です。
まとめ~開業経費把握でスムーズな開店準備が可能~

開業費として掛った経費を記録し、仕訳しておくことは後々の節税にもつながる重要事項です。
面倒ではあるけれど、あらゆるレシートや領収証の類は、どんな小さな金額のものでもまとめて保管しておきましょう。
ここで、開業費用を計上しておくことの重要性をまとめておきます。
- 開業費は「繰延資産」として任意償却できる
- 任意償却によって黒字年の節税効果が期待できる
また飲食店の開業費用として主だった項目をまとめておきます。
1.店舗物件取得費
2.店舗工事費
3.開業前の調査費用
4.試作用食材仕入れ費用
5.人件費
6.広告費
ご説明してきたように、任意償却が可能な開業費は上手に利用することで大幅な節税効果が期待できます。
よくよくお店の売り上げ事情など考慮して、上手に開業費計上のしくみを利用したいですね。

