今や10代、20代で起業することが珍しくない時代になりました。
IT業界を中心に若手起業家の成功事例がメディアなどで数多く紹介されており、それに触発されている人もいることでしょう。
ただ、いざ起業しようとなると、何から始めればよいのかどのような準備が必要なのかなど不安を感じる人も多いと思います。
本記事では、起業を考えている、あるいは起業に向けた情報収集をしている若い世代の人が知っておきたい起業支援制度について解説します。
目次
近年、若者の起業が増加中
日本政策金融公庫が公表した「2021年度起業と起業意識に関する調査」によると、20代~30代の起業比率がそれ以上の年代よりも多いという結果が得られています。
特に起業を本格的に始めていこうとする人の割合は、これら若い世代において顕著に表れています。
例えば「調査時点の年齢」という項目で、起業家では29歳未満が全体の19.8%で30歳代まで含めると38.2%。
事業に充てる時間が35時間未満であるパートタイム起業家では、29歳未満だけでも37.0%と最も多く、30歳代まで含めると6割近い数字になっています。
このことから、特に副業やプチ起業と呼ばれるような小規模な起業において、若年層が占める割合が非常に大きいことが見て取れます。
若手の起業家が増えつつある理由
このように若手の起業家が増えているのはなぜでしょうか。その理由について解説します。
理由.1 働き方や価値観が多様化している
近年は「ワークライフバランス」や「働き方改革」などといった言葉に代表されるように、それまでのいわゆる「会社に尽くす」働き方から、個々の事情に応じた多様な働き方を目指す動きが社会全体に根付いてきています。
20代、30代を中心とした若い世代ではこのような考え方や価値観に共感し、自分らしく自由に働ける環境を求める人が増えており、このような傾向が起業の原動力になっていると言えます。
「2021年度起業と起業意識に関する調査」でも起業動機の回答として、「自由に仕事がしたかった」(起業家:61.1%、パートタイム起業家:29.5%)が最も多い結果となっています。
理由.2 家庭を持ってからでは起業しにくい
一般的には、結婚して家庭をもつと夫婦生活や家事・育児などの家庭生活が優先事項となり、時間もお金も自由に使うことができなくなることから、なかなか起業に踏み切れないといった状況になりがちです。
特に、安定した家庭生活を捨ててリスクのある起業を行うことは、現実的には難しい選択と言えるでしょう。
そこで、お金も時間も自由にできる若いうちに、起業にチャレンジしておこうと考える人が増えているのです。
理由.3 起業のハードルが低くなってきた
現代ではパソコンやスマートフォンなどで情報検索をすれば、ビジネスの成功事例や若手起業家の情報など、起業に関するさまざまな情報やノウハウなどをある程度簡単に手に入れることができます。
このような情報化社会の到来によって、どのようなビジネスが流行っているのかなど世の中のトレンドも把握しやすくなり、若い世代を中心に起業を身近に感じる機会が多くなりました。
また、アマゾンや楽天市場のようなECサイトの普及により、手軽にビジネスを始められる環境も整えられたことも、起業のハードルを大きく下げるきっかけになったと言えるでしょう。
理由.4 国が支援制度で後押ししている
国の起業支援制度も大きな要因の1つです。
例えば、国が認定する「認定支援機関」では、商工会議所や商工会に加え、税理士や公認会計士、社会保険労務士、弁護士のほか銀行や信用金庫などの金融機関がチームとなって、中小企業に対して幅広く専門性の高いサポートを行っています。
また、経済産業省が運営する中小企業向けの支援ポータルサイト「ミラサポ」では、起業に関する情報や、先輩経営者や専門家と情報交換ができるコミュニティ機能などを提供しています。
なぜ国が若者の起業を支援するのか
国が起業を支援する大きな理由として「地域経済の活性化」と「雇用機会の創出」があります。
これらは今後の日本における大きな課題である、少子高齢化による労働人口の減少に対する対策であり、国にとって都市部に比べて過疎が進んでいる地方で若者の起業を増やし、いかに人口流出を防ぐかが重要な課題となっているのです。
そして、このような取り組みは地方自治体でも行われています。
例えば、神奈川県では「いかに若者の起業を増やすか」という課題のもとで、若者の起業の障害となっている主な要因を分析し、それらの要因に対する対応策を講じながら、起業支援のための社会環境づくりを行っていこうという取り組みが論じられています。
起業家たちが開業時に苦労したこと
日本政策金融公庫が発表した「2021年度新規開業実態調査」のアンケート結果によると、開業時に苦労したこととして、1位が「資金繰り・資金調達」、2位が「顧客販路の開拓」、3位が「財務・税務・法務に関する知識の不足」が上位に挙げられています。
このうち、1位の資金関連や3位の財務等の知識不足については、支援制度などを上手く活用することである程度解消することができるでしょう。
次章で関連する支援制度についてご紹介します。
なお前述の「2021年度起業と起業意識に関する調査」では、起業の際に求める支援策として、資金面よりも経営情報・スキルを挙げる回答が多かったことから、起業においては資金面以外の支援も求められていることが明らかとなりました。
若者におすすめの資金調達に関する支援制度3選
若者が起業資金を調達する場合の、おすすめの支援制度を解説します。
女性、若者/シニア起業家支援資金
日本政策金融公庫が国民生活事業の一環として、女性、35歳以上または55歳以上の人を対象として、新規開業資金を特別利率で融資する支援制度です。
資金の使いみちが新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金である場合とされており、最大で7,200万円(運転資金は最大4,800万円)の融資を受けることができます。
返済期間は、設備資金の場合には20年以内(うち据置期間が2年以内)、運転資金の場合には7年以内(うち据置期間が2年以内)と設定されています。
また新たに事業を始める人の場合には、次に紹介する「新創業融資制度」を併用することも可能です。
なお、公庫の通常の創業融資と女性、若者/シニア起業家支援資金では利率を比較すると、下記のような違いがあります。
公庫の通常の創業融資 | 2.03~2.70% |
女性、若者/シニア起業家支援資金 | 1.63~2.30% |
新創業融資制度
同じく日本政策金融公庫が提供し、新たに事業を始める人または事業開始後税務申告を2期終えていない人を対象として、無担保・無保証人で利用することができる支援制度です。
資金の使いみちが新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金である場合とされており、最大で3,000万円(運転資金は最大1,500万円)の融資を受けることができます。
なお新たに創業する人の場合には、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金)を確認できることが要件となっていますが、現在勤務する企業と同じ業種の事業を始める場合などはこの要件を満たすとされています。
新規開業資金
同じく日本政策金融公庫が提供する支援制度であり、女性、若者、シニアや廃業歴等があり創業に再チャレンジする人、中小会計を適用する人など、幅広い人を対象としているのが特徴です。
新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の人が対象となっており、融資の限度額や返済期間は「女性、若者/シニア起業家支援資金」と同じ条件が設定されています。
利率は「基準利率」とされていますが、Uターン等により地方で新たに事業を始める場合や、女性や35歳未満または55歳以上の人などの場合には特別利率が適用されます。
こちらも新たに事業を始める人の場合には「新創業融資制度」との併用が可能です。
財務・税務・法務のサポートをする専門家
先に紹介した起業家のアンケートにもあるように、起業の際にあったらよいと思う支援策で、最も高い割合を占めているのが財務などの法律関連の相談対応です。
このような法律関連の困りごとの解決には、専門的な知識や知見が必要となるので、以下に挙げるような専門家のサポートを積極的に活用しましょう。
財務・税務・経営コンサルなら「税理士」
税理士は、税務関係の書類作成や提出代行などを行う税務の専門家です。
税理士には、決算書や確定申告書類の作成や、帳簿の記帳代行、財務会計や経理関連のサポートなどを依頼することができます。
また創業時に重要な資金調達の際にも、補助金や助成金の最新情報を入手したり、事業計画書策定のアドバイスを受けたりする場合にも税理士を活用することができるでしょう。
このように税理士は、経営における資金繰り・資金調達や日々の節税対策など経営全般に関するアドバイスやコンサルティングに対応してくれるので、起業時だけでなく起業後においても頼りにしたい専門家と言えます。
そのため、創業時から常に相談できる顧問税理士をつくっておくことをおすすめします。
企業に関する法律事務なら「司法書士」
司法書士は、法務局や裁判所などに提出する書類の作成や登録手続きの代行などを行う法務の専門家です。
特に起業する際には、会社の定款作成や会社設立登記の手続きサポートで相談するケースが多いと思われます。
また司法書士には、起業後も会社経営で発生し得る法的トラブルや法的紛争を、未然に防ぐための法律上の事前防止策や、トラブルや紛争が発生した後の対処のための法律業務を相談することができます。
このように司法書士は、会社設立手続きや設立後の会社経営に関わる法律事務全般について相談したい場合に頼りになる存在です。
会社設立、許認可申請なら「行政書士」
行政書士は、役所などの行政機関に提出する書類の作成や申請手続きの代行などを行う専門家です。
起業の際には、会社設立の代行手続きや定款の作成などでサポートを依頼することができます。
ただし、登記手続きの代行は行政書士には依頼できず、司法書士のみが対応できるので注意が必要です。
行政書士はさまざまな申請書類の作成や手続きの代行を行えるので、営業許可証の申請など創業に必要な手続きや必要な申請書類についての相談に応じてくれます。
前述の申請代行だけではなく、資金融資を受ける際に必要となる事業計画書の作成などにおいてもアドバイスを求めることも可能です。
このように行政書士は、創業時や事業開始後に必要となる手続きなどについて気軽に相談できる専門家といえるでしょう。
創業融資からセミナー、イベントまで「商工会議所」
これまで述べた専門家以外で、起業の際に身近な相談相手として活用できるのが商工会議所や商工会です。
全国どこの地域にも商工会議所か商工会が設置されており、入会することで起業する段階から企業や経営に関するさまざまな相談をすることができます。
特に、資金調達や融資に関する支援や起業・経営に役立つセミナーやイベントなどを開催しており、起業経験や社会人経験が少ない若手起業家にとってはありがたい存在と言えます。
起業家に対する具体的な支援内容はそれぞれの商工会議所などで異なるため、該当する地域ではどのような支援が行われているか、予め確認しておくと良いでしょう。
全国各地で行われている創業支援
既に国による支援制度について解説しましたが、国以外でも充実した支援制度を提供する地方自治体などがあるので紹介します。
内閣府「地方創生起業支援事業」
内閣府が旗振り役となり、地方創生の一環で行う起業支援事業です。
この支援事業は地域の課題に取り組む「社会性」「事業性」「必要性」の観点をもった起業等(社会的事業)を支援することを目的としており、対象者には起業の伴走支援と事業費として最大200万円の助成金が支給されます。
対象事業は、子育て支援や地域産品を活用する飲食店、買い物弱者支援、まちづくり推進など地域の課題に応じたものが想定されています。
「スタートアップ都市推進協議会」が誕生
スタートアップ都市推進協議会は、福岡市、広島県など8つの地方自治体が参加して平成25年12月に設立されました。
起業や新たな事業などの「スタートアップ」に先進的に取り組む各参加自治体が、地域の個性を活かしたロールモデルとなり、経済関係団体とも連携し、日本全体をチャレンジが評価される国に変えていくことを目標としています。
ベンチャー企業と大企業・海外の若手経営者・投資家等とのマッチングイベントや、小中高校生・大学生のチャレンジマインドを醸成するためのイベントなどが行われています。
東京都はビジネスプランコンテストが充実
例えば、東京都が主催する「TOKYO STARTUP GATEWAY」では、15歳から39歳までを対象に、起業を目指すアイデア・プランに対して最大で100万円の創業資金の提供やサポーターによる支援メニューの提供などが行われています。
その他にも、中野区や荒川区が行うビジネスプランコンテストでは、優れたビジネスプランを提出した対象者に対して表彰を行うとともに、創業支援・事業支援を目的とした賞金を提供する取り組みを行っています。
「大阪起業家グローイングアップ事業」
大阪府は、有望な起業家を発掘することを目的とした起業家支援プロジェクトに取り組んでいます。
この支援プロジェクトは、創業支援機関(推薦機関)が実施するプログラムに参加することが条件となっており、推薦機関から選抜された対象者がビジネスプランを競い合います。
優秀なビジネスプランを発表した受賞者には、補助金として最大100万円が支給されるとともに、中小企業診断士などの専門家による伴走支援が受けられます。
福岡県「FUKUOKA GROWHT NEXT」
福岡市と地元企業との官民連携で運営されているスタートアップ支援施設です。
支援施設として育成プログラムの提供やグローバルアクセラレーターとの連携、資金調達機会の創出をサポートする取り組みなどを行っています。
多様なアイデアと技術で、新しい価値を提供するスタートアップを排出することを目的としており、施設の入居者に対して「ジャンプスタートプログラム」、「育成プロジェクト」、「アクセラレータープログラム」などを通して経営から実務まで幅広い支援が行われています。
神奈川県「かながわ・スタートアップ・アクセラレーション・プログラム(KSAP)」
神奈川県が主催するスタートアップ創出のための支援事業です。
神奈川県で登記または起業準備をしている人であり、神奈川県内の社会的な課題を、ビジネスを通じて解決することを主な目的とすることなどを条件としてプログラムに応募することができます。
このプログラムに採択された応募者に対しては「ソーシャルベンチャー支援金」として最大100万円が支給されます。
KSAP(かながわスタートアップアクセラレーションプログラム)公式サイト
長崎県「CO-DEJIMA」
長崎県が運営するスタートアップのための支援・交流施設です。
この施設では、事業計画やビジネスモデルのブラッシュアップに必要な知識の習得などを目指せる「NAGASAKI起業家大学」や、経営者や弁護士などのスタートアップ有識者(メンター)に事業計画や資金調達などを相談できる「メンターによる事業成長支援プログラム」などが提供されており、長崎で起業を目指す人などを対象とした支援活動が行われています。
支援制度・専門家のサポートをうまく活用しよう!
「2021年度新規開業実態調査」では、起業家の約7割が開業したことに満足していると回答していることから、これから起業する人にとっては大いに希望が持てるアンケート結果が得られています。
その一方で、起業家の半数は行政などからの支援を受けている実態があり、このことから満足のいく起業すなわち成功する起業を目指すためにはこれまでに紹介した支援制度や専門家へのサポート依頼が重要であると言えるでしょう。
なお、当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」は起業支援の専門家として起業に関する総合的なサポートを行っています。
まとめ
現代の20~30代の傾向として、デジタル化や便利なツール活用に慣れていることからスピード感を重視する場面が他の年代の方に比べ多く、これらは若さとしての強さを持つ反面、「手っ取り早くやりたい」、「面倒くさいし無駄は嫌だ」という、本来ならばじっくりと経験を積み重ねていく必要がある経験値の獲得に時間を掛けられない弱さも持っています。
そこで、不足する経験を補うのが知識の取得ですが、飽和状態にあるネット検索では情報収集に難しさがあり、判断を誤るとせっかく起業しても簡単に経営コントロールを失うことになるでしょう。
情報収集の難しさとは、成功至上主義による情報過多、認知バイアスが原因であり、成功事例ばかり目がいき失敗事例を忘れがちです。
これらを避け、バランスの良い情報収集を行うには個々のリテラシー能力に左右されますが、成功事例は調べればたくさん出てくる反面、失敗事例は欲しい情報として検索に当たりにくく学ぶ機会を失いやすいのです。
情報収集に役立つ起業にあたり知っておきたい要素は6つあります。
●経営資源の把握
●マーケティングによる分析
●財務、資金繰りの明確化
●税務会計の収支バランス
●法務手続き
●効果的なプロモーション
どれも決して一朝一夕に身につけられるものではありません。これら1つでも情報収集に不足する場合は、それに関する専門家への相談をお勧めします。
専門家相談は失敗事例を早く知るのにうってつけです。
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