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知っておきたい~持ち出し備品の買取~
中小企業経営者の中には、以前は個人で行っていた事業を、会社を設立して行うようになった「法人成り」の経験者が、結構いるのではないでしょうか。
法人成りによって、支払う税金が減る可能性があるなどのメリットがありますが、実は、自分が備品として持ち出していた私物を買い取ることで、節税につなげられることもメリットと言えます。
持ち出し備品とはどのようなものか
中小企業経営者の方には、最初は個人事業主として始め、軌道に乗ったので法人成りしたというケースも多いでしょう。
こういう場合、会社で使っている備品の中には、経営者が私物として使っていたものを、そのまま使用しているケースもあるかと思われます。
例えば私物のパソコンを、業務に流用することなどがこれに当てはまります。
あるいは、家で使っていた冷蔵庫などを、会社で使うためにオフィスに持ち込んでいるケースもあるでしょう。
こういった備品を「持ち出し備品」といいます。
経営者が会社に持ち出す形で備品となっているためで、法人成りの際にはこの備品を買い取って会社の財産にする必要があります。
その場合、実際にお金を払うかどうかは別にして、名目上は経営者にお金を払って備品を買い取ることになります。
備品は本来、会社でお金を払って購入しなければならないからです。
持ち出し備品買取が節税につながる
実はこの持ち出し備品の買取が、節税につながる可能性があるのはご存知でしょうか。
買取によって支払った扱いになっているお金は、損金として処理することができるためです。
例えば、私物のノートパソコンを会社に持ち出しており、法人成りに伴って備品にするため5万円で買い取った形にしたとします。この5万円は、丸々損金に計上することができます。
損金にすると、課税対象となる所得から差し引き、所得を下げることになります。
形としては、会社が経営者からの借入金で、備品を買い取ったという形になります。
これによって、損金として計上できるようになるというわけです。
買取扱いになっている備品は、今後も自分で使う可能性が高いので、経営者にお金を払っても、実質的には何も変わりません。
実際に損失を伴わない形で損金を計上でき、課税所得を減らせるのです。
法人成りしたら、持ち出し備品の買取は即座にやってしまった方がいいかもしれません。
譲渡所得税もかからない
節税になるのは会社側だけではありません。
持ち出し備品を買い取ってもらう形になる経営者側にとっても、節税になるのです。
個人から会社に物品を譲渡すると、譲渡所得税の対象となります。
金額的に必ずしも多くないとはいっても、法人成り直後の出費は痛いところです。
しかし、持ち出し備品を会社に買い取ってもらった場合、譲渡所得税の対象とはなりません。
生活に必要となる動産を譲渡したという形になるためです。
例えば、前述のケースの場合、ノートパソコンの買取によって得た5万円は非課税です。
他にも冷蔵庫などの持ち出し備品を買い取ってもらえば、それも同様の扱いとなります。
会社にとっては、お金を経営者に回すことで節税につながりますし、回したお金も課税対象とはならないため、二重の意味で節税になると言っていいでしょう。
ただし、書画や骨董品などを備品として会社に売却した場合には、必ずしも生活に必要となるものではないため、譲渡所得税の対象となります。
買取価格は適切につけるよう注意
ただ、持ち出し備品を買い取る場合には、価格は適切につけるようにしましょう。
なぜなら、金額が相場から考えて多すぎると、損金として計上できなくなる恐れがあるためです。
前述のノートパソコンを例に取ると、耐用年数が4年と考えると、10万円で購入して2年使用したものならば5万円程度の価格で買い取るのが適正です。
これを30万円といった極めて高い価格で買い取った扱いにすると、あからさまに節税対策なのではないかと判断され、損金として認められない可能性が高くなります。
また、セットで10万円以上の備品は、購入しても全額が損金として認められるわけではないので、注意が必要になってきます。
持ち出し備品の買取は節税対策にはなりますが、何事にも限度というものがあるということです。
税務署から見て適正と判断される価格で買い取るようにしましょう。
まとめ~節税対策にはなるが買取価格に注意を~
持ち出し備品の買取は会社にとっては所得を減らして節税対策になりますし、経営者の方も買取によって得たお金が課税対象とならないのですから、二重の意味でプラスです。
ただ、買取価格は適切にする必要がありますし、品目によっては買取によって得たお金が課税対象となるケースもあります。注意しましょう。