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役員に社宅を貸与する節税対策
経営者をはじめとする役員に社宅を貸与することは、実は節税対策につながります。
会社が負担している家賃を経費として計上し、法人税などの税額を減らせるからです。
ただ、会社が家賃の全額を負担していたり、あまりにも豪華な社宅だったりすると、経費として認められない可能性が高くなります。
役員に社宅を貸与すると節税対策になる
民間マンションや一戸建てなどを借り上げて、役員に「また貸し」という形で社宅として利用してもらうことは、節税対策につながります。
住宅にかかる費用が経費となり、課税所得が減るためです。
例えば月額15万円のマンションを借りて、7万円で役員に貸与したと考えます。
この場合、差額に当たる月額8万円、年間96万円が経費となるのです。
法人税の税率は23.2%ですから、96万円を経費として使用すると年間約22万円、税額が減少することになり、節税対策になるというわけです。
「ならば、8万円を住宅手当として出せば同じことになるのではないか」と思う人もいるかもしれませんが、実際には社宅として貸与するほどの節税対策にはなりません。
住宅手当を役員に出す場合、この8万円は課税所得に含まれることになります。
従って所得税がかかるため、実質的に8万円よりも少なくなるのです。
借上社宅の場合、お金そのものは役員に支払われていませんから、課税所得にも変化はありません。
丸々8万円が無税でもらえるのと同じことになるというわけです。
このように、役員の住宅に関しては住宅手当を支給するよりも、会社で賃貸物件を借り上げてまた貸しした方が節税対策につながってくれるのです。
付け加えると、役員に社宅を格安で貸し出すことは、モチベーションのアップにもつながります。
経営者としては、役員のモチベが高いことそのものがメリットとなります。
経費として認められないケースもある
ただ、気をつけておかなければならないことがあります。
それは、会社から家賃の全額を出すと課税対象になることと、貸し出す物件が豪華すぎると経費として認められないことです。
まず、会社側が家賃全額を負担すると、経費ではなく役員の給与所得として課税されることになります。
所得税の税率が法人税より高ければ、節税効果はなくなってしまいます。
貸し出す家賃が安すぎるというのも、同様の結果となります。
後述するような賃貸料相当額を下回れば、給与所得として課税される可能性は高くなります。
また、社宅が豪華すぎると、経費として認められなくなります。
社員から見ても、役員があまりにも豪華な社宅に経費で住んでいると「ちょっとどうなの」という気持ちになりますから、理解はできます。
豪華かどうかを決めるための基準としては、まず床面積が挙げられます。
240平方メートルを超えるものは、豪華すぎると判断される可能性が高いです。
床面積が240平方メートルを下回っていても、プールなど贅沢と見られる設備が備え付けられていた場合も、豪華すぎると判断されかねません。
いずれにしても、家賃が社会通念上安すぎたり、社宅となる建物が豪華過ぎたりすると経費として認められず、節税につながらないということは覚えておきましょう。
家賃はどのぐらいに設定すればいいか
では、家賃を決めるための賃貸料相当額はどのようにして算出するのでしょうか。
これは、物件の規模によって計算が変わってきます。
小規模物件の場合
まず、小規模物件の場合です。
建物の耐用年数が30年以下の場合は床面積が132平方メートル以下、建物の耐用年数が30年超の場合は99平方メートル以下なら小規模物件となります。
- 当該年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積÷3.3平方メートル)
- 当該年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
この3つを足したものが、賃貸料相当額となります。
固定資産税の課税標準額については、市区町村役場で固定資産評価証明書を入手すれば分かります。
中規模物件の場合
次に中規模物件の場合です。
こちらは豪華と判断されないレベルで、小規模物件の条件を満たしていないものです。
以下のうち、どちらか高い方が賃貸料相当額となります。
- (当該年度の建物の固定資産税の課税標準額×10%+当該年度の敷地の固定資産税の課税標準額×6%)÷12(木造や軽量鉄骨の場合は10%が12%になる)
- 会社が大家に払う家賃×50%
つまり、中規模物件ならば最低でも大家に払っている家賃のうち、半額は役員が負担しなければならなくなると考えていいでしょう。
それでも、役員全員が借上社宅に住むとなると、かなりの節税対策になることは間違いありません。
相場の半額の家賃で住めるのですから、モチベのアップにもつながるでしょう。
まとめ~節税対策にはなるが家賃の設定に注意~
このように、役員に社宅を貸し出すことは、会社にとって節税対策になります。
家賃の一部を会社が負担すれば、経費として計上できるからです。
ただ、建物があまりにも豪華だったり、家賃の設定があまりにも安すぎたりすると、節税対策にならなくなるので、注意しておきましょう。