中小企業倒産防止共済で節税するには
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、取引先の倒産時に無担保融資ができるなど、起業直後の規模が小さい事業者にとってさまざまなメリットがあります。
掛け金が控除対象となるので節税効果もありますが、より大きな節税効果につなげるためには、実は、使い方を工夫しなければならないのです。
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中小企業倒産防止共済とは
中小企業倒産防止共済は中小企業基盤整備機構が運営しており、取引先の倒産によって経営が厳しくなり、連鎖倒産等を防止することが目的だと説明しています。
月々の掛け金は5,000円~24万円の間で、5,000円区切りで決めます。最大で掛金総額が800万円になるまで積み立てることができます。
法人は損金、個人事業主は必要経費の扱いなので、控除対象で節税が可能です。
例えば年間所得が750万円の場合、月々10万円の掛け金を払っていれば所得は630万円に減少し、支払う税金の額も減ります。
税率についても、23%から20%にダウンするので、節税につながります。
取引先が倒産した時には、それまでに支払っている掛け金のうち、10倍までを無担保・無保証で融資が受けられ、最大で8,000万円までの融資が可能です。
取引先の倒産などで経営が厳しくなったときには、民間金融機関の融資は難しいですし、融資を引き揚げる可能性すらあります。
そういう厳しい時に無担保融資が望めるのですから、ありがたいものです。
また、取引先の倒産などがなくても、融資は可能です。
この場合は、それまでに支払っている金額の7割~9割が融資限度額となります。
解約した場合に返ってくるお金は、以下のように加入している期間によって異なります。
(任意解約時)
1~11か月 | 0% |
12~23か月 | 80% |
24~29か月 | 85% |
30~35か月 | 90% |
36~39か月 | 95% |
40か月以上 | 100% |
40ヶ月以上加入している場合には、解約時に全額が戻ってくることになっています。
それ以外は元本割れになり、1年未満だと掛け捨てになってしまいます。
つまり、利益が多い時に掛け金を多く支払い、所得を減らす形にすることは可能です。
40ヶ月以上加入していれば、お金は丸々返ってくるのですから、一見すると損はないように見えます。
中小企業倒産防止共済の問題点
問題は、この返ってきたお金が事業収入として扱われることです。
場合によっては税率が上がり、節税につながらないこともあり得えます。
同じ中小企業基盤整備機構の共済であっても、小規模企業共済の場合は返ってきたお金が税率の低い退職収入として扱われるので、節税につながります。
中小企業倒産防止共済の場合は、こうしたメリットがないのです。
あくまでも、事業によって得られた利益を先送りにする形になっているだけなのです。
中小企業倒産防止共済の掛け金を引き出すことで事業収入が増加し、税率が変わるケースもあり得ます。
この場合は節税どころか、逆効果になってしまいかねないのです。
一例を挙げれば、事業収入が200万円の年に800万円分を引き出すと、課税所得が1,000万円となり、税率が10%から33%に跳ね上がってしまうといった具合です。
つまり、中小企業倒産防止共済を節税に役立てるためには、掛け金によって所得を下げるだけでなく、お金を引き出すタイミングを考える必要があるということになります。
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中小企業倒産防止共済で上手に節税するには
中小企業倒産防止共済を節税につなげるためには、事業収入が赤字の年に解約し、税率を下げるかゼロにするという方法が考えられます。
起業を経営していく過程で、順調に黒字を計上していくことは簡単ではありません。
何らかの理由で事業収入が減り、経費などで所得がマイナスになってしまうこともあるでしょう。
こういう時こそ、中小企業倒産防止共済の掛け金を引き出すタイミングなのです。
所得の赤字と相殺されて、税率がダウンするからです。
例えば最終的な所得が800万円の赤字だった場合、掛け金を上限額まで引き出しても所得はゼロですから、課税額もゼロになるといった具合です。
年間所得が750万円だった年に、掛け金120万円の支払いによって税率を23%から20%に下げた人は、このタイミングで引き出せば、本来払うはずだった税金がゼロになるというわけです。
起業した後は、サラリーマンのように、安定した収入が確実に得られるわけではありません。
好調な年には収入が大幅に増えますし、不調な年には赤字になることもあるでしょう。
好調な年には課税対象の所得を少しでも減らし、不調な年に先送りして税率を抑えるというのが、中小企業倒産防止共済を利用した節税の方法となるわけですね。
まとめ~中小企業倒産防止共済は上手に使おう~
中小企業倒産防止共済は、取引先の倒産で経営が厳しくなった時に役立ちますし、掛け金が控除対象なので節税効果も期待できます。
ただ、お金を引き出すタイミングを誤ると、節税どころか逆効果になりかねません。
経営が厳しく事業収入が赤字になるタイミングで引き出せば、節税につながることを覚えておきましょう。