フリーランスになると、自分で所得金額や税金を計算して確定申告をしなければなりません。
確定申告を控え、きちんと対処できるか不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、フリーランスが納めるべき税金の種類と計算方法を解説すると共に、知っておくと得するフリーランスの節税対策についても紹介します。
これからフリーランスになろうと考えている方やフリーランスでこれから確定申告をする方はぜひ参考にしてください。
目次
フリーランスが納めるべき税金の種類
まずはフリーランスが納めるべき税金を確認しておきましょう。 詳しい計算方法については後ほど説明します。
所得税
所得税は、一年間に稼いだ「所得」に対してかかる税金です。
所得というのは事業によって得られた売上そのものである「収入」から、必要経費を引いたお金のこと。
収入-必要経費=所得
売上がいくら高くても仕入などに経費がかかって利益がほとんど残らなかった場合、そのぶん所得税の負担も減ります。
また平成25年から令和19年までの間は「復興特別所得税」が加算され、所得税の2.1%を負担しなければなりません。
所得税額×2.1%=復興特別所得税
つまり通常の所得税から2.1%増額した金額が、復興特別所得税も含めた所得税の総額と考えればよいでしょう。
住民税
都や区市町村の行政サービスに必要な経費の分担として、住んでいる地域の自治体に支払う税金です。
住民税は日本に住んでいる以上、全員が負担しなければなりません。
住民税には道府県民税(東京都は都民税)と市町村民税(東京23区は特別区民税)とがあり、金額は所得が多い人ほど大きくなります。詳しい計算方法は後ほど解説します。
個人事業税
個人事業税はフリーランスなどの個人事業主にかかる地方税で、事業を営んでいる地域の自治体に支払います。
個人事業税には290万円の所得控除があるので、所得290万円以下は非課税となります。
税率3~5%程度で所得税・住民税ほど大きな負担もなく、そこまで節税を意識しなければならない税金ではないでしょう。
消費税
事業上の取引に対して課税される税金で、「消費者」が負担し「事業者」が納付します。
フリーランスが仕事を行い対価を受けるのも「取引」にあたるため、事業者側であるフリーランスが消費税を納付する必要があります。
消費税は基本的に売上1,000万円を超えるまで支払う必要がないので、ある程度の高額所得者のみが支払うことになります。
固定資産税
固定資産税は土地・建物に対してかかる税金です。
フリーランスの場合は自宅が仕事場になるという人も多いので、自宅が持ち家の場合には固定資産税が発生することも考慮しておきましょう。
固定資産税に関しては確定申告で自ら申告をする必要はなく、自治体から送付される納付書を使って支払うことができます。
保険料について
保険料は厳密にいうと税金ではありませんが、税金にかなり近い性質があるため保険料についても簡単に紹介しておきます。
フリーランスが加入必須の国民年金保険・国民健康保険の2種類について見ていきましょう。
国民年金保険
国民年金は、20歳から60歳までの人が加入する公的年金です。
フリーランスは会社員のように厚生年金に加入できないため、国民年金に加入することになります。
国民年金保険料は所得などに関係なく一定の月額料金が決まっており(令和3年度は月額16,610円)、これを12カ月分にすると1年間の国民年金保険料が計算できます。
月額保険料×12=年間の国民年金保険料
国民健康保険
国民健康保険は、「医療分保険料」「後期高齢者支援分保険料」「介護分保険料」の3種類の保険料で構成されています。
それぞれに所得割・均等割の金額及び保険料率が定められており、これらの合計で計算します。
所得割額+均等割額=国民健康保険料
国民健康保険の特徴は、市区町村が運営主体のため自治体によって保険料の額が違うということ。
そのため同じくらいの平均的な所得の人でも、住んでいる地域によって保険料に数万円ほどの差があることもあります。
実は多くの場合、国民健康保険の保険料は税金以上に負担が大きくなります。
しかも所得控除等の制度もないので、節税のように保険料を抑えることもなかなかできません(所得が一定以下となった場合の減免制度はあり)。
フリーランスになったら自分の国民健康保険料がいくらくらいになるか、各自治体の基準を確認しておきましょう。
フリーランスが納める税金の計算方法
各税金の計算方法を解説しますが、特に税負担が大きい所得税・住民税についてはしっかり確認しておきましょう。
節税効果が大きいのもこの2つの税金なので、きちんと計算方法を理解すれば節税に活かすこともできます。
所得税
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超~330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円超~695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超~900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超~1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超~4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
(出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」)
課税所得金額に対し、上記のような一定の税率を乗じて計算します。
5%~45%の税率の範囲で所得が多い人ほど税率が高くなっていきますが、このような支払能力に応じて負担割合が決まる「累進課税制度」が所得税の特徴です。
具体的な計算方法としては、まず1年間に稼いだ収入のなかから経費と所得控除を差し引いた課税所得金額を算出し、この課税所得金額に応じた税率を掛けます。
課税所得金額(収入金額-必要経費-所得控除)×税率=所得税額
計算式を見るとわかるとおり、経費・所得控除の金額が高いほど課税所得金額が減るようになっています。
つまり収入が高い人でも経費と控除をうまく活用すれば、所得税を節税することができるのです。
この必要経費・所得控除はとても大事なので、後ほど節税方法のところで詳しく解説します。
なお平成25年から令和19年までの間は2.1%の「復興特別所得税」が加算されるので、最終的には以下のような計算式で所得税の総額が決まります。
所得税額×102.1(%)=復興特別所得税を含めた所得税の総額
住民税
住民税の金額は、所得の金額に応じて負担割合が決まる「所得割額」と、所得の金額に関係なく一律で負担額が決まる「均等割額」の合計で算出されます。
所得割額{(所得金額-経費・所得控除)×税率10%}+均等割額(5,000円~7,000円)=住民税額
所得割額の税率は一律10%なので、所得税のように所得に応じた税率の変動はありません。
ただし所得に比例して所得割額が高くなるため、所得が多い人ほど住民税の金額も上がる点は所得税と同じです。
また必要経費・各種所得控除によって課税所得金額が変動するという点も所得税と同じなので、経費・所得控除による節税効果は住民税にも表れます。
個人事業税
フリーランスとして働く場合、開業届を出して個人事業主となるのが一般的です。個人事業主には個人事業税が課せられます。
個人事業税には「事業主控除 290万円」があります。
つまり青色申告特別控除前の所得が290万円以下であれば、個人事業税はかからないということ。
(所得金額-290万円)×税率=個人事業税
個人事業税の税率は3~5%の範囲で、営んでいる事業の業種によって決まります。
もっともあんま・マッサージ師や畜産業・水産業等を除くほとんどの業種は税率5%なので、基本的には事業主控除を引いた後の所得金額に5%の税率がかかると考えてよいでしょう。
消費税
(出典:国税庁「消費税のしくみ」)
消費税を納めなければならないのは、次のいずれかの要件にあてはまる事業者です。
- 前々年における課税売上高が1,000万円を超えた
- 前年の1月1日~6月30日までの期間で課税売上高が1,000万円を超えた
このように、売上が1,000万円を超えるまでは消費税を納める必要はありません。
ちなみに消費税の税率は、普段私たちが物を買うときの標準税率10%・軽減税率8%なので、税率に関してはイメージがつきやすいでしょう。
固定資産税
固定資産税はその時点の適正な時価を課税標準とし、この「課税標準額」に対して税率1.4%をかけて計算します。
課税標準額 × 1.4(税率)=固定資産税額
課税標準額は土地・建物のその時点の適正な時価を反映させるべく、原則3年ごとに金額の見直しが行われています。
そのため土地・建物の購入代金がそのまま課税標準額になるわけではありません。
フリーランスができる節税対策3選
税金の負担は多くのフリーランスにとって悩みの種ですが、会社員よりも節税を実践しやすいというメリットもあります。
特に経費や所得控除は、きちんと理解してさえいれば誰でも節税に活かすことができます。ここで紹介する3つの節税対策をしっかり押さえておきましょう。
1. 経費の計上
税金は課税所得金額に対して一定の割合で課されるものですが、必要経費を計上することで課税所得金額を減額することができます。
経費が多ければ多いほど税金が減るので、どれだけ経費を計上するかが節税ではとても重要です。
経費になるものはできる限り必要経費に計上するのが、節税の基本です。
具体的に何が経費になるのかは、下の一覧表を参考にしてください。
消耗品費 | 紙・ペンなどの事務用品・パソコン周辺用品・オフィス家具 |
地代家賃 | 賃貸の家賃・共益費・駐車場代 |
水道光熱費 | 賃貸の電気ガス・水道代 |
通信費 | 電話・インターネットの料金・切手代 |
広告宣伝費 | チラシの作成・インターネット広告の掲載費 |
新聞図書費 | 本・雑誌・新聞代 |
外注費 | 外部業者に委託するのにかかった料金 |
旅費・交通費 | 電車・バス・飛行機・タクシーなどの運賃・宿泊代 |
ただし、これらに該当すれば必ず経費として認められるわけではありません。
使ったお金が「事業に関係しているのかどうか」がきっちりと判断されます。
例えば、在宅勤務でも家賃全額が経費になるわけではありません。「家事按分」といって、住宅における事業用スペースの占有面積に応じた家賃の按分割合のみが経費として認められるのです。
上手く節税をするためには、何が経費になるのかをきちんと把握しておく必要があります。
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2.所得税控除
収入から経費を差し引いた所得金額に対し、さらに所得控除をした残額が課税対象となります。
つまり経費と同じく、所得税控除の金額が多ければ多いほど、納めるべき税金を減らせるということ。
ここではよく使われている所得税控除の一覧を紹介します。
基礎控除 | 所得金額2,400万円以下なら誰でも48万円控除 |
青色申告特別控除 | 青色申告には下記のようなメリットがあります。 ・65万円控除 ・赤字の繰り越し ・家族への給与を経費にできる ・0万円未満の固定資産は経費にできる |
扶養控除 | 扶養している親族の所得が48万円以下の場合に適用されますが、下記の年齢制限があります。 ・16歳未満:控除対象外 ・16~18歳:38万円 ・19~22歳:63万円 |
配偶者控除 (配偶者特別控除) | 本人の所得が1,000万円を超えていないこと・配偶者の所得金額が48万円以下であることを条件に38万円の控除が適用されます。 ただし配偶者の所得金額が48万円を超えても、所得133万円までは「配偶者特別控除」の適用があります。 配偶者特別控除の金額は所得が増えるにつれて段階的に下がっていき、133万円を超えると対象外となります。 |
社会保険料控除 | 国民健康保険・国民年金保険などの社会保険の納付額に対して控除されます。 |
他にも、生命保険料の支払いに適用される「生命保険料控除」やひとり親世帯に適用される「ひとり親控除」など、いくつかの控除があります。
所得控除に関しては国税庁のホームページに一覧が掲載されているので、該当する控除がないか確定申告前に一度はチェックしておきましょう。
3.法人化
フリーランスには、個人事業主から会社を設立する法人化という選択肢がありますが、法人化には下記のような節税効果があります。
- 給与所得控除がある
- 消費税の2年間免税
- 赤字の繰り越しができる
- 所得税が節税できる
個人事業の場合は個人の所得が課税対象となる一方、法人化して自分自身に役員報酬を支払えば給与所得控除が適用され、そこでも節税効果が得られるのです。
また売上高1,000万円以上になると消費税の納税義務が発生しますが、法人化すれば2年間納税義務を免除してもらうことができます。
さらに赤字の繰り越しも法人なら10年間可能であり、個人事業主の3年よりかなり長く設定されています。
このように様々な節税メリットがある法人化ですが、法人化のタイミングは所得800万円あたりを基準にするとよいでしょう。
個人事業主の所得税は累進課税なので、所得が多ければ多いほど税負担は高くなります。
一方、中小企業にかかる法人税は所得金額800万円までは15%、800万円以上の部分は23.2%と一定の割合で課されます。そのため、所得が増えてくれば法人の方が税金が安くなるのです。
おおよそ所得が800万円を超えるあたりで、所得税より法人税の方が安くなるというわけです。
青色申告にするには条件を満たす必要あり
青色申告は、65万円の所得控除の他にも赤字の繰り越しや家族への給与を経費にすることができるなど、個人事業主へのメリットが大きい制度です。
そのため多くのフリーランスは青色申告を利用しています。
ただし青色申告にはいくつかの条件があるので、確定申告前に慌てないよう条件を押さえたうえで準備しておきましょう。
条件をまとめると以下のとおりです。
- 所得の内容が事業所得・不動産所得・山林所得のどれかである
- 貸借対照表・損益計算書を作成する
- 青色申告をしたい年の3月15日までに必要な書類を提出する
多くのフリーランスの所得は事業所得ですが、事業所得はサービス・自由業全般が対象です。
例えばデザイナーやプログラマーとして継続して仕事を受けている場合、カフェや雑貨店のオーナーとなっている場合などの所得が事業所得と見なされます。
ちなみに65万円の所得控除を受けるには、貸借対照表・損益計算書が必要です。簿記の仕分けの知識が必要なので少し難しいですが、専門家でなくても作成することは可能です。
青色申告は、前の年1年間(1月1日~12月31日)の所得について、次の年の2月16日~3月15日までの間に行うこととなっています。
青色申告には多少手間がかかるもののメリットも多いので、フリーランスならぜひ青色申告の利用を検討してください。
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まとめ
フリーランスが納めるべき税金の種類や計算方法、そして節税方法について解説しました。
税金のしくみは複雑で難しいように感じますが、まずは主要となる所得税・住民税からしっかり押さえていきましょう。
そして節税のポイントは経費と所得控除です。
この2つが納税額に大きく影響するので、経費に当てはまるであろう出費や利用できそうな所得控除については必ず把握しておいてください。
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