【倍返しだ!】「半沢直樹」を現実のビジネス視点で解説!・第七話

【倍返しだ!】「半沢直樹」を現実のビジネス視点で解説!・第七話
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「半沢直樹 第七話」の解説・今後の考察※ネタバレ注意

「半沢直樹」のあらすじ解説も、遂に第七話を迎えました。

果たして東京中央銀行は、帝国航空再建タスクフォースからの債権放棄の要求を呑むのか?
そして、政府と内通している銀行内の裏切り者は誰なのか?
ここを争点に描かれていきます。

さて、銀行の債権放棄は半沢のように「次長」という立場の人間が、単独で決められるような内容ではありません。
最終的には、取締役会の決裁が必要な案件であり、その意思決定にあたっては多くの人の了解を取っておく必要があります。
今回の債権放棄のような「本当はしたくないけど、政府の圧力があってやむを得ない」案件の場合、相当意見が割れ、事態は紛糾することでしょう。
こうした案件の時、意見を一つにまとめ、組織の意思決定を進めるには何が重要となるのでしょうか。

まずはドラマのあらすじから、解説を加えて実例を交えながら考えていきたいと思います。

前回分はこちらから

半沢直樹セカンドシーズン第七話のあらすじ

スカイホープ航空のハワイ路線開設の認可が、国際線開設の許認可権限を握る白井大臣の手によって却下されました。
白井大臣は、開発投資銀行がスカイホープへの融資を打ち切ると聞き、資金面の不安から許可できないと理由を述べます。

スカイホープは新規路線開設に伴う増員のため、帝国航空の余剰人員の受入先になるはずでした。このままでは再建案は頓挫してしまいます。
いよいよ半沢たちはピンチに。

半沢は融資を打ち切った開投銀に代わり、東京中央からの融資を上層部に進言します。
そこに、白井大臣が東京中央の債権放棄拒否を批判する発言が、テレビ放送されていることが分かります。
これを東京中央への警告として、融資を諦めるよう諭す紀本常務と大和田でしたが、許認可取消に融資への警告、とタイミングが絶妙に良すぎることに不信感を抱く半沢。
行内に裏切者がおり、政府に情報を流しているに違いないと半沢は睨みます。
なおも債権放棄の引受けを勧める紀本常務と大和田に、半沢は改めて債権放棄の拒否を訴え、役員会議までに余剰人員の受入先を見つけると宣言します。

その頃、森山は諦めずに必死に受入先を捜すうち、大怪我を負って入院してしいました。
逆境に立たされつつも半沢は、森山の熱意に感謝し、ますます帝国航空とスカイホープの未来を守る決意を固めるのでした。

そして迎えた役員会議。
まず、半沢は債権放棄を拒絶するべきであることを訴え、大和田(香川照之)が「もっと対局を見なさい!」「多少の損失は覚悟してでも、世の中の信頼をとるべき」と反論。
半沢は一歩も引かず、これは頭取がかつて言っていたことと同じだと告げました。
中野渡頭取のかつての発言は次のようなものでした。

「当行にとって債権回収は重要な使命だ」
「我々銀行のプライドをかけた大仕事になる」

それを聞き大和田も「そこまで言うなら私も撤回する。君の考えに賛同しよう」と同意を示しました。
列席の役員たちも半沢・大和田そして頭取の意見に一様にうなずき、その場の雰囲気は債権放棄に傾き掛けます。

ところがここで突如、紀本常務が発言しました。
他行も債権放棄に傾いていることを挙げ、自分たちだけが有益確保に走るのは回避すべきと、なんと債権管理担当役員として銀行員生命(自らの進退)をかけて、債権放棄することを訴えます。
中野渡頭取も「君がそこまでの覚悟なら」と議場は一気に形勢逆転、債権放棄の方針が決まってしまいました。
半沢は完敗したかのように見えましたが、一つだけ条件を付けるよう願い出ます。
それは、

もし開発投資銀行が債権放棄を拒否するならば、東京中央銀行も拒否するという条件付きにしてください

というもの。
中野渡頭取はそれを了解し、条件付きで債権放棄の方針は決定しました。

役員会議の後、半沢は大和田に、はじめから債権放棄の拒否を支持するつもりだったのだろうと指摘しました。
周囲の役員たちを納得させるため、一芝居打って半沢に発言されたのだろうと。

大和田は、自分を救ってくれた頭取の意向を全うするのが自分の使命と、肯定します。
しかし、もし土壇場で役員たちが債権放棄の拒否に反対すれば、半沢を見捨て諦めるつもりでした。
どちらに転んでも自分は損をしない立ち回りは、さすが大和田といったところ。

そして二人は、紀本常務が最後に反対したのを見て、政府との内通者が紀本であると踏みます。
さっそく曾根崎を呼び出し、出向先の改善をエサに問い詰めると、紀本が政府とつながっていることをあっさりと白状したのでした。
紀本常務が、政府とつながっているから大丈夫と発言していたとのこと。

同じ頃、紀本常務は債権放棄で行内方針をまとめたと、進政党の箕部幹事長と白井大臣に報告していました。

半沢は、最後の説得を試みようと開投銀の谷川の元を訪れ、債権放棄を拒否する様説得します。
谷川もバンカーとして誇りをもって生きてきており、メインバンクの開投銀が過剰な融資を続けて甘やかしたことが、赤字体質の原因であることを認めました。
しかし政府が運営する銀行である以上、その方針に逆らうことがどうしてもできないことを嘆く谷川。
そのことを聞いた半沢は落胆する一方で、谷川が本当は債権放棄を拒否したいと思っており、まだ十分に勝算があることを実感します。

「タスクフォース合同報告会」当日、債権者である各銀行が一堂に集合しました。
乃原に促され債権額が小さい銀行から順番に、債権放棄の要請に対する回答を発表していきます。
素直に従うと見えた各行は次々に「主力・準主力銀行の決定に従う」と報告。
その様子を見て、乃原は不機嫌そうに毒づきながら次々に発表させます。

遂に東京中央、半沢の番になりました。
注目が集まる中、準主力銀行である半沢は、債権放棄の拒否を宣言。
また、半沢は債権放棄について「開投銀が債権放棄に同意した場合に限る」という条件を挙げたです。
その開投銀の谷川は、遅れて最後にやってきて報告しました。

開発投資銀行はタスクフォースによる債権放棄の要請に対して…見送りの決断を下しました

つい先ほどの閣議決定で民営化法案がまとまり、国会で成立する見通しになったのです。
開投銀は政府の呪縛から逃れたため、この決断ができたということ。
半沢に目配せし、小さく、しかし力強くガッツポーツをする谷川。

民営化法案がまとまったとはいえ、債権放棄の拒否で行内方針を求めるのは一筋縄ではいかなかったはず。
諦めず困難なミッションをやり遂げた彼女に、半沢は「さすが鉄の女」と賛辞を送るのでした。

足早に会場を去る乃原。
悔しそうに髪をかきむしる白井大臣。
予想外の大失敗で、大勢の報道陣を前に大失態を晒すことになりました。
その後、白井大臣は箕部幹事長に、今回の責任を取り大臣を辞職したい旨を告げます。

「お前は党の広告塔、私の言うとおりにしておればよい」
「あれほど気をつけろと言っただろう!二度と私に逆らうんじゃない!!」

と激しく叱責を受けるのでした。
そして、箕部幹事長に中野渡頭取が呼び出されるところで、第七話は終わります。

債権放棄の意思決定はどのようになされたか

通常、会社の意思決定は「決裁基準」というものに基づいて決められます。
会社の規程として、金額ごと重要度ごとに、誰の決裁で実行してよいか明文化しておくのです。
こうしておけば、何かが必要になったときなど、現場が迷うことなくスムーズに稟議を上げられます。
しかし、会社の運命を左右するような重要な案件に関しては、現場が稟議を上げて決済するというようなわけにはいきません。
あらかじめ、会社を運営している取締役の耳に入れ、資料を作って説明し、了解を取ったうえで、根回しをして、取締役会に臨むわけです。

ドラマ中では、帝国航空の債権を放棄するかどうかについては、行内が真っ二つに分かれる案件になっていました。
しかも賛成派・反対派は、お互い敵対しているので根回しのしようもありません。
このようなシーンになると議論の末、最終的に決定権を持つ代表者が決定することになるでしょう。
その際、代表者(ドラマ中では中野渡頭取)はどのように考えているでしょうか。

ドラマ中で「行内融和」を実現しようと腐心してきた中野渡頭取は、取締役の意見をよく聞き、取りまとめて決めるというスタイルです。
しかしながら、頭取を取り巻く紀本常務と大和田取締役の話を聞く機会が最も多いものと思われます。
大和田は元ナンバー2、紀本は現ナンバー2。最終的に決めるのは頭取。
どちらの意見が通るか、取締役会での攻防戦だったわけですが、事前の根回しでは決められない案件で議論も白熱したところでした。

しかしドラマ中では、ほとんどの取締役が債権放棄を拒否する方向に傾きかけてから、最後に紀本常務の迫力に、全部ひっくり返されるというシナリオで、現役ナンバー2の力が見せつけられていましたね。
紀本常務は頭取と接する時間が最も多いはずなので、その意見は通りやすいと言わざるを得ないでしょう。
このように経営の意思決定において、ナンバー2の力は強大なものがあります。

開投銀はなぜ債権放棄を拒否することができたのか

第七話の中心となる出来事は、東京中央が債権放棄を拒否できたことですが、これにはメインバンクである開投銀が拒否することが条件でした。
政府系金融機関の開投銀は政府の意向に従う他ないはずで、実際にスカイホープへの融資を打ち切った際は、白井大臣たちの関与が示唆されていました。
なぜ拒否することができたのでしょうか?

ドラマ中では、「閣議決定で民営化が決定したから」と理由づけされていました。
しかし、民営化が決定したからといって、株式売却前の株主は財務大臣のはず。
なぜ政府の意向に逆らうことができたのでしょうか。
あくまで想像ですが、この件について考察してみましょう。

【理由として考えられる仮説】

政府が経営する銀行であるが、株主は財務大臣であり国土交通大臣の白井ではない。
あくまで財務省の意向に従っていたから。

財務省としては民営化が決まれば、株式を民間に売却することになります。
できるだけ高い価格で売りたいと思うなら、開投銀の財務状況をよくしておく必要があります。
ドラマ中で、開発投資銀行の帝国航空への債権は2,200億円となっていました。
70%を放棄すれば1,540億円をドブに捨てることになります。
財務大臣としては、こんな財政状態で株を売却したくはないでしょう。
民営化が決まったとたんに債権放棄拒否へと舵を切ったことは、ドラマの進行に都合良くつくられたシナリオにも見えますが、これはこれで一定の合理性があるといえます。

日本政策投資銀行の民営化案について

さて、開発投資銀行のモデル、現実の「株式会社日本政策投資銀行」も実は民営化が決まっていました。
2008年10月1日、第166回通常国会において、「株式会社日本政策投資銀行法」が成立。
特殊法人から株式会社となったのです。

このとき、完全民営化、つまりすべての政府の持ち株を処分する期限が2012年(平成24年)4月1日までと定められましたが、2009年のリーマンショック、2011年の東日本大震災の影響で2度も法改正が行われ、延長されました。
現在、完全民営化の期限は、明記されておらず、「出来る限り早期に」といいつつ、すべての株式を民間に移譲する見通しは立っていません。

その理由には、「リーマンショックや東日本大震災など経済危機時に民間金融機関に代わって担った企業の資金繰り支援や、リスクの大きい中長期資金の供給を今後も継続すべき」ということで、「段階的な民営化」が目指されたことにあります。
政府の方針である「アベノミクスの浸透」や「地方創生」には、日本政策投資銀行が欠かせないということだと思います。
結局、日本政策投資銀行の株式は、「2025年度まで政府が政投銀の株式の2分の1以上を保有し、その後も当分の間、3分の1超保有する」となり政府主導の銀行として、当面の間その役割を果たすこととなりそうです。

日本政策投資銀行の組織から政府系金融機関の意思決定プロセスを見る

日本政策投資銀行のホームページには組織図が掲載されています。

日本政策投資銀行・組織図

※日本政策投資銀行ホームページより
(画像は2020年6月26日現在の組織図)

この組織図からは、どのように意思決定がなされるかがある程度推測できます。
これによると、最も上位に来るのが株主総会。
その下に取締役会があります。
株主総会は取締役の任命と罷免ができますので、株主総会が最高意思決定機関ということになります。これは普通の株式会社と同じです。

さて、特筆すべきは各支店や各部署の並びのすぐ上、そして取締役会のすぐ下に「経営会議」という機関があることです。
日本政策投資銀行の2015年度のディスクロージャー誌では、経営会議について次のような説明がなされています。

<経営会議>

取締役会より業務執行の決定権限を委任される機関として経営会議を設置しています。経営会議は経営に関する重要事項を決定します。なお、今事業年度においては33回開催しています。

組織が大きくなると、決めなければならないことが多くあるため、取締役会を開催し、議題はなるべく絞り、おおよそのことはこの経営会議で決定する体制が取られているということだと思います。

これには、経営会議に委任してよいことと、取締役会や株主総会で決めることの区分けがきちんとついていて、なによりも、取締役会の信任が得られていることが大前提です。
また、経営会議の諮問機関として「アドバイサリーボード」という機関もついており、内部でおかしな決定が行われないよう、アドバイスや監視を行う体制もできているようです。

ドラマの中の開投銀では債権放棄拒否をどこで決めたのか

では、ドラマ中の開投銀が債権放棄を拒否する決定は、どこでなされたか、この組織図を元に考えてみましょう。
ここからは、また想像の世界です。

谷川は、企業金融部門の航空会社担当長として経営会議に臨みます。
ここで、帝国航空の件は債権放棄を拒否すべき旨を訴えますが、ほかの部門長からはおおむね同意を得つつも「政府の圧力があるから無理だろう」と言われるでしょう。
結局、経営会議で出た結論は「経営会議での結論は債権放棄拒否。最終決定は取締役会にゆだねる」というもの。

続いて、この件は金額が大き過ぎるため、取締役会の決定にかかってきますが、取締役会でも民営化をにらんで、株価下落や、決算内容を悪くしたくないという意見が大勢を占めたことと、東京中央の再生案が信頼でき、経済的合理性のあるものであることから、「民営化が閣議決定されることを条件に、債権放棄を拒否することとする」と決定。

谷川は、開投銀の民営化が正式に閣議決定したニュースを受けて、合同報告会へと臨んだのでした。

以上、推測になります

まとめ

【倍返しだ!】「半沢直樹」を現実のビジネス視点で解説!・第七話

組織が意思決定するとき、必ず立ち返らないといけないのが、その組織の「理念」に照らして、反していないかどうかです。
一方、組織として行った様々な施策の結果の「事実」がどのようなものであったかということも必要です。

「理念」は判断の指針となり「事実」は判断の材料になります。
これらを基に会議をすると思いますが、上記2つのことが会議出席者の頭に入っているのか、会議出席者の主観が入ってこないか、その時の気分や忖度といったものが影響しないかというと、完全に否定できるものではありません。

ですので、会議で決まったからといって、組織の意思決定は常に正しくできるとは限らないわけです。
こうした組織の「癖」をよくわかったうえで、半沢直樹のように「熱いハート」と「クールな頭脳」で正しい判断に修正できると一流なのでしょうけど、なかなかそうはいきませんね。

次回は、終盤も近づいた第八話を引き続き解説していきます。

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