新型コロナウイルス感染症対策などで注目され、もはやすっかり浸透した感のあるリモートワーク。
一方で、リモートハラスメントと呼ばれる行為によって、仕事に支障をきたすケースも新たに出てきています。
リモートハラスメントとはどのようなものでしょうか。
また、リモートハラスメントを防ぐために必要となるテレワークのビジネスマナーには、どういうものがあるのでしょうか。
今回は、テレワークの普及に伴ってにわかに表面化してきたリモートハラスメントの実態について解説します。
目次
リモートハラスメントとはどのようなものか
「ダイヤモンド・コンサルティングオフィス合同会社」が行ったアンケートによると、テレワークで上司とのコミュニケーションに、不快感を覚えたことがあると回答した人は、8割近くに上っています。
こうした結果が出る背景には、リモートハラスメントと呼ばれる新たなハラスメント行為の存在があります。
リモートハラスメントの具体的な内容としては、以下のようなものが考えられます。
- 行動について必要以上の説明を求められる
- 室内の様子を映すことを求められる
- 1対1でのオンライン飲み会に誘われる
- 業務とは関係のない説教をされる
- 同居者の生活音について不快感を示される
ケース.1 行動について必要以上の説明を求められる
在宅とはいえテレワークは仕事ですから、完全に放任というわけにもいきません。
業務中の行動について、ある程度の説明を求められるのは、やむを得ないところです。
とはいえ、物事には限度というものがあります。
業務中の行動を把握するという理由付けで、必要以上の説明を求めるのはリモートハラスメントに当たります。
例えば、離席して食事に行っていたという説明は必要ですが、どこに店に行っていたか、どんなメニューを注文したかという内容について説明を求めるのは、やりすぎです。
ケース.2 室内の様子を映すことを求められる
室内の状態がどのようになっているかを知ることは、業務上それほど重要なことではありません。
にもかかわらず、室内を映すことを求められるケースがあります。
特に女性の場合、自分の部屋の状態を見せたくないと思っているのにも関わらず、見せるよう要求するのはセクハラ(セクシュアルハラスメント)と言われても仕方ありません。
どのような環境で仕事をしているか、把握したがる気持ちは管理する側の視点とでは理解できなくもないですが、それについての説明を要求することで社員の気分を害するのでは、本末転倒と言えます。
ケース.3 1対1でのオンライン飲み会に誘われる
Zoomで上司がホストを担当する場合、社員をねぎらいたいという気持ちからブレイクアウトルームを作り、そこでオンライン飲み会を行うというケースも想定できます。
もちろん、それ自体が悪いというわけではないのですが、中には異性を1対1のオンライン飲み会に誘うような行動を取るケースがあるのです。
そもそも家にいるのですから、必要以上に職場の人間関係に捕らわれたくないという気持ちもあるでしょう。
そこを理解せず、1対1の通話に誘うのは、これもセクハラと言われても仕方ありません。
ケース.4 業務とは関係のない説教をされる
業務上の問題があれば、注意をするのは上司としての業務のひとつです。
ただテレワークの場合、それは可能な限り業務上の問題にとどめておくべきです。
実際には、ネットツールでつながっているのをいいことに、上司が業務とは関係のない説教をするケースも散見されています。
業務上のことなら仕方がなくても、全く関係のないことで、家にいる時まで説教されるのではたまったものではありません。
これはネットに限らないことですが、物事はTPOを考えて行う必要があります。
ケース.5 同居者の生活音について不快感を示される
自宅で仕事をしている場合、同居者が話しかけてくるなど生活音が生じるのは、ある程度避けられない問題だと言えます。
純粋に仕事をするための空間ではないからです。
もちろん、そうした生活音が仕事の支障になるという気持ちは理解できます。
しかし、その生活音に対して、露骨に不快感を示されると良い気はしません。
生活音を出してしまった方だって、故意にやったわけではないでしょう。
たとえ仕事に差し支えると思っても、露骨に不快感を示さないことが、テレワークをスムーズに運ぶうえで重要です。
テレワークのビジネスマナーはどういうものか
リモートハラスメントという事態を招かないために、どのような事に気を付けるべきなのでしょうか?
テレワークで守るべきビジネスマナーとしては、以下のようなものが考えられます。
- 寝起きだと思われないようにする
- 部屋内が写り込まないようにする
- 清潔感のある服装を心がける
- 生活音は可能な限り排除する
- 外出先では不向きな場所があることに注意
寝起きだと思われないようにする
自宅で仕事をする以上、出社時と同様にスーツを着用しろなどというのは、やや行き過ぎですし、肩のこらない格好で仕事をした方が能率もアップするでしょう。
ただ、明らかに寝起きだと思われるような格好で、仕事をするのはどうでしょう。
パジャマのまま、寝癖も直さない状態で業務に入るのは、他人に不快感を抱かせてしまいかねません。
自宅で行っているとはいえ、テレワーク中は業務時間です。
ある程度は身だしなみを整えるなど、寝起きだと思われないようにする工夫は必要になってきます。
部屋内が写り込まないようにする
そもそも部屋内がどうなっているかは、本来は仕事にとって不要な情報です。
だから部屋内について聞かれるのは、リモートハラスメントになるというわけです。
とはいえ、そうした興味を抱かせるような生活の痕跡が残っているのは、必ずしもよろしくありません。
それなら、最初から部屋内が必要以上に写り込まないようにすべきです。
テレワーク用のツールでは、部屋内を映さず、専用の背景を設定できる機能もあります。
そうした機能を使い、部屋内を完全に映さないようにするのもおすすめです。
清潔感のある服装を心がける
自宅での仕事ですから、肩のこらない服装を選びたいという気持ちは分かります。
しかし、あまりにも清潔感がない衣服はどうなのでしょうか。
テレワーク用のネットツールでは、自分の姿が映っています。
あまりにも清潔感のない格好では、他の人に不快感を与えてしまう可能性は否定できません。
何度も同じことを書きますが、自宅であってもやっていることは仕事です。
仕事にふさわしい、ある程度の清潔感を備えた服装を心掛けましょう。
生活音は可能な限り排除する
自宅で仕事をする場合、生活音の発生は避けられないところがあります。
ただ、その生活音が仕事に悪影響を与える可能性があり、リモートハラスメントにつながることも確かなのです。
仕事に集中するためには、生活音は可能な限り排除していくのが、テレワークにおけるマナーです。
そうすることで、業務への悪影響が抑えられるからです。
家族にはテレワークであっても仕事だということをあらかじめ言っておき、必要以上に部屋に入ってくることがないよう、あらかじめ準備しておく必要があります。
外出先では不向きな場所があることに注意
テレワークは、必ずしも自宅で行うわけではありません。
自宅での業務に問題があるなどと判断した場合には、テレワークの場所を外出先に求めることとなります。
ただ外出先でもテレワークに向いている場所と、不向きな場所があります。
例えば、図書館や美術館のロビーのように、比較的静かなところならばテレワークに向いています。
逆にホテルのロビーやラウンジはBGMがあるため、どちらかといえば不向きです。
ネットカフェは静かすぎて、会議での発言がはばかられるので向いていません。ただ最近では、完全個室を備えたネットカフェもありますので、そういった施設を利用するのも手です。
まとめ
テレワークの導入によって、従業員間の物理的な距離が遠くなっていることは否めません。
そのため、以前にも増してコミュニケーションの取り方について配慮しなくてはならなくなりました。
テレワークとは言え複数の人間が関わる仕事ですから、当然のことながら礼儀はあります。
リモートハラスメントを避け、テレワークのマナーを守って、仕事を効率良く行いたいものです。