一般企業で雇用されることが難しい障がい者の方が、働くチャンスを得られ、なおかつ知識や経験を積み重ねてスキルアップを期待できるのが、障がい者のための就労継続支援事業です。
2006年に「障害者自立支援法」ができてから、障がい者の方の働く場所として、就労支援施設が増え、新たに就労継続支援事業所を開設する人も増加傾向にあります。
就労継続支援事業には、A型とB型がありますので、まずはその違いから解説していきましょう。
目次
就労継続支援A型とは?
就労継続支援A型は、雇用契約を結んで就労することが可能な、65歳未満の障がい者の方を対象に、雇用契約を結んだ上で働く機会を提供します。
また、それとともに就労に必要な知識の習得やスキルアップのための訓練・支援も行います。
就労継続支援A型の対象となる、雇用契約を結んで働ける見込みのある人というのは、例えば盲・聾養護学校の卒業生や、一般企業の離職者などです。
A型利用者の条件
- 就労経験はあるものの現在働いていない人
- 就労移行支援サービスや特別支援学校での就職活動をしたが雇用されなかった人
就労継続支援A型のメリット
就労継続支援A型は、働く側の利用者にとっても運営側の事業者にとっても、さまざまなメリットがあります。
働く側である利用者は、雇用契約を結んで働くことができるので、最低賃金が保証され、安定収入を確保でき、社会保険にも加入できるため安心です。
一般企業で働くのとは異なり、常に支援者によるサポートを受けられるので、無理なく仕事をすることができます。
逆に、事業者は雇用契約を結ぶことで人件費が高くなったり、社会保険へ加入させなくてはいけなくなったりと、コストがかかってきます。
しかし雇用の安定によって、作業効率が上がり、売り上げアップにつながることも期待できるため、メリットも大きいといえます。
また、もともとやっていた事業に対して就労継続支援A型を導入するのであれば、人件費を抑えることができる可能性もあります。
雇用契約を結ぶため、雇用関係の助成金や補助金を得られるというのも大きな利点です。
就労継続支援B型とは?
就労継続支援B型は、雇用契約を結んで働くのは難しい障がい者の方を対象に、働く機会を提供し、A型同様、就労に必要な知識の習得やスキルアップのための訓練・支援を行います。
就労継続支援B型の場合は、雇用契約は結ばれませんが、作業訓練などを通して生産活動を行い、出来上がったものに対して工賃が支払われるしくみになっています。
ただ、A型と比べると労働時間も短いですし、また、最低賃金が保証されているわけでもないので、支払われる工賃は少ないのが現状です。
就労継続支援B型の対象となるのは、一般企業や就労継続支援A型の施設で働くのは難しいけれど、働くことで知識の習得やスキルアップを見込める人です。
A型とは異なり、年齢制限がないので、高齢の障がい者も働くことができます。
B型利用者の条件
- 過去に一般企業で働いていたけれど、年齢や体力を理由に雇用が終了した人
- 就労移行支援事業所を利用したことがある人
といった、就労への課題などを把握できていることが条件
就労支援事業B型のメリット
働く側の利用者にとっては、体力や体調に合わせて自分のペースで働けるという特徴があり、何時間も働くのは難しいけれど、1日1時間でも週1回でも、少しでも仕事に携わりたいという人に適しています。
事業者としては、B型は雇用契約を結ばないので、工賃や働き方などの自由度が高いというメリットもあります。
ただし、どちらかというとB型の場合は、就労よりもリハビリや訓練といった福祉的側面が強いです。
そのため、既存の事業の作業効率アップや売り上げのアップを目指すというより、利用者の能力に合わせた仕事を確保するというイメージだと考えてください。
就労継続支援A型とB型の違いを比較
ここまで解説してきた就労継続支援A型とB型の違いを整理してみましょう。
就労継続支援A型とB型の大きな違いは、事業者と利用者の間に雇用契約が結ばれているかいないかという点です。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
対象者 | ・就労経験はあるが現在働いていない方 ・就労移行支援サービスや特別支援学校での 就職活動をしたが、雇用されなかった方 | ・一般企業で働いていたが年齢や体力を理由に辞めた人 ・就労移行支援事業所を利用したことがある人 ※就労への課題などを把握できていること |
年齢制限 | 18歳以上65歳未満 | なし |
雇用契約 | あり | なし |
報酬形態 | 最低賃金保証 | 工賃 |
定員数 | 10名 | 20名 |
障がい者就労継続支援事業を始める人が多い理由
昨今では、障がい者就労継続支援事業を始める人が多いのですが、それはなぜなのでしょうか?
まず就労継続支援事業では、事業上の売り上げのほかに、訓練給付金や助成金が収入として見込まれます。
そのため、ある程度安定した収入は得られるという点で、安心して事業を始めることができるのです。
前述のとおり、就労継続支援事業にはそれぞれメリットがありました。
特に就労継続支援事業A型の場合、利用者と雇用契約を結ぶことになりますので、社会保険の整備などのコストはかかるものの、さまざまな雇用関係の助成金や補助金の対象になります。
そのうえ、雇用が安定することで作業効率もアップし、それが事業の収益にもつながっていきます。
就労支援事業は人手不足の解消にも一役買っていますので、既存の事業で人手不足に陥っている場合などにもうまくマッチする可能性があります。
人手不足の業界で、あらためて業務を細分化して切り出してみると、意外に障がい者の方に任せられる仕事がたくさんあるものです。
例えば、慢性的な人手不足で知られている業界といえば介護業界です。
福祉施設での業務を細分化し、単純作業でマニュアル化できる業務を洗い出してみると、パソコンを使った単純入力をはじめ、シーツ交換、清掃業務など、さまざまな業務を任せられそうです。
これらの業務を障がい者の方に任せることで、他の職員の手が空きますので、業務効率が格段に上がります。
また、就労継続支援事業でサポートを受けながら働き、知識やスキルを習得した利用者を、一般企業で働けるよう送り出すことができれば、障がい者の一般就労への足掛かりになることができ、社会貢献という面でもその一翼を担うことができます。
こういった実績は、利用者やその家族の間で評判になるものです。
まとめ
この記事では、障がい者のための就労継続支援事業についてご紹介しました。
就労継続支援事業にはA型とB型があること、そしてその違いについて比較するとともに、なぜ障がい者就労継続支援事業を始める人が多いのかについても解説しました。
就労継続支援事業は、障がい者の就労を支援する社会貢献の一つでもある一方、事業者にとっては人手不足を解消してくれて、収益につなげられるというメリットがあります。
就労継続支援事業を利用したいと考えている障がい者はたくさんいますので、まだまだ参入の余地があるといえるのではないでしょうか。