「人が集まる、交流してさまざまな経験ができる空間を作りたい」「カフェだけでなく、寝食を共にする場を提供したい」、そんな思いを叶えられるのがゲストハウスの経営です。
「ゲストハウス」というのは、簡易的な宿泊施設のこと。ホテルや旅館とは違うとはいえ、勝手に営業を始めることはできません。
そこでこの記事では、ゲストハウスの開業に必要な準備や手続きの流れを紹介していきます。開業にかかせない資金の調達方法や成功のポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも「ゲストハウス」とは?
「ゲストハウス」とは、ホテルや旅館などより安い料金で客を受け入れる簡易的な宿泊施設のことです。
その規模などに明確な定義はありませんが、ホテルや旅館との大きな違いは、宿泊者同士が相部屋で宿泊するということ。
ドミトリーと呼ばれる2~4人の相部屋、トイレやシャワーは共有で、食事なしの素泊まり、というのが基本的なスタイルです。ただし中には、一部トイレやシャワー付きの個室を設けているところもあります。
法的には、ホテルや旅館と同じく「旅館業法」という法律に基づき運営しなくてはなりません。ゲストハウスは、旅館業法上の「簡易宿所営業」に該当します。
ホステルや民泊との違いは?
ホステルとゲストハウスには、事実上ほとんど違いはありません。イメージとしては、ホステルはゲストハウスよりやや規模が大きく、ゲストハウスは家族経営的なアットホーム感ガあるという感じでしょうか。
旅館業法でいう区分(営業種別)も、どちらも「簡易宿所営業」で同じです。ペンションもこれに該当します。
「民泊」とゲストハウスの大きな違いは、オーナーが同じ建物に住んでいるかどうか。専用の宿泊施設ではなく、自宅の空き部屋を使って営業するのが民泊です。
ちなみに、民泊は「住宅宿泊事業法(民泊新法)」という法律に基づく営業が可能です。しかし、年間180日を超えるなどの場合には、ゲストハウスと同じく「簡易宿所営業」として旅館業法に基づく許可を受けなくてはなりません。
ゲストハウスを経営することのメリット
ゲストハウスの経営には、前述のとおり「簡易宿所営業」として旅館業法による規制はあるものの、ホテルや旅館の経営とは違う次のようなメリットがあります。
- 小さな規模で宿泊施設が運営できる
- 人との交流を望む人が集まりやすい
- 高度な接客技術はなくてもいい
簡易宿所営業には、客室数や1室あたりの床面積についての規制がありません。そのため、少人数のスタッフでも目が行き届く、こじんまりしたゲストハウスが作れます。規模によっては自分1人だけで運営することも可能でしょう。
小規模で運営し、人件費がかからなければ、開業資金や運転資金も安く抑えることができます。
「ゲストハウスを作りたい」と思うのは、冒頭でも触れたように「人々の交流の場を作りたいから」という人も多いはず。ゲストハウスには、単に安価な宿泊先を求めるというだけでなく、人との交流を楽しみたいという人が集まってきます。
宿泊客とオーナーとの距離も近いため、自分もお客さんたちとの会話などを楽しむことができます。キッチンを備えて共に料理をしたり、交流イベントを開催したりすることも可能です。
安価であり、アットホームな空間であれば、カジュアルさが売りにもなります。いわゆる高級ホテルのような洗練された接客技術より、心のこもったおもてなしの方が喜ばれるでしょう。
ゲストハウスを開業するまでの流れ
ゲストハウスを開業するにはどうすればいいのでしょうか。まずは大まかな流れを見てみましょう。
はじめに、どのようなゲストハウスを作りたいか、というコンセプト決めを行います。宿泊施設としての形作りをしつつ、必要となる各種の手続きを行って、オープンまで進めていきましょう。
それぞれの段階について、もう少し細かく説明していきます。
1.コンセプト・方向性の決定
宿泊客に来てもらうには、どのようなゲストハウスにするのかというコンセプトや方向性を決める必要があります。泊まるだけでなく交流などを求めてゲストハウスを利用する人が多いため、「他とは違う何か」を打ち出さないと選んではもらえません。
コンセプトを決めるには、次のようなことを考えてみるとよいでしょう。
- どんな人に来てもらいたいか(ターゲット設定)
- 全体のイメージやテーマ、雰囲気をどのようにするか
- 訪れた人にどんな宿泊体験を提供するか
こういったポイントで絞っていくと、内装や外装をどうすればいいかも決めやすくなりますし、アピールポイントも明確になります。紙に書いて具体化していくのがおすすめです。
2 . 開業資金の準備・調達
開業資金については後ほど詳しく紹介しますが、100平米未満の比較的小規模な賃貸物件で開業する場合にも、500万円~1000万円程度の費用がかかります。
開業を決めたらまず、貯金をしてできるだけ多くの自己資金を用意してください。
貯金で足りない分は、信頼できる人から借りたり、金融機関からの融資を受けたりするのが一般的です。ゲストハウス開業なら、オリジナルかつ魅力あるコンセプトを前面に押し出し、クラウドファンディングで資金調達するのもよいでしょう。
小規模で開業でき、高級感を打ち出す必要がないことから、内装工事などをDIYにして費用を抑えるというのも1つの手。融資を受けるなら、事業計画書を作成し、売上見込みなどをしっかり見据えた上で必要な資金の額を計算してください。
資金調達の方法については、後の章で改めて紹介します。
3 . 物件選び
どこでゲストハウスを運営するかというのも、経営の成功を左右する重要なポイントです。物件選びの基準は、集客に適した立地かどうかと、コンセプトに合う立地かどうかです。
都心や観光地はアクセスも良く集客しやすいですが、ライバル業者が多い可能性が高いです。よほど特別な体験ができるなら、交通の便が悪くてもうまくいくかもしれません。それには特に集客に力を入れる必要があるでしょう。
良い立地では物件も高額になります。調達できる資金との兼ね合いで調整することも必要でしょう。
古民家を大規模にリフォームしてゲストハウスにする場合、リフォームに耐えうる物件であるかどうかも重要なポイント。安全面は抜かりなく、専門家を交えてしっかりと確認してください。
4 . 必要な許認可の取得
ゲストハウスの開業には、行政に対し、各種法令に基づく申請などの手続きをすることが必要です。
- 旅館業法上の手続き
- 建築基準法上の手続き
- 消防法上の手続き
それぞれ具体的な内容については別の章で後ほど説明します。ここでは大まかに見ておきましょう。
旅館業法上の手続き
繰り返しになりますが、ゲストハウスは旅館業法でいう「簡易宿所営業」に当てはまるので、簡易宿所としての営業許可の取得が必要です。 申請には、許可申請書のほかゲストハウスの図面など必要書類を提出します。
申請前に事前相談を必要と定める自治体も多いので、まずは問い合わせることをおすすめします。
この旅館業法の営業許可申請に伴い、次に説明する建築基準法上や消防法の確認書類が必要となります。
建築基準法上の手続き
建築基準法については、新築ならその土地にゲストハウスの建設が可能かどうかの確認(用地地域の確認)が必要です。
また、建物が建築基準法に適合しているかどうかを役所に確認してもらう必要もあります。これを建築確認といい、建築確認申請の手続きは建築士に委任するのが一般的となっています。
消防法上の手続き
ゲストハウスなど宿泊施設は、消防法に基づく防火・消火の設備を備えることも義務付けられます。
法定に基づいた設備が整っていることを証明するためには、自治体で適合確認をしてもらわなくてはなりません。
申請は、ゲストハウスの構造や消防用設備を置く場所などを記載した平面図や建築図面、登記所などの写しと共に、証明申請書を自治体に提出します。
ゲストハウスで食事も提供する場合には、保健所で飲食店の営業許可を取る必要があります。地下水を利用する場合には、水質検査も必要です。
この他にも、どこにどのようなゲストハウスを建てるのかによって必要な手続きが増える可能性があります。例えば農地に建てるなら県の農業振興課、バリアフリー施設については住宅計画課など、関連機関にあらかじめ問い合わせておきましょう。
5 . 外装・内装工事
許認可等の手続きを無事に済ませることができたら、外装・内装の工事を始めます。
コンセプトに合った外装・内装にすることは大切です。しかし、最初からこだわりすぎてもよくありません。
というのも、外装や内装に初期投資をしすぎてしまい、経営が軌道に乗る前に経営が立ち行かなくなるケースも少なくないからです。
アットホームさも魅力になるゲストハウスですから、DIYできる部分は自分たちで行い、費用を抑えるとよいでしょう。もちろん、安全性は第一に考えてください。
工事の発注には相見積もりを取るなどして、適切な業者を選びましょう。
6 . 設備・備品の購入・設置など
内装工事が終われば、キッチンなどの設備やベッド、テーブル・イスなどの家具など、必要な設備を整えます。消火器など防火設備も適正に設置してください。
購入する物は外装・内装工事をしている間にあらかじめ調達しておくと、スムーズに進められます。
今や、宿泊施設にインターネット環境の整備は必須と言えます。客のニーズに応えるだけでなく、集客にもネットは不可欠。インターネット契約なども済ませておきましょう。
会計に使うクレジットカードの決済システムなどの整備も必要です。
7 . 行政による立ち入り検査
工事が終わり設備も整ったら、消防署に連絡し、防火・消火設備に問題がないかどうかの検査を受けます。その後、保健所による立ち入り検査も受けなくてはなりません。
防災・衛生面などの観点で簡易宿所としての基準を満たしてしているかどうかがチェックされます。
8 . 集客のための施策
オープンより前から、積極的に集客への取り組みを行っていきましょう。開業してすぐにお客さんが入っている状態が理想です。
ゲストハウスの特徴や魅力を伝えるために、公式サイトを作ったり、大手宿泊予約サイトなどへの登録をしたりするとよいでしょう。
FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSも、無料で世界中に情報発信ができる重要な集客ツールです。ただしそれぞれの利用者層や使い方の特徴に合わせて、効果的な使い方をする必要があります。
9 . オープン
営業許可など必要な手続きが完了し、設備も整ったらいよいよオープンです。
いつでもお客さんを迎えられるよう、万全の体制を整えておきましょう。
開業したら、1カ月以内に税務署に開業届を提出する必要があります。はじめから法人を設立するのであれば、登記などの手続きを行ってください。
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ゲストハウスに求められる各種法的基準
上記の流れ「4」で、旅館業法や建築基準法、消防法についてそれぞれ基準があると説明しました。この3つの法令による基準について、もう少し具体的に見ておきましょう。
旅館業法上の基準
衛生管理などの観点から、簡易宿所の営業許可を受けるには建物の構造などが次の基準を満たさなくてはなりません。
- 客室の延べ床面積が33㎡以上である
- 客室は収容人数に対し十分な広さがある
- 二階建てベッドの上下段が1m以上離れている
- 二階建てベッドの上段に手すりなどを設ける
- 換気や照明、採光、防湿、排水の設備を整えている
- 宿泊者のニーズを満たせる規模の入浴施設がある
- 適切な規模の洗面設備がある
- 適当な数・構造のトイレがある
- 廊下や二階建てベッドのある部屋の通路の幅が適切である
延べ床面積に関しては、宿泊者の数が10人未満の場合は3.3平米に宿泊者人数をかけた面積以上となるようにします。
また、入浴施設について、ゲストハウスのすぐ近くに公衆浴場があるなど、入浴施設がなくても支障がない場合のみ、設置しなくてもOKです。
その他、都道府県の条例による基準を満たしている必要もありますが、宿泊者数を10人未満として申請した場合は基準が一部緩和される可能性があります。
建築基準法上の基準
ゲストハウスの開業にあたり、建築基準法に関して主に次のような確認が必要となります。
- 新築する場合…用途地域の確認と建物の法適合性
- 既存物件の場合…用途変更および工事等の必要性
新築する場合
新たにゲストハウスの建物を建築する場合、まずその土地が宿泊施設を立てても良い地域かどうかを確認する必要があります。住宅専用地域や工業地域に宿泊施設を建てることはできません。
また、当然ながら新築する建物は建築基準法に適合していなくてはなりません。
既存の建物を利用する場合
すでにある建物をゲストハウスとして使う場合は、「用途変更」の手続きが必要となる可能性も高いです。
用途変更とは、文字通り建物の用途を変更するための手続きのこと。建築物は、勝手に何にでも使えるわけではありません。
ゲストハウスの場合、用途は「ホテルまたは旅館」である必要があります。元の建物がそれとは異なる用途で建てられているなら、用途変更ができるのかを確認し、可能なら用途変更を申請しなくてはなりません。
用途変更には、改修工事が必要となる場合もあります。また用途変更ができない地域もあります。
旅館業法では、学校や保育所などの周囲110m以内に宿泊施設を作ることはできないなどの規制も。自治体によっては、地域性による独自の規制もあります。
建築関連の手続きに関しては、自身で確認することも大切ですが、建築士など専門家の手を借りる必要もあるでしょう。
消防法上の基準
ゲストハウスなどの宿泊施設は、消防法に基づく消火設備などの設置を行うことも義務付けられています。
設置基準 | 必要な設備 |
---|---|
すべての宿泊施設 | 自動火災報知設備 誘導灯 防炎物品の使用 (カーテン、じゅうたんなど) 携行用電灯 避難経路図 |
延べ面積150㎡以上 | 漏電火災警報器 |
延べ面積150㎡以上 無窓階50㎡以上 等 | 消火器 |
延べ面積500㎡以上 | 消防機関へ通報する火災報知設備 |
延べ面積700㎡以上 無窓階150㎡以上 等 | 屋内消火栓設備 |
収容人数20人以上 | 非常警報設備 |
収容人員30人以上 | 防火管理者の選任 |
2階以上で収容人員30人以上 等 | 避難器具 |
そのほか、建物の構造などによって必要な設備が追加される可能性もあります。
また、火災防止のための注意事項や火災発生時の対応についての説明を宿泊者に行う必要もあり、外国人への説明には外国語での説明(文書や図面可)をしなくてはなりません。
宿泊者にコンロを使用させる場合は、安全装置付きのものにするといった配慮も必要です。
ゲストハウス経営を成功させるポイント
ゲストハウスの経営成功には、集客やお金のやりくりが重要なカギです。個人経営のゲストハウスは、チェーン展開のホテルのようにブランドのネームバリューによる集客は見込めません。
旅行者が宿泊するゲストハウスを選ぶ際、インターネット上の口コミなどが大きな判断材料となります。できるだけ客のニーズを満たし、高評価を得られるようにしたいものです。
次のようなポイントを押さえて、ゲストハウスの経営を成功させましょう。
- アクセスのよい立地を選ぶ
- オープン時期を選ぶ
- 外国語の説明書きを用意する
- Wi-Fi環境を整備する
- キャッシュレス決済に対応する
- トイレなど水回りを清潔にする
- 価格設定を適正にする
- なるべく多くの資金を用意する
それぞれ具体的に説明します。
アクセスのよい立地を選ぶ
「その宿に泊まることが目的」でない限り、宿泊者がゲストハウスを選ぶポイントは利便性の良さ。旅行の目的が何であれ、目的地近くのゲストハウスを探す人がほとんどです。
夜遅くでも公共交通機関で帰ってきやすいロケーションであれば人気も高まります。レンタサイクルなども喜ばれるでしょう。
「自然を楽しむ」などのコンセプトであれば、多少の不便さがあっても客が来てくれる可能性はあります。しかし、公共交通手段に乏しいなら、例えば1日1回でも送迎サービスを行うなどの工夫が必要です。
オープン時期を選ぶ
オープン時期によって、集客にも差が出ます。周辺でイベントや季節の見どころなど、注目される事柄のある時期に合わせてオープンすることで、選ばれやすくなります。
宿泊先選びには、アクセスの良さと共に、施設の新しさを重視する人も多いもの。宿泊予約サイトでも、「○○年春オープン」などの文字があれば注目されやすくなるでしょう。
外国語の説明書きを用意する
ゲストハウスには、世界各国からの旅行客が見込めます。日本とは使う言語も異なりますし、生活習慣や文化、体格なども異なります。
人々との交流を図るには、日本のしきたりや習慣、文化などを知ってもらうことも大切です。
外国人客向けには、各種外国語の説明書きを用意しておいたり、あらゆる場所、物の使い方などに英語の表記をしておくと親切ですし、会話のきっかけにもなるでしょう。
Wi-Fi環境を整備する
外国人旅行客が最も気にすることの1つがWi-Fi環境。以前から、日本にはフリーWi-Fiのスポットが少ないという声が多数上がっています。
ゲストハウスにも当然ながらWi-Fi環境は求められています。なければ別の宿を選ばれてしまう可能性も高いです。
キャッシュレス決済に対応する
コロナ禍で日本でもかなり普及が進みましたが、ゲストハウスの会計にキャッシュレス決済は必須です。特に欧米などでは少額でもカード払いが当たり前となっている国がたくさんあります。
入金が後になるため現金払いにしたいというのが本音かもしれませんが、選ばれるゲストハウスにするためにキャッシュレス決済への対応もしておきましょう。
トイレなど水回りを清潔にする
日本の特徴として、海外と比べて公共のトイレがきれいなことが挙げられます。水回りがきれいかどうかは、宿泊場所選びでも重要なポイント。
シャワールームなど、トイレ以外も水回りはすべて清潔にしておきましょう。
期待に違わず水回りを清潔にしておけば、好印象が得られます。
トイレに関して言えば、もし古い物件で和式便器が使える状態であっても、洋式に変えることをおすすめします。和式の評判は悪く、使い方がわからない、二度と使いたくない、という人も多いものです。
洗浄機付トイレにすれば、より満足度も上がるでしょう。
価格設定を適正にする
ゲストハウスは、何といっても安さが魅力。とはいえ採算が取れなくては続けていけないため、宿泊料金をいくらにするかは重要なポイントです。
ゲストハウスの収益は、次の式で算出できます。
ベッド数×宿泊料×稼働率(%)×日数=月収
ここから家賃や光熱費、その他の雑費を引いた額が利益となります。
周辺にある他のゲストハウスなどの価格を調べた上で、高すぎず、かつ無理のない価格設定をしてください。
なるべく多くの資金を用意する
当たり前のことにも思えますが、資金はなるべくたくさん用意しておきましょう。内装や外装など初期費用はおさえて、運転資金として多くを残しておくことをおすすめします。
というのも、外国人客に限らず多くの人がキャッシュレス決済を使っています。キャッシュレス決済にすれば、当然ゲストハウスへの入金にタイムラグが生じ、すぐに手元にお金が入るわけではありません。
集客はできているのに手持ちのお金がなく、そのため経営破綻してしまうというケースも少なくないのです。
以上のように、客の利便性を上げて集客し、資金繰りをしっかりしていくことがゲストハウスの経営成功の近道です。
利便性を重視するとはいえ、もちろんゲストハウスの安価な料金でできるサービスは限られます。あくまでも無理のない範囲で、低コストで継続できるサービスを工夫してみてください。
ゲストハウスの開業資金の目安
ゲストハウス開業ではどれくらいの大きさの物件を取得するか、内装にどの程度こだわるかによって大きく費用が異なります。
ここでは仮に、100㎡未満の物件を借りることを想定して開業資金を考えてみましょう。
費用項目 | 金額の目安 |
---|---|
物件取得費用 | 100万円~200万円 |
リフォーム代 | 300万円~500万円 |
家具・備品等 | 100万円 |
運転資金 | 100万円 |
合計 | 600万円~1,000万円 |
賃貸で100㎡未満の物件と想定すると、開業資金としては600万円~1,000万円が目安です。
リフォーム代が占める割合が大きいため、 元の物件の状態などによって金額は大きく異なってきます。
土地を新たに購入し、新築して開業するような場合には、物件の取得費用だけで1,000万円以上はかかることに。リース品や中古備品などをうまく活用して費用を抑えるとよいでしょう。
開業資金の主な調達方法
物件取得費・リフォーム代のほか、数カ月分の運転資金も用意しておきたいので、ゲストハウスの開業には高額の資金が必要です。
まずはできる限り自己資金を貯めるのが最善策ですが、開業資金をすべて自分で貯めるというのは難しいもの。融資などで資金調達をするのが一般的です。
そこで、ここからは開業資金を確保する方法・負担を軽減する方法を見ておきましょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
高額の開業資金が必要な場合には融資を受けるというのが一般的ですが、融資先には公的機関・民間金融機関を含めいくつかの選択肢があります。
その中でも特に創業融資が受けやすいのが、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」です。
新創業融資制度は新たに事業を始める方や事業を開始して間もない方を対象にした、無担保・無保証の融資制度です。
日本政策金融公庫自体が中小企業支援を目的とした公的機関なので、新創業融資制度では民間金融機関より審査のハードルは低く融資が受けやすいというメリットがあります。
また実績よりも起業にかける熱意や計画の実現可能性をみて審査をするので、創業時や起業当初でまだ実績がなく民間金融機関の融資を受けにくい人にとって、とても利用しやすい制度と言えるでしょう。
新創業融資制度については下記の記事でも詳しく解説しているため、こちらもぜひ参考にして下さい。
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信用保証協会の制度融資
基本的に銀行などの民間金融機関は営利目的で融資をするため、実績で判断することができない創業融資には消極的です。
そこで民間金融機関からの融資を受けるなら、信用保証協会の制度融資を活用しましょう。
制度融資は金融機関・保証協会・行政の三者が協調し、事業者が銀行からの融資を受けやすくする制度です。
信用保証協会の制度融資であれば、民間金融機関からも創業融資を受けられる可能性がかなり上がります。
制度融資のメリット・デメリットなどについてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も確認してください。
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クラウドファンディング
資金調達方法は、融資以外でもクラウドファンディングを活用する方法が考えられます。
クラウドファンディングとはインターネットを利用して複数の出資者を募る資金調達方法ですが、不特定多数の人から少額の資金を受けるため資金調達がしやすいという特徴があります。
コンセプトを明確に打ち出すことで価値観に共感してもらい、応援したいと思ってもらえればクラウドファンディングで資金調達することもできるでしょう。
最近では「CAMPFIRE」「Makuake」のようなプロジェクトを行う人と応援したい人をつなげるマッチングサイトもたくさんあるので、そういったサービスをうまく活用することがクラウドファンディングを成功させるコツです。
上記のサイトでは実際のクラウドファンディング成功例も掲載されているので、そちらもぜひ参考にしてください。
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開業費用の負担を減らせる補助金・支援事業
公的機関から受ける補助金は何より返済の負担がないことが大きなメリットです。また、県や市といった各自治体でも、創業する人を支援する制度を設けています。
ここではゲストハウス開業に利用できそうな補助金・税制措置として、次の3つの制度を紹介します。
- 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
- 小規模事業者持続化補助金
- 地方自治体による支援制度
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンドは無利子で受けられる融資を実施しています。
中でも「スタート・アップ応援型」は地域密着型の新事業に取り組む中小企業を応援する制度であり、ゲストハウス開業のための創業融資にも向いている助成金の1つです。
こちらの助成金では上限が明確に定まっていませんが、数百万円~1千万円ほどの融資が受けられる可能性があります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者の販路開拓や生産性向上のための取り組みにかかる経費を一部補助するのが「小規模事業者持続化補助金」です。
上限50万円という補助額は高いとはいえません。しかし他の補助金よりは採択されやすい補助金として人気があります。検討してみてもよいでしょう。
地方自治体による支援制度
都会への人口集中や少子化による人口の減少などから、地方でも経済を活性化してくれる起業家を歓迎する動きが高まっています。
県や市といった各自治体で、創業者に向けた独自の補助金制度や融資制度、広告宣伝費の補助や会社設立時の登録免許税の軽減といった支援制度が設けられています。
例えば、兵庫県淡路市で昼間の時間帯ににぎわいをもたらす業種での起業をする人には、初期投資支援として内外装工事などの対象経費の3分の1以内、上限70万円の補助が受けられます。
中には、空き店舗の利用や移住によって補助金が受けられるケースも。田舎でゲストハウスの経営を考えるなら、移住を選択肢に入れても良いかもしれません。
こういった制度をうまく活用して、開業費用の負担を少しでも減らしましょう。
ただし制度の募集にも限りがあり、受けるためには常に情報のアンテナを張ったり、専門的な知識を付けたりといった工夫も必要です。補助金や税金に関しては、税理士など専門家の力を借りることをおすすめします。
まとめ
ゲストハウス開業までの流れや成功のポイント、開業資金の金額や資金調達方法について解説しました。
開業には、まず明確なコンセプトを決めてターゲット層に絞ったゲストハウスを作り、海外からの客にも喜ばれるサービス体制を整えたら、インターネットやSNSを活用して効果的に集客することを目指しましょう。
開業資金は自己資金でまかなえない分を融資や補助金、自治体の支援制度など使える制度は使って補いましょう。売り上げ予測や必要経費は具体的に数字を出し、利益を出せる価格設定にすることも大切です。
当サイトを運営する「税理士法人Bricks&UK」では、個人事業主の開業や会社設立のサポートとして、創業融資に関する無料相談も受け付けています。開業後の資金繰りや経営相談などにもお役に立てますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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