起業する場合、資金調達が必要になります。
全額自己資金で賄えればベストですが、多くの方は、融資など別の方法で資金調達することになると思われます。
その際、融資を受けるにあたって、申込者の過去の支払い履歴は非常に重要です。
同じ融資の履歴だけでなく、プライベートの生活に関する支払い履歴なども見られます。
今回は、具体的にどのような支払いが見られるのか、どのくらい延滞すると不利になるのか、などについて解説していきます。
合わせて読みたいおすすめ記事
目次
金融機関は支払いの延滞に厳しい
金融機関が、過去の支払い履歴を見るということは、ご存じの方も多いでしょう。
しかし、恐らくは皆さんの想像よりも、金融機関はかなり厳しい審査基準で見ていると思ってください。
滞納中なのがNGなのはもちろん、少しの支払い延滞でもマイナスになります。
例えば、うっかりしていて何日か支払いに遅れてしまった、というだけでも審査にマイナスになります。
場合によっては、これだけで審査に落ちてしまう可能性もあるでしょう。
そのくらいに、金融機関の対応は支払い延滞に厳しいのです。
理由としては単純で、何かしらの支払いに遅れる人は、今後も延滞する可能性がある、つまりお金を貸しても返してくれない可能性があると判断するためです。
この基準は、厳しすぎるように感じられるかもしれませんが、自分が貸す側の立場に立てば当然かもしれません。
誰かにお金を貸してほしいと頼まれた場合、その人が過去にきちんとお金を返しているかどうかは気になるかと思います。
返済に遅れたということは、催促されるまで返済しなかった、催促されなかったらそのまま返さなかったのでは?といった疑念も働くでしょう。
少し延滞するくらい大丈夫だろう、催促されれば返すのだし問題ないだろう、といった発想がすでにNGということです。
支払いが遅れることや督促しなければならないことは、金融機関の担当者にとっても心理的、労力的に大きな負担になります。
支払いに遅れる人は、融資している側の視点が足りていない可能性が高いので、融資を受けられなくても仕方がないのかもしれません。
金融機関の担当者からも、厳しめの判断が伝えられる可能性が高いので、支払いの延滞についてはこのように軽く考えない方が良いです。
支払い延滞してはいけないもの
融資を受けるためには、支払いを延滞してはいけないということでしたが、具体的にどのようなものの支払いを延滞してはいけないのか、ご紹介します。
カードローン
住宅ローン
家賃
公共料金(電気・ガス・水道・公共サービス)
税金
携帯電話料金
以上のようなものは、支払いが遅れると融資審査には不利になります。
ケース.1 カードローン
まずカードローンの話は有名でしょう。
金融機関同士は、個人信用情報機関を通して情報共有しています。
一か所の金融機関で問題を起こしても、他の金融機関になれば、情報を知られていないと思っている方もいるかもしれませんが、すべて情報共有しています。
これは秘密で行われていることではなく、法律上きちんと許可を得て情報共有しており、個人情報保護の観点からも問題ありません。
逆に情報共有できないと、各金融機関に著しい損害を与える可能性があるため、当然の権利として金融機関同士、個人情報を共有しているのです。
当然、カードローンの取引履歴も把握されているので、融資にも影響します。
ケース.2 住宅ローン
次に住宅ローンの取引履歴も把握されています。
これはカード払いでも銀行引き落としでも同様です。
あまりないとは思いますが、振込で支払っていても履歴は把握されます。
カード同様個人情報として把握されているので、支払いに延滞してはいけません。
ケース.3 家賃
家賃はあまり関係がなさそうですが、これも金融機関に把握されています。
不動産会社が個人信用情報機関とつながっているというよりは、不動産会社から依頼を受けて支払い管理を行っている会社が、個人信用情報機関とつながっています。
家賃の支払い延滞も、その他と同様に注意しなければいけません。
ケース.4 公共料金(電気・ガス・水道・公共サービス)
公共料金も意外に思われるかもしれませんが、個人信用情報機関の対象です。
この場合の「公共料金」には、電気・ガス・水道料金の他、公営住宅の家賃や公立の教育機関、医療機関、通信サービスなどの料金が含まれます。
支払方法が、カード払いでも銀行引き落としでもコンビニ払いでも、同様になります。
公共料金の場合、どこまで把握されているかは不明ですが、明細の提示を求められる可能性が高いです。
家賃も同じなのですが、仮に個人信用情報機関に情報がなかったとしても、明細を出せば延滞したかどうかが判明します。
支払い明細がある場合はそれを提示し、銀行引き落としやカード払いの場合は電子記録や通帳を見せることになります。
割と原始的な確認方法なのですが、金融機関の融資担当者は細かくチェックしています。
細かくチェックした上で延滞があると、融資の審査にかなり不利になります。
仮に、公共料金や家賃の支払いには遅れても、事業に影響する融資の返済には遅れない、という言い分もあるでしょう。
実際、公共料金や家賃はプライベートの範疇なのでルーズに扱っていて、仕事に関係するローンや融資はきっちり滞納しないように注意している、といった方も多いかと思います。
しかし、経営者として融資を受ける場合は、プライベートとビジネスの線引きはありません。
例えば、個人名義の物件も法人名義の物件も、同様に支払い履歴を確認され、延滞した場合のマイナスの影響は同じです。
そのためプライベートの家賃、公共料金でもきっちり支払わないと、ビジネスのための融資で不利になります。
ケース.5 税金
税金の支払い履歴も融資の審査に影響します。
税金に関しては、納付書等の開示を求められる可能性があります。
さすがに、個人信用情報機関と税務署は無関係ですが、自分で証明する必要があるということです。
所得税、法人税はもちろん、住民税の滞納も融資の審査にマイナスになる場合があります。
遅れるメリットはまったくないので、融資を受けるためにはすべてきっちり支払うべきでしょう。
ちなみに保険や年金の支払いは、個人信用情報機関でも把握されていないと言われており、また金融機関の融資でも特に確認されないケースが多いようです。
とはいえ、確認される可能性がゼロというわけではないため、保険や年金もきっちり支払っておくに越したことはないでしょう。
万が一、支払いが厳しい場合は、期間延長や減免の請求を早めにやっておくべきです。
きちんと正当な処理を行った上で支払っていないのであれば、特にマイナスにはならないからです。
ケース.6 携帯電話料金
意外に見落としがちなのが携帯電話料金です。
これには「携帯電話の機種代金」と「利用料金(通話料)」とで扱いが異なります。
携帯電話を購入する際、「機種代金」を一括ではなく分割払いにした場合、割賦契約となり、これはクレジットカードと同じくクレジット契約に当たります。
そのため、機種代金の支払い延滞があった場合は、クレジットカードやカードローンと同様に個人信用情報に記録されます。
一方、通話料などの「利用料金」はサービス契約となり、クレジット契約にはなりません。
よって、毎月の支払いが利用料金のみの方は、仮に利用料金の延滞が発生したとしても、個人信用情報に即座には反映されません。
ただし「即座には」と注釈をつけたのには理由があり、利用料金も長期で延滞すると、最終的に支払いの意思がないと看做され、強制解約となります。
そして、強制解約をされると、個人信用情報には「異動」と記録されるのです。
この異動には、ローンの延滞、信用保証協会の代位弁済、自己破産などが含まれます。
携帯電話の強制解約も同様の扱いとなってしまいますので、融資審査の際には大きな影響が出ることは避けられません。
時折、「利用料金の延滞だけなら信用情報にキズはつかない」とする言説も見受けられますが、信用情報に記録される以上、あまりあてにしない方がいいでしょう。
融資の審査で支払いを確認される期間
金融機関は、融資の際に審査を行うということでしたが、どのくらいの期間分を確認するのでしょうか。
さすがに全期間を確認するというわけではなく、基本的には1年間程度です。
言い換えれば、過去の取引履歴に問題がある場合、1年以上期間を空ければリセットされるということです。
ただし、ローンで悪質な延滞をしたり、自己破産したような場合は、5年~10年程度履歴が残ります。
さすがに5年~10年間融資を待つのは厳しいので、その場合は日本政策金融公庫など、再チャレンジに寛容な機関からの融資を検討した方がいいでしょう。
創業融資の審査を受ける際の注意点
すでに多額の借金がある場合、融資は厳しい
例えきっちりと返済をしていても、すでに借金が多い、別の機関から多額の融資を受けている、という場合もあるでしょう。
すでに借入があるということは、今後返済しなければならないということです。
新たに融資する側からすると、別の機関にも返済しなければならない状態は、大きなリスクです。
特に消費者金融などは金利が高いため、その分返済額も大きくなります。
返済額が大きくなると、金融機関からの新たな融資を受けにくくなります。
自己資金が少なすぎるのも融資審査に不利になる
自己資金が少ないということは、そもそも返済するための原資がないということです。
新規事業で成功するのはハードルが高く、売上が出るには最短でも半年はかかることが予想されます。
自己資金が少ない場合は返済が難しく、貸し倒れになる可能性が高いからです。
また、創業準備の段階で自己資本を用意しているということは、それだけ事業に対する真剣さや意思の強さと評価されます。
そういった点から、創業前には自己資金の蓄えをある程度持っていた方が、審査には有利ということになります。
嘘を付くのは絶対NG
金融履歴に問題があるから、嘘を付いてごまかせば良いのではないか、最悪ばれたら認めれば良い、と思われる方もいるかもしれません。
実際このようなケースは少なからずあります。
しかし、嘘を付くのはかなりハイリスクです。
嘘を付いたら、どのくらい融資に不利になるか明確な基準はないのですが、担当者からの心証が明らかに悪くなり、素直に最初から金融履歴を提示しているよりも不利になる可能性が高いでしょう。
また嘘を付く人というレッテルが貼られるため、今後の融資審査にも影響するかもしれません。
個人信用情報機関に共有されるかはわかりませんが、嘘を付いて審査を受けたという履歴が残る可能性も否定はできません。
融資はお金の貸し借りであるため、基本的に信用に基づいています。
嘘を付く行為は、相手の信用を圧倒的に裏切る行為なので、お金を貸す側に大きな不信感を与え、結果的に融資してもらえなくなるということです。
まとめ
支払いの延滞に対して金融機関はかなり厳しく、少し延滞しただけでも融資を受けられなくなる可能性があります。
対象となるのは、カードローンだけでなく、住宅ローン、家賃、公共料金、税金、携帯電話料金など、一見すると関係なさそうな料金まで含まれています。
またビジネス用途で融資を受ける場合も、プライベートの支払いの延滞が影響します。
融資を受ける側としては、ビジネス目的のものとプライベートのものは、分けて考えているかもしれませんが、金融機関側は全部トータルで考えています。
要するに、プライベートで支払いを延滞する人は、ビジネスでも延滞する可能性があるという考えでしょう。
厳しいようにも思えますが、大切なお金を貸し借りすると考えれば、過去に長期延滞していないかどうかという信用問題を、厳しめに問うのは当然なことかもしれません。