新型コロナウイルス感染症対策として行われることが増えつつあるリモートワークですが、日本生産性本部の調査では、在宅勤務で生産性が下がったという評価が7割近くを占めます。
感染症対策としてリモートワークを行う上で、どのようにすれば生産性を低下させないですむのでしょうか。
今回は、そのポイントについて考察いたします。
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目次
ポイント.1 朝礼や朝会を行うようにする
リモートワークは出勤時間というある種の「儀式」を経ていないため、気持ちの面での切り替えがうまくいかず、それが生産性の低下につながっている可能性は否定できません。
起きてから仕事に集中できるようになるまでには、一定の時間が必要とされます。
人間の身体は、起き抜けから全力でパフォーマンスを発揮せきるような仕組みになっていないのです。
そうした気持ちの切り替えや、ウオーミングアップの意味合いで一定の効果を持つのが、朝礼や朝会です。
毎日決まった時間に、朝礼や朝会という「儀式」を経ることで、気持ちの切り替えがスムーズになり、仕事前のウオーミングアップにもつながるので、生産性の向上が見込めます。
ある有名ラグビー選手が一種の「儀式」を取り入れることで集中力を高め、自身に良い影響を与えていましたが、リモートワークでもこれを行おうというわけです。
ポイント.2 孤独を感じさせないようにする
リモートワークのデメリットのひとつに、孤独を感じやすいことが挙げられます。
実際、自宅で仕事をする場合、周囲に他の社員はいませんから、孤独であることは間違いないです。
1人で仕事をしているということで、コミュニケーションが取りにくいという問題も生じます。
コミュニケーションに齟齬が生じれば、生産性の低下につながることは想像に難くありません。
人によっては周りの目がないと気が緩み、サボってしまうということも考えられます。
いかにして孤独であると感じさせないようにするかは、予想以上に重要なことなのです。
孤独を感じさせないようにするためには、前述の朝礼や朝会も効果的ですが、音声や動画でコミュニケーションを取れるツールを導入することも重要です。
一例として、Discord(ディスコード)に音声チャンネルを作成し、そこで多人数が音声によるコミュニケーションを取ることが考えられます。
Zoomで映像を使って接続することも、おすすめと言えます。
孤独感からくるストレスを少しでも緩和するため、1on1ミーティングなどを利用して従業員がストレスを発散できる場所を作るのもありでしょう。
【Discord(ディスコード)とは?】
アメリカで開発された無料ボイスチャットアプリです。
元々はオンラインゲーマー向けの「ゲーム専用グループチャット」でしたが、無料かつ利便性に富むツールとしてリモートワークに活用されるようになり、現在では「あらゆるコミュニティが使えるコミュニケーションツール」となっています。
2015年のリリース開始から、2019年5月時点でユーザー数が全世界で2億5000万人に達しています。
ポイント.3 仕事がしやすいように環境を整える
仕事場はなんだかんだ言って、仕事のための環境です。
このため、さまざまな意味で仕事に集中できるような環境が整えられています。
ところが、自宅で仕事をするリモートワークの場合、その点について問題があるケースが少なくありません。
これは、元々仕事をするために作られた環境ではないためですが、もし不向きな環境で仕事をやれば、集中力が保てず生産性はダウンします。
オフィス並みというのは無理がありますが、テレワークを自宅で行う場合には、仕事に集中するための環境を構築していく必要があります。
例えば、自宅で使う椅子は必ずしも仕事に使うことを想定していませんので、長時間座ると負担がかかることが考えられます。
この場合、オフィス用の椅子を調達し、体への負担を減らすなど環境作りの工夫が必要です。
ポイント.4 運動する習慣を取り入れる
都市部だと通勤する場合は自宅から駅、職場までは歩いているので適度に体を動かすことになります。
このため、思っているほど運動不足になっているわけではありません。
ところが、テレワークの場合は職場=自宅なので、体を動かす機会が極端に少なくなります。
結果として運動不足によってストレスがたまり、生産性を下げるという事態になりかねません。
人間はストレスを受けると、副腎皮質から「コルチゾール」というホルモンが分泌されます。
代謝の促進、抗炎症および免疫抑制などが主な役割で、人体にとって必須のホルモンですが「ストレスホルモン」とも呼ばれ、この濃度が高くなると、ストレス関連疾患の一因となることが分かってきています。
運動不足だとこのコルチゾールが減少せず慢性的に高くなり、うつ病、不眠症などの精神疾患、生活習慣病などにつながるとされています。
こうした問題を解決するため、仕事時間中に部屋にこもってしまうのではなく、適度に運動を行うことが生産性のアップにつながってくれます。
運動をすることでコルチゾールが減り、なおかつ「幸せホルモン」の異名を持つ「セロトニン」が分泌されるため、生産性の向上につながる可能性があるというわけです。
ポイント.5 労働時間を長く取りすぎない
仕事は長時間すれば生産性が上がるというものではありません。
人間の集中力は長時間続くものではないため、長時間仕事をすると集中力が低下し、生産性がダウンするからです。
実際にテレワークをやってみると、本来の就業時間である8時間も集中力が持たなかったという声は散見されています。
もちろん、このままでは生産性に悪影響が出ます。
生産性の問題を解決するためには、思い切って就業時間を短縮してしまう方法があります。
これまでの就業時間にとらわれず、集中力が続く範囲で新たに設定し直していくのです。
一説によると、人間の集中力が続く限界は4時間だとされています。
これに合わせて就業時間そのものも4時間程度にとどめ、集中力が続かなくなることを防ぐというわけです。
こうすることで、時間いっぱい集中できるようになるので生産性アップが期待できますし、長時間拘束によるストレス軽減につながる可能性もあるというわけです。
ポイント.6 終業時に業務報告を行うようにする
リモートワークには出勤という「儀式」だけでなく、退勤という「儀式」も存在していません。
これも、オンとオフとの切り替えがうまくいかない理由のひとつとなっています。
これが悪い方に出ると、効率が極めて悪い状態でいつまでも仕事をやり続け、生産性の低下を招いてしまうという事態にもなりかねません。
こうした問題を避けるためには、リモートワークについても終業の「儀式」を設けることが効果的です。
具体的には、業務終了後に報告時間を作るのです。
報告自体はメールなどでも可能ですが、リアルタイムで報告することでコミュニケーションを取り、孤独感を和らげることに役立つ可能性もあります。
報告を受けた側でも、その場でフィードバックが可能になり、生産性アップが見込めます。
「儀式」としての側面だけでなく、コミュニケーションの場としても活用できるということです。
まとめ
新型コロナ感染症の流行だけではなく、働き方改革という側面から見ても、リモートワークの導入は必須といえますが、それで生産性が下がったのでは意味がありません。
確かに社内の「儀式」の中には、無駄としか思えないようなものもあります。
ただ、一見無駄に思えるものの多くは、生産性を上げることに役立っている可能性があるのも確かです。
自宅は会社ではありませんから、完全に環境を同一にすることはできませんが、自宅での仕事にそうした「儀式」を取り入れ、仕事場の環境に近づけることは、生産性アップの鍵になりそうです。