新型コロナウイルスの影響により、特別貸付などの利用を検討はしていても「返済できるか心配」という経営者の方は多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルス関連の融資制度をはじめ、日本政策金融公庫からの融資を受ける場合、据置期間が設定されています。
そもそも「据置期間」とは何を意味するものなのか?また、どのように設定すればよいのか?など疑問もあるはず。
特に初めて政策公庫から融資を受ける場合、据置期間の申込期間でどのような印象を与えるのかなども気になるポイントです。
この記事では、日本政策金融公庫より融資を受ける際の据置期間について、様々な角度から解説していきます。
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目次
融資の据置期間とは?
据置期間とは「元本の返済が猶予される期間」を指します。
この期間は利子だけ払えばいいので、資金繰りへの負担が軽減されます。
創業当初等、当初から元本と利息の双方の返済を行う場合、大きな負担となることでしょう。
そこで、創業当初の負担軽減のために、まずは利息のみの据置期間を設定し、返済者の返済負担を軽減する狙いがあります。
据置期間の計算方法
据置期間を計算するためには、まずは事前にある程度計画を立ててみましょう。
融資の返済は利益から拠出します。
そのため、利益がどれくらいなのかを定め、必要経費を差し引いた額から返済額を計算してみましょう。
また、大まかにですが、融資の返済額と据置期間の計算は下記になります。
【500万円を借り入れして7年の返済期間を設定した場合】
- 500万円÷84(12か月×7年)=約60,000円
据置期間を設定していない場合、元本分に関しては毎月60,000円の返済を7年間継続することになります。
では据置期間を1年(12か月)とした場合はどうなるのでしょうか。
- 500万円÷(84-12(据置期間))=500万円÷72=約70,000円
このように、据置期間を設定すると、元本返済開始時からの月々の返済額は、据置期間を設定していない時よりも高くなります。
この点を加味し、想定する利益から返済に回せる金額はいくらなのかなどを計算してみましょう。
据置期間は利息のみの返済
据置期間はあくまでも利息のみの支払いとなります。
創業間もない企業が融資を受けた場合、返済負担が大きいと事業を思うように展開できません。
日本政策金融公庫は利益を追求する団体ではなく、社会公益性を踏まえ、企業に融資を行っています。
そのため、据置期間は利息のみの返済とすることで返済負担を軽減し、企業には、据置期間に経営を安定させてもらいたいとの狙いがあるのです。
据置期間が長ければ元本の返済を後回しにできるため、起業当初の負担を軽減できます。
起業の際、スタートダッシュが重要です。
据置期間は起業時に事業にかかる負担を軽減して、スタートダッシュを後押しするシステムと考えてよいでしょう。
返済期間は据置期間も含めた期間
据置期間は、利息のみを返済する期間で、返済期間の中に含まれたものです。
例えば返済期間が7年、据置期間が1年の場合、それぞれを足した合計8年で返済するのは誤りです。
開始1年が据置期間、その後の6年で元本と利息を合わせて返済しますので、合計7年となります。
「据置期間」という名称から、返済期間とは別枠だと思っている人も多いのですが、据置期間は返済期間の中の利息のみを支払う期間だと考えると分かりやすいでしょう。
据置期間の設定のために覚えておくべきこと
据置期間は自ら設定するものです。
そのため、据置期間設定のためのポイント、ルール等も覚えておく必要があります。
返済期間には上限が設定されている
据置期間・返済期間ともに上限が設定されています。
例えば新創業融資制度の場合、下記となります。
【返済期間】
- 運転資金:5年以内
- 設備資金:10年以内
【据置期間】
- 運転資金:1年以内
- 設備資金:2年以内
融資を受ける際は、上記の間で据置期間を設定して申し込みます。
ちなみに据置期間に関しては任意となっていますので、「据置期間を設定しない」という選択肢もあります。
当初からある程度売り上げを見込める場合等、利息のみの据置期間を必要としないのであれば設定しなくとも構いません。
逆に現金化・利益化まで時間がかかることが想定される事業に関しては、据置期間は長い方がリスク回避になります。
事業計画を作成してシミュレーションする
返済期間・据置期間は自分自身で設定し申し込みます。
各融資ごとに設定されている据置期間の上限範囲のなかであれば自由に設定できるため、事業計画を作成してシミュレーションしてみましょう。
返済に回せる金額を見積もる際は、まず想定する利益、人件費や光熱費、テナント料等一か月に必要な経費を計算して利益を算出します。
そして利益の中からどれだけ返済に回せるのかや、現金化・収益化までのスピードを考慮することで、返済期間・据置期間も見えてくるでしょう。
据置期間や返済期間を適当に決めてしまうと、後々困ります。
頭の中でイメージするだけではなく、事業計画を立て、緻密にシミュレーションすることで、より具体的な数字が可視化されます。
無理のない返済のために、そもそも据置期間が必要なのかや、返済期間・据置期間の長さを考えてみましょう。
据置期間と返済期間のバランス
据置期間の長さにかかわらず、返済期間は変化しません。
返済期間の中で、どれだけの据置期間を設定するかになりますので、バランスも大切です。
例えば据置期間を長くすればするほど、据置期間終了後の返済額は多くなります。
逆に据置期間が短ければ、起業から元本を含めた返済までの期間が短くなりますので、収益化・現金化にもスピード感が求められます。
これらのバランスを考慮し、据置期間を設定しましょう。
据置期間の長さとメリット・デメリット
据置期間をどのように設定するかは申し込み者の自由ではありますが、長さについて、メリット・デメリットもあるものです。
そこで、据置期間を設定する前に、メリット・デメリットについても覚えておくと良いでしょう。
据置期間を長く設定する場合
【メリット】
様々な点で余裕が生まれる点がメリットです。
据置期間が長ければ、手元のキャッシュの減少速度もゆるやかです。また、金銭的な余裕は精神的な余裕も生みます。
一方、据置期間を短く設定した場合、元本の返済が始まるまでにはある程度の収益化を実現しておかなければなりません。
長ければ長いほど、長期的な視野を持てますので、じっくりと事業に取り組めるでしょう。
キャッシュに余裕があれば、できることも増えるのではないでしょうか。
逆に短ければ収益化を意識し、短期的な視点で経営に取り組まざるを得ないことも多々出てくることでしょう。
結果、一時的には収益を得られたとしても長期的展望が見込めていないと、次第に収益が悪化していく可能性があります。
また、キャッシュを活用してビジネスを広げたり、あるいは事業の開始当初はスタッフを多めに雇ったりなど、余裕があるからこそできることも増えます。
このように、据置期間が長ければ長いほど、様々な余裕を得られることでしょう。
【デメリット】
据置期間が長ければ長いほど、利子を中心に支払う期間が長くなります。
長期的にみると元本が減らないばかりか返済時の月々の返済負担が大きくなります。
もしも据置期間内である程度の結果が出なかった場合、その後の資金繰りがより一層厳しいものになるでしょう。
また、借り入れ審査の際、少々悪印象を与えかねません。
据置期間が長いということは、「収益化まで時間がかかる事業」とみなされる可能性があります。
この印象は、次の審査の時に影響が出る可能性があり、次の融資を受けにくくなる点もデメリットとして挙げられます。
一般的に次の融資を受ける際は、1年以上の返済実績があると申し込みやすいとされています。
しかし据置期間中は、利息のみを支払っているため返済実績にはなりません。
つまり、据置期間を1年に設定し、1年半後に追加融資を受けたいと思っても、返済実績は半年しかないとみなされます。
そのため融資が受けにくく、追加融資までの時間がかかります。
当初から追加融資のことを考えている人は少数派です。
しかし、資金繰りが悪化した場合、追加融資が必要となるでしょう。
その時、据置期間の長さのおかげでタイミング的に追加融資を受けることが難しくなってしまう可能性がある点も覚えておきましょう。
据置期間を短く設定する場合
【メリット】
据置期間を短く設定した場合、月々の返済額は多少ではありますが安くなります。
創業時からそれなりに安定した業績が期待できる場合、据置期間が短い方が毎月の負担は軽減できます。
また、次の融資の際の返済実績を作りやすい点もメリットのひとつです。
【デメリット】
据置期間が短ければ、元本込みの支払いが早く訪れることになりますので、余裕がなくなる点がデメリットです。
月々の返済負担が軽くなるメリットはありますが、据置期間が長ければ後回しにできる分、経済的な面での体力を蓄積する期間となります。
返済額の負担が少ない間に、積極的に様々な事業を展開することもできるでしょう。
しかし、返済負担がそれなりのものになれば、返済を意識した会計を意識しなければなりませんので、できないことも増えてくるのではないでしょうか。
このように、据置期間が短い場合、キャッシュに余裕がなくなるまでの期間が短くなります。
極論ですが、据置期間中であれば、利益がさほど上がらないとしても返済負担は微々たるものです。
しかし、据置期間が終わればそれ相応の返済額となりますので、余裕も損なわれるのではないでしょうか。
特に現金化・収益化に時間がかかる業種の場合、据置期間が短いと返済までに現金化・収益化ができていないケースも考えられます。
据置期間設定のためのポイント
据置期間について、どのようなものなのかある程度見えてきたのではないでしょうか。
そこで最後に、据置期間を決めるための具体的なポイントも解説します。
いつから売り上げが見込めるのか
据置期間は、猶予期間と考えるとよいでしょう。
つまり、いつから売り上げが見込めるのかが据置期間設定のポイントになります。
どのような事業であれ、売上になるまでは時間がかかるものですが、どれだけ時間がかかるのかはそれぞれ異なります。
比較的すぐに売上が生まれ、かつ現金化できるのであれば据置期間は長く設定する必要性はありません。
むしろ次の融資をにらみ、早い段階から返済実績を作るために据置期間を設けないという選択肢もあります。
一方で、いつ収益化できるか未知数な場合、据置期間は長めに設定しておいた方が無難です。
収益化までの時間の把握は難しいかとは思いますが、ある程度シミュレーションし、いつから収益化できるのかを考え、据置期間を設定しましょう。
「何となく」ではなくデータ・根拠で決める
据置期間をどのくらいにすべきかを考えるのは、慣れていないとイメージしづらいものです。しかし深く考えずに設定すると、あとで後悔するかもしれません。
据置期間はデータ、あるいは根拠から決めると良いでしょう。
例えば同業者・同規模の業者の収益化までの時間を調査したり、それまでの自社の業績に基づき、月々の無理のない返済額はいくらなのかを調べてみましょう。
無理のない返済額が分かれば、据置期間を活用した方が良いのかも見えてきます。
据置期間によって月々の返済額も変動します。
据置期間ありきで考えるのではなく、自社の返済能力から据置期間を利用するのかや、長さを考えることが重要です。
融資を受ける際は、どうしても「いくら借りられるのか」ばかりを考えてしまいがちですが、自社のデータに基づいた返済計画を立てることで、据置期間が必要なのかや、無理のない返済額の具体的な数値が見えてくることでしょう。
不明な点があるなら積極的に相談してみる
分からないことは積極的に相談してみましょう。
融資に強い税理士や経営コンサルタントなど、外部の人間に相談することで、自社にとっての最適解が見えてくる可能性があります。
据置期間の設定だけではなく、経営全般に関するアドバイスを受けることができますので、一度社外の人間からのアドバイスを受けてみるのも良いでしょう。
アドバイスを採用するかしないかは自分次第です。
特に昨今は無料相談を受け付けている業者もあります。
分からないことを自分で調べ、間違った解釈で認識してしまうと、いずれ悩まされる可能性もあります。
分からないことは、それらを専門としているプロに相談してみるのも、選択肢の一つとして考えておきましょう。
リスケも可能
据置期間は、実はリスケ(リスケジュール)が可能です。
リスケとは、借り入れ条件の変更です。
リスケは自社だけで勝手に決められるものではなく、金融機関と話し合いの結果、返済計画を見直しするものです。
現在の状況や今後の返済計画を作成し、金融機関側に提示するリスケは、金融機関側とすれば、「やむを得ない」場合の対応策です。
貸倒して貸したお金が戻ってこないよりは、当初の計画とは異なるものの、お金が戻ってくるに越したことはありません。
もちろん初めからリスケを前提にするのではなく、当初の計画通りに返済を進めることが好ましいのですが、やむにやまれない時にはリスケという選択肢があることも覚えておきましょう。
この点は当初というよりも、思うように計画が進まないときのためのものではありますが、リスケがあると分かっていれば、計画に関しても気負うことなく組み立てられるのではないでしょうか。
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まとめ
据置期間は利息のみを支払う期間ですが、長ければよいものではなく、自社にとって適した期間を設定することが大切です。
しかし、申し込み時には分からないことも多いのではないでしょうか。
特に収益化のタイミングは計画通りに進む保証などありません。
想像以上の利益を上げることもあれば、逆にまったく利益にならないケースがあるのもビジネスです。
だからこそ、適当に考えるのではなく様々なシミュレーションの元、据置期間を設定しましょう。
それでも分からないことがある場合、専門家に相談し、自社の最適解を見つけましょう。
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