【運営の自由度が高い!法人税がかからない!】有限責任事業組合とは?

有限責任事業組合とは
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有限責任事業組合を設立するという選択肢

複数の人が集まって何か事業を行う場合には、通常は株式会社や合同会社といった法人組織の設立が選択されます。
法人組織を設立すれば、その組織名義で契約を結んだり、財産を所有できるようになったりするメリットがあります。
一方で、独立した事業者どうしが集まって共同で事業を開始するケースや、社内での新規プロジェクトを開始する際などには、パススルー課税や柔軟な組織設計が可能となる有限責任事業組合(LLP)を選択が適していることもあります。
この記事では、有限責任事業組合を設立する具体的なメリットやデメリットについて解説するとともに、設立手続きの大まかな流れについて解説いたします。

有限責任事業組合とは?普通の会社と何が違う?

有限責任事業組合とは

有限責任事業組合とは、複数の人が集まって研究開発などの事業を行う際に選択されることの多い組織形態です。
株式会社と民法組合の中間的な位置付けと言えますが、有限責任事業組合の特徴としては以下のようなことが挙げられます。

  • 出資比率にかかわらず独自に組織運営のルールを決められる
  • 法人格がないため、有限責任事業組合名義での契約や不動産登記はできない
  • 有限責任事業組合が負った債務について、構成員は有限責任となる
  • 事業から利益が生じた場合には、有限責任事業組合に参加する人に対して課税される(パススルー課税)

それぞれの項目について、順番に見ていきましょう。

出資比率にかかわらず独自に組織運営のルールを決められる

通常の株式会社では、出資者(株主)は自分が出資したお金の割合に応じて、議決権や配当を受ける権利を持ちます。
例えば、出資総額の過半数の出資を行なった人は、過半数の株式を取得することになりますから、取締役の選任を通してその会社の運営を実質的にコントロールすることが可能です。

一方で、有限責任事業組合ではこうしたルールはなく、根本規則である組合契約書(株式会社でいう定款のようなものです)によって運営のルールを独自に決めることが可能です。
例えば、有限責任事業組合の設立にあたって、お金は出資しないけれどノウハウを持ち寄って参加すると言う人がいる場合に、その人にお金を出した人と同じ議決権を与えることも問題ありません。

有限責任事業組合の組織運営

有限責任事業組合では、「組合員総会」という会議体だけが必須の運営機関となり、それ以外の機関は設置する必要がありません(設置しても問題ありません)
株式会社では1名以上の取締役を必ず置かねばならないとか、取締役会を設置したときには監査役を選任しないといけないとかいったルールがありますが、有限責任事業組合ではこうしたルールはありません。

また、株式会社の株主総会のように、出資比率に基づく株式保有数による議決などを行う必要もありません。
例えば、出資を全くしていない人と出資をしている人が対等な立場で組合員総会での発言権を持つとすることも可能です。
専門家を招いて研究開発を行う組織や、特定の個人のネームバリューに依存して企業がビジネスを行うようなケースでは、有限責任事業組合を選択するメリットが大きいと言えるでしょう。

法人格がないため、有限責任事業組合名義での契約や不動産登記はできない

一方で、有限責任事業組合には法人格がありません。
法人格とは、簡単に言うとその人の名義で権利を持ったり、義務を負ったりする資格のことをいいます。

株式会社には法人格がありますから、株式会社の名義で契約を結んだり、所有不動産の登記をしたりといったことを行えますが、有限責任事業組合ではこうしたことができません。
そのため、有限責任事業組合が契約を結ぶときには、有限責任事業組合の構成員であることを表示した上で、その構成員名義で契約や登記を行う必要があります。

その上で、契約によって生じた効果は、有限責任事業組合の構成員全員に及ぶこととなります。

有限責任事業組合が負った債務について、構成員は有限責任となる

有限責任事業組合が負った債務について、有限責任事業組合の構成員は有限責任を負います。

有限責任とは、簡単に言えば「出資をした範囲内でのみ責任を負う」という意味で、もし損失が出て事業を解散しないといけないような場合でも、各組合員は自分が出資したものをあきらめさえすれば、それ以上の責任を負うことがありません。
このことは、上で見た「契約の効果(有限責任事業組合が行なった契約の効果は構成員全員に及ぶ)」と一見矛盾するようですが、「有限責任事業組合」という名称からもわかるように、根拠法律である「有限責任事業組合契約に関する法律」で特に定められていることです。
有限責任事業組合と取引等を行った人は、有限責任事業組合に対する債務について、構成員に対して強制執行をかけることはできません。

有限責任事業組合の参加者は、自分が出資する財産の範囲内でのみリスクを負うことになりますから、安心して事業に参加することができます。

事業から利益が生じた場合には、有限責任事業組合に参加する人に対して課税される(パススルー課税)

有限責任事業組合では、パススルー課税という特殊な課税の仕組みが採用されています。

パススルー課税とは、簡単に言えば「事業組織が得た利益がある場合に、その事業組織を通り越して(パススルーして)その構成員に対して課税が行われるかたち」をいいます。
有限責任事業組合では、組合契約で定めた会計期間に従って、その期間中に生じた利益額の計算を行います。
その利益は組合員に対して分配を行います(すでに見たように、その分配の比率は出資比率に基づく必要がありません)

利益の分配を受けた構成員は、その分配による所得と、自身が得ている別の所得とを合算して、所得税の確定申告や法人税の申告を行うことになります。

具体的な税務手続きの内容

具体的には、「組合員所得に関する計算書」というものを作成して税務署に申告を行い、組合員に対しては支払調書を交付します(支払調書の合計表も税務署に提出します)
組合員が個人である場合には、その支払調書を自身の確定申告書に添付して、確定申告の手続きを行えば問題ありません。
組合員が法人である場合には、分配された利益は法人の収入として処理し、法人税の計算をして申告します。

なお、有限責任事業組合が従業員(組合員として参加する人とは異なります)を雇用している場合には、その従業員に対しては通常の給与計算と同様に、源泉所得税の徴収や年末調整などの事務を行うことは通常の株式会社等と同じです。

組合員個人の所得との損益通算について

上で見たように、有限責任事業組合の構成員は、分配された利益と自身が他のところから得ている所得とを合算して、税務申告を行います。

このとき、有限責任事業組合の事業から損失が生じている場合には、その損失については他の所得から控除することが可能です(これを損益通算と呼びます)
ただし、有限責任事業組合の損失を損益通算する場合には、出資を行なった金額に基づいて計算する「調整出資金額」の範囲に限られます。
(この点に関しては、有限責任事業組合においても組合員の出資の金額が問題となります)

有限責任事業組合を選択した場合の税金の扱いについては、税理士等の専門家からアドバイスを受けることができますので、相談してみてください。

有限責任事業組合はどのような場合に役立つのか

有限責任事業組合とは

有限責任事業組合は、実際には以下のような組織を運営するときに設立するメリットがあります。

  • 資本力に差がある者どうしが対等の立場で共同事業を行う場合(出資する資金額によらず、対等の議決権等を持つことができます)
  • 企業と教育研究機関が共同でビジネスを行う場合(お金を出す人とノウハウを出す人とが対等の立場でビジネスに参加できます)
  • すでに存在している組合(民法組合)で、組合員の有限責任を設定したい場合
  • 新規プロジェクトを試験的に開始したいとき(事業がうまくいきそうなら有限責任事業組合は解散し、あらためて自社で事業を行うということが可能です。また、事業が失敗して損失が出たらその損失は出資比率に基づいて損益通算できます)

一方で、有限責任事業組合を選択することには、以下のようなデメリットがあることにも注意しておきましょう。

  • 外部から見てどういう組織なのかわかりにくいこと
  • 会計や税金の処理が複雑になること
  • 有限責任事業組合名義での財産所有や許認可取得ができない
  • 一度設立した有限責任事業組合は後から株式会社等に変更できない
  • 後から出資を募るなどが難しい

特に、初めは有限責任事業組合としてスタートした事業が軌道に乗ったとしても、後から株式会社に切り替えるといったことができない点には注意が必要です。
(この場合はいったん有限責任事業組合を解散した上で、改めて株式会社等を設立する必要があります)
有限責任事業組合から多くの利益が生じた場合、利益の分配を個人が受けたようなケースでは非常に高額な所得税が課税されてしまう可能性があることにも注意しておきましょう。

どのようなケースで有限責任事業組合を選択するメリットがあるのか?については、税理士などの専門家からアドバイスを受けるようにしてください。

有限責任事業組合の設立手続き

有限責任事業組合とは

有限責任事業組合は、まずは「組合契約書」を作成し、法務局で登記することによって設立することができます。
法務局に対して納める登録免許税は6万円となります。
株式会社の設立には通常25万円〜30万円程度の費用が必要になりますから、少ないコストで設立手続きを行えるのも有限責任事業組合のメリットの一つと言えます。
組合契約書は株式会社における定款(組織名称や事業目的など根本的なルールを定めた書類)に当たるもので、以下のような情報を記載して組合員全員が署名押印しなくてはなりません。

  • 有限責任事業組合の名称
  • 事務所の所在地
  • 事業内容
  • 組合員となる人の氏名や住所
  • 組合契約の効力が発生する日
  • 組合の存続期間
  • それぞれの組合員が出資した内容と金額
  • 組合の会計期間に関するルール

なお、こうした内容の他にも、利益分配や組合員の資格得喪に関するルール、組合員総会の開催時期や議決の行い方などについて、あらかじめ組合契約書で定めておくことも可能です。
有限責任事業組合では、広く内部自治が認められる分、紛争が生じないように事前にルールを定めておくことが望ましいでしょう。

まとめ

有限責任事業組合とは

今回は、有限責任事業組合とはどのような組織なのかについて解説いたしました。
企業と個人が協力して事業を行うケースや、産学連携での研究組織を設立したい場合などには、組織運営や利益分配について内部自治が広く認められる有限責任事業組合を選択するメリットが大きいと言えます。
一方で、有限責任事業組合という組織形態が日本国内では認知度がまだ高くないことや、会計や税金の処理が一般的な会社組織とは大きく異なることはデメリットとなる可能性があります。
特に、有限責任事業組合ではパススルー課税が採用されていますから、構成員が各自の責任のもとに税負担を行うことになり、分配を受ける利益額が大きくなるようなケースでは注意が必要です。
有限責任事業組合の設立や運営方法については、税理士等の専門家から助言を受けることができますから、ぜひ相談を検討してみてください。

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