一人親方は法人化(会社設立)すべき?メリット・デメリットなど解説

一人親方は法人化した方がいい?メリット・デメリットは?
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建設業で会社との雇用関係がなく独立して事業を営む人のことを「一人親方」と呼びます。
いわゆる個人事業主に当たりますが、現在一人親方として活躍中の方の中には、今後の事業の拡大や事業者としての信頼度の構築を考え、今のうちに法人化しておくべきかを迷う人もいるのではないでしょうか。

この記事では、一人親方が法人化することのメリット・デメリットや注意すべきポイントについて解説します。

一人親方とは

一人親方は法人化した方がいい?メリット・デメリットは?

一人親方は、建設業などにおいて仕事の請負から業務遂行までを一人でこなせる職人の方を指す場合が多く、一人もしくは家族だけで事業を営む事業主をいいます。

一人親方は、個人事業主であり会社との雇用関係はないので自分の裁量で働くことができますが、その反面、労災保険や雇用保険がなく危険と隣り合わせの環境で仕事をする場合が多いため、自分の身や労働環境を守れるようにしておくことが重要です。

一人親方が法人化するメリット

1人親方が法人化するメリット

一人親方が法人化するメリットについて解説します。

メリット1.税制面の優遇措置が多い

法人化のメリットの1つは税制の優遇

法人化した場合の大きなメリットの1つが税制面での優遇でしょう。
個人事業主の場合には、事業で得た利益が全て課税対象となります。しかし法人の場合は、役員報酬やその他の経費を差し引いて残った利益が課税対象となります。ある程度の利益が確保できている状況であれば大きな節税となります。

また、赤字の場合の欠損金の繰越控除可能期間に関して、個人事業の場合にはこの期間が赤字の翌年以降3年間であるのに対して、法人の場合には最長10年間の繰越しが可能となる点も優位な点として挙げられます。

メリット2.対外的な信頼性が高まる

1人親方の法人化のメリットの1つは信頼性が高まること
名刺イメージ

法人は、民法や会社法などの各種法制度のもとで設立・運営されるので、一般に個人事業主である場合と比較して社会的な信頼性が高く、個人事業主との取引を制限しているような企業との取引も可能となり取り扱える業務の範囲が広がることを期待できます。

また、資金調達を行う場合においても社会的な信頼性の向上により、個人事業主と比較して、金融機関などからの融資が受けやすくなるなどのメリットも挙げられます。

メリット 3.社会保険に加入できる

1人親方の法人化のメリットの1つは社会保険に加入できること

法人化すると社会保険に加入できることもメリットとして挙げられます。
社会保険に加入することにより、厚生年金支払いの対象となり国民年金と比較して将来の年金受給額が増えることが見込まれます。

また、親族などで家族経営を行っている場合には扶養の範囲内において保険に加入させることができるので、個人事業主のように各人が国民保険を支払う必要がある場合と比べて保険料の負担額を減らすことができます。

メリット4.万一の時、個人に返済責任がない

個人事業主の場合には取引において生じた費用や金融機関などから借り入れた資金などは事業主にその返済義務が生じます。
このため資金繰りの悪化などが生じてしまうと、事業主やその家族の生活にも直接影響が及ぶ可能性があります。

しかし法人の場合は、これらの返済義務は法人である会社に発生するため、個人的な借り入れなどの特殊事情を除いては個人が返済責任を負う必要はありません

一人親方が法人化するデメリット

1人親方が法人化するデメリット

ここまで法人化のメリットについて紹介しましたが、その反面デメリットがあることもしっかりと抑えておきましょう。

デメリット1.法人設立の費用・手間が発生

1人親方の法人化のデメリットの1つは手続きの手間

法人を設立するためには、定款などの申請に必要な各種書類を作成して法務局へ提出する手間がかかる上、定款認証の手続き費用や登録免許税などの公的な諸費用がかかります

また、手続きについては自分自身で行うこともできますが、面倒な手間と労力がかかることから、司法書士などの専門家や専門機関に書類作成や手続きの代行を行ってもらうことが一般的です。
このため専門家等へ支払う代行手続きに関する費用も必要です。

デメリット2.新たに建設業許可の申請が必要

個人事業主として建設業の仕事をしている場合でも法人化には別途、法人としての建設業の許可が必要です。

従来は個人事業から法人化する場合には一旦、個人事業の廃業届を出して新たな建設業許可の申請が必要でしたが、令和2年10月の法改正により建設業の地位を承継できるようになりました

しかし、事業承継の事前許可などの手続きは別途行わなければならないので、必要な手続きを予め把握しておくことが重要です。

デメリット3.赤字決算でも法人住民税の支払いは必須

法人化した場合には、利益に応じた法人税の支払いだけでなく法人住民税の支払いが必要です。
前章で紹介したように赤字決算において法人税は原則発生しませんが、法人住民税は赤字であるか否かにかかわらず支払いが義務付けられています。

このため、赤字経営が続いている場合には、一年間にかかる法人住民税の金額を事前に把握し、支払いが滞納することがないように予算確保しておくなどの注意が必要となるでしょう。

デメリット4.まとまった資本金が必要

法人化する場合には資本金の設定が必要です。
資本金は銀行などからの借入金とは異なり返済義務のない自己資本であり、その会社の規模や体力を表す指標となります。

資本金は1円から設定することができますが、あまりに低い金額が設定されると経営に必要な運転資金を十分に確保することができないリスクが出てきます。
会社としての信用にも影響を与えるため、事業規模に応じた現実的な金額を設定しておくことが重要です。

法人化するベストなタイミングはいつ?

1人親方が法人化するベストなタイミング

次にどの段階で法人化を検討するべきか、法人化の適切なタイミングを紹介します。

個人事業の売上が1,000万円を超えたとき

個人事業の売上が1,000万円を超えるとその翌々年から消費税課税対象事業者となります。

しかし、法人化するとこの支払いが免除されるので、課税直前が最適な法人化タイミングといえます。

社会保険に加入したいとき

一人親方であっても、法人化すれば厚生年金や健康保険に加入することになります。

将来や仕事中のリスクなどへの保障を必要とする場合には、法人化も検討しましょう。

課税所得が多くなったとき

個人事業における所得税と法人税は税率が異なります。
課税所得が一定額(800万円程度)以上になると所得税額が法人税額を上回るので、現状の課税所得額を踏まえタイミングを判断しましょう。

このように、法人化するべきかの判断には税金や社会保険の制度など、多くのことを勘案する必要があるので、税理士など専門家への相談がおすすめです。

一人親方の法人化の流れ

一人親方は法人化した方がいい?メリット・デメリットは?

今回は株式会社を設立する場合を例にして、法人化の流れについて大まかに説明します。

Step1.基本事項の決定

会社の形態(この場合株式会社)、会社名となる称号、事業目的、本店の住所、役員構成、資本金を決定します。

Step2.個人の実印と印鑑証明取得

個人の実印や印鑑証明は会社の実印を作成するために必要となるため早めに用意しておきましょう。

Step3.会社の実印の作成

会社の実印は、法人の登記申請や法人化後の口座開設や資金調達などの際に必要となる重要な印鑑です。
個人実印と異なり法務局で登録が必要です。

Step4.定款の作成と認証

決定した基本事項に基づいて定款を作成し公証人の認証を行います。

Step5.資本金の払い込み

発起人個人の口座に資本金の払い込みを行います。
払い込みは発起人名による振り込みであることが必要で、振り込み後に払込証明書作成します。

Step6.登記申請書の作成と登記申請

以上が完了したら、最後に登記申請書を作成し法務局に登記申請を行います。
書類に問題がなければ登記申請日が会社設立日となります。

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一人親方の法人化で注意するポイント

一人親方は法人化した方がいい?メリット・デメリットは?

この章では、法人化の際に注意すべきポイントについて説明します。

建設業許可と登記(空白期間に注意)

建設業の法人化において、小規模の建設工事を請け負う場合を除いては建設業許可を受ける必要があります。
建設業は29の業種に分かれており、業種ごとに許可を受けなければなりません。

また、許可には知事許可と大臣許可の2種類があり、同一の都道府県内のみに営業所を設ける場合には知事許可、2つ以上の都道府県にまたいで営業所を設ける場合には大臣許可が必要です。

許可を受けるためには登記事項証明書を提出しなくてはなりません。

登記事項には、常勤の役員等、専任技術者などを設定しますが、これらに変更がある場合には一定期間内に変更届を出さなければいけません。

この変更タイミングに空白期間が1日でも発生すると建設業許可が失効するため注意しましょう。

資本金はいくらいるか?

1人親方が法人化する際の資本金

建設業の場合には一般の法人と異なり、建設業許可を受けるに当たって必要な資本金が決められています。

一般建設業許可を受ける場合には、

  • 資本金が500万円以上(500万円以上の預金残高証明書または融資可能証明書でも可)であること
  • 特定建設業許可を受ける場合には資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上であり、かつ流動比率が75%以上
  • 欠損額が資本金の20%を超えていないこと

という要件が設定されています。

自身が建設業許可を受けようとする業種が、どの要件を満たす必要があるのか事前に確認しておきましょう。

社会保険への加入義務

1人親方が法人化すると社会保険の加入義務が生じる

法人化すると社会保険への加入が義務づけられます。

社会保険には、医療保険、年金保険、労働者災害補償保険(いわゆる労災保険)、雇用保険、介護保険の5つの保険があります。

危険な場所での作業が伴う場合が多い建設業においては、労災保険も重要です。しかし労災保険は従業員が業務上の理由などで負傷等した場合に適用されるものであり、経営者は対象となりません。

しかし一人親方から法人化を目指すケースでは、経営者自身が現場に赴くケースも十分にあり得ます。経営者も加入できる特別加入制度による労災保険を検討しておきましょう。

タイミングを間違えると節税効果が得られない

法人化する場合の大きなメリットの1つは節税効果だと説明しました。しかし、法人化のタイミングを間違ってしまうとこのメリットを享受することができません。

例えば、個人事業において売上が1,000万円を超えた直後のタイミングで法人化した場合には、法人化によって得られる消費税支払いの免除の効果がほとんどなく節税効果が得られません。

また、所得税と法人税では税率が異なります。課税所得額が比較的低い状況で法人化してしまうと、個人事業で課せられる所得税よりも法人税の方が高くなり、その結果、節税効果がまったく得られないという事態に陥ります。

2023年に始まるインボイス制度

インボイス制度と1人親方

2023年10月1日から消費税の仕入税額控除の方法として「インボイス制度」が導入されます。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、売り手事業者が買い手事業者に対して適格請求書(インボイス)を発行する制度のことをいいます。

このインボイス制度の最大の目的は「取引における消費税額の透明化」です。

インボイス制度に必要なもの

インボイス制度に必要な的確請求書発行事業者

インボイス制度の導入後は、適格請求書発行事業者が発行する適格請求書でないと消費税額控除が認められません。

「適格請求書発行事業者」になるためには、登録申請書を提出して登録を受ける必要があります。

インボイス制度の開始による影響

適格請求書発行事業者にならなければ、今後の取引を継続してもらえなくなるおそれがあります。

ただし、登録申請を行うためには課税事業者でなければならず、消費税の納税免除を受けている場合には申請することができません。

依頼する側にしてみれば、インボイスを発行可能な事業者に仕事を頼んだ方が、税金の負担が減らせます。そのため、免税事業者の一人親方は仕事が減るのではないかという懸念があるのです。

適格請求書発行事業者となれば、自身に消費税の負担が発生するため、収入が減ってしまう恐れもあります。取引先とも話しておく必要があるでしょう。

まとめ

一人親方は法人化した方がいい?メリット・デメリットは?

建設業などの一人親方の法人化は、個人事業と比較して税制面での優遇が受けられるなどのメリットがある一方、例えば建設業許可を受けるなどの手続き上のハードルがデメリットとして挙げられます。

法人化のメリット、デメリットを踏まえ適切なタイミングでの法人化を目指していきましょう。

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