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【保存版】会社設立までの流れと必要なもの
前回の記事では、実際に会社設立の手続きに入る前の基礎知識をご紹介しました。
設立する会社形態も、株式会社か合同会社か決まったことだし、今回はいよいよ会社設立手続きの本編について解説したいと思います。
「お役所への申請ってなんか面倒くさそう…」
何となくそんなイメージを持っている方も少なくないでしょう。ズバリ、そう感じる原因の1つが、準備する書類の数と煩雑さにあると思います。
ですが、あらかじめ全体の流れと必要な書類を把握しておけば、効率良く設立準備を進められるでしょう。
今回は、会社設立にあたって必要となる費用や、手続きの大まかな流れ、準備しておくべき必要書類といった項目について、設立の流れを3つのステップに分けて手順を具体的に解説しますので、参考にしてみてください。
なお、記事の最後におまけとして、会社設立までに必要なものチェックリストをPDFで付属しました。
ダウンロードしてぜひご活用ください。
STEP.1 まずは事前準備から!会社設立前にやること
以下のようなことがらは、会社設立の手続きに着手する前のタイミングで決定しておくのが望ましいでしょう。
- 発起人決定
- 事業計画の立案
- 基本事項の決定
- 資本金額の決定
これらのことがらが事前に決定していれば、会社設立の手続きはスムーズに進めていくことができます。
(逆に、これらのことを決める前に会社設立の手続きに着手してしまうと、手続きが前後する可能性がありますから注意してください)
それぞれどのようなことを決めておく必要があるのか?について、おおまかな内容を理解しておきましょう。
発起人決定
発起人(ほっきにん)とは、ごく簡単に言えば会社設立の手続きを行う株主のことを言います。
個人事業から法人成りするようなケースでは、社長自身が発起人となるケースが多いでしょう。
(「個人事業時代の社長=会社設立手続き時の発起人=会社設立後は代表取締役」というイメージです)
発起人は法人もなることができますから、すでに存在している会社が子会社を設立するようなケースでは、親会社が発起人となっても問題ありません。
なお、発起人は必ず株主とならなくてはなりませんので、設立する会社が発行する株式を1株以上引き受ける必要があります。
事業計画の立案
法人設立にあたっては、設立後にどのような計画のもとに事業を経営していくのか?の計画(事業計画と言います)を作成しておくのが適切です。
会社設立にあたって、出資者を広く募るようなケースでは、この事業計画の良し悪しが資金調達の成否を決めることになります。
また、会社設立後に金融機関(銀行や信用金庫、日本政策金融公庫など)からお金を借りる場合にも、事業計画の提出が必須となります。
事業計画の作成を行う過程で、会社の経営目標などが具体的に明らかになっていくこともありますから、事業計画は会社設立前の段階で作成しておくのが望ましいでしょう。
基本事項の決定
会社設立にあたっては、以下のような「基本事項」を定める必要があります。
- 会社の名前(商号)
- 会社の事業目的
- 会社の本店所在地
- 会社株式の譲渡制限の有無
- 会社の決算時期
- 会社の組織設計
特に、会社の事業目的は重要です。
会社設立時にメインで営んでいる事業のほかにも、将来的に取り組みたいと考えている事業を包括的に含める内容にしておきましょう。
ここで決めた会社の基本事項は、会社の定款(後の項目で説明します)に記載しなくてはなりませんので、事前に内容を決定しておくことが大切です。
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資本金額の決定
会社の設立後は、経営者のお金と、会社のお金とは厳密に分けて管理しなくてはならなくなります。
そのため、会社設立後~最初の売上入金があるまでに要する支出は、資本金の中からまかなうことになります。
最低でも、事業固定費の3ヶ月分程度は資本金として準備しておくのが望ましいでしょう。
法律上、資本金は最低額が撤廃されたので1円以上あれば問題ないことになっていますが、通常は最低でも100万円~300万円程度のお金を準備するケースが多いです。
また、資本金の金額をいくらにするかによって、税金の負担額が変わるケースがあるのにも要注意です。
(消費税の課税事業者となるか、法人地方税の負担額、法人設立登記の金額など)
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STEP.2 いよいよ手続きスタート!会社設立時にやること
ここまで見てきたことがら(発起人の決定~資本金額の決定)が完了したら、いよいよ会社設立の手続きに着手します。
具体的には、以下のような手続きを進めていく必要があります。
- 定款の作成と認証
- 資本金払込
- 登記書類の作成
- 登記書類の申請
(専門家に依頼した場合、手続き完了までは早くとも2週間~1ヶ月程度の時間が必要です)
それぞれの項目について、順番に見ていきましょう。
定款の作成と認証
「会社設立前にやること」で決めた内容を、定款(ていかん)という書類にまとめます。
定款には、大きく分けて以下の3つの項目を記載します。
- 絶対的記載事項:定款に必ず記載しないといけない項目
- 相対的記載事項:記載は任意だが、ルールとして定めたい場合は定款に記載しないといけない項目
- 任意的記載事項:定款以外の方法でルールとして定めても問題ないが、定款で定めておくことも可能な項目
絶対的記載事項は、上の「会社設立前にやること」で説明した基本事項が該当します。
具体的には、以下のようなものが定款の絶対的記載事項です。
- 会社の名前(商号)
- 会社の事業目的
- 会社の本店所在地
- 資本金の金額
- 発起人の氏名と住所
- 発行する株式の総数
相対的記載事項や、任意的記載事項は、簡単に言えば「定款に記載してもしないでもどちらでも良い項目」です。
定款の変更には株主総会決議が必要であるなど厳格な手続きが必要ですから、「これだけは会社運営のルールとして変更したくない」ということがある場合には、定款に記載しておくことができるのです。
ただし、定款は会社の根本的なルールを定めた書類のことで、法律上の要件を満たした記載の仕方をしなくてはなりません。
作成した定款が法律のルールに従って作成されているか?は「公証役場」という役所で認証の手続きを受けることによって判断されます。
なお、2018年11月30日以降の会社設立手続においては、「設立予定の法人の実質的支配者」について記載した書類の提出が必要となりました。
各地区の公証役場のホームページからひな形をダウンロードすることができますので、内容を確認しておきましょう(「実質的支配者となるべき者の申告書」という名前の書類です)
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資本金払込
公証役場での定款認証が完了したら、次に資本金の払込みを行います。
定款に記載した出資者となる人が、その人の名義の銀行口座から、発起人の個人口座に振込みの形で入金しなくてはなりません。
(当然ながらこの時点では会社は存在していませんから、法人名義の銀行口座を用意することはできません。そのため、便宜的に発起人の個人口座に振り込みを行います)
後日に「確かに各出資者がお金を負担している」ということが証明できるように、通帳のコピーを取っておくとともに、「払込証明書」を作成しておきます。
登記書類の作成
資本金の払い込みが完了したら、2週間以内に法務局に対して登記申請を行います。
会社の設立は、法務局で登記手続きを行うことによって完了しますので、法務局に対して「この内容で登記してください」と依頼するための申請書を用意しなくてはなりません。
ここで用意するのは以下のような書類です。
- 登記申請書
- 定款
- 発起人の決定書
- 取締役の就任承諾書
- 代表取締役の就任承諾書
- 監査役の印鑑証明書
- 資本金の払込証明書
- 設立する法人実印の印鑑届出書
- 添付書類(登記すべき事項)
登記書類の申請
上の申請書類が作成できたら、法務局の窓口に提出します。
登録免許税を納める必要がありますので、必要な金額の収入印紙を購入し、申請書類に貼り付けます。
万が一、不備があった時に備えて、申請書の左上には申請を行う人の連絡先(電話番号)を鉛筆などで記載しておくのが一般的です。
問題がなければ、申請後1週間以内に登記が完了し、会社の設立手続きが完了することとなります。
(法務局の窓口に「登記申請の完了予定日」が表示されていると思いますので、確認しておきましょう)
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STEP.3 これで「終わり」じゃありません!会社設立後にやること
ここまで説明した内容で会社設立の手続きは完了しますが、設立が完了した後にも必要な手続きがあります。
法務局で法人設立の手続きを行っただけでは、その他の関係各所はまだ会社が設立されたことを把握していません。
そのため、個別に「会社を新しく作りました」ということを知らせる必要があるというわけです。
法人設立後に行う手続きとしては、以下のようなことがあります。
- 税務署への届出
- 各地方自治体への開業届
- 社会保険への加入
- 法人用口座の作成
こちらも順番に見ていきましょう。
税務署への届出
会社を設立したら、毎年税務署に対して法人税・消費税・所得税(従業員の税金)といった税金を納めないといけません。
管轄の税務署に対しては、以下のような書類を提出します。
- 法人設立届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
また、税金の納付について特例的な扱いを受けたい場合には、以下のような書類も提出しておくのが一般的です。
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
- 青色申告の承認申請書
- 減価償却資産の償却方法の届出書
- 棚卸資産の評価方法の届出書
どのような書類を提出しておくかは、選択する経理方法などによって異なりますので、顧問税理士などに確認するようにしてください。
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各地方自治体への開業届
地方自治体に対しても、法人の設立を行なった旨を報告しなくてはなりません。
なお、ここでいう地方自治体というのは都道府県と市区町村の2つのことです。
提出先は、設立する法人の事務所がある場所の都道府県税事務所と市区町村役場になります。
- 法人設立等申告書(都道府県税事務所に提出)
- 法人設立等申告書(市区町村役場に提出)
なお、これらの申告書には定款や法人の登記簿謄本を添付します。
社会保険への加入
会社を設立して事業を行う場合には、雇用する従業員や役員を社会保険(健康保険と厚生年金のこと)に加入させなくてはなりません。
会社と雇用関係を結ぶのが社長一人である場合でも同様です。
また、役員以外の従業員を雇った場合には、労災保険や雇用保険にも加入しなくてはなりません。
健康保険と厚生年金に関しては、提出する書類は以下のようなものです(提出先は年金事務所です)
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届
雇用保険と労災保険については以下の通りです(提出先は労働基準監督署です)
- 保険関係成立届
- 労働保険概算保険料申告書
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法人用口座の作成
法人設立の手続きが完了したら、法人名義の銀行口座をつくることができます。
以下のような書類を準備して銀行窓口に行き、手続きを行いましょう。
- 代表取締役となる人の印鑑証明
- 会社の登記簿謄本
- 会社の定款
- 会社の実印
- 代表取締役の身分証明書
- 銀行員印として使う印鑑
近年、犯罪抑止の目的で法人の銀行口座開設は非常に厳しくチェックされるようになっています。
また、会社の運営実態が疑われやすい形態で事業運営を行う場合には注意が必要です。
(資本金の金額が極端に少ない場合や、自宅や事務所に固定電話を置いていない場合、バーチャルオフィスを使っているなど)
そのため、設立した会社がちゃんと事業の実態を持った会社であることをアピールしなくてはなりません。
口座開設手続きには会社の代表者が行き、会社がどのような活動を行なっているのか真摯に説明する姿勢を見せることが大切です。
(ネット銀行などは比較的口座開設を行いやすいようです)
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まとめ
今回は、これから実際の会社設立の流れを時系列に沿って解説いたしました。
実際の会社設立手続きは司法書士や行政書士、その他の専門家に代行してもらうのが一般的ですが、おおむねどのような流れで手続きが進んでいくのを理解しておきましょう。
おまけ(設立までに必要なものチェックリスト)
本文で説明した、「会社設立手続きで必要な書類」を一覧にまとめました。
これから会社設立手続きを開始する方は、チェックリストとしてご活用ください。
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