会社設立時の資本金払込の方法は?
手順と払込証明書の作り方を詳細解説

会社設立時の資本金払込の方法は?手順と払込証明書の作り方を詳細解説
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最近では、「資本金1円から会社が設立できる」というのはよく知られていると思われますが、実際に資本金1円で会社を新規設立するケースはまず無いと言っていいでしょう。

実際に統計を見ても、例えば2022年12月に設立された株式会社7,175社の資本金額は平均347万円、100万円に上300万円未満がボリュームゾーンとなっています(「登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額」2022年12月、法務局登記統計)。

資本金の額は公開されており、「企業の体力」とも言われ信頼にもかかわるため、ある程度の資本金は準備する必要があるのです。

なお資本金として用意したお金は、社員が代表1人の会社であってもただ持っていればいいわけでなく、会社に出資するという形で払い込みをしなければいけません。
本記事では、発起人設立をする場合の資本金払込の方法や手順、ポイントを解説します。

そもそも「資本金」とは何か

そもそも「資本金」とは何か

資本金とは簡単に言えば会社の元手となるお金のことです。
会社を設立・運営するために事業主や株主が資本金を払い(出資し)ます。

かつては会社法の規定により、株式会社には資本金1000万円以上なくては設立できないという決まりがありました。
しかし2006年の新会社法施行により、その最低資本金制度は廃止され、資本金1円以上でも法律上では会社設立が可能となっています。

ただし、実際には元手なしに会社を立ち上げるケースは稀でしょう。
資本金の額が大きいほど会社の信頼度も高まるため、数百万円の資本金を用意するのが一般的です。
ちなみに前述の統計では、資本金が100万円未満の会社は7,175社中1,272社でした。

資本金は手を付けてはならないお金というわけではなく、会社運営に使うこともでき、増やすこと(増資)・減らすこと(減資)の両方が可能です。
また現行会社法での最低資本金制度廃止にともない有限会社の新規設立ができなくなり、代わりに登場したのが「合同会社」です。

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資本金の払込とそのタイミング

資本金の払込とそのタイミング

会社を設立するには、資本金の全額が会社に払い込まれる必要があります。
払込は金融機関の口座に入金する形で行います。

資本金の払込のタイミングについては、株式会社と合同会社で法律の定めが異なります。それぞれについて見ておきましょう。

資本金の払込:株式会社を設立する場合

一般から株主を募集しない「発起人設立」で株式会社を設立する場合、会社法では「発起人が設立時発行株式を引き受けた後、遅れることなく出資の全額を払い込むこと」と定めています。

設立時に発行する株式は、発起人が1人でも複数でも、それぞれ1株以上を引き受ける義務があります。

まずはどの発起人が何株を引き受けるかを定款に定めるか、もしくは発起人全員の同意を得て決めることが必要です。
そのため、定款の認証後に資本金の払い込みを行うことが推奨されています。

会社設立全体の流れで見ると次のようなタイミングです。

【株式会社設立の流れ】

STEP.1 会社の基本情報を決める
STEP.2 会社用の印鑑を作成する
STEP.3 定款を作成し、出資額や発起人、発行可能株式総数などを決める
STEP.4 公証人による定款認証を受ける
STEP.5 資本金の払込を行う
STEP.6 法務局に登記申請をする
STEP.7 設立の登記完了

資本金の払込は、登記申請までにするのが原則です。また、資本金の額は定款(または発起人全員の同意)で決まるため、定款の認証後に払い込むのが一般的となっているのです。

ただ、必ずしも定款認証後でなくてはならないわけではありません。これについては最後の章で説明します。

資本金の払込:合同会社を設立する場合

合同会社の設立では、「定款の作成後、合同会社の設立の登記までに資本金の全額を払い込む」よう会社法で定められています。

合同会社設立の流れとともに見てみましょう。

【合同会社設立の流れ】

STEP.1 会社の基本情報を決める
STEP.2 会社の印鑑を作成する
STEP.3 定款を作成する
STEP.4 資本金の払込を行う
STEP.5 登記書類を準備し、法務局に登記申請する
STEP.6 設立の登記完了

合同会社の場合、定款の認証を受ける必要がありません。
定款を作成し資本金の額を決めた後、そして登記申請をする前が資本金払込のタイミングです。

資本金払込の手順4ステップ

資本金払込の手順4ステップ

では、資本金を払い込む際の具体的な手順を4つのステップに分けて見ていきましょう。

なお、ここでは株式会社の設立をメインに解説します。
合同会社については、後の「番外編:合同会社の場合はもっと簡単! 」で説明します。

STEP.1 発起人名義の口座と通帳を用意する

株式会社の場合、資本金の払込は金融機関の口座にすることも会社法で定められています。
しかし、この時点で会社はまだないため法人名義の口座は作れません。そのため、まず発起人名義の口座を使います。

発起人が1人の場合は本人の口座を使います。
発起人が複数いる場合は代表者(通常は代表取締役となる人)を決め、その代表者の口座を利用するのが一般的でが、各発起人が自身の口座を利用するのでも問題はありません。

また、口座は既存のものでよく、新たに口座開設する必要もありません。

資本金払込用の口座は、日本国内で各地に店舗のある金融機関のほか、ネットバンクや国内銀行の海外支店のものでもOKです。
紙の通帳がある金融機関であれば、記帳のため通帳を持参してください。後で説明する証明書の作成に使います。

STEP.2 口座に資本金を払い込む

用意した口座に、資本金を払い込みます。記帳のためキャッシュカードでなく通帳を使いましょう。

発起人が複数の場合

発起人が複数いる場合は、誰がいくら資本金を用意するのかを事前に決め、代表者の口座または各自の口座に「振込」または「送金」で資本金を払い込みます。

払込方法に法の決まりはありませんが、「誰がいついくら払ったか」を明確にし、そのお金が会社設立の資本金だとわかるようにする、後のトラブルを回避する、といった理由から振込や送金を使うことをおすすめします。

ただ「振込」や「送金」には手数料がかかるため、その負担についても決めておくと安心です。
また、各自が代表者の口座に払い込む場合は、記帳時に近くに印字されるよう、払込日を揃えるなどするのがおすすめです。
代表者が各発起人の出資分をまとめて預かり振り込む場合は、出資金領収証などを発行しておくとよいでしょう。

会社設立後は、法人名の銀行口座を開設し、資本金を法人口座に移すのが一般的です。ただ、法人口座の開設は審査が厳しくなっています。

詳しくはこちらの記事で解説しています。

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STEP.3 通帳をコピーする

資本金の払込が完了したら、払込を証明するために通帳のコピーをとります。
払込先の金融機関名や店番、預金種類や口座番号、名義人の氏名、資本金の払込記録がわかるページをコピーしてください。

通帳の記載は金融機関により異なりますが、次のようなページを取っておけばよいでしょう。

●通帳の表紙
●通帳の表紙の裏面
●資本金払込の部分が載ったページ

すでにある口座に資本金の払込をする場合、資本金の払込以外にもお金の動きがあるとどれが資本金なのかがわかりにくくなります。
資本金払込の日付と金額部分に、マーカーなどで印をつけてください。

インターネットバンキングの利用や、ネットバンクの口座の場合は、取引状況がわかる画面のプリントアウトでもOKです。
ただし、払込先の金融機関名や口座名義人、振込日と振込金額が記載されている必要があります。

STEP.4 払込証明書を作成する

資本金の払込には、払込という行動だけでなく書面での証明が必要です。通帳の表紙や該当部分をコピーしたら、「会社が資本金の払込を確認した」という内容の文書を作成し、コピーとともに綴じます。これが資本金の払込証明書となります。払込証明書の具体的な作成方法や綴じ方については、次の章で説明します。

番外編:合同会社の場合はもっと簡単!

番外編:合同会社の場合はもっと簡単!

合同会社を設立する場合は、個人口座を用意し、資本金の払込を行うところまでは株式会社と同じです。

しかし、合同会社の場合は、合同会社から合同会社の社員(=出資者)への「領収書」をもって資本金払込の証明とすることができます。

記帳部分のコピーは必要ありません。
理由は、会社法が株式会社だけに金融機関を使った払込を義務化しているためで、合同会社では実質的に手渡しなども可能となっているからです。

領収書の書式例は次の章で紹介します。

資本金の払込証明書の作成方法と書式例

資本金の払込証明書の作成方法とフォーマットの例

資本金の払込が完了したら、法務局への登記申請に必要となる払込証明書を作成します。
様式はないので、Wordなどの文書作成ソフトで自作するのが一般的です。

ただし決められた様式はないものの、必要な記載項目はおおよそ決まっているため、それらを満たさねばいけません。
細かいところですが「綴じ方」にも注意が必要です。

払込証明書に記載する項目

払込証明書は、これから「設立する会社」が証明する形で作成します。
記載するのは次の項目です。

タイトル「証明書」「払込証明書」など
本文全額の払込を受けた旨の文(下のフォーマット例に記載)
払込を受けた金額の総額金○○円(定款に記載のとおり)
設立時発行株式数○○株(定款に記載のとおり)
証明書の作成日付払込が完了した年月日(複数回の場合は最後の払込日)
会社の所在地定款に記載の本店所在地の住所
商号(社名)定款に記載のとおり
設立時代表取締役名氏名

資本金の払込証明書には、押印の必要はありません。
印鑑の要不要の扱いについては、令和3年2月に変更の通達が出ています(令和3年1月29日/法務省民商第10号)。

申請に関する書類に押印が必要かどうかは、法務省の公式サイトでも確認できます。

払込を受けた金額の総額や株式の数、商号や本店所在地などは、定款と同じになるようにしてください。

払込証明書の記載例

払込証明書の記載例

払込証明書の記載例も見ておきましょう。

ここでは便宜上、記載事項に合わせたサイズで紹介しています。
実際には通帳コピーと合わせて綴じ、他の登記申請書類と合わせて提出するため、登記申請書と同じA4サイズの大きさで揃えましょう。

払込証明書と通帳コピーの綴じ方

払込証明書と通帳コピーを綴じる手順を解説します。

1.払込証明書と通帳コピーを次の順に重ねる

  • 払込証明書
  • 通帳の表紙コピー
  • 通帳の表紙裏(口座番号・店番・口座名義人氏名・銀行印などがわかる部分)
  • 資本金払込に関する取引がわかるページのコピー

2.左端2カ所をホチキスで留め、冊子にする

払込証明書と通帳コピーの綴じ方

赤い印の箇所をホチキス留めするといいでしょう。
払込証明書には押印の必要がないため、契印や訂正印も不要です。

ちなみに、会社法施行以前はこのような払込証明書ではなく、金融機関による「払込金額保管証明書」が必要で、審査などに時間がかかっていました。

現在でも、発起設立でなく一般に株主を募る募集設立の場合には、金融機関に「払込金額保管証明書」を発行してもらう必要があります。

合同会社の場合は領収書でもOK

前述のとおり、合同会社を設立する場合は払込証明書に通帳のコピーを添付する必要がなく、領収書での提出も可能です。

【出資金領収書を証明とする場合】

【出資金領収書を証明とする場合】

ただし、会社設立登記が完了し、法人口座を作った後は、出資金は会社の口座に入金しなくてはなりません。

ちなみに、合同会社であっても払込証明書を作成することに何の問題もありません。より正確な記録を残すことができます。

【払込証明書を提出する場合】

【払込証明書を提出する場合】

領収書でなく払込証明書を作成するなら、株式会社と同様に通帳のコピーなども一緒に綴り合わせて提出することが必要です。

資本金払込と払込証明書作成のポイント

資本金払込と払込証明書作成のポイント

最後に、資本金を払い込む際と払込証明書の作成について押さえておきたいポイントを説明します。

資本金払込のタイミングは定款認証前でも可能

上の章で、資本金払込のタイミングは定款の認証後とすることを推奨しています。
しかし、定款認証前の払込が絶対にダメだというわけではありません。

法務省から法務局への通達によれば、払込の時期については設立時発行株式について定めた定款または発起人全員の同意書の作成日より後の払込、つまり認証でなく作成の後の払込も可能とされています。
さらに、定款や同意書の作成前であっても、発起人の口座への払込であるなど、会社設立の出資目的の払込だと認められれば問題ないこととなりました(令和4年6月13日/法務省民商第286号)。

もっとも、会社設立のための出資だと明らかにする必要があることには注意が必要です。

資本金の払込は複数回(日)に分けてもOK

払い込む資本金の額は、残高などとは別で資本金以上の額を振り込む必要があります。
しかし、払込回数の制限はなく、一度に全額を払い込む必要はありません

ATMを利用する場合などは、払込限度額もあるため一度では難しいこともあるでしょう。
複数回に分けて払い込んだ場合は、すべての払込履歴を記帳・コピーし、どの取引が資本金の払込なのかをマーカーなどでわかるようにします。

払込証明書の日付は、全額分の資本金の払込みが完了した日にしてください。
ただ、振込には手数料がその都度かかるため、なるべく一度にまとめることをおすすめします。

払込先の口座は発起人名義でなくても可能

発起設立の場合、資本金を払い込む口座は発起人名義の個人口座とするのが原則です。
ただ、設立時(代表)取締役の名義の口座でもよいとされ、その場合には、払込金の受領権限を発起人から取締役に委任する委任状の添付も必要となります。

また、発起人と設立時取締役の全員が海外在住で日本に住所がない場合には、発起人からその第三者に対しての払込の受領権限に関する委任状を添付すれば、発起人や取締役以外の第三者でも問題ありません。

ちなみに、この場合の委任は発起人1人からでよく、発起人全員や過半数である必要はありません(平成29年3月17日/法務省民商第41号)。

ネットバンクで入金した場合はどうする?

資本金の払込に利用できるネット銀行ですが、印鑑の登録や通帳がないことも多く、迷う人も多く見受けられます。
また、近年では都市銀行などでも、印鑑レス口座やペーパーレス口座が増加しています。

その場合は、マイページなどから次の項目がわかる部分をプリントアウトしましょう。

●銀行名
●支店名
●口座名義人
●資本金の払込履歴

通帳や印鑑がなくても、必要事項がわかれば払込証明書に添付できますので安心してください。

まとめ~資本金の払込はタイミングや方法に注意~

まとめ~資本金の払込はタイミングや方法に注意~

会社を設立するには、資本金を用意し、口座に払い込む必要があります。
また、払込したことを証明する書類を作成し、登記申請時に提出する必要もあります。

資本金払込と払込証明書作成で注意すべきなのは、「払込されたお金が今回の会社設立のための出資である」ことが第三者から見て明らかでなくてはならない、ということです。
そのため、すでに使用している個人口座への払込で良いとはいえ、残高をそのまま資本金と見なすことはできません。
会社設立より何年も前にされた払込を資本金であると証明するのは難しいでしょう。

発起人が複数いる場合には、代表の口座に入れるか、各人の口座に入れてそれぞれの通帳コピーを添付するなど、資本金払込の手続きだけでもやり方や守るべきルールが複数存在します。

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