「 会社設立に必要な手続きとその流れを解説 」の記事では、法務局への登記を行うまでの会社設立の流れを解説しました。
法務局での登記が完了すれば、法律上で会社の設立ができたことになります。
しかし、会社としてスタートするためには、税金や保険に関する手続きをも行う必要があります。
この記事では、会社の登記を完了した後に行うべきことについて解説していきます。
目次
会社設立後にやること
法務局での設立登記を済ませたら、次に以下のような手続きを行います。
- 税金関係の手続き
- 社会保険への加入手続き①
(健康保険・厚生年金) - 社会保険への加入手続き②
(労働保険) - 法人名義の銀行口座の作成
それぞれ具体的に見ていきましょう。
税金関係の手続き
税金に関する手続きには、大きく分けて国税(国に収める税金)に関する手続きと、地方税(都道府県や市区町村に納める税金)に関する手続きの2種類があります。
それぞれの手続きは、以下の役所で行うことになります。
手続きの種類 | 手続きを行う先 |
国税に関するもの | 税務署 |
地方税に関するもの | 都道府県税事務所と市区町村役場 |
税務署に対して行う手続き(国税関係)
会社を設立したら、国に法人税や源泉所得税、消費税などさまざまな税金を納めなくてはなりません。
法人税とは、会社としての所得にかかる税金のこと。個人事業主の場合は個人の所得税、法人の場合は法人税を納める必要があるのです。
また、会社で従業員を雇用する場合には、従業員の給与にかかる所得税を会社が国に納めることになります。これがいわゆる「源泉徴収」の制度で、納める税金を源泉所得税と呼びます。
会社設立後すぐに税金を払うわけではありませんが、あらかじめ次の届出をしておく必要があります。
- 法人設立届出書
- 源泉所得税関係の届出書
- 消費税関係の届出書
(条件に該当する場合のみ)
「法人設立届出書」は、設立登記の日から2カ月以内に管轄の税務署に提出します。
従業員がいる場合は、源泉所得税に関する「給与支払事務所等の開設届出書」を提出します。提出期限は開設から1カ月以内です。
消費税については、事業年度の開始日時点での資本金の額が1000万円以上である場合のみ「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」の提出が必要です。
また、会社設立から2年間は消費税の負担をする必要がないのが原則です。ただし輸出売上高が多くある企業など、場合によっては消費税の課税事業者となることで税金の還付を受けられるケースもあります。
他にも手続きをしておくことで税金の負担が減らせる可能性があります。
例えば確定申告を青色申告で行って税制の優遇を受けるには、「青色申告の承認申請書」をあらかじめ提出しておく必要があります。
その他、どんな状況でどんな手続きが必要なのか、どんな書類が必要なのかはケースバイケースです。税理士などに相談するのが安心です。
都道府県や市区町村で行う手続き(地方税関係)
法人として納めるべき地方税には、主に次のようなものがあります。
- 法人住民税
- 法人事業税
上の国税関係の手続きと同時進行で、これらの地方税関係の手続きも行いましょう。
会社を設立した際は、税務署だけでなく都道府県と市区町村にも届け出ます。このとき提出する書類の名称や様式は、各自治体で異なります。例えば埼玉県なら「法人の設立等報告書」、さいたま市では「法人の設立(設置)変更等申告書」となっています。
届出は、それぞれの役所で行います。
- 市区町村:市町村役場
- 都道府県:都道府県税事務所
書類は、会社の所在地を管轄する地域の役所に提出してください。
ただし東京23区内で会社設立を行う場合は例外的に、町村民税についても都税事務所で手続きを行います。
例えば、東京都千代田区丸の内を本店所在地とする会社なら、千代田都税事務所に都道府県民税と市区町村税の両方についての「 法人設立・設置届出書 」を提出します。
社会保険の加入手続き①(健康保険・厚生年金関係)
会社を設立したら、税金関係の手続きに加えて社会保険関係の手続きも必要です。
ここでいう社会保険とは、健康保険と厚生年金のことです。この2つは基本的に、一緒に手続きを行います。
法人の場合、経営者も会社に雇用される扱いになります。役員報酬を支給する場合には健康保険と厚生年金に加入して保険料を納めます。
手続きに必要となるのは、次のような書類です。
- 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
(役員・従業員の全員分) - 健康保険被扶養者異動届
(役員・従業員に家族がいる場合)
いずれも、 管轄の年金事務所に提出します。
社会保険への加入手続き②(労働保険関係)
労働者(従業員)を1人でも雇う場合には、労働保険への加入義務もあります。そのため健康保険、厚生年金の加入手続きと合わせて、労働保険関係の手続きも必要です。
ここでいう労働保険とは、業務中や通勤中に従業員がケガをしたり病気になったりした場合に給付を行う「労災保険(労働者災害補償保険)」と、従業員に教育を施す場合あるいは当人の失業時などに給付が行われる「雇用保険」のことです。
労働保険の手続きは、次のような書類を提出して概算の保険料を申告のうえ納付します。
必要書類 | 提出先 (カッコ内は期日) |
労働保険 保険関係成立届 | 管轄の労働基準監督署 (雇用の翌日から10日以内) |
労働保険 概算保険料申告書 | 管轄の労働基準監督署または都道府県労働局 (雇用の翌日から50日以内) |
雇用保険 適用事業所設置届 | 管轄のハローワーク (事業所設置の翌日から10日以内) |
雇用保険 被保険者資格取得届 | 管轄のハローワーク (従業員を雇った翌月の10日まで) |
それぞれ期日が決められているので注意してください。
労災保険に加入するのは役員以外の従業員すべてですが、雇用保険は次の条件に該当する従業員のみ加入義務があります。
- 31日以上の雇用見込みがある
- 1週間の所定労働時間が20時間以上である
いずれにも当てはまれば、パートなど非正規雇用でも加入手続きが必要です。
法人名義の銀行口座の開設
会社設立が完了したら、その会社名義での銀行口座を開設することが可能になります。
その際の必要書類は次のようなものです。
- 会社の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 会社の定款
- 会社の実印
- 会社の銀行印
- 会社役員(代表取締役)の印鑑証明書
なお、個人で銀行口座を開設するときと異なり、法人名義での銀行口座の開設には、金融機関側の審査を受けなくてはなりません。
犯罪抑止などの目的のため、法人名義での会社設立は審査が年々厳しくなっているのが実情です。
▼法人のクレジットカードに関してはこちらの記事をどうぞ▼
手続きで迷ったら専門家に相談を
会社設立には、登記や税金、各種保険の手続きなどいろいろな作業が伴います。登記は法務局、税金は税務署、保険は年金事務所やハローワークなどそれぞれ窓口も異なり、忙しくて手が回らない人もいるでしょう。
手続きの手間を省いて本業に専念したい人には、会社設立にかかる手続きを専門家に任せることもおすすめです。
例えば、登記手続きの代行は司法書士のみが請け負える仕事です。年金や社会保険、労働保険などの専門家は社会保険労務士です。税務関連については、税理士に相談してください。
専門家に依頼するとどうしても費用はかかりますが、時間や手間、本業への負担など費用対効果を考えれば決して無駄ではないでしょう。
まとめ
定款を作成して認証を受け、法務局に会社設立の届け出を行ったら、次は税金や社会保険についての手続きを行う必要があります。
税金や社会保険料の負担は義務ですので、期日までに必ず行うようにしてください。会社が活動していく上で最低限負担しなくてはならないコストとして考えておきましょう。
税金については、会社の状況などによって必要な手続きが異なることもあります。わからないことがあれば、専門家である税理士などに相談することをおすすめします。
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