会社設立時の発行可能株式総数や
1株あたりの金額はどう決める?

会社設立時の発行可能株式総数・1株あたりの金額はどう決める?
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株式会社では、株式を発行して事業運営の資金を集めることができます。
しかし会社設立時には、発行できる株式の数(発行可能株式総数)をあらかじめ定款に記載しておくことが義務付けられています。

また、株式に譲渡制限を設けていない場合は、発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍が上限となっていますが、譲渡制限がある場合には、発行可能株式総数について制限はありません。
株式の譲渡制限があるとは、株の売却に取締役会もしくは株主総会の承認が必要だということです。

本記事では、設立時に発行可能株式総数をどう決めればいいのか、株式に譲渡制限を付ける・付けないで何が違うのかについて解説します。
また、そもそも1株あたりの金額はどう決めるのかについても説明するので参考にしてください。

発行可能株式総数とは?

発行可能株式総数とは?

発行可能株式総数」とは、発行できる株式の最大数のことを指します。

会社法には、株式会社の設立(設立登記)までに発行可能株式総数を決め、定款に明記することが定められています。

会社法 第37条【発行可能株式総数の定め等】

1. 発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。
2. 発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる。
3. 設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない。ただし、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

つまり、株式会社の設立登記を行うまでに、発起人全員の合意のもと発行可能株式総数を決めておく必要があるということです。

また、発行可能株式総数の1/4以上の株式を会社設立時に発行しなければいけません。
逆に言えば、設立時発行株式の4倍を超える数を発行可能株式総数とすることはできません。

ただし、「公開会社でない」すなわち「株式の譲渡制限を設ける」場合には、発行可能株式総数に決まりはありません。

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株式の譲渡制限とは?

株式の譲渡制限とは?

「株式の譲渡制限」とは、文字どおり株式の譲渡に制限を設けること。取締役会あるいは株主総会で承認されなければ、株式を譲渡(売却)することができません。

公開会社と非公開会社

会社法では、譲渡制限を設けない会社を「公開会社」と呼び、譲渡制限を設けている会社を「非公開会社」を呼びます。
一般的に呼ばれる「公開会社=証券取引所への上場会社」とは異なるので注意してください。

会社法では、株式の譲渡制限を設けていなければ上場会社でなくとも公開会社と区分されます。公開会社と非公開会社には、役員や株式についても次のような違いがあります。

公開会社非公開会社
機関の設置取締役会と監査役は必須取締役1名のみでよい
役員の資格の制限制限できない定款で株主に限定できる
役員の任期取締役:2年
監査役:4年
取締役・監査役とも
最長10年にできる
発行可能株式総数発行済み株式の4倍以下制限なし

このように、非公開会社は公開会社に比べ自由度が高くなっていることがわかります。

株式に譲渡制限を設けるメリット

日本企業の9割超が中小企業であり、中小企業の多くが株式に譲渡制限を設けた非公開会社です。

譲渡制限を設けることには、次のようなメリットがあります。

  • 第三者による会社の乗っ取りを防止できる
  • 相続人に対する株式の売渡請求ができる
  • 取締役会や監査役を設置しなくてよい
  • 取締役や監査役の任期を最大10年までのばせる

譲渡制限がなければ、株式が自由に売買され、会社に不都合となる人物に買い占められる、つまり経営権を奪われるリスクが生じます。

また、株主が相続税対策などのため複数の親族に株式を相続させれば、株式が分散します。
少数株主が増えると総会招集や名簿作成など事務的なコストが増えますし、会社に協力的でない人の手に渡ることも考えられます。
譲渡制限を付けておくことで、第三者による経営介入を防ぎ、会社を守ることができるのです。

相続人には、株式を会社に売り渡すよう請求することが可能になります(ただし売渡請求権について定款への記載が必要)。

また、取締役会や監査役の設置が不要で、役員任期も10年までとなれば、役員報酬や役員変更にかかる登録免許税などのコストカットにもなります。
同じ経営陣が長期的な視点で会社を運営でき、経営基盤の安定化も図れるでしょう。

株式に譲渡制限を設けるデメリット

メリットがある一方で、株式に譲渡制限を付けることには次のようなデメリットもあります。

  • 売渡請求権がデメリットになり得る
  • 株式買取請求権が発生してしまう

相続人に対する売渡請求権は、メリットとなる反面、例えば創業者が後継者に株式を相続しようとする場合などに大きなデメリットとなります。

というのも、売渡請求をされる側(相続人)は、売渡請求をするかどうかを決める株主総会で議決権を行使することができません。
そのため、後継者が大株主から相続した株式を売り渡さねばならないとなると、経営権を失ってしまう恐れもあるのです。

また、会社が株式譲渡を認めない場合、株主は会社に対し、株式を適正価格で買い取ることを要求できます(買取請求権の行使)。
その場合、会社は2週間以内に返答し、40日以内に買取せねばなりません。そうなれば、公正な価格はいくらかで株主と揉めたり、資金調達に苦しんだりする可能性が出てきます。

発行可能株式総数の決め方と注意点

発行可能株式総数の決め方と注意点

前述のとおり、会社設立までに発行可能株式総数を決めることは法で定められています。
定款の「絶対的記載事項」のように最初から記載すべきものではありませんが、設立登記までには決めて定款に記載することが義務付けられています。

発行可能株式総数をあらかじめ決める理由

なぜ発行可能株式総数を決めておかなくてはならないのか、その理由は大きく2つあります。

  • 会社が資金調達をスムーズにできるようにする
  • 役員の不当な権利行使を防いで株主の権利を保護する

公開会社の場合、資金調達が必要になったときには、定款に記載の発行可能株式総数までの株式を取締役会の決議だけで発行でき、その際、株主総会を開く必要がないため資金調達をスムーズに行えるメリットがあります。

一方、取締役会だけで際限なく株式を発行できるようにすると、すでに株を所有している株主にとっては、自身の株保有割合が下がり決議権に影響が出る1株あたりの価値が下がるなど、想定外の不利益を被りかねません。
あらかじめ最大数を決めておけば、既存株主のこういった不利益も防ぐことができるのです。

発行可能株式総数についてのルールと決め方

発行可能株式総数についてのルールと決め方

発行可能株式総数については、公開会社と非公開会社でルールなどが異なります。
また、革新的な事業で短期間に急成長を見込むスタートアップなどの場合も事情が変わってきます。

公開会社には発行可能株式総数に制限がある

前述のとおり、株式の譲渡制限を設けない公開会社には、発行可能株式総数に制限があります。

公開会社の発行可能株式総数は、発行済株式数の4倍以下。
つまり、仮に設立時に発行する株式が200株であれば、発行可能株式総数は800株以内でなくてはなりません。

これは設立以降も同じで、定款を変更して発行可能株式総数を増やすことはできても、その時点での発行済株式総数の4倍より多くすることはできません。

非公開会社は余裕を持った設定がおすすめ

株式に譲渡制限を設ける非公開会社の場合、発行可能総数に制限がないのでより多くの数を設定できますが、発行可能株式総数を決める際は、将来を見据える必要があります。

将来的に事業や販路の拡大などで増資を考えたとき、発行可能株式総数が少ないと、それ以上の増資ができません。

また、発行可能株式総数を変更するには、株主総会を開き、定款を変更するなどの手続きを経なくてはなりません。
時間もコストもかかるため、制限のない非公開会社ならあらかじめ発行済株式の10倍~20倍としておくのが一般的であり、おすすめです。

スタートアップは株式数を多めに設定

短期的な成長を見込むスタートアップの立ち上げやストックオプションを導入する場合などは、一般的な企業とは異なるので注意が必要です。

投資家からの出資を得たり社員にストックオプションとして渡したりする際に、株式数が少ないと柔軟な運用ができないため、1万株以上、100万株といった多めの設定をしておく必要があります。

また、上場した場合は公開会社として「発行株式総数は発行済株式の4倍まで」のルールが適用されることも頭に入れておいてください。

1株あたりの金額の決め方と決める際のポイント

1株あたりの金額の決め方と決める際のポイント

発行可能株式総数を決めるには、まず1株あたりの金額を決める必要があります。決め方と決める際のポイントを押さえておきましょう。

1株あたりの金額の決め方は自由

1株あたりの金額は、現在の会社法に決まりはなく、1株1円でも100万円でも発起人が自由に決められます。
多くの場合、手持ちの株式数がわかりやすいよう1株1万円としたり、旧商法の名残で1株5万円としたりしています。
ただ、自由に決められるとは言え、資本金が1円であれば必然的に1株1円となります。

また、例えば発起人2人のうち1人が3万円の出資、1人が7万円の出資をするとします。その場合、1株あたりの金額は最高3万円となりますが、3万円では7万円を割り切れません。
割り切れる数でなくてはならない決まりはないですが、理由なくわかりにくくする必要はないでしょう。
最大公約数の1万円とするのがわかりやすく妥当と言えます。

ただし前述のように、スタートアップの場合は株式数を多めにし、1株あたりの金額を低めに設定しておいた方がよいでしょう。

1株あたりの金額が高い・低いことのデメリット

1株あたりの金額が高い・低いことのデメリット

自由に決めていいと言われても、何もわからない状態で決めるのは難しいものです。
1株あたりの金額を低くすると、あるいは高くするとどんなデメリットが生じ得るのかについても見ておきましょう。

1株あたりの金額を高くするデメリット

1株あたりの金額が高いと、出資による資金調達をする場面でデメリットとなり得ます。
つまり「資金が集まりにくくなる」可能性があるということです。

1株=1万円なら気軽に出資できても、1株=500万円となると話は違ってくるでしょう。
自分が出資するにしても同じです。
また、上場を考える場合、取引しやすくするため上場の直前に株式を分割する(株数を増やす)手続きをするのが一般的です。
しかし1株あたりの金額が高く株式の数が少ない状態だと、それより早い段階で株式分割しなくてはならなくなり、コストや手間がかかります。

特にスタートアップの設立ストックオプションの導入には注意が必要です。この点は、あらかじめ専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

1株あたりの金額を低くするデメリット

1株あたりの金額を低くすると、株主総会での議決権を容易に他者に握られる危険性が生じます。

株主総会では、決議の際に1株=1票を投じることができます。
1人で100万円を出資した場合、1株=100万円なら1票ですが、1株=1万円なら100票の票数をもつことになるからです。

また、少額で株式を保有できるとなれば出資してもらいやすくなる反面、より多くの人が経営に口を出せる状態となり、企業運営に不都合が生じる可能性も考えられます。

さらに株式を保有する人数が多ければ多いほど、株主名簿の作成や株主総会招集の際の事務手続きなどでも作業が増えることになります。

今後の既存株主への影響も視野に

1株をいくらにするかについては、会社設立後、増資のために新しく株式を発行する際のことも考えておきたいところです。

例えば、発起人U氏は会社設立時に1株=10万円で10株、つまり100万円を出資しました。
その後、増資が必要になり新株発行しようとしましたが、1株=100万円では出資者が集まりにくいと考え、1株を1万円に下げて設定。
すると新たに株を取得したK氏は10万円で10株を取得。結果として、K 氏はU氏と同じ株数を10分の1の金額で取得できてしまい、株主間で不公平が生じてしまうことになります。

このような事態に陥らないよう、1株あたりの金額は自社の今後の動きも考慮した上で決めることが大切です。

まとめ~発行可能株式総数は将来も見すえて決定~

まとめ~発行可能株式総数は将来も見すえて決定~

株式会社を設立する際、あらかじめ発行可能株式総数を決めておく必要があります。そのためには、まず1株あたりの金額を決めなくてはなりません。
中小企業の多くは株式の譲渡に制限を設ける非公開会社のため、発行可能株式総数にも制限はなく自由に決めることができます。

一般的には、スタートアップでない一般企業の場合は1株あたり1万円や5万円などわかりやすい額とし、発行可能株式総数は後で変更する必要のないように多めにしておく傾向です。
設立時の出資の額(資本金額)のほか、将来的な資金調達なども考慮して決定してください。

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