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誰が使える?本当に無利子なの?
想像を超えて国内に広まった新型コロナウイルス感染症の影響は、インバウンド関連事業や飲食業のみにとどまらず、様々な分野の事業者に及んでいます。
この緊急事態において、政府が緊急対策として行う事業者向けの施策のひとつに、運転資金が不足している事業者に対する資金繰りの支援があります。
そのなかに政府系の公的金融機関である日本政策金融公庫(以後「公庫」とします)が行うコロナウイルス関連の特別融資があります。
日本政策金融公庫というと、創業時の創業資金や事業開始後間もない時期の資金調達などで重宝する金融機関ですが、この特別融資も、銀行などの一般的な民間金融機関とは違う公庫ならではと言えます。
ただし、利用対象者や実質無利子化を可能とする利子補給の条件など、注意すべきポイントがあります。
今回は、公庫が行う新型コロナウイルス感染症関連の融資と、利子補給制度について、わかりやすく解説します。
各コロナ関連融資と対象者について
新型コロナウイルス感染症で影響を受けた事業者に対する特別融資には、以下のようにさまざまなものがあります。
各融資制度について解説する前に、どういった方がどのような融資制度を利用できるかを一覧でまとめました。
なお、利子補給制度が適用される融資制度は赤字で強調しています。
(注)生活衛生事業者とは、飲食店や喫茶店、理美容業や旅館、公衆浴場やクリーニング業等の事業者です。
利用者の属性※1 | 新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少条件 | 利用可能な特別融資制度(赤字は利子補給制度の適用あり) |
一般事業者(生活衛生事業者、商工会議所や商工会などの経営指導を受けている事業者※2、生活衛生同業組合などの経営指導を受けている事業者を除く) | 次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方 1.最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少 2.業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合は、最近1ヵ月の売上高が次のいずれかと比較して5%以上減少 (1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます)の平均売上高 (2)令和元年12月の売上高 (3)令和元年10月から12月の平均売上高 | ・新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
生活衛生事業者 | 同上 | ・生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
商工会議所や商工会などの経営指導を受けている事業者※2 | 最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少 | ・「新型コロナウイルス関連」マル経融資 ・新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
生活衛生同業組合などの経営指導を受けている生活衛生事業者(旅館業、飲食店営業および喫茶店営業を営む事業者を除く) | 同上 | ・「新型コロナウイルス関連」生活衛生改善貸付 ・生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
旅館業、飲食店営業および喫茶店営業を営む事業者 | 次のいずれかに該当し、かつ、今後も売上高減少が見込まれること (1)最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期に比較して10%以上減少 (2)業歴3ヵ月以上1年未満の場合は、最近1ヵ月の売上高が過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます)の売上高の平均額に比較して10%以上減少 | ・新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付 ・「新型コロナウイルス関連」生活衛生改善貸付 (生活衛生同業組合などの経営指導を受けている事業者に限る) ・生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付 |
※1 創業後3ヶ月以内の事業者はコロナ関連融資の対象となりません。各種創業融資を利用することになります。
※2 商工会議所等の長の推薦が必要です。
実質無利子化(利子補給制度)と適用条件について
上記で太字にて強調された「新型コロナウイルス感染症特別貸付」、「生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付」においては、条件に該当すると融資後3年間のみ適用される「特別貸付適用基準利率-0.9%」の部分について、後日利子補給が行われる予定です。
従って3年間は、一旦支払った利子が補給されることで、実質的に無利子で利用できることになります。
利子補給は、3000万円以内の融資部分について行われます。
その条件は以下の通りです。
条件に当てはまらないと利子補給が受けられず、実質無利子となりませんので注意しましょう。
適用条件
新型コロナウイルス感染症特別貸付もしくは、生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付を受けた者のうち、以下になります。
小規模事業者 | 中小企業者 | |
個人 | 要件なし(すべて該当) | 売上高▲20%以上 |
法人 | 売上高▲15%以上 | 売上高▲20%以上 |
(注1)小規模事業者とは、卸・小売業、サービス業は常時使用する従業員(*)が5名以下、それ以外の業種は同20名以下の企業をいいます。 また、中小企業者とは、この他の中小企業をいいます。
(*)労働基準法上における「あらかじめ解雇の予告を必要とする者」のことです。
(注2)売上高要件の比較は、新型コロナウイルス感染症特別貸付で確認する最近1ヵ月に加え、その後2ヵ月も含めた3ヵ月間のうちのいずれかの1ヵ月で比較します。
【参考資料】
日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と「特別利子補給制度」の併用による実質的な無利子化融資のご案内」
新型コロナウイルス感染症特別貸付
利用できる者
上記「各コロナ関連融資と対象者について」のとおり
資金の使いみち
新型コロナウイルス感染症の影響を受け必要となった、設備資金および運転資金
融資限度額
6000万円
(他の融資とは別枠とされていますが、実際これまでの災害貸付と同様に財務内容により公庫が判断することになるでしょう)
利率(年)
原則新型コロナウイルス感染症特別貸付における基準利率
(融資額3000万円を限度として融資後3年以内は基準利率-0.9%、4年目以降および3000万円を超えた部分は基準利率)
特別貸付基準利率:1.36%~1.55%(令和2年3月2日現在)
なお、上記「適用条件」に該当すれば、利子補給が受けられます。
返済期間
設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金 15年以内(うち据置期間5年以内)
担保
無担保(必ず無保証人ではありません)
生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
利用できる者
上記「各コロナ関連融資と対象者について」のとおり
資金の使いみち
1.振興計画認定の組合員:新型コロナウイルス感染症の影響を受け必要となった、設備資金および運転資金
2.上記1以外:新型コロナウイルス感染症の影響を受け必要となった設備資金(運転資金は含みません)
融資限度額
6000万円(別枠)
利率(年)
上記「新型コロナウイルス感染症特別貸付」に同じ
同様に上記「適用条件」に該当すれば、利子補給が受けられます。
返済期間
1.振興計画認定の組合員
設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内)
運転資金 15年以内(うち据置期間5年以内)
2.上記1以外
設備資金 20年以内(うち据置期間5年以内)
担保
無担保(必ず無保証人ではありません)
「新型コロナウイルス関連」マル経融資
利用できる者
上記「各コロナ関連融資と対象者について」のとおり
商工会議所等の長の推薦が必要です。
資金の使いみち
新型コロナウイルス感染症の影響を受け必要となった、設備資金および運転資金
融資限度額
1000万円(別枠)
利率(年)
融資後3年以内は特別利率F-0.9%(別枠の1000万円以内について)
4年目以降および3000万円を超えた部分は特別利率F
特別利率F:1.21%(令和2年3月2日現在)
返済期間
設備資金10年以内(据置4年以内)
運転資金 7年以内(据置3年以内)
※据置はいずれも別枠の1,000万円以内)
担保
無担保無保証人
「新型コロナウイルス関連」生活衛生改善貸付
利用できる者
上記「各コロナ関連融資と対象者について」のとおり
資金の使いみち
新型コロナウイルス感染症の影響を受け必要となった、設備資金および運転資金
融資限度額
2000万円(別枠)
利率(年)
融資後3年以内は特別利率F-0.9%(別枠の1000万円以内について)
4年目以降および3000万円を超えた部分は特別利率F
特別利率F:1.21%(令和2年3月2日現在)
返済期間
設備資金10年以内(据置4年以内)
運転資金 7年以内(据置3年以内)
※据置はいずれも別枠の1,000万円以内)
担保
無担保無保証人
新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付
利用できる者
上記「各コロナ関連融資と対象者について」のとおり
資金の使いみち
一時的な業況悪化により支障を来している、生活衛生関係営業者の経営を安定させるために必要な運転資金
融資限度額
【旅館業】3,000万円(別枠)
【飲食店営業および喫茶店営業】1,000万円(別枠)
利率(年)
基準利率(無担保で2.16%~2.35%:令和2年3月2日現在)
振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員は、特別利率C(無担保で1.26%~1.45%:令和2年3月2日現在)
返済期間
7年以内(据置期間2年以内)
担保
相談が必要です(当然、無担保無保証人ではありません)
申し込みはインターネットがおすすめ!
新型コロナウイルスの影響を受ける中小企業や小規模事業者にとっては、まさに「地獄に仏」とも言える支援策であり、ぜひ積極的に活用すべきです。
ただ現在、公庫の窓口には融資希望者が殺到しており、ほとんどパンク状態とのことです。
提出書類をもらうだけでも窓口でかなり待たされるケースも多々あるため、あらかじめ公庫のホームページからダウロードしておくと良いでしょう。
申し込みについてもインターネットから受付しています。
窓口への直接訪問や郵送より早く対応できるそうなので、ぜひそちらをご利用くださいませ。
融資相談は原則事前予約制へ【4/24以降】
なお、込み合う窓口で感染リスクが高まることを避けるために、公庫では原則予約制をとる方針を決めたようです。
今月24日から融資の相談は、原則として事前に予約が必要となっています。
NHK NewsWebより「融資の相談 原則事前予約制へ 日本政策金融公庫」
※必要書類の添付漏れがよくあるそうです。
下記の資料を参考に、事前の確認と綿密な準備で申し込みを行ってください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、様々な新型コロナウイルス感染症関連の特別貸付について説明いたしました。
まず自分がどの制度の利用が可能かを理解し、その制度の特徴(利率や利子補給の有無)を踏まえ適切な選択が大切です。
特別貸付はあくまで融資ですので、返済が必要です。
後々の返済負担も考慮しながら、資金繰りを検討するのがいいでしょう。
多くの税理士事務所でも、新型コロナウイルス感染症対応について、相談対応を行っています。まずは専門家に相談してみましょう。
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